神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 王 龍宝さん(上海中医薬大学癌科主治医師/日本神戸東洋医学センター専門講師)
  • 王 龍宝さん(上海中医薬大学癌科主治医師/日本神戸東洋医学センター専門講師)

プロフィールを読む

現在表示しているページ
フェリシモ
> 神戸学校
> 王 龍宝さん(上海中医薬大学癌科主治医師/日本神戸東洋医学センター専門講師)レポート

「東洋医学から見た健康 ~癌と闘うということ~」



<第1部>

今日は、中国における癌研究の現状である「予防養生法」と「漢方療法」についてお話したいと思います。癌という病気は命を脅かす病気です。今ではガンは「癌」という字を書きますが、昔、中国では「岩」という字を書いて「がん」と読んでいたんです。「体の中にできる硬い固まり」いう意味です。10年前の統計で、全世界で1年の間に430万人の人が癌で亡くなっていたんですが、昨年の統計では、全世界で癌で死亡した人の数は600万人に増えているんです。今ここでお話している間にも5秒間に1人の人が癌で亡くなっていることになります。上海の人口は1300万人ですから、その半分の人が毎年癌が原因で死亡していることになるのです。

PHOTO

一方、ひとりの人間を対象に見た場合、癌の発生と発展の速度というのは他の病気に比べると速度の遅い病気であるということが言えるのです。癌がからだのどこかに発生しても、10年間その癌が発展しない無症状の時期というのがあるのです。これを「癌前期」と言います。この時期がとても長いのがこの病気の特徴で、癌の治療にとって早期発見とその予防が重要になってくるのです。

ページのトップへ

癌を予防するためには

人が癌になって死ぬことがないようにするには、癌になってから治療する方法を考える前に、癌にならないために、その予防に努めること、そしてその早期発見に努めることが大切だと思います。早期に発見された癌は進行を遅くして完治に近い状態まで治療できることがあるからです。癌の予防のためには、大きく分けてふたつのことがあります。
ひとつは社会的予防です。社会的環境、栄養の問題、タバコを禁止するとか、国民癌検診を行うとかということで、先進国では癌検診を1年に1度はするとかというふうに、癌の予防と早期発見に努力をしています。
ふたつ目には個人的予防です。中国のことわざに「何でも自分からやり始めよう!」ということわざがあります。このことわざの通り、社会的に予防することより、まず自分が個人的に予防する方がより大切なことだと言えます。
癌予防法に、中国の養生防病法というのがあります。

PHOTO

1、気持ちをのびのびさせること
2、飲食に気を付けること
3、漢方薬により体を整えること

人間は、呼吸が止まれば亡くなります。人間が呼吸をするというのは「一息吸い込み、一息吐き出す」ということを言うのですが、自然界の清気(酸素)を吸い込んで、肺を通って心臓に送り血液の流れによって全身に栄養を送り込みます。それは血液の中に気を送り込むことであると『皇帝内経』という2200年前の中国の本の中に書かれています。血液は気の母。気がなければ血液は流れないのです。赤血球が酸素を運搬する働きをしています。気は人間のからだの中の基本的な物質であり、気は存在しているのです。気の生理的活動は複雑です。気はからだの中に入ってから昇降出入(昇ったり降りたり出たり入ったり)を行っています。『皇帝内経』の中に「百病以気生(百病は全て気より生ずる)」と書かれています。例をあげて気について説明したいと思います。

ページのトップへ

「気」について

人間の気について言うと「気持ち」とか「気分」という言葉がありますが、これは感情を表す言葉ですが、気に関係していて、気という言葉が使われます。気持ちがいい時には感情が高まりからだの中の気もよく働きます。うれしいことがあった時、それを話したいという時には「気」も温厚になります。悲しい時には気は重くなり、やる気がなくなります。どんなスポーツ選手でも試合の前には、気を入れるということをします。気の力は気力とかやる気という言葉で表現されるものといえます。気は上から下へ下りていくものですから、ガスが出るのは正常です。気が悪い時には胃がはったようになります。ゲップが出る時は気に異常があります。

PHOTO

かんしゃくを起こすと喀血(かっけつ)することがあります。これを繰り返すと癌の発生原因になります。気の運行が悪ければ血液の流れが悪くなります。血液の流れが悪くなれば鬱血(うっけつ)します。血行をよくすることが癌の治療法の大切なひとつなのです。だから、心配性の人が常に心配しているという状態はよくありません。たとえば身内に癌の人がいて「癌が遺伝するのではないか」とクヨクヨ心配しすぎるのはよくないです。心配したり、悩んだり、怒ったりすることはよくないのです。いつも楽観的に考えることが大切なのです。中国語では「悟淡虚無・知足常楽」と言います。

ページのトップへ

食品により癌を予防するということ

防腐剤の過ぎたもの、添加物、着色料の入ったものはよくありません。古く漬けた漬物もよくありません。すぐに食べるのは大丈夫です。ソーセージや焦げたものもよくありません。焼き肉などの焦げたものは食べないようにしてください。塩分を多量に取っている人に食道癌が多いのです。
癌を予防する食品としては昆布があります。昆布は日本では食料品として売っていますが、中国では漢方薬として使用されていて、肺ガンとか乳ガンに効く薬として漢方薬屋さんで売られています。昆布には軟堅散結といって、かたいものをやわらかくする作用があるのです。日本では食料として昆布をよく食べているので、日本人の乳ガン発生率はアメリカの3分の1、生理が終わってからの女性ではアメリカの4分の1であるということが、昆布の薬効を証明していると考えられます。昆布は「甘露醇」と言われ、脳圧を下げる効果があるので、頭痛にもいいし、皮膚を潤す効果もあります。

PHOTO

大豆は、たんぱく質が豊富で、豚肉の2倍のたんぱく質があります。癌を予防する物質として亜鉛がありますが、大豆の中にはその亜鉛がたくさん含まれています。納豆に昆布を入れて食べるのはいい考え方だといえます。甲状腺の病気にもよく、大豆モヤシ、豆乳を飲むのはからだにはとてもいいことで、毎日豆腐を食べるのは便秘にいいことをしているのです。それは豆腐を作る時に入れる石膏が胃腸を洗う役目をして、前に述べたように上から入ったものを下に出すというからだにとっていいことをしているのです。
飲料水についていうと、電気ポットのお湯は1日で飲んでしまう方がよいと言えます。長い間電気を入れたままにしていることにより中に入っている水が蒸発して無機塩という物質の濃度が濃くなって、それがポットの周りにこびりつくのです。それはからだに非常に悪い物質ですから、毎日水を入れ替えるだけではなくこまめに洗浄することが大切です。レモンを入れて保温にすると無機塩はきれいに溶けますので試してください。
缶詰のお茶は自動販売機などで売られていますが、からだにはよくありません。お茶は入れたものをすぐに飲むようにしてください。

ページのトップへ

漢方薬を飲むこと

漢方薬は日本では病気になってから飲むものと思われていますが、中国では、毎日普通の生活の中で飲まれています。その中でも漢方茶を飲むことが多くなってきています。からだにいいといわれる漢方薬は「黄連」「大黄」「黄柏」というような「黄」がついているものですが、これらはとても苦くて飲みにくいのですが、からだにはとてもいいものです。中国でも飲みやすい漢方薬が人気があります。中国4000年の歴史の中で漢方薬の歴史は2000年の長い歴史を持っています。『皇帝内経』に「医聖」として書かれています。中国では病気でない時にも予防のために漢方薬を飲んでいます。いわゆる元気が出る薬として飲まれているのです。病気になった時にはもちろん漢方薬を飲みます。中国では、29省の中に必ず中国医学大学があります。毛沢東語録の中に「中国医学是一個偉大的宝庫虚当努力発掘加以是高」という言葉がありますが、毛沢東も奨励しました。

PHOTO

急性病は西洋医学が効果のあることもありますが、慢性病のときは漢方薬がよく効くことがあります。漢方薬の特徴としては、同じ病気でもずっと同じ薬を飲ませないということがあげられます。その日の体調に合わせて薬を処方するのです。これは「弁証論治」「弁証施治」とか言われますが、ひとりひとりのからだに合わせて処方するので副作用がないと言われています。中国では現代の西洋医学では治らないと言われている胃下垂、脱肛、不妊、アトピ-性皮膚炎なども治すことができるのです。それは、漢方薬を飲み続けることによって、体質を変えることができるので、漢方薬を飲むことによって、必ず効果が出てくるのです。漢方薬を飲んでいると、尿や汗のにおいも変わってくると言われています。私の経験で、便秘には「大黄」がよく効くのですが、赤ちゃんがひどい便秘をした時に、その母親に「大黄」を飲ませて赤ちゃんに授乳させると、赤ちゃんの便秘が治ったということがあります。なぜ漢方薬を飲むと癌にならないかというと、漢方薬の中には、タンニン酸が含まれているのですが、それには抗癌作用があるからなのです。このタンニン酸はお茶の中にも含まれています。

ページのトップへ

私の研究の実験結果から言えること

漢方の癌に対する効果を私の実験を通して説明したいと思います。西洋薬の抗ガン剤を投与したネズミ群と漢方薬を投与したネズミ群とに分けて人間の腹水癌細胞を移植しました。
抗ガン剤を使用したネズミは腹水癌が発生するのは遅く、その意味では効果はありました。発生した腹水癌も小さかったです。しかし、からだはガリガリに痩せ、動きも少なく、短命でした。漢方薬を使用したネズミにも腹水癌は出ました。どちらかというと抗ガン剤を使用したものより腹水癌の大きさは大きかったのですが、ただ大きな違いは、体の動きは活発で生き生きと動き回り、体重には変化は無く長命でした。このことを人間に置き換えると、患者にとっては抗ガン剤の治療を受けることにより腫瘍の発生を押えることはできるが、からだにはかなりのダメ-ジがあり、からだは痩せて元気がなくなり命を縮めることになっていると言えるのです。漢方薬治療は、腫瘍の発生を押えることで比べると西洋薬より効果は少ないが、からだには副作用はなく、体重が減ったり痩せたりすることもなく、元気に動けて長生きできるということになるのです。治療と命のどちらが大切かと言うと、命の方が大切なのは言うまでもありません。

PHOTO

もうひとつ私がした実験は、胃ガンと腸ガンの細胞を移植したヌードマウスを無菌室で、私が調合した5種類の漢方薬をえさの中に入れて食べさせて、癌の発生の抑制率の実験をしました。6週間後の抑制率を言うと、胃ガンのネズミは79%、腸ガンは74.1%ありました。
1994年の日本癌学会でそのことを発表しました。現在、西洋薬では60%の抑制率があれば抗ガン剤として世の中に認められています。私の実験では漢方薬では70%以上の抑止率が認められているのです。私には「新しい抗癌漢方薬を作りたい」という夢があります。その夢をかなえたいと日本に来たのです。私は、癌を移植したヌードマウスで抗ガン剤と漢方薬を使用したネズミの命の長さの実験をしましたが、前にも述べた通り抗癌剤を使用して普通のえさを使用したネズミの命は69日、一方漢方薬のネズミは体重は1.7g多く命は100日と長かったのですが、その中の1匹のネズミにできた癌に、私が調合した龍起癌宝散を粉にしてふりかける方法を試み、その中の1匹に注射液にしてその癌に直接注射するという方法で実験しました。実験の結果、1週間後に移植した癌の部分がえぐれてなくなっているネズミが1匹いたのです。このことを乳ガンの患者で試すことができれば患者さんに傷をつけることなく癌を治療できると思います。龍起癌宝散について言うと、中国で私が看ている胃ガンの患者さんの約半数の人に、腹部の痛みや嘔吐などの症状が改善しているということや、大腸ガンの末期患者にその癌のある部分に直接投与することにより下血が止まり、命が伸びたことが中国の新聞である『大公報』に紹介されました。

ページのトップへ

私が医学を志したのは

私がなぜ医学を勉強し、医者になったかというと、父の影響がかなり大きかったと思います。小学校の5年生のころ、父が病気になって病院に行きました。

PHOTO

その時父が、医学書を見せてくれて「あなたは細くて力がないから力仕事はできないので医者になりなさい。医者になるにはこのような分厚い本を勉強しなければいけません。そして医者になるための大学へ行かなければいけません」と教えてくれたのです。父は日中戦争の時に姉と生き別れになっていたのですが、ある日やっと見つけた時に、その姉が死にかけていたのです。すぐに病院に運んだがお金がなかった。看護師さんに頼み込んで何とか入院させてもらったのですが、翌日病院に行くと、お姉さんが元気になってベットに座っていたのです。「医者というのは人の命を助ける素晴らしい仕事だ!」と小さいころから父から聞かされていたからです。

ページのトップへ

神戸へのメッセ-ジ

私は地震の半年後から神戸に住むようになりました。その前に4月ごろひとりで神戸に来ました。被害は大きくて、あちこちかなりひどかったです。中国人は日本人に心から感心しています。あんなにひどい状態の中で、日本人は冷静でした。奪い合いや、略奪など起こることもなく、食べ物をもらうのにみんな静かに並んでいました。本当に日本人は冷静な国民だと思います。こんなことは中国では考えられないことです。地震から3年たって、だんだん街がよくなっていきます。神戸の人にとっては本当に不幸なできごとでしたが、よくがんばって感心しています。私も神戸の人の健康のためにがんばります。神戸が生き生きするために一緒にがんばりましょう。

ページのトップへ

Profile

王 龍宝(わん りゅうほう)さん<上海医薬大学癌科主治医、同大学内科講師、日本神戸東洋医学センター専門講師>

王 龍宝(わん りゅうほう)さん
<上海医薬大学癌科主治医、同大学内科講師、日本神戸東洋医学センター専門講師>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1952年上海生まれ。上海中医薬大学中医学部卒業。以後臨床医として活躍。中国の腫瘍専門医、銭伯文教授の指導のもと、中医中薬による腫瘍の治療を研究し、全中国の腫瘍学術会議や学術雑誌および香港の新聞等の学術論文数十篇を発表する。1986年医学修士取得。同年、上海中医薬学大学内科講師となり、同時に付属病院の内科、癌科の主治医師となる。1990年『中国当代中医名人誌』および『中国の名医と良薬』に紹介される。1992年富山医科薬科大学客員研究員として来日し、抗癌漢方薬の研究を続ける。現在、日本神戸東洋医学センター専門講師。著書に『中国中医秘宝大全』『実用中医腎病学』がある。

ページのトップへ

その他のゲスト

ページのトップへ