神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「演劇を愛するこころ ~夢中になれるものとの出会い~」



<第1部>

こういう状態で話しをするというのは非常に恥ずかしいんです。どっちを向いてしゃべったらいいのかというような感じで苦手です。まあ、心楽しく聞いてください。
この中に実際芝居をしている人はいますか? 手を上げてください。いませんね。そうか、専門家は私だけですね。それじゃあ、堂々とお芝居の話をさせていただきます。
新劇というのは、始めに歌舞伎があって、能とか大衆演劇があって、そこから生まれてきたという歴史があるのですが、テレビ時代がやってきて、テレビや映画に出ている人がいい役者だと思われているんですね。私も「あんた、テレビに出てないから売れてないのんと違うか?」と近所のおばちゃんに言われたりしています。

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1959年昭和34年生まれで今月40歳になります。芝居を始めたのは16~7歳のころで、新劇が全盛の時でした。そのころアングラが盛んになっていました。つか こうへいさん、寺山 修二さんや唐 十郎さんなど学生運動家が中心にやっていましたが、自分の言葉でしゃべろうよという風潮が30年から40年前に生まれてきて、アンダーグラウンド的な演劇が学生運動とともに消滅して、小劇場が次々に生まれてきました。野田 秀樹さん、渡辺 えり子さん、鴻上 尚史さん、今はもうありませんが『夢の遊眠社』『第三舞台』などが有名です。関西は東京より遅れて、10年ぐらい前から始まりました。関西では今小劇場ムーブメントが起こっています。

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役者になるために大切なこと

役者を育てる方法にスタニクストラフスキー・システムがありますが、4年間毎日これを覚えれば素晴らしい役者になれるというものです。ル・コック・システムというのはスタニクストラフスキー・システムにパントマイムを加えたシステムで私はこれを1年ほど東京でやってきました。
役者がいちばん最初にすることはきれいに立つということです。まっすぐ立てる人はほとんどいないと言えます。日本人は誤解しているんですが、胸を張ってあごを引く姿勢がまっすぐ立つことではないのです。自分の骨に対してまっすぐ立つということは、まず大きく息を吸って肩を上げて、ストンと落とした時の姿勢があなたの骨に対してまっすぐに立つという姿勢です。写真を撮る時などにポーズを撮る人は、自分の姿勢に自信のない人と言われています。役者になるには、まっすぐに立つことを身につけることが大切です。

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次にきれいに座ることです。このふたつが大切です。そして自分がきれいに見えるように歩く練習をします。役者の仕事はここから始まります。「ひとつの姿勢をキープできるような役者になりなさい」とよく言われますが「立つ、歩く、座る」これができるようになれば人のまねができるようになります。
この基本を身につけるのに1年かかりました。立っている姿勢をキープするにはどうしたらいいのかというと、あばら骨と腕に軽く力を入れる状態をキープするという姿勢です。これは骨をきれいにする姿勢で、背中の筋肉を鍛え背筋力がつきます。背筋がつくと自然と腹筋がつきます。
余談になりますがパントマイムで使うのは腹筋です。クラシックバレエで使うのは後ろの筋肉です。神さまに近付くためにトウを入れたシューズで立ち、からだは背中の筋肉で支え両肩とみぞおちで作る黄金の三角形を崩さない姿勢を保つことが大切だと言われています。 肉体の訓練として声を出すという訓練があります。「アメンボ赤いなあいうえお」とかを大きな声でいうのですが、けいこをするので声は大きく出せるようになりますし、自信ができれば大きな声が出せるようになります。昔はお腹から声を出すように言われて、オペラ歌手などはからだが楽器だとかいって太っている方がよかったのですが、今は発声法が変わったので細い人でもいい声が出せるようになりました。それよりも表現の仕方に基準を置いています。
次に感情をキープする練習で、感情を段階に分けて覚えるということをします。例えば「笑いの1段階」と心の中でそう思って練習します。最終的に役割を与える時に「ここは笑いの何段階で」と感情のレベルで指示されます。笑うとか泣くとか怒りとかすべての感情の行き着くところは叫びとなります。そして最後の段階には黙り込みます。どの人が表現してもそうなるのです。自分の感情の段階の引き出しがあって、状況によっていつでも取り出せるようにすることができることが大切なのです。

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次に協調性の訓練です。鳥を見るという動作をする。目の動きに合わせて違う人が同じ鳥を見るという動作をする。20人ぐらいの人が実際には飛んでいない同じ鳥を見るという動作ができた時などは感動します。鳥を見るという動作ができるようになれば、映画を見るという練習です。2分間ぐらい映画を見るという動作をして、その人がどんな映画を見ているのかを当てるという練習をします。これで、ル・コック・システムの第一段階が終わります。これに3~4ヵ月かかります。
次にエチュードをします。簡単に何々ごっこをするというのではなくて、気持ちを入れることが大切になってきます。「朝の8時30分にこの道を歩いてください」というテーマを与えられると、自分で「2駅電車に乗って出かけるOLの出勤」とか細かいシュチエーションを決めてそれになりきっていく。100日ぐらい歩くということを続けていくと、そこにドラマができて、その人の人生を作るというけいこをします。そして初めて脚本をもらうとその登場人物が頭の中に浮かんで来るまで練習します。どんな家庭環境か、季節は、風景は……。これがアメリカのストレートプレーの基本です。
アメリカやイギリスの芝居の時にはまず図書館に行って脚本の時代背景や人物の背景を調べます。これはダメだしにも役立つので必ずします。「リリパット・アーミー」という劇団で12年間けいこしているのですが、教えても教えても、なかなか覚えてくれません。本気になれば覚えられると思います。給料もなければ保障もないという世界なので、食べられるかどうかという生活問題もあって、本気になれば覚えるようになるのです。自分のからだを使ってしかできないという世界です。自分の肉体を使って、声とか容姿とかを使って舞台を作るんですが、それにメイクとか衣裳とか振りつけとか、その他装置に助けられている要素もあります。私も衣裳に助けられたりして芝居をしています。芝居にとっては衣裳というのは大事な要素のひとつです。おばさんは紫色が好きだということがあるのですが、その衣裳の色合いによってその役柄の個性が出せるということがあります。私の場合は昔よく漫画を描いていて、その延長で色彩にも非常に興味があって『ベルサイユの薔薇』が流行っていて、その影響を受けてイラストを書いたりしていたのですが、その延長で、いま芝居の衣裳のイラストなどを書いたりしています。私が芝居に使いたいとイメージしたイラストと実際の衣装とのスライドです。

(スライドと舞台衣裳を各4点上映)

メイクでむずかしいのはノーマルメイクで、素顔に見えるメイクです。ファンデーションは上から下に塗り込むと毛穴の半分を埋めるだけなのでダメなのです。ファンデーションを毛穴に対して縦に塗り込んで毛穴を埋めていくようにするのです。毛穴にふたをするのですね。そうすると汗が出ても毛穴が詰まっているので、役者の大切にしなければいけない顔は化粧崩れはしないできれいなまま保たれるのです。汗は顔の後ろから流れるということになる。そのようなことも役者には大切なことになります。眉毛の下のTゾーンをいかにきれいに見せるかということも大切です。影のつき方で目鼻立ちが生きてきます。ほおの骨がしっかりしている方はメイクが映えるので、男性の方は骨格がしっかりしているのでメイクをすれば映えます。 芝居をするには冷静さも大切で、感情がきつすぎても、形ばっかりになってもダメで、リアルに見せるということが大切です。技術と気持ちのバランス、自分の感情と相手の感情を合わせるという協調性も求められます。悲しい場面では本当に泣いているように感情を導入しながらも、照明からはずれてはいないか、衣裳は大丈夫かということを冷静に判断しながら、見ている人に本当に泣いているとリアルに演じられるのがプロの役者だといえるのです。
すべてがうまくいった、すごくよかったというような芝居は年間に1本あるかないかぐらいですが、舞台の大きさにもよりますが、芝居をしている40人が集中して演じている時に、40人の気持ちが一瞬同じになるという奇跡のような一瞬があります。そういう瞬間を知ってしまうと、もう辞めることはできないということになってしまいます。志は高いが新劇は日本ではまだまだ理解されていないのが現状ですが、これだけの訓練をして初めて舞台に立って演じているのだということを理解していただきたいと思います。

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理想を言えば、サロン劇場のような物、小さな劇場で全部が見えるというぜいたくな芝居がしてみたいです。後ろからも見られているというか、100人ぐらいの観客で、360度から見られる芝居をやりたいですね。
今の日本では開演時間が6時とかで早すぎるということがあり、男の人が芝居とか映画の文化に接することがほとんどないというのが現状です。ぼちぼち東京の方で遅い時間から開演するということが始まっていますが、おとなが楽しめる時間帯に楽に演劇を楽しめるようになってほしいと思うのが私の理想なのです。

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神戸へのメッセージ

私の母の親戚はすべて神戸なのです。震災の時には母の持っていた家がつぶれたりしました。身近で亡くなった人はいませんでしたがちょうど芝居中で、終わるとすぐにバイクで水を運んだりしました。母の里が神戸にあるということで自分の中のひとつのバックボーンになっています。神戸はハイカラだと言われますが、大阪に住む私から見て、明らかに垢抜けている街だと感じます。大阪人の私にとってはオシャレなお姉さんというような街なのでこのイメ-ジを壊さないようにしてほしいなと思います。関西にもうひとつぐらいオシャレな街があってもいいんじゃあないという気がします。

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Profile

わかぎ ゑふさん<女優、演出家、エッセイスト>

わかぎ ゑふさん
<女優、演出家、エッセイスト>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1959年、大阪生まれ。劇団『リリパット・アーミー』の主宰者。中国の時代劇カンフーをシリーズに取り入れ、上演を続ける。脚本、演出などでは劇団外でも活躍。舞台を中心に、テレビ、ラジオなどにも活動を広げている。また、エッセイストとしても活躍し、月間20本以上のレギュラーエッセイは日本でもベストファイブに入ると言われる。近著に『男体動物』(講談社)、『ばかちらし』(大和出版)など。

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