神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。
<第1部>
まず、どうしてデザイナーをしているのかとか、生い立ちや、そしてどうしてデザイナーになれたかについて話したいと思います。僕は52歳です。横浜で生まれて3歳で東京に引っ越してきました。おしゃれが好きな理由に関係すると思いますが、10歳くらいの時にNHKの『バス通り裏』というTV番組の子役で出ていました。その他コマーシャル等にも出ていて、その時母は10歳下の妹にかかりきりだったので、何でもひとりで行動していました。テレビ局やロケに行く時の洋服も自分で買っていました。これがおしゃれに目覚めた理由だったと思います。NHKの『知恵の輪クラブ』というこども向けの番組に出ていた時は、毎週違う服を着るので、銀座で服を買っていました。
中学になってからは子役の仕事がなくなったので、当時ジャズが流行っていたので、ジャズ歌手になりたくてTV番組のジャズコンテストに出たら、週のチャンピオンになりました。その時審査員だったムッシュかまやつさんにジャズを習いたいと言ったら、うちの姪(森山 良子さん)と一緒に習いに来るかいと言われまして、ジャズを習い、大学に入ったころにはクラブでジャズを歌っていました。
大学を出るころにはそれも飽きまして、アイビールックの『VANジャケット』に、その会社の専属モデルだった友だちの紹介で入って、デザイン室の使い走りみたいなことをしてました。それがデザイナーになるきっかけということです。その会社ではいろいろなことを覚えました。デザイナーをされている方の99%は服飾のデザイナーになるための学校を出ていますけれども、私は大学の経済の経営を出てデザイナーをやっているわけです。
6年間『VANジャケット』にいまして、今度はテキスタイルデザイナーになり、鐘紡でシルク素材に柄を描いていました。それがきっかけでニットの柄を作るようになって、ニットデザイナーになり、それから日本が嫌になって20年前にフランスに行きました。
『VANジャケット』を辞めて、フリーのデザイナーになり、フランスに行ってスイスに近い田舎の学校に行って1日7時間フランス語の勉強を半年しました。パリに戻ってソルボンヌ大学の聴講生を1年やりまして、それから友だちの紹介で、日本の雑誌の仕事でフランスのファッションデザイナーにインタビューするという仕事をしていました。
あるデザイナーに着ているニットを褒められて、それが私のデザインだと言うと、うちに来ないかということで、その会社に入りました。その会社に入って1ヵ月くらいしたころ『エル』という雑誌のスタイリストに「ニットができるんだったら、エルのニットのページでデザイナーを探しているから編集長に会わないか」と言われて、ドキドキしながら日本で作った作品をバッグにたくさん積めて編集長に会いに行ったら、その場で話が決まってしまって、有頂天になるほどうれしかったです。と言うのは『エル』の最後の1ページにニットのページがあるんですが、私は日本でデザイナーをやっていたころから切り抜いてファイルにしていて、世界中の人が注目して見るこの雑誌に僕の名前と僕のニットが紹介されると思うと、とてもうれしかったのです。『エル』の仕事をする前とする後に自分自身は変わってないのに、突然引き合いがたくさんきました。パリに行ってから5年目くらいのことでした。
そんなころから急にツキが回って来て、一時は5社のデザイナーをしていました。いろいろやっているうちに、パリに住み初めて10年経ったころ、このままパリにいてもお城のような家は持てないし、潮時かなと思っている時『バーニーズ・ニューヨーク・ジャパン』が東京にできるというので、その専属デザイナーになることになって日本に帰って来ました。日本に帰って来て2~3ヵ月したころに、あなたの名前のブランドを作りませんかという話が来ました。後でメンズコレクションのビデオを見ていただきます。『アプレセイズ・TAKESI・YAJIMA』というブランドで、5年半になります。
メンズファッションのブランドですが、いろいろなことをしたくなって、今はレディースコレクションを始めまして、8月に初めてのショーをやります。その他『バーニーズ・ニューヨーク』のレディースのアクセサリーコレクションをやることになり、3冊目の25~30歳くらいの女性に向けた本を出すことが決まったり、前からやりたかったウェディングドレスのデザインをすることになって、ある野球選手夫婦の結婚衣装のデザインをすることになったりと、幅が広がって楽しく仕事をさせてもらっています。
パリに13年いて帰って来て、それからも毎年パリに行っていますが、パリの女性と日本の女性のファッションの違いについて話したいと思います。
パリの人は合わせるのがむずかしいから柄物を着ている人が少ないんです。ひとつのものをいろいろなふうに着れなくちゃ洋服じゃないと思うところがあって、パリのOLを見ていると、高級ブランドのものが欲しいけれど何もかも買えないので、パンをかじりながら昼休みにウィンドウショッピングをして品定めをして、セールのときに買って、せっかく買ったんだから何百倍にもして活用しなきゃ、と考えるわけです。
そのファッション哲学と生活哲学が日本人と違うなと感じます。とてもおしゃれに見える方のお家のクローゼットを見せてもらうと、日本の方よりも洋服が少ないんですね。柄物がいけないというわけでは決してないんですが、柄物や突飛な色だと、毎日出勤して行くのに「この前着ていた」とわかっちゃうから、それは洋服が少ないということの要因ですよね。限られた中でとても上手に組み合わせて、たくさん洋服を持っているように見せるわけです。日本の女性もそれをマスターしたら、たくさんお金が貯まるんじゃないかなと思いますね。
僕の家にはリビングにTVがありません。TVは大好きなのですが、TVがあると、リビングのイメージに合わないので置いてません。戸棚の中に小さなTVを置いていて、客が来る時は隠しています。そんなふうにファッションと生活の仕方には似通ったところがありまして、例えば部屋を見回しても、毎日使う物じゃないのがほとんどですよね。洋服も毎日着る物じゃないのがほとんどじゃないかなと思うんですよ。一度全部捨てちゃって、一からの買い物をすごく考えて今自分の持っている物と合う物だけを買うと、とてもすっきりします。インテリアでも部屋の中にお土産が飾ってあったりしますが、必要ないと思うんですよ。それから花瓶の下や食卓のテーブルに敷いてあるレースも嫌いですね。いらないものをもう一度考え直したら、すっきりかっこよく暮らせると思います。
電車に乗ると、マンとウーマンウォッチングをするのが大好きです。人を見て、この人から何を取り去ったらいいのかを考えるんですよ。日本人は、何を付けてあげればいいのかではなくて、何を取り去ったらいいかなんですよ。この人、イヤリング取っちゃえばどんなにかいいのにとか、この時計にこのブレスはないよねとか、このプリントになぜブローチを付けるの? とか(笑)。ひざの後ろがちょうちんみたいにしわになってたり、パンツの線が消えちゃってひざがピカピカしてたり、ああいうのは着ないで欲しいですね。それから靴下と靴。僕は靴下の色は、服の色か靴の色に合わせるのが基本だと思っているんですよ。靴も大人がお金をもらうときに履くものだから、安っぽい靴は履かないで欲しいと思いますね。形状記憶シャツも大嫌いです。最低100%コットンで、ぴしっとアイロンの当たっているシャツを着て欲しいです。
最近とあるバーで、独身のサラリーマンと話す機会がありました。僕がメンズ・デザイナーですと言ったら、矢島さんのスーツはいくらくらいですかと聞かれたので7~8万位ですと答えたら、ひどく驚かれたんですよ。僕は高過ぎて驚いたのか安過ぎて驚いたのかわからなかったのですが、高かったんですね。その人は3万円までのスーツを着ていると言われました。ファッションをやっている人は、洋服にお金を使うのに麻痺しているところがあって、どんなに高くても欲しいものならば買って、それがこやしになるんだと思っていたんですが、反省してしまいました。それでその人に、どういうお金の使い方をするんですか? と聞きましたら「旅行が好きなので、旅行に使います。夢は自然動物園みたいなところで動物の世話をしたいです」と言われて、その話をしている彼の目がとてもいい目をしてたんですよ。洋服のことよりも、大事なこともあるんだと教えられましたね。その時彼が「この時計、随分前に買ったものですけど大好きなんですよ。格好いいでしょう」と心から言って2~3千円の時計を見せたんですよ。その時僕は、そんなに高いものじゃないけど2千円では買えない時計をしていたので、恥ずかしくなってテーブルの上に出していた左腕がだんだんひざの上に行ってしまいました(笑)。大事なものってお金じゃないなと思いました。
パリの話をしますと、学校に行っていた時に友人が増えまして、女性の友人の家に行くと、必ずクローゼットの中を見せてもらいました。さっきも言いましたが、洋服は少ないんですね。でもスカーフの数には驚かされますね。それからアクセサリーも、高いものじゃなくて、プラスチックのブレスレットとかをビスケットの缶に山ほど持っているんですよ。日本人は、パールのネックレスを冠婚葬祭以外は大事に箱にしまっていると思いますが、フランス人は本当に合わないときでない限り、毎日のようにしている人もいます。Tシャツやトレーナーの上にパールのネックレスをしたりしています。パリジェンヌはアクセサリーの付け方が上手くて、格好よく見せちゃうんですよね。
スポーティーな物は日本人は下手だと思う。ショーを見に行くと、パリと日本の違いがはっきりわかります。日本人は手袋して触っているんじゃないかというような、ピカピカのブランドバックを大事そうに抱えて、全て満艦飾という感じです。パリのブランド店に来るお客さまはジーンズにTシャツでブランドのバッグも毎日使っているので、床の上に平気で置いてます。日本人は大事なものを宝石みたいに思っちゃって、あんまり使わないでしまっちゃうんだけど、それは違うんじゃないかなと思います。大好きな物は毎日人目にさらして、外の空気に触れさせてあげなきゃ、ブランドバックも寂しいんじゃないかと僕は思うんですよ。僕の知っている人でブランドバッグを23個持っている人がいます。そんなにいらないんじゃないかと思います。
裏目に出ちゃった一例なんですが、ある芸能人の奥さまが手芸が大好きな人で、どんなものにも何か手を加えてしまうんですよ。例えば世界的に有名なカシミヤのシンプルなニットを、何か寂しいから刺しゅうをしたくなっちゃうんです。そうすると、豪華なカシミヤの服ではなっちゃうんですよ。刺しゅうをしたら100倍おしゃれになるって言うんでしたらいいですけど、そうじゃなかったらやめた方がいいと思いますね。せっかくいいハンドバックを持っているのに、手提げ袋を持っている人も、やめたほうがいいと思います。
(ファッションショーのビデオ上映)
今年のビデオが用意できなかったので、去年のビデオなんですが、大体こんなことをやっているとわかってもらえると思います。
モデルは50~60人の中からオーディションで20人を選んでいます。年齢は20~40代です。大学のキャンパスをテーマに、学生と教授という感じでコーディネイトしました。どうですか? 変わった服が好きな方だったら、こんなの別にショーをやらなくてもいいんじゃないの? と思われるかもしれませんが、僕はあまり変わったものが好きじゃなくて、コーディネイトとか色合いで今年らしいものが出せたらいいなと心掛けているので、あまり変わった物は出てきません。今年の8月に行うレディースショーには、もっと女らしいものを出します。何かその辺に歩いている人がそのまま出てきちゃったみたいに見えるかもしれませんが、いつもそれが狙いなんです。別に特別な人に着てもらう洋服は作りたくないと思っているんで、普段着感覚でいいと思っています。いろいろなタイプのいろいろな年代の人が着てもさまになる服を心掛けてて、全部僕のブランドで固めるんじゃなくて、一着の服でいろいろな着こなしができるような、皆が今持っているワードローブの中にある服のどれにも合うような服であればいいと思っています。
僕は初めて神戸に来たんですけど、地震の時に建物が倒れたりしたのに復興が早くて、すごくきれいな街だし、大好きになりそうです。皆さまのファッションを見ていると、関西ってひとまとめにしちゃいけないなと思いました。
