神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「世界の川を旅する」



<第1部>

藤門さん:
こんにちは、藤門です。今日は野田さんとふたりで話をするということなんですけども、打ち合わせは何もしてないんです。いつも一緒にいるんで、今さら向かい合って話をするのもちょっとなんて言いながら……どうしますかね。

野田さん:
じゃ、スライド見ながらやろうか。

藤門さん:
今、野田さんとふたりで「世界の河を旅する」という企画をやってまして、野田さんの昔からの読者の人は知ってると思いますけども、野田さんは「日本の川を旅する」という本でデビューをされて、それからずっといろいろなことをやってこられて、僕はその弟子というか仲間というか、一緒に付きあってきているんです。そろそろ大きい仕事をやって欲しいというのが仲間でありまして、我々弟子たちで「世界の河を旅する」というのはどうだろうという話になって、雑誌で連載が始まっているんで、ぜひみなさま読んでください。
これまでに2回やっていまして、1回目がユーコン川、今出てる号がニュージーランドです。実際の取材はもう6回目までやってきて、実は明日からふたりでオーストラリアへ行くところなんです。スライドというのは、その1回目からこの前行ったタイまでの6回目までの写真があるんで、まずはそれを見てもらいます。

(スライド)
藤門さん:
これはアイスランドですね。アイスランドという国は、英語は皆しゃべるんですけども、言葉がまったく読めなくて。

野田さん:
うん。国といってもね、人口が26万くらいなんです。島はすべて輸入で維持しているんで、非常に物価が高かったですね。名前がちょっとすごいんで、名前にひかれて行ったんだけども、取材に非常に苦労しました。

(スライド)
藤門さん:
写真きれいですね。これはね、早起きしてレイキャビクからもっと先の方の海でね、この横の氷河の川に朝早起きして行った時にちょうどこんなふうに撮れました。これはスワンが泳いでいたんで、写真を撮りました。こういうふうに見るときれいで「わぁ、いいね」と僕が言っているのはいいんですけども、野田さんが原稿を書くとなると、いろいろな話を聞かなきゃいけないし大変です。我々の旅というのは、川を下るというのが半分で、残り半分はそこにいる人たちの暮らしぶりとか、その人たちの話を聞くとかいうのなんで、その半分があんまりない国でしたね。

p>(スライド)
藤門さん:
れは荒涼とした、この上が氷河で、下が海ですね。シェットランド島というのもそうですけど、ああいう島へ行くと必ず馬とか羊が独特の発展をするんですね。シェットランドだとシェットランド・ポニーとか、シェットランド・シープドッグとか、シェットランド犬、シェルティなんて犬もいるけども。アイスランドにはアイスランディックという羊がいて、この馬もたぶんそうだと思うんですね。寒いから毛が長い馬で、こう荒涼としたとこで生きている馬は、ある種感動的だった。

野田さん:
氷と火山ですね、ここは。あとは何もないんですよ。ちょっと小さな平地に人間が住んでいて、あとは活火山。

PHOTO

(スライド)
藤門さん:
これが氷河湖ですね。氷河が溶けて水が溜まって、下に急流で河が流れて海なんですね。氷河の中を野田さんが船で朝漕いで、これから川へ向かっていこうというところで。これが実にアイスランドですね。

野田さん:
写真はきれいだな。これ書き手としては、これ大変なのね。僕が好きなのはこの岸に緑があって、岸にきれいな女の人が50メートル置きに立っているとか、そういう川が好きなんだけども。誰もいないしね、話になんないのよ、これ。ただ漕いでいるというだけで「わぁ、きれい」と言ったらおしまいでしょ。

(スライド)
藤門さん:
これも羊がぼんやり霧の中にいるという。これもやっぱり毛が長い。僕、実はずっと羊を飼ってきたんで、羊に非常に関心があるんですけども。いいウールができるアイスランディック・セーターというのがありますね。こう起毛したセーターでアイスランディックというのがあるけど。セーター屋さんがあったりして、実際みんな編んでいるんですね、あの辺はどこでもそうです。アラン島の場合は独特の模様があって、海で亡くなっていた人がいると、そのセーターで身元がわかるなんていうことがあるくらいです。ちなみに水温何度くらいですか。

野田さん:
これ2、3度だったね。ちょっと指が痛いくらいの。カヌーがひっくり返ると1分以内に上がらないと死んでしまうね。だから絶対ひっくり返らないようにしなきゃいけない、こういうところは。ライフジャケットを着けても意味がないんですね。

藤門さん:
カヌーの事故では低体温症とかあるんですか。

野田さん:
これひっくり返るとも、まずハイポサーミア(低体温症)になるね。泳いだってしょうがないんだよね。

藤門さん:
みなさまが思うように、溺れて死ぬというのはあんまりないですね。たいがい僕らが行く所は冷たいんだけど、その冷たい水で体温が下がって死ぬというケースが多い。大河だと岸に近づけない。幅が1キロあるような河が流れている場合、真ん中で沈没すると岸まで500メートル行かなきゃならない。その間に気を失ってしまうのが多い。

野田さん:
まずね、1分経つとぼんやりしてくるのね。それから2分経つと何にもやる気しなくなる。それで死んでいくんだな。だからやっぱりなるべく南に住んだ方がいいですよ。

(スライド)
藤門さん:
野田さんちょっとカヌーの説明をしてくれますか?

野田さん:
これはね、2人艇なんですね。ふたり用です。僕の場合、長距離カヌーが多いんで、大きな船じゃないと荷物が乗せられない。ちょっと長すぎますね、写真としては。普通1人艇だとこれの5分の3くらいです。

藤門さん:
畳めるんですね。

野田さん:
そうそうファールト・ボートと言ってね、我々みたいな旅をしながらカヌーをやるというのは、自分で持っていくしかないんです。これだと折り畳めば、長さ1メートルくらいの袋に入るんですね。重量が30キロ。だから小型飛行機に積んで僻地に行けるわけです。これは日本製ですが、今まで日本でこういういい船がなかったんで、僕は外国製品を使っていました。だけど外国のは重いんですよ。40キロから50キロある。それを担いでいくと、自分のひとりの許容範囲を超えちゃうのね。昔は犬を連れていったんで、キャンプ道具と犬と50キロのカヌーというのはね、ひとりで行くのは大変でした。これ試作艇だから、作っている会社の社長が「これもしバラバラになったら死んじゃうよ」なんて言っていました。

藤門さん:
骨組みを作って、その外側にキャンバスで船体布という布をかぶせるんですね。その船体布の下側の方は薄いゴムが貼ってあって、水がつからないようになって、上はキャンバスのままなんですね。そういう船のことをドイツ語で「ファールトボート」と言います。

野田さん:
そうだね。「フォールディング・カヤック」って言うからね。

藤門さん:
英語だとフォールディング。畳める船で。ふたりで行く時、荷物を減らしたとはいえ100キロを超えるでしょう。たいがい飛行機に乗るときにもめるんですよね。お金を払えばちゃんと乗せてくれるんでしょうけども。明日もまた大荷物を担いで成田から行くんだけども、たいがい超過料金を請求されます。飛行機のチケットがまた買えちゃうくらい払わされるんです。

PHOTO

(スライド)
藤門さん:
アイスランドで非常にきれいなところです。すごいいいところだけども、なかなか人と接したり文化を調べたり、そういうことはしにくい国だったということですね。これはアイルランド。石の文化の国です。僕は前々からあこがれていて、一度行きたいと思っていた国だったんです。ここはやっぱりおもしろかったですね。

野田さん:
ヨーロッパ中、アメリカ中、欧米の人がみんな田舎を求めてここへ来るわけですね。緑しかないというような感じですから。昔からケルト文化が残っているので、石造りの橋やお城が残っています。木造建築じゃないから残っているわけですね。魚がよく釣れる。僕と藤門は釣りが好きなんで、釣りさえできれば文句ないのです。ブラウントラウト(サケ科)が釣れます。農業国で人間が都市の人もなんだか田舎っぽい。非常に僕には感じよかったな。

藤門さん:
それから彼らはケルト語も使うから。道の表記は全部英語の表記とケルト語の表記で、2段階表記になっていてね。機会があったらぜひ行かれるといい国ですね。

(スライド)
藤門さん:
これ田園風景なんですけどね。こういう感じの本当にいい感じの。

野田さん:
田舎に行くと、向こうは農家の人がみんなコテージを持っていましてね、日本で言う民宿です。一戸建てのコテージでも安いですよ。一戸5000円くらいで貸してくれます。そこでベッドルームが3つくらいあって。暖炉は泥炭(ピート)を燃やしていますね。泥炭を1ヵ月くらい乾かして、それを燃やしています。夏でもやっぱり雨が降ると寒いし。悪くなかったですね、暖炉に火を与えながらアイリッシュ・ウイスキー飲んでね。アイルランド人というのは「ドゥランクン・ライク・アイリッシュ」という「アイルランド人のように酔っ払って」という決まり文句があるんですよ。アイルランド人というのは昔から大酒飲みで有名なんです。夜は必ずパブに集まって、昼間も来ていますが、昼飯も食わせてくれます。そこでいろいろ話をするのはおもしろかったですね。アイルランドは安く旅行できますね。行くのは大変だけども。向こうに行ってしまえばね。

(スライド)
野田さん:
これはシャノン川の上流。なかなかね、アイルランドはよかったですよ。魚が釣れるというのが気に入ったね。日本にないんだけど、パーチとブラウンが釣れます。ミミズで釣っていいのね。先進国へ行くと、釣りは全部ルアーでなきゃだめだという規則があります。ミミズ釣りというのは、どん百姓釣りと言われて禁止されているんですけど、ここはミミズ売っているんですよ、釣具屋に。バケツにいっぱい入れて。僕はそういうのは非常に好意を感じたな。好感を持ったな。

藤門さん:
我々にここの川を旅するといいですよと紹介してくれた人がいて、そこへ行ったんですけどね。実は川遊びというのは、イギリス人もそうなんでしょうけど、独特な遊び方があるみたいで。住んでいる人たちがキャンピングカーに相当するような大きなボートをみんな持ってるんですね。その中で泊まれて、エンジンがついて、それで川をずっと遡っていって、キャンプしながら遡っていって、また下りてくるという、そういう川遊びがすごく発達しているんです。ですからその川遊びの中に僕らはカヌーを浮かべているんでちょっとバランスが違いましたね。

(スライド)
藤門さん:
これもシャノン川の上流で、めずらしく青空が見えたということですね。かなり上までは広いですね、川はね。

野田さん:
狭い川は全部運河でね、要するに歴史の古い国だから、もう奈良時代にはちゃんと運河ができていたんですね。昔は陸上交通というのは大変だったんで、むしろ船の方が便利であちこちに運河を掘っているんですね。そういう運河を利用して船遊び、大きなボートに乗ってひと夏、一家で暮らすんですね。そういう船着き場がたくさんあって、そこを上がると必ず日用雑貨が買える、酒も買えるというような感じでね。船旅はおもしろいんじゃないですかね、イギリス、アイルランド。それからスコットランドもそうです。昔からの運河がいっぱいあるんですよ。まだ現役で使われています。日本の場合、運河はほとんど全部埋めてしまいましたからね。

(スライド)
藤門さん:
川を下っていく時に、もちろん川を下るというのはひとつの目的なんだけども、その時にキャンプをする、魚を釣る、それから近くのお百姓さんやそのへんの人たちと話をします。川を下っていくことだけが目的じゃなくて、周りで起こるいろいろなできごと。例えば、動物に会うとか、鳥を見るとかそういうのがおもしろくて川旅をするんです。激流をジャバジャバ下って、ヘルメットかぶってといういわゆるウォータースポーツっぽいことよりも、野田さんがさっきから言ってるような歴史を調べるとか、その国の経済がどうなってるんだろうとか、インタビューしてみたりとかいうことをやるのがおもしろくって。

野田さん:
そうね。こういう道端で立っていると、必ずめずらしいわけですよね。かなり封鎖された社会なんで外国人というのは、よそ者はめずらしくて向こうから話しかけてくる。それでこっちも話して。それで非常にそれぞれいい印象、あたたかい印象が残っています。旅のおもしろさというのはそういう人の印象なんで。風景なんか、3日見れば飽きるでしょう。

(スライド)
藤門さん:
これでアイルランドが終わり。いきなり飛んじゃったんですけども、これフィジーという南太平洋の島なんですけど。ニューカレドニアとか、フィジーとか、トンガとか。メラネシアとかオーストラリアの西側、ニュージーランドの北側にフィジーという所があります。野田さんがフィジーへ行こうと言うんで、僕はフィジーなんて島に川があるのかと思っていたのですが、絶対大丈夫だと言われたので、だまされたつもりで行ったら結構いいところで。で、フィジーというのは人口どれくらいですか。100万くらい?

野田さん:
80万。

藤門さん:
半分がインド人なんですね。残り半分がフィジーの人という感じで。実はここにいる子たちは全部インド人ですね。小学校に行ったら先生が喜んで「何かしゃべってください」なんて言うから、野田さんはスピーチしてね。「現代の日本は……」なんて、講義をしてるんですね。歓迎してくれたね。

野田さん:
うん、飛び入りで講演ができるというのはいいね。実はアラスカとかカナダなんか行っても、僻地の学校から必ずちょっと話に来てくれと言われるんですよ。日本はそういうことさせませんね、絶対に。非常に学校が今硬直しているんで、日本はつまらないです。向こうはいきなり行ったのに校長から「とにかく何でもいいから話をしてくれ」と言われる。それはいい気分ですよ、日本を代表してしゃべっているわけだからね。

PHOTO

(スライド)
藤門さん:
これはですね、川下りをかなり北の方、島の中心部の山岳地帯から流れる川を下ったんですけども、その源流に近い方から下って、1日目の時にある村があって、その村でキャンプをしたんですね。もともとのフィジーの人たちはポリネシアの顔をした人たちです。人口的に言うとこの人たちが半分に、インド人が半分なんですけど。山の中でこうやって暮らしている人たちはもとからのフィジーの人たちで。村長が正式に迎えてくれたんで、僕らもスカートみたいなのをはきました。儀式があるんですよね。その儀式が終わった時の記念撮影ですね。

野田さん:
樺の木といって、コショウ科の木の根っこを水に溶かしたやつを、とにかくお互いに飲みあう。こっちが飲めば飲むほど、向こうが喜ぶ。泥水なんでちょっと躊躇しますが、やっぱり僕の顔を見てみんな試しているわけですね。「どのくらいこいつが我々の社会を認めているか」という感じです。だからあの時、10杯くらい飲んだのかな。するとみんな喜ぶわけです。「飲んだ、飲んだ」ってね。そういう掛け声とか、そういう決まってるんです。手を打って「ブーラー」と言ってね。

藤門さん:
ブーラーと言って手をバンとやるんですね。

野田さん:
みんながまた手を打って。そういう儀式が延々と続くんですよ。ちょっとしんどいんですが、それさえ儀式を通過すれば村の人に受け入れられるんですね。その後で村をずっと歩くと、必ず向こうから寄ってきて、名前を言って握手して自己紹介してね、ちゃんとしたものでした。そうしないと、100年前までは食べられちゃったんです。

藤門さん:
この人たちは人を食べた人たちでね。相手を殺すと食べるんです。

野田さん:
これ歴史上、世界史の中でいちばん野蛮で、荒っぽい文化を持った人たちですね。カンニバルナイフと言ってお土産用に売っている、4本詰めの木のおどろおどろしいフォークがあるのですが、日本人の人はそれをカーニバルのナイフと思って、お祭りのナイフと思ってみんな無邪気に買っていってますが、実はあれは食人用のナイフなんです。結構、日本の観光客多くてね、ただ海にしか行かないんでね、みんな。山の中へ入るというのはなかなか機会がないんで、向こうもまだ慣れてなくてね、そういうルートがないんで。
おもしろいですね。もう人を食ったりしませんが、藤門が「鹿児島の人はニワトリを刺し身で食うんだ」なんて言うとね、この間まだ人を食っていた連中が、うぇーなんて顔をして聞いてました。ますますいい気持ちになって、その隣の熊本では馬の刺し身を食うんだとね、向こうは「イートオスロー」なんて言うんで、馬は生きたままの馬に日本人がかぶりついて食っていると思ってるんですね。文化の違いなんてそういうものでしょうね。何て野蛮な人たちだろうと向こうは思ったでしょう、僕たちを。

(スライド)
藤門さん:
これ、こどもたちが乗ってるところ。かわいいでしょ。さっき野田さんがちらっと言った、フィジーというのは新婚旅行のメッカでね、日本人が行くんですが。隔離された海岸にリゾートを作ってあるんですよ。みんなフィジーに行っても何もふれないで、ただ砂浜で泳いで帰ってきちゃうんだけど、もしみなさんが行くことがあったら、内陸部に入って、この人たちと接することをぜひすすめたいですね。イギリスが植民地だったと思うんで、英語が一応みなさんわかるんで、こういうこどもたちとも話ができるんです。僕はすっかりファンになってね、また行こうかなと思ったりしています。

野田さん:
外国で人の顔の写真を撮るというのは、向こう側の映像権とか肖像権があるので非常にむずかしいですし、怒られます。ところがフィジーの場合は、カメラを構えるとみんながワッと寄ってきて、シャッターを押すと向こうからサンキューと言うんです。カメラマン天国ですね。カメラ向けるとどんどん寄ってくるんで撮りやすいですね。

(スライド)
藤門さん:
川というのは瀬が1級から6級までランキングづけされていて、6級というともうほとんど垂直の波が2メーター立ってるくらいです。もうほとんど行けない、谷に落っこちるみたいなのが6級ですね。1級というとほとんど少しの波で。これが2級から3級くらいですかね、この瀬で。
この時はかなり上流部がすごくてね、向こうの人は「ヘルメットをかぶれ、かぶれ」と言うんだけど、野田さんは果敢に突っ込んで、沈没したら撮ろうと思っていたんだけど、とうとう沈没しなかったですね。僕は撮影しなきゃならないんで、地元のアメリカ人のガイドが漕ぐゴムのボートみたいなのに乗って後ろにひっくり帰りながら、逆さまになりながら写真を撮りました。

野田さん:
カヌーというのはね、99%は平水で行きます、ゆっくり。こういう所はめったにないですね。ですからカヌーは女の人とかお年寄りなんかいいと思うんですがね。よくカヌースクールなんてやっていますが、あれは競技カヌー用のやつなんで、船もこういう船じゃないし、くるくる回ってつまらないですね。だからカヌーを売っている店でいろいろツアーに連れて行ってくれるプランがありますので、そういうのでカヌーを始めるといいんです。たくさん時間のある人なんかはいいですね。時間をかけて、1ヵ月か2ヵ月かけて外国の川を下る。日本の川でもできますが、日本の川はあまり楽しくないんで。

藤門さん:
ツーリングカヌーとスラロームカヌーというように分けたらいいんだろうけど、僕たちがやっているのはツーリングカヌーで、旅をするための道具です。これはたまたまあまり積んでないけど、普通は前に荷物をいっぱい積むんですね。テントとか、スリーピングバッグとか、食料を。野田さんはビールが下に敷き詰めてあったりするんですけどね。そういうものをいっぱいこの中に積んで下って、1日下ったら横にテントを張って、また翌日同じように川下ってと。たまにこういう白い瀬が出て来る。でもあんまりこういう所は僕らは好きじゃないよね。周りをゆっくり見ながら旅していくのが好きで。フィジーはすごくいい川でした。

野田さん:
フィジーは川の水温が25、26度あるからひっくり返ってもどうということないわけでね。ライフジャケット着ているし。川の石というのは、みんなつるつるしているんですよ。とんがった部分がなくてね、つるつるして苔が生えていますから、激突してもケガはないですね。あざができるくらいで。あと頭を腕で保護すればいいんで。こういう川というのは非常に安全なんです。気分的にも楽ですね。波をかぶっても冷たくない。アイスランドなんか波をちょっとかぶるだけで針で刺したように痛い。あれで全身浸かったら、ちょっと何にもできなくなると思うんですが。やっぱり南の川はいいですよ。

藤門さん:
フィジーは何度も行ったけど、びっくりするくらいいいところで、すごく好きになりましたね。

野田さん:
ときどき小さな集落に上がると、もうちゃんと彼らが土地の人と仲よくなってるから、土地の人が果物を持ってきてくれるのね。ああいうのも非常におもしろいですね。見たことないような果物を持ってきてくれて。

藤門さん:
こどもが馬に乗って積んできたよね。どこかの山走ってきて、積んで採ってきてくれたり。

野田さん:
ちょっと自分で動くのがいいんですね。これはたまたま僕はファールト・ボートを使ってますが、向こうの業者はゴムのカヌーですね。とんがったカヌー。僕と同じようなこのファールト・ボートと同じような格好をしたゴム製のやつがあります。それは非常に激突してもポンと跳ね返すんでね、時々ひっくり返りますが危険はないですね。あんなのに乗せてもらうといいです。初心者でもまぁ大丈夫でしょう。死にはしません。頭ぶつけてもどうってことないですから。そういうことをやってください。あんまり日本では危険というのをやらせないんでね。ちょっとでも危ないことは絶対やらせてもらえないから。ときどき外国へ行ったら、冒険らしいことをやるといいですよ。こういうので外国の、そこに居ついてしまう日本人が最近増えましたね。特に青年たちは、こういうところで初めてなんかこう、何かを発見するんでしょう。日本では小さいころから勉強以外は全部禁止されてるでしょう、ありとあらゆることが。だからそれで初めて自己発見みたいなことをして。いい青年がどんどん向こうへ流出していますね。外国、ニュージーランドとか、フィジーとか。ちょっと残念だけどもね、あれいいことだと思いますよ。

(スライド)
藤門さん:
以上がフィジーですね。フィジーの南にある、飛行機で3時間くらい行くとニュージーランドがあります。その北島にある中心部に流れてるランギティティという川があるんですけども、ここは僕らの定番の場所でしてね、何十回と行っている場所です。

(スライド)
藤門さん:
羊ですね。僕の好きな羊です。川の両側はこういう感じでね。これを指して大自然というのは、これは旅行者の嘘八百。これは確かに大自然だけども、ここは本来ネイティブの木が山ほどあってうっそうとした森に、その中にマウリの人たちが細々と暮らした所を、イギリス人がとにかく木を切るだけ切って、牧草を植えて羊を放したんですね。川にはウナギとかしかいなかったところにマスを放して、鹿を放して鹿のハンティングをやって、あらゆるものを全部入れて作った国ね。だからニュージーランドはいいんだけども、旅行者的に大自然をなんとかと言われると、僕らはちょっとシラケちゃうんでね。こういう動物が入ってくると、本来いた鳥たちとかが、もちろん追いやられるわけですね。いろいろな者が絶滅していくんですよ。とは言え人口300万ですから、日本の7割の面積に人口が300万人ですからスカスカなわけですね。スカスカな分だけ、多分人々は人間的でという感じはしますけどね。

PHOTO

野田さん:
うん。スリより重罪の人はみんな死刑だったんです。あのころのイギリスはなんでも死刑だったんです。軽犯罪の売春婦と窃盗犯だけをオーストラリアに送ったんですよ。ニュージーランドの場合は入植者を入れて、南海に白人のための天国を作ろうという意図で作った国なんで、まさにその通りだったです。
それからいちばん進んだ国ですね。国を民営にした国というふうに。行政改革やったんですよ、ものすごい。鉄道や電話会社も全部民営にしてしまいまして、国会議員、お役人の数を半分以下にしたんですね。赤字だったのを今黒字になってて、なんか国が生き生きしていますね。日本からもよく代議士が行革のなんか参考によく行っていますが、非常に民度の高い国です。
日本で今いちばん新婚旅行へ行きたがる国になっているんでしょう。確かに当然だと思うのね。みんなほとんど英語がしゃべれない日本人にも非常にやさしいし、あんまり悪い印象持った人いないんじゃないかな。それに害獣がないでしょう。この間まで蚊すらいなかったですね。30年前まで蚊がいなかったですよ。30年前にこの国に行くと、飛行機でニュージーランドの空港に降りると、いきなり噴霧器をかけられたんですね。虫をそこで殺すというんで、頭の上からザーと座ったままスプレーかけられました。それでもやっぱり蚊が入ってきて、ある場所にはちょっと蚊が発生していますけども。そのくらい蚊がいなかったんですね。害獣、害虫、何もなかった。だからここは天国なんですよね。

藤門さん:
キャンプしていて安心なのよね、クマとか毒ヘビとか、そういうのがいないから。薮に入っていってなんかに噛まれるということがないから、気が楽ですね。オーストラリアへ行くとヘビやワニがいるでしょ。普通は何かいるんだけど、ここは何もいないんですよね。ところがそういう何も獣がいないから、鳥たちが飛ばないで歩いていたんですよ。そこに猫なんか持ってくるものだから、いっぺんでね、やられちゃうということはあって。この川にダムを作ろうとしたのは反対したという話もね。

野田さん:
そうそう簡単に止まるのね、こういうちゃんとした国だと。数十人の人が反対して、政府が言うことを聞く。だから普通の市民ひとりと国家が対等なのね。日本の場合は何千万人が反対してもダムを作ってしまうでしょう。向こうは何十人とか、市民の声が強いんで、権利が非常に強いから。

(スライド)
藤門さん:
れニュージーランドで2番目に大きいトゥートラの木ということで、ステファンとかという、なんかね、川沿いで釣りのガイドやっている人がいるというから、ちょっと行ってみたら非常にいい男でね。で、泊まったんですね、彼の家へね。それで、そしたら木を見に行かないかと言って、結構でかい木でしたよ。

野田さん:
これね、トゥートラの木と言ってね、ニュージーランド古来の木なんですね。みんな切られたんで、あんまり残ってないんです。あんまり大きいんでこれを切るノコがなくて、それで残ったと言うんだけど。

(スライド)
藤門さん:
ニュージーランドが以上ですね。今までは去年やった、先に先行取材しているんですけどね。今年に入ってから2月にタイですね。初めてのアジアへ行って、タイの川を下ろうというんで、メナム川、チャオヤプラ川ですか。メナムというのは川という意味なんですね。だからメナム川というのはおかしくて、川川になっちゃうんだけど。その日本で言うところのメナム川の上流がふたつに大きく分かれていまして。その左側の上流がピン川と言いまして、そのピン川はチェンマイと言うところへ行くんですが、そのチェンマイから下へ下った時のあれです。これは朝もやで大きな川ですけども、人々は水と一緒に暮らしているんですね。こういう水辺に家が全部出ていて。いきなりお風呂かなんか入っている感じの人の所にワッと入っていくから、ドキッとするんで、みんなびっくりしましたけどね。そこを行く野田さんです。よかったですね。

野田さん:
柳川ってあるでしょう。あそこよりもう少し水に接近した生活ですね。川の上に杭を打って、その上に板を張って。だから彼らが寝ている下を僕が通ったりする。視線が会うと、みんな酒とか食い物をすぐ出してくれてね。もらいが大きいです。しかも日本人だからやっぱりめずらしがられる。ちょっとタイ語をやっていけば非常におもしろいらしいですね。今、僕の友だちがタイ語を2、3年勉強して、ひとりで暮らしてますけどね。やっぱり全然違うらしいですよ。外国人がタイ語をしゃべりながら下るというのは。ただこういう水辺の国というのは主食が、ナマズ類が多いんですね。台湾ドジョウとか。いきなりナマズが一匹そのままドンと出てきます、皿の上に。頭からしっぽまでついたやつ。

(スライド)
藤門さん:
これね、象なんですね、さっきの川の最上流ですね。ちょっとね、野田さんが乗ってるのかな。野田さんにね、カヌーを象に乗っけて運ぶというのをやってくれというんで、いろいろやったけど象はやっぱり嫌がるんですね。カヌーは大きいものですから、後ずさりして。これに乗ってます。

野田さん:
そうね。僕はアフリカ象に会ったことあるんですけどね、アフリカで。あれは荒っぽくてとても近づけないんだけど、インド象は非常におとなしいですね。頭の上に飛び乗ってもどうってことないんで。ただカヌーをね、乗せようとすると大きな物は嫌がってね、後ろに下がっていきましたけども。これ川下っていると前方に象が水浴びしているという、ちょっと感動的ですね。あと街を、時々街とか道をずっと象が向こうから歩いて散歩してますね。そういうのも非常に感動的でね。

藤門さん:
馬みたいに使ってるんですね、象をね。盗伐、山の木を切っちゃいけないところを切ったりするんだけども、象がその仕事をするんですね。丸太をこう持って下ろすという。

(スライド)
藤門さん:
これはね、小学校に乱入したんじゃなくてですね、これはお祭りに、山岳民族のお祭りで観光客用じゃなくてね。高地へ行くのが大変でしたね。すさまじい山の奥でね。車で行ったんですけどね。延々4時間くらい行って、そしたらお祭りをやっていて。写真だとおもしろくないんですけど、実際には音楽があってかなり民族衣装の晴れの着を着てやっていて、おもしろそうでしたよ。

野田さん:
お祭りなんで、よその人が来るとご馳走出すんですね。それ食べようとすると「それ食べちゃだめ」と言われました。現地の人じゃないと1ヵ月くらい下痢すると言ってましたね。

藤門さん:
寄生虫とかね、いろいろな細菌があって、水も危ないし、気をつけないと。

野田さん:
向こうも食い物を出すのがいちばんの振る舞いだから、それを食べないというのはちょっと問題なんだけど。ちょっとそれがつらいな、東南アジアは。

(スライド)
藤門さん:
僕はユーコン川というのが大好きなんですね。そのユーコン川に一緒に行くツアーというのを、やったらどうだろうという話があったんです。ところが「世界の河を旅する」のスケジュールがすごく混んでましてね、この後。ちょっとユーコンが無理になっちゃったんで、今年は見送りということに結論なっちゃったんですけども。それで最後にユーコンのスライドをやろうということで用意してたんで、ツアーは中止になりましたけど、スライドの続きでカナダからアラスカに流れる大河、ユーコンのスライドをちょっとだけ見てもらおうと思います。

(スライド)
野田さん:
ユーコンは3千キロあるんですね。3千キロというとピンとこないと思いますが、僕はユーコンを上から下まで下った時、6ヵ月かかったんですよ。1年で下れないんで。というのはユーコン川は夏の間3ヵ月しか解氷が流れてないんですね。後は凍ってます。で、6、7、8月。9、10月は氷雨と雪が降ってだめなんで。10月にはもう凍る。だから6、7、8の3ヵ月ですね。僕は毎年2ヵ月ずつ、3夏かけたんですけれどね、そのくらい長いんです。
みんなを連れていこうなんて言ったのは、いちばんいい所ですね、しんどい所とかつまらない所は省いた、支流にテスリン川というのがありまして、そのテスリン川から入ってユーコンの本流に出て、両方のおもしろい所だけをピックアップしたルートなんですね。これは非常に初心者向きのコースです。ただクマが出るので、僕とか藤門が行く場合は銃をいっぱい持っていって、銃武装していって。それからみんなにも撃たせたりします。あと釣りも、もう嫌になるくらい魚が釣れます。それ用のツアーというのをね、今年はちょっと無理なんで、来年以降やりましょう。

(スライド)
野田さん:
こっちは冷たいビールを出すくらい持ってますんで、人が来るともてなすんですね。ユーコンみたいなところでビールを飲むというのは、非常にぜいたくなんで、みんな離れられなくなる。

藤門さん:
これは朝早く、寒くなってくると気温がもう0度に近づいてるんですね、9月の初めくらいですけどね。それで朝霧が川にさしてきて。荷物はあそこに全部積んであるんですね、テントとか、スリーピングバッグとか、食料とか。 両方全部スプルスね、日本語でいうとトウヒですね、スプルスの森が延々と続くんですね。中にトイレへ行こうなんて中に入ったりするとよく迷うんですね。獣道がこうあるんでね、戻ってこれなくなるというんで死ぬ人もいる。

(スライド)
藤門さん:
これはドーソンですね。

野田さん:
ジャック・ロンドンの小説によく出て来るでしょう。ユーコン川に最初にできたゴールドラッシュの街ですね、ドーソン。当時3万人くらいたんですが、今2千人くらいになってて。

藤門さん:
当時のカジノが残っててね。それはおもしろいですね。要するにゴールドラッシュですから、金の鉱山へみんなワッて来て当てたりするわけですね。それでギャンブルをやったり。いちばん楽しいのはフレンチカンカンをやってるんですね、ここで。今でもやってるんですよ。あれおもしろいね。

野田さん:
あれ俺、20年前見た時、ものすごい下手くそだったのね。最近すごく上手くなってね、つまんないね。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
世界中の川を旅をされていますが、どの国のどの川が一番よかったですか。またモンゴルの川には行かれたことがあるのでしょうか?

野田さん:
ベストワンを選ぶのはむずかしいですね。ベストファイブとか、ベストテンだったら選べるんですよ。例えばユーコン。ユーコンと言うのは何回行っても飽きないんで、僕はもう20年毎年行ってますが。あとはニュージーランドもいいですね。ユーコンは荒々しくて、人がいなくていい。それからニュージーランドは人がやさしくて、自然もやさしくていい。あとカナダ、アラスカですかね。
モンゴルは昔、まだ共産圏の時に行ったことがあって、あそこは僕、最初にカヌーを持ち込んだんですが、今あそこに観光ルートができてますね。10日間くらいの。まだやってるかな、あれは。非常に共産圏でつまらなかったんですが。お役人が共産圏というのは、車一台借りるのに2週間かかったりして。今は自由圏だから、少しお金を出せばなんかやってくれるんじゃないかと思って、今年の7月、藤門と今度、きっちりやりたいと思って行くんですがね。あそこは釣りをしない国なんで、魚が非常に多いですね、川に。それも楽しみなんだけど。ちょっと現地に行くまで大草原を行かなきゃいけないんで、あれが問題ですね。車で行くんですが、草原を行くんでね、座っている時間より空中に飛び上がっている時間の方が多いですね。20時間くらいかけて行くんですが、ほとんど飛び上がってます、ピョンピョン。ちょっとしんどいんですけどね。そういうことです。

お客さま:
日本の川はつまらないとは思いますが、あえてあげるとするならば、どこの川が楽しいですか。また日本でカヌーをするなら、今はどこの川がいいでしょうか?

野田さん:
それは北海道だね。北海道の川というのは釣師がいないんですよ。だから夏行って、北海道の川、十勝川、釧路川がいいですね。いいというより残ってないです、それしか。釧路川も今、何十ヵ所で河川工事してますから、早く行った方がいい。直線コースになります、もうすぐ。20年前に釧路川へ行った時は非常に感動しましたがね。北海道の大自然が残ってて。もうあれから毎年、建設省が手を入れてますから。かなり悪いんですが、内地の川に比べたらいい。あと四国の川が穴場です。四万十川、吉野川。ここは近いからやるといいですね。四万十川は貸しカヌー屋があるんで、そこでカヌーを持っていかなくても、初心者コースで流してくれます。吉野川というのは第十堰あたりから下ると、非常に物を考えながら下ることができるんでね。ひとつは河原が非常に広いから、どこでキャンプしても文句言われません。広い空間、あれだけの空間は西日本の川でないですね。広い河原があります。

藤門さん:
ちょっとね、日本では今ね、俺たちは遊び人なんだけど、実は社会運動家みたいになっててね、要するに建設省がこの国を壊しているのに対して闘ってるんですよね。本来は遊び人で、川下ってお酒飲んで「おもしろいね」って言ってるだけのはずだったのが、今やもうあっちの川ではこれがあり、こっちの川ではこれがありといって、飛び回って要するに反対運動ばっかりやってるというのが状況なんですよ。日本の自然というのは世界一素晴らしい国だと僕は思ってる。日本一周を犬と一緒にしたんですけどね。日本は素晴らしい国だ、日本人さえいなければという結論で。みなさん本当は自分の場でそれぞれ闘わなきゃいけないというふうに思ってますけどね。それぞれの川について、あそこにはああいう問題が今起きてて、それについてこうスーパー林道がついてるとか、護岸工事を全部やるとか。本当にひどいですよ。このきれいな国土を壊している。あんまり日本の川の話はしたくないという感じですね。

お客さま:
最近はカヌーの旅にガクのこどものテツとかは連れていかないのですか。私は最近、西表島で始めてカヌーをしましたが、西表島をおふたりはどう思われますか?

野田さん:
ガクはもう死んだんでね、ちょっとテツとか二代目の犬がいますが、あまりできがよくないんですよ。それぞれかわいいんですが、ガクほどできがよくないから手間がかかるんですね。ガクの場合はほとんど面倒をみなくてすんだんですよね。それともうひとつ、僕はもう昔ほど若くないんで、面倒くさくなってるんですね、犬を連れていくとすごく労力がいるので。ガクは考えてみたら、8回外国へ、ユーコンへ連れて行ってるんですよ。非常にできた犬で、自分で情勢判断して勝手に遊んでくれてましたから。こっちも勝手に遊んでました、テント張って。今度こどもを連れていくと、まずテツの場合はまだ急流なんかに突っ込むと怖がって逃げてしまう。それからタロウという犬はあんまり繊細さがなくて体育会系の犬で、それはそれでかわいいんだけども。あんまり連れていかないですね、外国へは。日本の川へちょっと連れていってますが。最近は乗せないで後ろからもう勝手についてこいって、僕はどんどん下っていくんですよ。彼らはどんどん川を泳いで下ってます。浅い所は岸を走るんですね、岸に上がって。で、追っかけて僕を追い越していく。深くなったらまた泳いでますけども。そんなんで30キロ、40キロね、下りますよ。だからカヌー犬にはならなかったですね。水泳犬になりました。ただ今、僕がいる所は鹿児島で、人がいないんでそういうことができるわけです。こっちではそういうことできないでしょうね。西表島はこの間行きましたが、アマゾンみたいな川ですよね。ただ暖かいというだけでみんな感動していますが、あそこの自然もちょっと一歩中へ入るとこっちより、内地よりもっとひどく自然破壊されてますね。非常に悲しい。現地の人には「ちょっとがんばれよ」なんて言っているんだけど。こっち側が応援に行かなくてもがんばってほしいんだけれどね。
あそこも山、川、全部、あと10年したらだめになるでしょう。雨が降るたびに山から赤土が流れ出て、海の周り、島の周り、全部真っ赤になりますね。今はそういうふうに土建でしか経済が潤わない、動かないというふうになってしまっている。そういう仕組みを建設省が作ったんですね。だから沖縄、奄美大島、西表なんかもっとひどいです。あそこは人目につかないからどんどんやっちゃうんですね。本当は台湾より南にあってね、あれはあれでおもしろいんですよ。こんなおもしろい国ないと思うんですね。藤門のとこへ行くと、北海道でまだ雪の中なのに、向こうへ行くと、沖縄まで行くともう泳げる。素晴らしい自然なのに、行くたびに何か壊されているという非常につらいですね。

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むしろ四国の川がおもしろいですね。どうしておもしろいかと言うと、四国は植林しなかったんですね。杉の木になってない。雑木林が残っている。ということは、流れ出す水が非常にきれいな水が多くて、だから四万十川もそのひとつですね。吉野川も本当はそうなんです。あそこはダムがあるから汚いんですが。あそこもうひとつ那珂川ってありますが、ものすごくきれいですよ、ブルーです。コバルトブルー。その上流に木頭村という村があって、2000人の村ですが、建設省を蹴飛ばしたんですね。建設省もあきらめてダム作るのをやめました。あれが建設省に勝った日本で最初の村だったですね。徳島というのはおもしろいとこですよ。今年、僕4月から徳島の県民になりました。なので、吉野川でイベントをやります。あそこ広い河原があるんでテント張れますしね。それからまだ川がきれいだから、エビとかカニがいっぱい獲れます。カヌーもやれるしね。それから海がきれいですね。要するにそんな自然が残っているというのは、人間がいないからなんですよ。人間がいないというのは、住めないんですね。若い人は仕事がない。だからたまたまそうなんであって、本当は別に自慢するようなことじゃないんだけどお金がある人は暇があったら徳島に来て自然を残す支援してください。いろいろイベントやるんでね。

お客さま:
カヌーをされていていちばん好きな瞬間はありますか。またきびしい自然やさまざまな状況の中で、自分を保つために行うということはありますか。例えばこのもの、例えばこういう道具だけは持っていくとか。うまいビール以外に。

野田さん:
いちばん好きな瞬間というのはね、僕の場合は焚き火の前で酒飲む時なんだけど。実は朝、早朝起きてコーヒー飲むというのはいいですね。朝霧がずっとかかって、10メートルくらいしか視界がないんですが、多摩川みたいな川でも朝というのは神聖なものでね、神聖な風景がありますよ。川下る時はやっぱり早く起きた方がおもしろいと思うんでけどね。水鳥がずっと川で泳いだり、魚獲ったり。それから水浴びしていますね、小さな鳥も。ああいうのを目の前で見ながら朝コーヒーを飲む、それから本を読む。いつも酔っ払っているばっかりじゃないんですよ。藤門はあんまり酒を飲まないんで、コーヒーをずっと飲んでね、魚釣って、時々ハーモニカも吹いているんだよね。

藤門さん:
野田さんは早起きなんだよね。早く寝ちゃうんだけど。みんなが起きる前にひとりだけ起きていてね、僕ら起きると遅い、遅いといつも怒っている。瞬間というのは、その時のシチュエーションだからさ、つまり夕方がいい時もあるし、昼間がいいこともあるし。荒野の中に自分がいるということが。
ユーコンへ行くといいんだよね。突然なんだけどもさ、ここにいるほとんどの人誰でも行けるのね、技術的とか体力的な問題で言えば。伝えようないところがあってね、野田さんは文字で伝えるし、僕は最近写真を撮るんだけどね。あの空気というのは、どうにも説明がしようのない、ある種の風みたいなのがあって、そこに自分がいる瞬間というのは、全部これまとめて感動でね。日本のアウトドアってせこいわけですよ。アウトドア雑誌とか、特にちまちましているわけ。ちょこちょこいろいろ物を買ってきたりして。ああいうんじゃないんだよね、アウトドアっていうのは。一回あの空気を吸うとそれで3年はもつという。いいんですよ、ちょこちょこ川なんかいかなくても。その空気を自分の中で、浄化されちゃって、3年間くらいもつんですね。2週間の旅をすることによって、それから3年生きていけるみたいな感じがあるような気が僕はしてます。

フェリシモ:
ありがとうございました。ちなみに、絶対このカヌーで旅をする、川で旅をする時に、この道具だけは持っていくみたいな物は、おふたり何かおありなんでしょうか。

野田さん:
ないですね、そういうものは。ないけども、僕と藤門の場合は一日中本を読んでいますね、暇な時は。だから本はとにかく10冊以上は持っていく。向こうではあんまり人に会わないんで、本の交換ができない。会った場合は本交換しますけどね、本がいちばん大切ね。あとはなんとかなるんですよ。例えばカタログを読みすぎると道具いっぱいそろえますが、ユーコン下っていってね、ドイツの青年と会った時、何も持ってなかったですよ。牛乳パックとソーセージ10本くらい。それからパンを一山ね。確かにそれで食っていけるわけですよ、生きていける。あとは水を飲めばいいでしょ。だから本当はキャンプ道具なんかいらないんですね。あとインディアンに会ったら、腹減ったと言えばいいんです。物をもらうのは、技術いりますから、少し磨いておいた方がいいですよ。カヌーの技術よりそっちの技術の方が役に立つと思うね。卑屈にならずに威張ってもらってやる。あとはあまりペコペコしないこと。そのくらいだね。

お客さま:
おふたりともとても仲がいい感じがしますし、他にもたくさん親しいご友人がおられると思いますが、もめたりすることはないのですか? 友人と深く長く付き合う秘訣はありますか?

野田さん:
それはないですね。しょっちゅうもめていますよ。もめる原因なんてのはね、僕のおかずを藤門が食べたりすると怒ってもめたり。

藤門さん:
そう若くないんでね、僕は。いいや、歳なんか言ってもしょうがないけど。わかっているんでね、野田さんと少なくとも僕との間のことで言うと、野田さんが嫌なことと好きなことというのはわかってるし、野田さんは僕が嫌だったり喜んだりするところがわかってて、合ってる部分、つまり意見が一致する部分と、ずれる部分が両側にあってね、それがわかりあっていて、長い間続いてれば、だいたい呼吸が合ってくるんでね。そんなに僕は多くないですね。深く付き合ってる人間が多いわけじゃないですね。野田さんは交友が非常に広いけども。

野田さん:
秘訣とか、コツとか、よく聞かれるんですね。「カヌーのうまくなる秘訣を教えてください」とか。カヌーがうまくなる秘訣があったら僕が知りたいですよ。まだひっくり返るんでね。僕は日本でいちばん古く長くカヌーを漕いでいる男だと思うんだけども、まだひっくり返りますよ。前にっていた犬はしょっちゅう僕と一緒にひっくり返ったんで。彼はそういった不条理を非常に理解している犬でした。幸福の絶頂からいきなり投げ出されてね。彼のせいじゃなく、全部僕が悪いんだけども。やれやれというような顔をして、一緒にずっと流されて。船が川でひっくり返った場合、そのまま人間だけが流れ着くわけにはいかんのね、僕は単独行だから。船をこうしたままかかえて岸に行かなきゃいけない。船の中に水が入っているから、何百キロという。なかなか行かないんですよ、ずっと押しながら泳いでいく。下の方に滝があるから急いで行かなきゃいけない。だけどなかなか岸にいかないのね。そういう時でもガクという犬はできた犬で、ちゃんと僕についていましたね。そういう時に限って雨が降ったりするのね、雨が降りだしたりするの、豪雨が。かなりシビアな状況の時に、犬がいるというだけでもかなり救われる場面があってね。それに比べるとガクの息子たちは、さっさと僕を捨てて逃げていくんで。許せないね。

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神戸へのメッセージ

藤門さん:
いいところですね。僕は実は勝手に言わせてもらっちゃうんですが、アリスファームという牧場を北海道でやっていまして、女の人たちが元気で、物作りをしてて、農場でできたものを加工してジャムにしたりしています。羊でセーターを作ったりとか、それでできたものを実はフェリシモさんで売ってもらってまして、カタログにアリスファームのページがありますので、ぜひよろしくお願いします。

野田さん:
神戸はあんまり来たことないんですよ、僕。川がないし。これから近くなるんで、少し縁ができるのかな。

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Profile

野田 知佑(のだ ともすけ)さん<エッセイスト>・藤門 弘(ふじかど ひろし)さん<アリスファーム代表/エッセイスト>

野田 知佑(のだ ともすけ)さん
<エッセイスト>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1938年生まれ。早稲田大学文学部英文学科卒。在学中、ボート部で活躍。卒業後ヨーロッパを放浪。帰国後、高校の英語教師、旅行雑誌の記者を経て、エッセイストに。かたわら、カヌーによる川旅に打ち込む。これまで日本の一、二級河川約200を漕破。さらに北米、ニュージーランド、ヨーロッパにまで広げている。著書に『川遊びカヌー』『日本の川を旅する カヌー単独行』『魚眼漫遊大雑記』『のんびり行こうぜ』『北極海へ』『少年記』など。


藤門 弘(ふじかど ひろし)さん
<アリスファーム代表/エッセイスト>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1946年生まれ。少年期から野球、ラグビーを得意とし、大学時代は山岳部に所属しスポーツマン。1973年にヒマラヤ遠征隊に参加し、カンバチェン峰7902mに登る。ヒマラヤ遠征の後、シルクロードからヨーロッパ方面に長い放浪の旅をして帰国後、飛騨山中で田園生活を始める。田舎ぐらしブームの先駆者と目され、注目を集める。専門の家具作りでは、シェーカー家具の研究と復元をテーマとし、パートナーの宇土 巻子さんとつくる「アリスファーム」は「高度の自給自足」をテーマに衣食住の総合的なモノづくりを目指している。

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その他のゲスト

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