神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「生活はアート」



<第1部>

よろしくお願いします。来てくださってありがとうございます。まず最初はビデオから始めます。そのビデオはプロのビデオじゃなくて、ちょっとメモ帳のような感じの作品です。言葉でメッセージを伝えても、むずかしくなるかもしれないので、ビデオでちょっと私の頭の中にどういうことがあるか見せたかったのです。
私にはいろいろな肩書きがあります。ひとつは料理研究家という肩書きです。『フランス料理ABC』という本も出しました。もうひとつはいろいろな空間を出すライフプロデューサー。そして料理を作るからシェフという肩書きもあります。
でもまず私のいちばんシンプルな肩書きは人間です。フランスの16世紀でユマニストという人間が人間のために考えるというフィロソフィーがありました。だから料理でも、エッセイでも、レストランのマネージメントでも、会社のマネージメントでも、何でも私の道は一本です。それはパトリス ジュリアンの道。
皆さんそれぞれ道を持っています。みんなオリジナリティを持っています。この部屋の中にいる人間でまったく同じ人はいません。みんなオリジナル、まったくユニークです。ファッションやトレンドなどの時代の流れはグローバルになります。いい意味でグローバルになるんじゃなくて、普通になります。
今どこでもハンバーガー屋さんはあります。東京、パリ、ニューヨーク、北京、どこでも味は一緒。フィロソフィーが一緒。飲み物も一緒。ライフスタイルが一緒。その中で人間らしさ、そのユニークさがどこにいくかということです。
私から「こんな雑貨があったらいいな、こんなパステルカラーを使ったらいいな。お友だちが家に来ると、こんな感じにしたらしあわせよ」っていう話は簡単にすることができます。でもそれは今、私にとってちょっと軽すぎです。
いちばん大事な言葉はライフです。スタイルという言葉だけでは、生きていることにならない。ライフがないとスタイルは生まれない。このビデオはライフの深いところから始まります。これを見てもらってからビデオコメントします。
でも本当に、今日は一緒に深く考えて欲しい。まずはね、しあわせのことじゃなくて、人生のことを話します。人生はリゾートじゃなくて、学校です。学校には、いい時間も苦しい時間もある。すごく大事な時間があるんです。人生は学校だと思ったら間違いないです。

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私の会社には若い人が多いんです。25歳とか、23歳の人。彼らはジュリアンのところはすごく楽しそうだから一緒に仕事をしたいと来ます。しあわせになるかもしれないと思って来ます。でも急に歯ごたえが出てくると「あ、これはしあわせじゃない。やめまよう」となってしまう。だから本当にしあわせを探すと、いつもなんでもやめるんだと思います。だからそういう人はしあわせよりは、ただ毎日の生活の楽しみを探したほうがいいと思います。

(ビデオ映写開始)

まずビデオ映像の最初の部分のアパートはご近所で撮りました。毎日買い物に行くときは、こんな世界を撮ってます。毎日毎日6年間、周りを見てます。おもしろいのは東京だけじゃありません。ハードウェアじゃなくて、ソフトウェアになります。(東京は)本当に消して建ってる、消して建ってる。イレイズ→プリント→イレイズ→プリントという感じです。
映像のふたつ目は、恵比寿で小さい建物を借りてリフォームしたものです。その建物は一階はカフェを作って、二階、三階が住まいです。インテリアは私たちの住まいです。そういうところでそれをやるという意味を、今日ちょっと説明します。
最初のタイトルは「生活はアート」というタイトルです。動物の状態から人間の状態になる、その違いのひとつはアートです。アートは生活のためじゃなくて、プラスアルファを作るためのものです。
でも最初のアートはどこの国でもスピリチュアルです。最初のアートはヨーロッパで教会の形やキリストのイメージ、あとはアジアで仏陀のイメージとか、そういうところにありました。
人間は動物の状態から人間の状態に入って、スピリチュアルなことに入ります。だから生活がアートということは、生活の中のアートは何でしょうということ。アートライフは何でしょう。今日はその話をします。



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ひとつシンプルなエピソードを紹介しましょう。私たちのレストランでデザートを盛りつける時は、飾り物で会席料理屋さんの使う材料を使っています。葉っぱ、お花などを築地へ買いに行きます。ある時、紅葉の葉っぱを見つけました。その紅葉の葉っぱの色に春の色と秋の色があったんです。それを買ったのは春でした。そしたらお店の人は「ジュリアンさんは侘寂(わびさび)のことがわかってる」って言っていました。その葉っぱは日本人は買わないって言っていました。(紅葉の)季節を決めてしまうから(春には買わないから)です。だから春だと春、秋だと秋というふうに。でも本当に侘寂のポイントはひとつの季節の中に、いろいろな季節が入っていることです。生きてることの中には死んでいることもある。日本の文化のひとつのベースは、侘寂だと思います。その侘寂をわかる人は、最近はすごく少なくなっています。
毎日の生活の中、シンプルな人生のディテールの中には侘寂の(を味わったり、表現する)チャンスがあります。日本の文化のものだけど、(私はフランス人ですが)勉強は必要ないと思っています。侘寂は心から感じること。スピリチュアルなことは、侘寂にすごく入ってます。日本の文化から、侘寂を消しては文化全体がしぼんでしまうと思います。
そこでまず「生活はアート」とはどういうことかということ。
例えば私は今、お料理をやっています。以前、私は大使館の仕事をやっていましたが、お給料がもらえてすごく簡単な生活でした。そこから急にお料理の世界に入りました。その時、私にとってはおもてなしがすごく大事にしたいものでした。私の中の世界を人に紹介する機会が欲しくて、空間を作りたかった。お店を作ろうとか、ビジネスをしようとは思いませんでした。ただおもてなしについて興味があったので、空間を作って、そのあと料理の世界に入りました。
私の友だちが来た時、キッチンで料理を作っていると、友だちが後ろから「パトリスさんは前の世界の方がよかったんじゃないですか」と言いました。でも私はそう思わなかったのです。
私たちのレストランは火曜日から土曜日やっています。火曜日、レストランに来てやるのは料理、お花、お掃除のチェック、自分の原稿いろいろ。朝来ると、もう頭がいっぱいです。もう本当にプレッシャーがあって、全然しあわせじゃないです。全然しあわせじゃないけど、すごく生きています。私の場合、少しの時間で、たくさんのことをするには、すごく整理しないとだめ。混乱すると、絶対全部だめになる。だからまず自分の頭の中を整理します。ものごとを順序だてて明確にします。私はすごくシステマチックに考えるんですよ。すごく自由な人間だけど、考えをすごく整理します。それをしないと、私の世界は全然コントロールができない。みんな「ジュリアンはいつ寝るの?」って聞きます。まぁ、あんまり寝る時間は長くないけど、そんなにオーバーはしない。ただお花をやる時はやる。料理をやる時はやる。でもやる時はそれだけをやります。それはすごく大事。

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私たちは今の生活でだいたい嫌なものを全部消します。好きなものしか選ばないです。例えば周りの嫌な音、周りの嫌な建物、嫌な人間、どんどん私たちの頭の中では小さくなりました。だからすごくひとりな感じです。たまにウォークマンをつけると、もっともっと狭くなっちゃう。
だから本当にベーシックな生活の中でアートのポイントは、今です。自分が仕事をしても、料理をしても、お花をしても、本を読んでも、何をしていても、今ここにいるという気持ちがないと、夢の中にいる状態です。お花を見る時は、お花からくる情報は多いんですね。香りもある、形もある。わかっている情報と、わかってない情報がいっぱい入ります。私たちはだいたい40パーセントだけを見ると、情報は40パーセントしかない。もっともっと見て100パーセントになったら、私たちとその対象は一緒になる。
料理をやる時はね、日本の包丁はそれぞれの作業で違う包丁を使います。その時、包丁の力を聴くとやりやすい。自分が切るんじゃなくて、自分はただ手伝いするだけ。包丁が自動的に切る。すると本当に空気みたいな感じで入って、その包丁はサーッと切れるんです。自分と、包丁と、素材と、周りの世界を全部まとめているということです。本当につまらない仕事でも、その気持ちでやると、急に魔法が生まれます。



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禅に関するエピソードがひとつあります。有名な剣道の先生で素晴らしい人が、壁にぶつかったんです。そこで、禅のお寺へ行って3年間座禅して、どうしてこういう問題にぶつかったのかを考えました。この人は、(剣道をするとき)全部の意識を手のところに向けていたんです。けれど本当に意識を向けるべきところは自分全体なのです。そうすることでマジックが生まれます。
皆さん、私の話を聞くと、むずかしいなと思うでしょう。でも私のレシピはとても簡単。スタッフが同じ物を作っても同じ味にならないです。だからスタッフは「パトリスさん、どうしてこんな違いがあるんですか」って聞きます。
それは、みんな作る時ひとつの材料を忘れるからなんです。レシピの中にない材料、それは「気」です。日本語でもいろいろな素敵な言葉があるんですね。例えば「じゃあ、お気をつけてください」これは「さよなら」という意味。すごく深い言葉。
やっぱり料理を作るときは「気」のつけ方が大事です。でも「気」はただの言葉じゃないですよ。ひとつの材料です。その材料はすごく大事。「気」を入れるか、入れないか。それは大事です。
私は、フランス料理を作るときでも中華鍋を使います。みんな私のキッチンに入るとびっくりします。中華包丁と中華鍋も使うからです。どうしてかというと、中華鍋は火と材料の間にほとんどスペースがなく、ほとんど火の上に材料を入れるので、火の気と、私の気と、材料の気と一緒になるからです。本当にF1レーサーみたいな感じのチャレンジで、1分か1分とちょっとくらいで、OKになるかだめになるか全部はっきりします。そのチャレンジはかなり好きです。それで、香ばしい味、歯ごたえ、色などに気をつけると、お客さまに出す時は魔法です。でもその魔法はね、自分がいないと生まれないです。ただ材料や中華鍋だけあっても、火があっても、やはり自分がいないとないです。だからいちばん大事なのは自分の「気」です。
その時の私は、もう本当にすごいしあわせ。大変なプレッシャーの中でやると、フワッと出てくるんです。いつもチャレンジをもってやります。いつも今、ここ、私から出してる「気」はマックスでいきたいです。
でもそれはジュリアンの道だけじゃないと思います。みんな「気」を持っているし、みんな意識を持ってるし、みんな道を持っています。だから、人のためにやるというのは、いちばん危ない壁になります。
例えば奥さんだと、こどもやだんなさんのために(食事を)作ります。でもまず自分のために作る。これしかないですね。自分のために作るということで、キッチンに入る。自分が真の中心になるです。
すごく一所懸命になっておいしいものを作って、テーブルの上に出しても、こどもはあんまりわからないし、だんなさんは新聞を読んだり、テレビを見たりして、全然気がつかない。「私はこんなに気持ちを入れて(作って)るのに、どうしたらいいかな」と寂しくなるんです。でも自分でその機会にチャレンジをしたら、それは自分のためにもなります。そのできたものを見て私の作品だと思ったら、あとは私の目標に作品はどのくらい近づいたか考えて、あとはただおもてなしするだけです。
まずいちばんもてなすべき人間は自分です。だから自分の人生の中で、人のために作るのが80パーセントだともう自分の人生はないです。それはわがままとは全然違うと思います。本当は何でも自分から始まるのです。
結婚してしあわせなカップルの笑顔を見て、いいなと思って「結婚したらしあわせなんだ」というイメージを持ってると、絶対失敗すると思います。「私の生活を楽しんでいる、これからもうひとりと楽しい生活をシェアしたい」というふうに考えたらいいんです。結婚式でも、テレビでも、車でも、家でも、旅行でも自分は変わらないです。自分の持っている問題、リミット、クエスチョン、疑問、全部一緒に旅行に行く。だからここから始まるということです。だから結婚してもいいんだけど、結婚式は薬じゃないですね。やっぱりわがままは大事です。道を持っているわがままが大事だと思います。



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ところで私の友だちですごい上手な女の人のピアニストがいます。彼女はコンテストでいつもピアノの賞を取って、プロのレベルなのですが、急に彼女は自分の家族を見て、これからこどもが欲しいと思ったようです。そしてこどもが生まれて、彼女はピアノを辞めました。でもまた彼女のこどもがピアノを勉強して、どんどん賞を取っています。道は選ぶものなのです。人生の中でこれいい、これ悪いじゃなくて、順番があるんですよ。自分の道のいちばん大事なものがあるんです。
私の中にはスピリチュアルな世界があるんです。そのスピリチュアルな世界は、ただスピリットだけ。もうすごく透明感がある。全然問題ないです。でも車に対する時は全然違う世界。気をつけないと、車をぶつけてしまいます。その時はスピリチュアルな考え方は必要ないです。ただ順番がある。例えば私の人生は車を運転するだったら、車のレーサーになっちゃう。だけど私は車のレーサーじゃないです。

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例えば私のところに来た女の人はね、料理の世界へ入って1年一緒にやって、急に辞めて家具屋さんに入りました。どうして家具屋さんに入ったか。料理の世界はひとつの世界、ひとつの道。家具屋さんは違う道です。それは比べられない道だと思います。自分でその中に、どういう順番を作っているかが問題です。
さっきのビデオの話に戻ります。きびしいビデオですけど、人生はきびしいとやさしい、両方あります。きびしいのは失敗すると、かなり危ない。よく私はスタッフが料理を盛りつけて失敗した時「どうして失敗したんですか」と問いかけます。「あなたが飛行機のパイロットだったら、失敗するとどうなりますか」と。お皿に盛りつけることも、飛行機を運転することも仕事。でも盛りつけても、ずれても、あんまりかわいくなくても、問題がないです。でも飛行機のパイロットは失敗したらもう、お客さんはみんな死んじゃう。飛行機のパイロットは「あ、すみません」では、みんな死んでしまうのです。私は「失敗してたら」といつもそれを考えます。パイロットは100パーセント力を使う。100パーセント気をつけるんです。100パーセントでいることが、自分は精一杯生きるということだと思います。すごく生きている。
私たちは五感を持っています。その五感はね、全部使うと情報がいっぱい入ります。以前、レストランの仕事ですごいストレスを感じたときがありました。荷物をいっぱい持って歩いて、歩いて、自分の頭の中が混乱してたんです。そんな時、急にキンモクセイの木があるのを見つけました。荷物を全部下ろしてすぐその香りを嗅ぎに行きました。



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話は変わりますが、恵比寿店の近くでカラス2羽が電柱にハンガーを使って巣を作りました。お母さんカラスが飛んで来て、ワァワァと鳴き出したんですね。次の日私はそこへ行って、今度はカラスと喧嘩をしました。カラスは最初、ちょっと力を出します。その人に自分(カラス)の力を教えようと思うのでしょう。近くに寄って来る。そこで私はカラスのところにカッカッカッとしたら、カラスはびっくりしてちょっと遠くへ行きました。それを2日くらいしたんですね。そしたらカラスは今度は全然近くに来なくなりました。あの人は危ないと思ったんですね。そこでまぁ、私は悪いと思ったね。だから今度はね、クッキーを持って屋上へ行った。うるさいものとクッキーを持って行ったんですね。カラスはパァッと来て、私がカァッと言うとカラスは逃げてしまいました。そこでクッキーをあげたんです。「じゃこれをどうぞ」って言ってですね、ちょっと後ろへ行ってから、カラスは来ました。クッキーを食べに2羽が来た。オスとメスですね。オスはどんどんやさしくなって、今度は全然違う声を出しました。こんな感じ。
(カラスの鳴き真似をされる)
すごくかわいい目をして、お母さんはまだちょっときびしい。でもクッキーを食べてたんですね。次の日はいろいろなものを買ったりとか、毎日来て、ご近所の人は窓から見てびっくりしていました。
でもある日、お母さんは私のクッキーを食べなくなりました。これからこどもが産まれるのか、彼女はすごい緊張していたのでしょう。私はお友だちになったと思っていたのですが、彼女はすごくアグレッシブになって近くに来ました。それを受けて今度はまた私は力を出しました。すごい人生の勉強になります、それはね。
1週間から2週間、カラスから勉強したことはすごいです。例えば日本の文化ですね、義理と人情と縦社会もまったく一緒です。まず義理を作ってカラスは悪いことをしない。でもそのルールを壊すと、また戦争になります。
レストランのすぐそばに私の家があるんです。レストランはたまにちょっと音がするから、隣の人はうるさいと言っている。私たちは最初はその苦情が出てきた時、シャンパンを頼んで送ったんです。そしたら「いらない」と言われました。そしてずっと喧嘩になりました。あのカラスと一緒です。
でも恵比寿でちょっと違う問題があって、カフェを作るために大工さんが隣の人の家に入りました。その時は私はレストランのフルーツケーキを隣の人にプレゼントしました。そしたら今度は「ありがとうございました」と言われました。全然関係が違うんです。だからそういう意味で聞くと、すごく人生は教えることは多いんですよ。

植物にお水をあげることもすごく勉強になります。植物は普通自然の雨からお水を得るんですね。だからスプレーで上からあげると、お水の流れがすぐわかります。植物と人間は口はみんな形は違うんだけど、植物は口は違うところに持ってるんです。だからそれを見るとすごい楽しい。お水をあげるだけで楽しい。100パーセントで気をつけると、まず時間がなくなる。

あと自分と心のつながりについて。今日の最後のポイントです。私たちの中からはいろいろな声がでるんですね。何が心の声か知るのはむずかしい。でも少しずつ気をつけると、心の声が聞こえます。
私は19歳で結婚して、22年間ずっとカップルで生活しました。ところが、ある日私の心の中で「やめた方がいい」という言葉が出たんです。その時はすごい悩みました。けれどそれは心の声だったので、じゃあやめますということでそうしました。他の道が選べないというときには、あるいは絶対にその道だと思うときには、心の声が言っています。だからそれを聞くと間違いないです。

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3ヵ月前、私のすごく好きなスタッフから、電話で私にいろいろなことをぶつけられたんです。一晩中自分のやってることはどういう意味かと思いました。でも次の日はね、自分の心の道に戻って、全部クリアになりました。私は仕事ではすごいきびしい。どうしてすごいきびしいかというと、人のマックスを見てるからです。スタッフが入る時に興味があるのは、その人のできることを見るんです。その人のポテンシャルも見ます。だからそのきびしさについても人からいっぱい言われて、私はだめかなと思ったんです。でもそんなことはないと思い直しました。そしてこの人も2年間で私のキッチンで、ゼロからすごく上手になりました。だからそういうところでやっぱり自分の心に従って正しかったと思いました。例えばあなたのやることはだめと言われても、自分の心の中でひとりだけ。考えてもそれでいいんだと思います。もう本当にみんな嫌いになっても、自分が正しいと思ったら、心の中でそれを続けた方がいいと思います。
私は『フランス料理ABC』を出した時はね、日本で出版社にプロジェクト紹介して、日本で話をしたんですが「絶対この本は売れない」と言われました。でも自分で絶対この本は売れると思ったんですね。売れなくてもしょうがないんだけども、言いたいことがしっかりあるからほかはない。その本が出て、今もう23刷になりました。
私は毎日お料理を作る。毎日ゼロから始まり、毎日ゼロに戻る。でも何でもそう。1日やって、その次の日はゼロから始まるということで。お金がいっぱいあっても、それは別に関係ない。お金がなくても、それは別に関係ない。自分がいますから。それは自分の選ぶ道。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
自分の心が混沌として定まらないような気がします。はっきり自分の心の声を聴くには、どうすればよいでしょうか。

パトリスさん:
むずかしい質問ですね。まずそうですね、私は3つくらいの方法があるんですね。ひとつは、いろいろな機会を自分で作る。例えば私はね、料理をする時、レストランで不思議なプロセスを経ます。みんな私のスタッフは最初びっくりします。前の日に「何を作るんですか」と聞かれても考えません。朝起きて「今日は何を作りましょう」っていう瞑想を毎日やります。ただ座ってちょっと、呼吸に注意するとか、自分のからだに足から頭まで注意する。その時「じゃあ、ちょっとメニュー教えてください」という情報を流します。ユニバースか、神さまか、自分の心かにFAX送ります。「今日は何作りましょう」って。それだけ。でもどんどんどんどん、FAXが出てくるんですよ。トゥルルルルルル、こんな感じで情報が来るんです。私のいちばんの楽しい料理はそういうふうに出てくるんです。だからよくそれを私は、「神さまの通信販売」と呼ぶんですよ。神さまにお願いする。でも神さまはやっぱりお店じゃないから、そこからはちょっと美しいプロセスでやるといいですね。ライフスタイル的に一緒にやりましょう、楽しい料理を作りましょうって。
最初はね、お客さんが7時に入るのに、4時くらいになっても何を作ろうってわからなかったんですよ。普通のことをしたくないから「ちょっと何か楽しいアイデア出してください、出してください」ってお願いしていたんです。もっと大きい世界に私のリクエストを出して、そのあとスーっと何も考えないでいると、違うことをやっていても、絶対答えが出てきます。でもその答えが、バッチリの答えじゃないときもある。自分の状態に合わせた答えになっているんですね。スタッフがたまに「パトリスは今日は全然違いますよ」と言うんです。でも、昨日は昨日の私でした。今日は今日の私です。
自分は生きている、自分は変わる、自分は大きくなる、自分は上手になる、それは当然です。そのプロセスの中で、自分のやることは1パーセントしかないですね。その他は外から来るものです。答えはいろいろなところから来ます。心はただ私の心から出る声だけじゃないです。たぶん会った人からもパンと来る。その時はその声を、自分は正しいと思うんですね。
例えば一度レストランで、ベジタリアンの人の予約がふたり入った時、私のスタッフは「明日はベジタリアンがいるのですが、どういうメニューを考えましょう」と聞いてきました。それは私にとってすごく面倒くさいことです。急にベジタリアンの人がレストランにいるという情報が入って、冷蔵庫を開けて「さて、何を作りましょう」という状態がいちばん好きですね。でもスタッフはきちんとしたいから時間通りにベジタリアンのために特別な用意をしておいたんですが、その日の5時にお客さまはキャンセルしてきました。それが人生です。全部決めることはないです。だからそのもったいない時間を使うより、その時を今のあることを聴いた方がいいと思います。

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例えば合気道は「この人がこう来たら、今度はどうしたらいいかな」というふうにします。その人は全然違うところから来たら、私は死んじゃうと思います。だから、その時、その時はね、それタイミングに合わせると流れる。その時は、ただ喧嘩でもないです。ただふたりが、ひとりになって動くということです。
だからまずひとつの方法として、違うことを考えないで、心の情報がどういう形で来るのかを楽しみにしてください。それは苦しいプロセスじゃない。楽しいプロセス。すごく苦しくても楽しい。プロセスは道だけ。神さまが教えたいことは、全然違うこと。もうひとつはね、それはちょっと苦しいですけれど心を聴く状態。真っ暗の世界でいちばん光を見る世界。自分がいちばんしあわせな時は自分の声しか聞かないです。マリモっていう植物は根っこが下にいって、石があったらまた上がってきます。それすごく自動的なことです。いちばん暗いところから上がるしかないです。
その時はステップアップになります、絶対。ステップアップするときには試練があって、試練は大きくなる機会です。ただその時は道がないと、危険です。見ているところがあると問題ないです。その時(見ているところがある時)は心の声しか聴こえないから大丈夫です、絶対あるんですね。
あともうひとつの道はね、ただベーシックな練習です。本当に毎日毎日そういう細かいところからやると、どんどんまた話が出てくる感じがします。失敗しても問題ないですよ。すぐわかります。それは私の心の声だと思ったら、それじゃないとすぐわかるんです。失敗するから。でも失敗は大事。

お客さま:
パトリスさんは、自分の人生をいちばんに考えていらっしゃいますが、両親との、家族との関係について、考えをお聞かせください。

パトリスさん:
人間は生まれてから家族のデータ、DNAのデータがまず入ると思います。そして家族の歴史のデータも入ります。それでもう1ゾーンになるんですね。でも生まれた人には、この1ゾーンプラスができます。だから人生のエボリューションがある。だから次のゾーンに入ると、見ているところが違ってきます。でも根っこは家族一緒。ただずっと根っこのレベルでいると、木は伸びない。ずっと根っこの状態の家族がいて、木の伸び方をわかっている家族がいるんです。
例えばこの形だけというファミリーがいるとすると、それは危ないです。そういうことを壊さないと伸びないです。でもちゃんとわかっている家族だったら、やっぱりこどもたちのやっていることは伸びるところだから、ちょっとOKしましょうという考え方をすると思います。私の家族はわりとかたい家族だけど、結構自由な感じもいっぱいあったから、娘は自由な感じを出しています。
私はサイエンスの勉強がすごく嫌でした。サイエンスの勉強をしたら、すごくいい仕事ができると思っていたのですが、文化の方に行きたいと両親に言ったら両親は「まぁ、あなたがそれいいと思ったらどうぞ」と言ってくれたんですね。私の娘は「お父さん、カメラマンの学校に入りたい」と言ったので「じゃあ、どうぞ」って言いました。その後彼女は「じゃあ、この写真の撮り方とサイコロジーをミックスした自分のスペシャルな仕事を考えたい」と言ったので、また「じゃあ、どうぞ」と言いました。
いちばん大事なのは、自分とファミリーは違うということです。自分はファミリーのためにやるのではありません。自分のためにやる。
ヘビはどんどん皮を脱いでそれを捨てますが、人生も一緒だと思います。でもハーモニーはすごく大事。ファミリーのハーモニーもすごく大事。でもある時は、ファミリーが刑務所になるなら、その壁を壊すしかないです。

お客さま:
先程パトリスさんがおっしゃったように、自分のためと思いたくても、こどもや夫の世話などで、自分のためと思うことがなかなか思うことができないことがあります。ふっと気持ちを入れ替えるにはどうすればいいのですか。

パトリスさん:
むずかしいですね。私はフランス人で、日本人じゃないので。例えばね、17歳くらいの人が家族のところへ毎日帰って一緒に住むケースだと、急に自分の自由な考え方を説明するのはむずかしいかもしれない。まず最初おとなにならないとだめだと思います。だから自分で生活をしないとだめだと思いますね。それがまずひとつのポイント。
その時から自分の生活をもって、責任をもって喧嘩するといいです。喧嘩するというよりは、コミュニケーションをする。まずコミュニケーションは、自分は何をやりたいかという説明をしたら、両方とも大きくなるチャンスになるんです。だからただ形があって、その形が絶対崩れないと思ったら、ずっとこの形になるんです。
お母さんには絶対わからないんだと思いますけど、でも本当にタイミング的にはパッとこちらの方からコミュニケーションをしてすごい答えが返ってきてびっくりすることもある。古い人間の中でも、絶対若い人間がいる。
この間母にすごくシャープなメッセージをEメールで書きました。そして彼女からEメールが来て、すごい私は感動しました。シャープで、私の言うことを彼女はわかっていました。その時、友だちより近い感じがしてた。ボーイフレンド、ガールフレンドの深い気持ちが入った、すごく愛情の気持ちがすごく入った。閉めたイメージじゃなくて、ちょっと卵みたいな感じ。卵は周りが固いですけど、中はすごく柔らかい。だから絶対人間みんな一緒だから、文化からは固いところが出て来るんだけど、その中にどうやって入ったらという、それは心の中から出て来る道ですね。それをぶつける。強くぶつけて、例えば家族から「じゃあ、出て行ってください。もう見たくない」と言われても、絶対考える。その時はどういう理由を自分で持ってるか、それまた違うことですね。それはケースバイケース。
テレビで見たことですが、青い髪の毛の16歳くらいの男の子が電車に乗ってた時に、おじさんたちが「なんであなたは日本人の髪の毛の色にしないのですか」と言われていることがありました。でもこの男の子は、ただ「自分は青でいたい」と思ってるんですね。そこでは日本人の髪の毛はどの色とか、どうしてこんな色の方がいいとか、そんな話もできると思ういますが、コミュニケーションがないとだめだと思います。だから自分の説明をしたいことをした方がいいと思います。
ある時、スタッフが急に私に反抗しました。それを私はハードに受けたんです。そして(その後)には、逆に私たちの関係は深くなりました。
カップルでも、家族でも問題が出てくる時は、ガーっとした方がいいと思います。それで本当に残ってるものは大事なものだけですね。刀を作るためには、ちゃんとしばらく火にかけます。そういうものです。

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フェリシモ:
ありがとうござます。ふだんコミュニケーションが足りていないと、いざ何かを相手にぶつけた時に、それを同じレベルの言語で共有できないということですよね。

パトリスさん:
そうですね。うん。でもただ本当によく日本では表と裏とか、本音と建前があるんですけどね、そういうところで不良な人間になるんじゃなくて、形をもってコミュニケーションをする。ちょっとマンツーマンのコミュニケーションを心から心という感じで、自分で失敗してもトライした方がいいと思います。

お客さま:
パトリスさんの今のマイブームは何ですか。

パトリスさん:
マイブームね。そうですね、今この仕事を7年間やっています。本は20冊くらい出しました。そして会社を作りました。4人の会社から30人以上の会社になって、レストランを3軒持っています。
本を作る時は、まず撮影があり、原稿を書きます。そして、原稿チェック。だいたい9ヵ月のプロセスです。やる時は楽しみにします。すごく楽しみ。そして本が出ます。
以前、私は(著書の)サイン会をやりました。終わったあと、私はひとりでちょっと飲みたいと思ったんですね。ひとりで飲むのは楽しいんだけど、ふたりか3人で飲むのはもっと楽しいんじゃないかなと思ったのですが、その時はひとりでした。250人にサインをしてもひとりはひとりです。
だからやっぱり自分の中の持ってるものしかないんだと思います。だから私のマイブームは本を書いても書かなくて、サインしてもサインしなくても、料理作っても、いつも自分の道にいるというブームですね。
その説明をしたら、お友だちがレストランに食べにきて「今のパトリスの話は、すごく禅の先生を思い出す」と言ったんですね。彼女はすぐにこの禅の先生の電話番号を教えてくれました。その人は静岡の人でした。その次の日、私は先生に電話をして「明日行っていいですか」と言ったら「じゃ、来てください」と言われたので、彼のところに新幹線で行って一緒に4時間話をしました。これはただ、確認だけでした。すごくおもしろいことでした。あまり禅はやらないんだけど、禅っぽい感じの考え方。やっぱりさっき言ったこと、今は今。自分の今の今という今ということで、決めることはないとか、真っ白のことはいちばん大事。真っ白の時は小さい点を入れてもすぐわかる。その気をつけ方において、禅は座禅をするだけじゃないですね。禅は飲む時、食べる時、歩く時、読む時、電車に乗る時、その意識そのものが禅ですね。
だから今そのブームの、でもただ続きだけ、私の道の続きをやっています。以前、講演会でお客さまが「ジュリアンさんの生活は素敵だけど、日曜日だけでいい」って言ってたんです。びっくりしました。逆に私は瞑想の時間より働く時間がいちばん瞑想っぽい。
だからだめなことがあると、怒った時はどうして怒ったという、それをちょっとクエスチョンにするんじゃなくて、ただ受ける、受けるそれを見て「ああ怒ったね。パトリスさん怒ったね」って自分で言うんですね。怒ったのはどう思うって。ただこれだけ。どうしようという感じじゃなくて、ただ怒ったの。そんな感じですね。

お客さま:
人に自分の思っていることを伝え、共感してもらえるような表現の仕方について悩んでいます。自分の気持ちを相手に伝える時に心がけることは何ですか。

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パトリスさん:
それもすごくむずかしい質問ですね。例えばね、弓道で自分で一所懸命当てたいと思ったら失敗する。ただちょっと準備して任せる。アドリブという言葉があるように。一所懸命したら、絶対あたらないです。ただスタートだけ。そして(自然に)流れます。自分から流れることは自分じゃない。流れることだけ。アドリブということ。

フェリシモ:
アドリブですね、日本語でも。アドリブという言葉になっていますね。

パトリスさん:
だから、本当にそれはすごく簡単でむずかしい。日本語で「任せる」。自分の口に任せる。その口と心のつながりに任せる。自分の心と人生に任せる。そのお互いの人に任せる。それを全部、その前の準備は、今この方とうまく流れます。でもけんか流れても、流れ、タイミングが来るか、来ない。でも来ないとしょうがないということで。

フェリシモ:
表現されるべきことは、その時期が来たらおのずとその人から醸し出されるということでしょうか。

パトリスさん:
そうですね。だからその私たちの旅の中、タイミングはタイミング。タイミングじゃないタイミングがある。例えば友だちのスタイルの変わる時期がある。この人たちとこれから似合わない時期もくる。マグネットと一緒でね、プラスとマイナスがある。プラスとプラスは反発しあう。それは人生で形を作るために、全部そういう感じになると、お団子しかならないです。だからお友だちにすごくいい友だちがいて、ずっとずっと一緒に何か大きくなって、同じプラスになる。急にその同じプラスでパッとに離れちゃう。でもまだチャージ的にそのプラスマイナスだったら、絶対にコミュニケーションができる。ある状態もコミュニケーションできない状態がある時がある。その時はただどうしてとか、そうじゃなくて、今は伝わらないからしょうがない。ギブアップする。流れる。

フェリシモ:
パトリスさんが持ってらっしゃる神戸の印象ですとか、この神戸学校でお話をしてくださって感じられたこと、また神戸でお店を開かれる予定はあるかどうかを教えてください。

パトリスさん:
日本に来ても大使館に勤めていた時代でも、すごい神戸は好きだった。ヨーロピアンな街だと思ったんですね。日本の中にふたつ、すごく好きな所がある。ひとつは鎌倉と、もうひとつは神戸。形もすごく日本的だけれどヨーロピアンは神戸と、すごくピュアで日本的な鎌倉ですね。
この間、北野でお店を作る機会があって初めて行きました。明治時代の素敵な家がいっぱいありますが、アミューズメントパークみたいな感じになっていて、結構苦しい感じがしました。そういうところはとても残念ですね。だからそういうところで、神戸でおとなの文化か、こどもの文化を作るか。そのクエスチョンはまだクエスチョンマークになるんですね。
私のスタイルのお店を作るのはむずかしい。どうしてかというと、ベースは設備じゃなくて人間だからです。ひとつの目的はパトリス ジュリアンのライフスタイルの学校を作りたいです。でもビルの中でひとつの部屋を作って学校をするんじゃないんです。本当にその形とメッセージに合わせた学校を作りたい。今スタッフが入ると、私はまずお掃除から料理、おもてなしまで全部教えないとだめで、だいたい3年間かかります。お掃除は、ただのお掃除じゃないですね。本当に深いお掃除はとてもおもしろいことです。だからその深いお掃除を私は教えますね。だから学校でそれ教えたら、弟子か弟子に近いスタッフが行ったら、どこでも店を作れます。それはただジュリアンの世界じゃなくて、みなさんの心のお店です。だからただ今、プロセス的に時間がかかってむずかしい。ただ食べ物屋さんを出すのとはまた違います。それは心の大使館のようなものです。

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Profile

パトリス ジュリアンさん<ライフスタイルプロデューサー>

パトリス ジュリアンさん
<ライフスタイルプロデューサー>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
東京白金台「C.F.A(サントル・フランセ・デ・ザール)」のオーナー・シェフ。「アートな生活」を創造・表現する独自の感性は多くのファンを魅了し、エッセイ『いんげん豆がおしえてくれたこと』など著書も好評。TVや雑誌でも大活躍中。

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その他のゲスト

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