神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 福田 繁雄さん(アーティスト/グラフィックデザイナー)
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「アートは生活に息づく」



<第1部>

こんにちは。神戸はポートピアのときに、サントリーのミュージアムにトリッキーなことを仕掛けたりしたことがありましたけど、なかなか来る機会がなく、今日は本当に久しぶりです。今日は、スライドをお見せしながら、いまデザインというのはどうなっているのか、どうなっていくのか、それから私たちの生活がどういうふうに変わらなきゃいけないのか、変わろうとしているのかを、お話したいと思います。
私たちは、ほとんどアメリカとかヨーロッパからデザインの考え方を受けたと思うんですけども、アジアを振り向くということをしませんでした。ところが最近アジアに行くことが多くて、いろいろな生活文化にぶつかるんですが、なかなかおもしろい知恵っていうか、そういうものをたくさん見かけました。
そういうものを含めて、日本にはなぜこの「生活を楽しむ」という考え方が入ってこなかったのか。そう言われると「遊び」という言葉、最近はみんな「遊ぼう」とか「ゆとりを持とう」って言ってるんですけど、どういうことがゆとりなのかということは誰も言ってくれてないんですね。「遊び」という字は辞書を引いてもらえればわかりますけども、日本の場合はとても悪い言葉です。大切なことをしないとか、生産性がないとか。遊び人なんて言ったらすごい悪いやつですよ。海外でプレイボーイっていうとですね、健康で、スポーツマンで、お金があって、そういう人をプレイボーイって言うんですけど、日本の場合はそうはいかないっていうか、どうしようもない人を言うと思います。そういう意味でいま日本は、どういう壁にぶつかっているかを、いろいろな角度からお話したいと思います。

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それではスライドから始めましょう。

(スライド)
左側は私の家の玄関です。右に10何度か傾いています。なぜ傾けたかというと傾けたかっただけの話。だいたい住宅を造るときは、玄関というのを建築家は非常にうるさく言います。鬼門とか言って、方角が悪いなんて言うんですけど、いまだに私は飽きないで楽しんでいます。遠くに見えるのが玄関の扉なんです。実は(サイズが)1/2ですから急いで入って行くと頭をぶつけてしまいます。
(会場:笑)
道路から見て、どのくらいの角度があると遠くに見えるかというのは、図面では描けないんです。それで何回も何回も壁を動かしながら平面を動かしながら造ってるんです。私の家は空き巣が入ったことないんですよ。気持ち悪いですよね、この玄関を見たら。空き巣もなんかちょっと入れないって。で、実はこの扉開くんですけども、白い壁なんですよ。開くんですけど入れないという……。左側は仕事場で、この棚がずーっと奥まで12あり、下から上までB全版のポスターが入ってます。50年間で作った約1300種類あります。ここで朝から晩までひとりで作品を作っています。海外へ行くと、「福田は何人くらい人を使ってるんだ」なんて言われるんですけども、「えー、三宅 一生さんの事務所は電話が28本あるそうだけども、僕のところは1本しかないよ」って笑ってるんです。すべてひとりでここで仕事をしています。

(スライド)
2歳のときの写真です。浅草で生まれました。中学、高校のころは本当に漫画家になろうと思っていました。それで美術学校を受けたんですけど、美術学校に漫画科っていうのがありませんで、それじゃあデザイン科がいいと思って、デザイン科へ入ったんです。

(スライド)
こんな漫画チックなポスターをつくったりしていました。1年生ですね。

(スライド)
60年代、卒業するとまもなく、東京オリンピックとか大阪万博とか、筑波の科学博とか、沖縄の海洋博とかで、いろいろな国を挙げてのデザインを重要なパーツとしたイベントがたくさん行われました。ですから、僕たちは引っ張りだこで、あらゆるデザインの現場を駆けまわりました。私はイラストレーションという仕事がとっても大事だと思っていたので、イラストレーションをたくさん描きました。

(スライド)
ポスターも先ほど申したとおり、1300種類ほどあって、1年間に50種類くらいのポスターのデザインをしたりしたこともありました。

(スライド)
私はいま、いろいろなことをするんですけども、よく自分の個性というか、どうやってできていくのか、自分の感性をどうやって育てるのかとかを、みなさんとお話をしなきゃいけないんです。
日本人は自分の感性を育てることができなかったから、生活文化が日本になかったんです。カーテンひとつ選べない、ネクタイ1本選べないっていう国民なんですね。
そういう意味で、自分はどうしていまの仕事をしているかというのを考えると、私たちは先輩たちの後ろ姿を見てて、つまずいたり、転んだりしているのは見えるんですけども、後ろからくる新しいパワーっていうのは見えないんですよ。私の時代には、本当にいい作家が出てきたんですね。それは文学も音楽も演劇も同じ。いい役者がいる時代にはいい役者が出てきます。
この30日に、大阪で早川 良雄さんの展覧会が行われます。早川さんはもう84歳くらいじゃないでしょうか。学生時代に三宮にある「G線」という喫茶店に来たことがあるんです。ここは、早川さんが文字、マッチ、メニュー、あらゆるものをデザインしてるんです。それを見たくてわざわざ来たことがあるんです。そういう意味では、関西の人が東京にどっと来た時代でもあるんです。名古屋の宇野 亜喜良さん、神戸の方の横尾 忠則さん、和田 誠さん、田中 一光さん、粟津 潔さんっていうメンバーです。
私は何か自分のものを探さなきゃいけないと思っていまして、そのときにこれを見ました。これは「ルビンの壷」という心理学の「多義図形」と言ってる図形。壷に見えたり、人間が向き合っているように見えるという……。

(スライド)
この「ルビンの壷」を見て、ひとつの形の中にふたつの意味があるっていうのにとても惹かれました。それから10年くらい経ってから作ったポスターです。これは75~76年の個展のポスターですけど、下から見上げていくと男の人の足で、上から見下ろすと女の人の足になるんです。これを作って、世界のポスターのコンクールに出してみたら、いろいろなところで賞を獲ることができまして、「こういうおもしろいものが世界に通用するんだな」って思いました。当時はこういうことをやる人がいませんでした。

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(スライド)
去年の暮れから1月にかけて、アサヒビールが発泡酒として、私の30年も前のパターンを使ったんです。私は「新しい作品をデザインをさせてくれ」って言ったんですけど、「これがいい」って言うの。私は見た目でつぶれているように見える缶を作ったらどうかって、スケッチまで描いたんですけど、採用してくれませんでした(苦笑)。

(スライド)
UCCカンパニーのポスター。科学博のときのパビリオンのデザインを引き受けました。これはさっきの足を使ったものから、10年くらい経っていますけど、それをひとつの塊にできないかなと思ってました。で、これはそれを完結したわけですけども、外から男の人の手で、内からは女の人の手でっていう。この横に動くのではなくひとつにまとめてみました。

(スライド)
これは西武デパートでの故宮のからくり時計の展覧会のポスター。これは中世の中国の人が天を指差しています。ちょうど時計の文字盤のように。
ここまではいいんですけども、実はこの紫のバックが、これがまた同じ形をしているっていうのは、ポスターになっても気がつかなかったって言うんですね。それで、「いや実は中も同じなんですよ」って話をしたら、慌ててこの文字盤を使った時計を作ったっていうことがあります。
デザインは芸術と違います。芸術家というのは、自分の考え方、自分の思想、自分の感情を色とか形にたたきつければいいんですね。そしてそれはすぐ理解されなくてもいいんです。10年後理解されようが、100年後理解されようがいいんですけども、デザインはそうはいかないんです。いまの感度を読んで、いまどういうふうにするかってことを読まなくてはいけないんですね。そこがデザインとアート、大きく違うところだと思います。

(スライド)
これはパリで、西部劇シリーズの映画祭が行われたときのポスターです。カウボーイがいます。色の中は、出てくる俳優の横顔が入っています。これもいちばん初めにお見せした「ルビンの壷」を応用しています。

(スライド)
これはフランスから1時間ほど行ったところにあるブルターニュ地方のキャンペールという街の美術館でやった個展。

(スライド)
フランス、パリで12人のグラッフィックデザインの展覧会のポスター。文章は同じものを書いています。これは包装紙のアイデアです。こういうふうにすると、紙面が大きく見えます。本当はこれだけでいいんですけど、切ってみました。亡くなられた日本の大御所のデザイナーの亀倉さんが、「福田、何でグラッフィックデザインの展覧会なのに犬なんだよ」って言うんですね。私も困ってしまって、「えー、フランスにも犬がいると思いますので」って……。12名の作家が展覧会のためのオリジナルポスターを作ったんですけども、このポスターがいちばん売れたそうです!

(スライド)
こういうものは、みんなが持ってる常識をどういうふうに利用するか、です。個展だと、ファンとか私の作品を見たい人が来てくれるんですけど、ポスターっていうのは興味のない人の足を止めなければいけない。それにはどういうふうにデザインにするかっていうことを考えるわけです。ですからこれはみんなが持ってる「犬っていうのはこういうものだ」っていう常識があるわけですが、それをちょっとひねると、みなさん立ち止まって見てくれるというわけです。

(スライド)
日本には俳句というのがあります。短い言葉ですけど、すごいですね。哲学っていうか、人生論って言いますかね。川柳は少し風刺をしたりするんですけど……。外国の人にはほとんどわからないんじゃないかって思いますよ。「蛙とびこむ水の音」なんて言ったって、「そりゃ蛙がとびこむ水の音するだろうよ」って感じですよね。日本の歌舞伎に黒子っていうのがいるでしょう? こう主役が踊ってるときの袂を持って、形を作ってあげたりする黒子、あれは日本人は見ないんですよね。ところが外国の人にとっては「あの黒いのは何だ?」って言うんです。一輪挿しも同じですね。外国ではバラでも何でもどかーんと花瓶に入れるんですけども、日本は一輪のバラで、バラの花園を想像できるわけですよ。日本人はそういう感性を持ってるものですから、デザインもこういうものが出てきます。
これは作ったら俳句のようなビジュアルになったんですね。ハッピーアースデイ、ハッピーバースデイをもじってるんですけど、地球を守ろうというポスターです。木を切らないほうがいい、ところが木を切るまさかりの柄は木じゃないかっていう、とんちって言うか、落語って言うか、川柳みたいな作品です。

(スライド)
カタカナでデザインって言うと、通商産業です。だから一般の人は関係ないと思って、なかなかデザインっていう名前のところには集まってくれないんです。なんか専門的な感じがするって思うんでしょうね。いままで、国立の近代美術館でなかなかそういう展覧会をやりませんでした。過去にはアメリカのポスター、ヨーロッパのポスターを、外国の巡回展でやったことがあるんだけど、オリジナルでやったのはこのときが初めて。外国の作家、このフェリシモのロゴを作ったペンタグラムのアラン・フレッチャー、彼はもう引退しましたけど、そのような人たちを招待した、日本で初めての公共的な場所でのグラフィックデザイン展でした。

(スライド)
私はエッシャーの影響を受けているわけなんですが、あの人は空間を、この世の空間ではない、立体としてはありえない空間を平面に、それも30代後半に発見したんですね。これもこの線が、人間が座ることによって、ここが面になったり、こっちが壁のようになったり、こう空間になったり、こっちが空間になったりするっておもしろさですよね。

(スライド)
これはもちろん平面だけど、この人は水平面に座っています。しかし、こっちへ来るに従って、ここは垂直面になって、ここに座ってる人は水平面ですけど、これが上へ上がっていくことによって、だんだん垂直面になって……。こういうものを見つけるのが嬉しいんですね。見つけるとひとりで飛びあがるんです、30cmくらい。で、エッシャーの絵を見て感じたように、立体に作ってみたいと思います。

(スライド)
これがそうなんですけど、ぶどうが置いてあります。で、このぶどうは水平面に置いてありますよね。あの階段の明るい部分は天井からスポットで光が当たってますから、明るく見えますでしょう。で、垂直の面は光がすべりますから、グレーでちょっと暗い感じになっていますよね。
ところが、ある角度から見ると、ぶどうが垂直面にくっついているように見え始めます。しかしこれはトリックではなくて、私たちの目っていうのはいかにいい加減かっていうことだと思います。左側を見ますと階段の、階段の形というのはああいうものだっていう常識があるもんだから、錯覚を起こしてしまうんです。エッシャーはこういう原理を絵に描いたんですね。私は立体にしてみました。こういう階段をどこかに作りたいなと思っています。

(スライド)
日本にも江戸時代にはおもしろい作品がありました。これは国芳が描いた遊び絵ですね。遊び絵というのはこどものための遊び絵。こういうこどもの絵っていうのは、こどもさんに与えてしまうから、ほとんど残ってないんですって。

(スライド)
これはたくさんの顔でひとりの人間を作っています。
これは国芳の弟子の作品なんですけども、歌舞伎に出てくる化け猫です。それの猫の形で猫の顔を作っているという。
(中略)

(スライド)
これはおうちの形で、中を無駄なく……。これは展覧会にだけ発表したもの、80種類くらい作りました。

(スライド)
こんな具合に。なぜこんなものを作ったかというと、積み木というのは、丸い筒とか三角形とか、そういうものだったじゃないですか。それではおもしろくないっていうんで、私の娘 美蘭が小さいときに、こういうものを作ってあげました。これはパズルのようになっていて、もとへ戻すのが大変なんですね。ゲーム性もあるわけです。

(スライド)
陶器も陶芸家がやらない陶器を作ってみようと思いました。で、これは生産性がない、まあいまもそうだと思います、何を作っていいのかわからないのは作業ですから、ソニーもアイボみたいなロボットを作ってるんですけども、何の目的で作ったかというと、目的がないんですよ。デザインというのは、目的がなくて作るっていうことがいままでなかったんですね。もう100年の歴史でなかったと思います。ところが、ソニーでアイボを作ったら、いまはあれは養老院などでお年寄りのおもちゃになっているというんです。初めからそういうつもりで作っていないと思いますよね。
私も機能を無視しても、こんなものはいままで作らなかったっていうものを作ってみようってことで、やってみました。これは紅茶とコーヒーというわけにはいかないんでしょうけど。

(スライド)
私は漫画を描かないで文春漫画賞をもらったんですけども、こんなものを作っていたからだと思うんですね。取っ手が中についているものをよくテレビ局が取材に来ました。タレントが私の家に来るんですね。そうすると、ディレクターが「福田さん、取っ手が中に入ってるのでコーヒーを出していただけますか?」って。で、出すんですけど、ギャルタレみたいなのはきゃっきゃ、きゃっきゃ騒ぐだけなんです。
ひとり驚かないで平然として、コーヒーの中に指を入れて普通に飲んでいる人がいたんですよ。そう、岡田 真澄さんなんですよ。
(会場:笑)

(スライド)
これは今度、フェリシモさんから新しい商品開発として売り出されているんですけど、あの実は普通はこういうのなかなかできないんで……。えー、要するに押してだめなら、引いてみろっていう。売れないんだったら、もっと売れないものを作ってみようじゃないかって……。あの波打ってるのはバターナイフなんですけど、バターがつけにくい(笑)。つけにくいっていうことは、ダイエットにいいんじゃないかと……。これはスプーンで半分へこんでいるだけですから、スープ飲むときに倍かかるっていう。こう運動を余儀なくされるっていうですね。要するにおもしろいっていうことは、いままでの反対のことだと思うんですね。これで食事をしなくても見てるだけでも、何かを考えてくれるんじゃないかって思ったりしています。
(略)

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(スライド)
これは全部等身大で作ってるんです。タンゴをワンフレーズ踊ってるんですね。こういうダンスを止めないで、立体でとらえたらどうなるかっていうのを思い、作りました。これはいま横浜にあるのかな。

(スライド)
これはホンダシティっていう自動車。実際の大きさを1/3、幅も1/3寸法を変えるだけで、まったく違ったものになっていくんですね。漫画のように描くだけだったらできるんですけど、実際に作るからおもしろいんですね。これは、パリの展覧会のときに、この縮めたやつを持ってったんですけど、展覧会場の前に道路に駐車させましたらね、すごい人だかりができて、「どうしてこれが走るんだ?」って。
走るわけないんですよ。
(会場:笑)
そしたら、やっぱりホンダはおもしろいですよね。「福田さん、これ作ろうか」って言ったんです。ホンダからちゃんと形の図面だけ借りてですね、正確に作ったわけですから。で、この後ろに小さい車を入れるって言うんですよね。そうすると走るって言うんですよね。やっぱりホンダはおもしろいですよね。
これひとりしか乗れないんですけども、スペースがないから、実現しませんでした。

(スライド)
これは、真ん中はミロの胸像。それを横に広げたら、縦にした。これは簡単に写真で引き伸ばすっていうわけにはいきませんので、ちゃんと図面を引いて、粘土で作っていくわけです。
その真ん中のミロのビーナスの胸像にある1点から、1点視点で古今東西の有名な人の顔を描いてみよう。すでに常識ってさっき言いましたけど、シェイクスピアのことは世界中誰でも知ってるんですよ。みんなが知ってるものだから、みんなが納得してくれるんですね。これは、チャップリン、ベートーベン、エッシャー、で、やっぱ作者も出なきゃいけないっていうんで(私)。
(会場:笑)

(スライド)
この写真はソニービルですね。銀座の角のソニープラザの。
あそこでクリスマスのときに何か作れって言うんです。で、何日か明けるとお正月ですから、できればお正月の感じ。その年は酉年なので、こういうものを作りました。東京駅の方から見ると、北斎が描いたチャボ。それから有楽町の方から見ると、ピカソが描いたシャモ。で、日本だとコケコッコーって鳴くんですけど、フランスは違う鳴き方をするので、ここへ立つと日本のニワトリの声、こっちへ立つとフランスのニワトリの声っていうので、やったことがあります。
要するに、ふたつの形を持ったひとつの立体。で、これは初めにお見せした「ルビンの壷」の考え方が立体的になったと思っていいと思います。これを考える基本になっているのは、円錐です。上から見たら円で、横から見たら三角形。不思議な形だなぁと思ったんですね。それで、上から見たらハートで、横から見たら三角形っていうのも想像できますよね。ハート錐とかって言うのかな。それじゃあ、上から見たらハートで、横から見たらクローバーの形、実際にはあるんですよ。だけど頭の中には描けない。

(略)

(スライド)
これは東京の臨海副都心、向こうに見えるのがレインボーブリッジですけども、その1駅行ったところがあのお台場公園で、そのもう1駅隣が潮風公園。そこの水際につくったモニュメントです。で、これはご存知のとおり、スーラーの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』っていう点描の絵をイメージした作品です。実はここに猿がいるんですね。で、もう1匹ここに犬がいるんですよ。で、その犬を取ったんですね。なぜかっていうと、この公園に犬は入れてはいけないので、公共的なものをやるときは本当に注意しなければいけないですね。「ここに犬がいるじゃないかよ」なんて言われちゃいますので。これを南から北を見るとこういう形になります。
ピアニストがピアノを弾いてるんです。これ夕日が当たると、とってもきれいなんですね。

(スライド)
これは魚です。いま作っているところです。

(スライド)
鯛の形をしていて、スポットライトが当たるとその影が「鯛」という字になるという。で、これはあのさっき話した、円錐の考え方ですね。だからひとつの考え方が次々と応用されてきます。で、ここで、「ああ、そうか。こういうふうになるんだったら、影っていうのはおもしろいな」っていう。影の造形をした造形家ってあまりいないんですよ。影を造形のエレメントにするっていうことはありませんでした。

(スライド)
これはさっき話に出ていたアルチンボルド。画集を見てですね、これ粘土でいま作っている、畳2畳くらいあります。ここにあるのは鏡。鏡に粘土で作ったものがこう、これと同じように遠近法、逆遠近法って言ってますけど、作ってるところです。

(スライド)
こんな具合にできました。これはプラスチックで型を取って、色をつけて、あのむずかしいのは照明があんまり当たるとこれが光ってしまいますので、こういうふうに額縁の角度でこれが映りこんでいくっていうわけです。これ大阪で発表したんですけど、見に来た人がそういう常識がないから、わかんないんですよ。「ああ、アルチンボルドの絵がある」って行っちゃうんですよ。これが映っているからおもしろいのに、これだけ見て行っちゃうんですね。これは単なる鏡が入ってるだけなんですよ。

(スライド)
これは黒いオブジェでありまして、何が何だかわからないんですけども、これが鏡に映るとまた違ったものに見えます。
グランドピアノに見えます。これは本当に大きいグランドピアノの大きさで、ここに人が座って、左の鏡がここにあるんです。鏡を見ると、自分がグランドピアノの前に座っているように映ります。で、これはいま、広島の現代美術館がコレクションしています。これ、フクロベニヤで作ってるんですけど、それにも塗装して磨いてですね、グランドピアノの感じを出しています。

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(スライド)
影を何とかしたいっていうので作ってます。それで、2mの高さから光を当てると、ホンダのモトクロスのオートバイが見えるんですね。これ、ばらばらになってますんで、組み立てればいいわけなんですけども、いまそれを作っているところです。

(スライド)
これははさみ。学童が使うはさみを3千本くらい。こんな具合に、ここから光が当たって、日本丸ができるんですけども、こういうのは複雑だからおもしろいんですね。「えー」って思うんですね。もうこれ以上複雑なものは見つからないんですよ。だからあのオートバイを作って、これを作って、もうちょっとあとないですね。こういう複雑なものほどみなさんびっくりしますよね。
フランスの新聞には、「もしかしてあれは床に描いてあるんだろう」なんてことが書いてありました。ああ、おもしろいことを考える人もいるもんだなぁって、いつかそういうもの(床に描いたもの)と並べて展示してみてもおもしろいだろうなぁって思ったことがあります。

(略)

(スライド)
これはエッシャーの物見の塔です。1階のフロアから、はしごが2階の外にかけられて、かかっています。で、エッシャーはこういうことはありえない、しかし私は絵で描いてみました。だから、この手前にある柱が奥へ行ったり、奥の柱が手前に来てるって言う。あの矛盾した絵なんですけど、それじゃあ立体で作ってみようって、つくったんですね。
こんな具合に。1階のはしごがこれ空間に止まってるんですけど、2階の外にかかってるように、ある方向から見ると、こういう方向から見ると見えます。

(略)

(スライド)
これはこんなふうに仕掛けがあります。ばらばらで、この柱の向こうを通って、水がここから出て、滝のように落ちます。落ちた水はこのまんま、そのへんから下のタンクに入ります。ここからまた水が出て、これが流れてこう行きます。ここまで行ってまたタンクに入っていきます。ですから一瞬流れているように、つながっているように、同じ水量ですよね。それでこのくらい小さな模型ですから、波が立たないんで、水が流れているかどうかわからないんですよ。そのためにこの下にさざなみが立つように、ちょっと桟を入れています。すると、波が立ってるように見えるんですね。

(スライド)
これは上が3本の柱で、下が2本になってる。平面ではありえるんだけど、立体で作ってみました。立体なのでこれ、照明が悪いですね。ここに影が映っちゃってるんですね。ははは(笑)。

(スライド)
実際にはこういう仕掛けがあって、ありえないことですよね。平面では描けるんですけど。

(略)

(スライド)
これはロンドンのポートレートミュージアム。中2階にあるんですけど、こんな長い絵なんですよ。これはこっちの方から見るんです。
これはエドワード王子ですから、17世記後半、18世紀にかけてできたものなんです。すごいですよね。何でこんなものを作るんですかね。王子の顔をここから見ろって。日本にはこういうおもしろさや遊び心って入ってきてないですね。美術史家は額縁に入った「ゴッホ」とか「セザンヌ」とか「ロートレック」を分析するけども、こういうはずれたものは持ってこなかったですね。こういうものをおもしろさとして見直す必要があるんじゃないかと思います。

(スライド)
これは古い写真ですけども、ニューヨークのソーホーというところ。これは、リチャード・ハースというデザイナーがデザインしたものです。彼の初期の作品です。これ55の窓がありますけど、本物はこのふたつだけなんですよ。あとは、描いてあるんですね。なぜこんなものを描くのか不思議でしょうがないんですよ。ここはファサードと同じように描いてある。窓が開いてるように、クーラーがついてるように描いてあるんですよ。ここなんかには猫もいるんですよね。何でこんなことするんですかね? 私は行く度にちょっと寄ってみるんです。

(スライド)
これはフランスの住宅街です。住宅街で探すのに苦労しましたけど、はしごを架けて、ファビオ・リッチという作家が、自分が描いているように描いています。で、これはバッハ。なぜバッハなのかって、音符を売ってるんですよ、教会の。音符をですね、そういうことですよね。こういうのないですよね、日本には。

(スライド)
これはワシントンの現代アートのロイ・リキテンスタインの作品。黒い輪郭を取る絵描きさんなんですけどこれ芝生の上に置いてあるんですけど、この道が公園ですから、歩いていくとこのうちがゆらゆらと動くんですね。それで……。

(スライド)
実はこういう作品でした。これはいちばん手前にあるから、常識的に、私たちが見たら、これは手前にあるって。ところが、この作品はここがいちばん奥にあるんです。だから状況がおかしいわけ。どんどんこう変なふうに傾いていきますね。
感心して、私もこういう作品、早く考えつけばよかったなって思いました。
(会場:笑)

(スライド)
これはオルデンバーグの作品。フィラデルフィアにあるんですけども、銀行の地下道、地下鉄を上がっていった所にある洗濯バサミ。日本じゃ作れません、こういうの。銀行の真ん中にあるんですよ。これはアメリカのよさですね。アートっていうものを非常に大事に、地元として育てている。日本から、わざわざ時間もかけて見に行く価値があると思います。

(スライド)
これは同じくオルデンバーグです。建物ですね。会議場がすごいですね。おもしろいですよね。うーん、何とも。でも僕が市長だったら、考えて止めさせるかもしれないですね。

(スライド)
これは中国です。中国にもありました、不思議なのが。ここは太湖という湖。この湖も王さまが造らせたそうです。ここは雨が降ろうが、何をしようが、この回廊を通って、ここから湖を見るんですね。そのためにこの窓がひとつずつ全部違うんです。何でこんな無駄なことを? すごいなって思いました。幾何図形をうまく使った形ひとつひとつがきれいなんですよ。この遊び心はすごいなって思いました。中国はまだまだおもしろいものがあるように思います。

(略)

(スライド)
これは川崎市民ミュージアムから私と漫画家の手塚治虫さんが立体を依頼されました。「時」というテーマを与えられて、私は「時」というのは歴史で、人間が人間の上に「時」をつくっていくというふうに考えたので、こういう立体を作りました。

(スライド)
こういうふうに。しかしこれは1本のパイプがずーっと通ってますので、倒れることはないんです。手塚さんが「いやあ、福田くんのはいいね」って言ってくださいました。これはそのときの川崎市民ミュージアムに取り付けられている立体です。だから彫刻家ではないんですね。要するに、みんなが何を感じてくれるかっていうのは観念芸術とは違って、デザインのほうが即物的にものを作っていくので興味を持ってくれるんですね、一般の人も。

(スライド)
これは札幌の彫刻の森に作ってくれって言うんで、この周りは、全部現代彫刻家の偉い先生の作品があるんですけど、この作品は、前の人が後ろの人の膝に座っていくっていう作品です。
こんなふうに……。
(会場:笑)
これは円になりますから、円になったときに完成する作品ですね。『椅子になって休もう』と言います。

(スライド)
これは広島。JRの駅を降りて平和公園へ行く途中の地下道に壁があるので、「福田くん、おもしろいものを作ってくれ。ここは観光客は通らないから、住んでる人が通るところだから、できるだけ希望を持てること、楽しいこと、こどもたちにも興味を持てるもの、そういうものを作ってくれ」って言うので作りました。
これはタングラムといいます。中国にあるものですね。四角い木の辺を7つに切って、うちを作ったり、人間の形を作ったり、動物の形を作ったり……。で、それをハート型に置き換えて、10に分けています。これは陶器です。

(スライド)
こういう鳩をつくりました。黒い鳩です。タングラムは黒い木の辺ってことなんですけども、ま、これは鳩の影ですね。広島は原爆もあったので、(平和の象徴の)鳩の影が映っています。80羽くらい作りました。そしたら入りきらなくなっちゃった。全部違う鳩なんですよ、これ。毎日のようにですね、パズルをやって、家族が心配しましてね、朝から晩まで遊んでるわけですから。
(会場:笑)
いまでも出入り口のところにハートから鳩。で、これは真ん中にハートがあって、金色の鳩がいて、これが世界を一周する平和のメッセージを…… というイメージですね。

(略)

(スライド)
ここに60cmの硬化パイプが通っています。これは、千葉県市川市に中央図書館ができて、いま市民センターになってます。そこの「中庭に、世界中にないモニュメントを作ってくれ」って言うので、えー、図書館だから、本を積みましょうって言って、電話してるうちにアイデアを決めて、作りました。

(スライド)
できあがりました。
(会場:笑)
建物は13mで、それより少し高く14mにしました。で、これは高速道路から見ると、これ照明がこういうところから当たりますから、きらーっと光った柱が見えるわけです。これ153冊の本が積んであるんです。

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(スライド)
私の疎開した岩手の二戸市というところです。田中舘 愛橘(たなかだてあいきつ)博士っていう人が地球物理学、航空力学、東大の先生をやって、文化勲章第一号もらった人らしいんですけど、その人がローマ字を普及させた人らしいんですね。それで、モニュメントを作れというので、8mのポールを立てました。間は3mずつ、幅は50cmの鉄のL字鋼を立てました。それをある角度から見ると、こういう面に見えます。角度が変わったら当然ですよね。
こんな具合に、全部にですね、ローマ字を貼りこむ。
それで田中舘博士の博物館の2階の窓から見ると、こういうふうに見えるんです。田中舘博士のポートレートが見えるように、こんなのは信じられないですね、ルネッサンス時代だったら、遠近法を利用して使うんですけど、いま、遠近法を環境に使うって、日本ではほとんどしてないんです。で、ここのローマ字とこれ3mずつですから、約30m離れてる。その字が同じ大きさになるように計算するわけです。ここから田中舘博士の博物館の窓まで40mあるんですね。で、そこから見て顔に見えるように設計しています。これ、コンピューターじゃないんですよ。設計をして、図面を描いて作ったんですね。

(スライド)
ベニスから1時間くらい行ったところが、マーサーっていう街です。そこの別荘がすごいっていうのを聞いていて、見たくて見たくて行ってみました。バロバロ邸というところですけども、中へ入ると、これはあの本によると、女の子が出てきているという。実はそうじゃなくて、近づいてみるとすごいお年寄りの顔してるんです。本人は、こどもって書いてるんです。
これはベロネーゼっていう有名な絵描きが、この壁に、ここにいる人の家族を全員描いてるんですよ。トリックですよね。それを「気持ち悪い」って言うんで、その次にこの屋敷を買った人が全部壁を塗っちゃって、バラの絵にしたんですけど、またそれを買い戻した人が、壁をはがしたんです。ルネッサンス時代にすでに生活の中に「遊び」っていうのが入ってたんですね。

(スライド)
ローマのイグナチオ聖堂。ここは観光客は入れないんですけど、お願いして入りました。これ見てもわかるんですけど、これ平らな壁なんですよ。全部平らな漆喰の壁に、光が入りませんので、ほとんど色もそのまんまで残ってるんです。漆喰の壁に、絢爛豪華な装飾を描いてしまうんですね。何でこんなことするんですかね。

(スライド)
システナの礼拝堂。ミケランジェロの『最後の審判』がありますよね。この上にもいろいろな名画があるんですけども、ここは、実はみんなカーテンが描いてあるんですよ。なぜこういうのを描いたんですかね。本当のカーテンをかければいいじゃないですか。バチカンですよ。でも、描くことのほうが贅沢なんですね。
イタリアの博物館とかの壁よく見ると、大理石で造っているように描いてあります。イタリアは大理石がいっぱい採れるんですけど、大理石を使わないで漆喰にして、それに大理石を描くほうがどんなにぜいたくかってことなんですよね。そういうおもしろさは日本に入ってきていないんです。ミケランジェロは分析するけど、このことについては誰も触れてくれてないんですよね。このシステナの礼拝堂ができる前はどうだったのか、ミケランジェロが壁画を描く前はどうだったのか、調べたくて、イェール大学の図書館で探しました。出てきました。全く普通のパターンです。これなんですよ。
(スライドを示して)だから、これはミケランジェロが描かせたかもしれないですよね。
今度行ったら、感じてください。縦に高いんですけど、幅がないから息苦しいですよね。カーテンが描いてあるんで、ほっとするんですよ。向こうにまだ余裕があるっていう感じ。やっぱり、そういうおもしろい空間の知恵みたいなものは日本には入ってきていないですよね。

(スライド)
国を挙げて、もうちょっと遊ぼうとか、生活を楽しくしよう、生活文化をもう一度考えようって言ったんですけど、お父さんは家庭のことを考えないで会社に行っちゃうし、奥さんは庭はいじるけど、カーテンは選べないっていうのが日本の文化だったんですが、これからはおもしろくなると思います。そのためには相当度胸を決めないといけないですね。もし、朝早く起きて、自転車で家のまわりを走るときは、下駄と長靴をはいてみるとかですね。ちょっと見ると、「あの奥さんおかしくなったんじゃないか」って言われるんだけど……。
(会場:笑)
でもそこを我慢して、スピードで、なんかそんなことでもしないと駄目ですね。

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<第2部>

お客さまとのQ&A
(ビデオ上映)
「不思議なのに現実
 現実なのに不思議な世界」

いまのビデオ、文部科学省が作ったんです。あれを見て、こどもさんたちが、ものを作るのに興味を持ってくれるだろうと……。美術っていうと、むずかしいので“不思議遊び”なんてことを言って、詰めこみ主義じゃなくて、土曜日の休みで、3時間くらい確か時間が空くんで、それをものを考えることとか、創作、創造性をどうやって養うか、とってもむずかしい問題なんですけど。

お客さま:
福田 繁雄さんが影響を受けられた方は誰ですか?

福田 繁雄さん:
3人くらいいますね。ひとりは、ブルーノ・ムナーリ。60年代に、京都と東京で世界デザイン会議があって、そのときにイタリアからブルーノ・ムナーリっていう人が来ました。彼は文字盤のない時計を発表したんです。日本のデザイナーの人たちは、「こんなのはだめだと、文字盤のない時計なんて時間がわからないじゃないか」と。それに対して対談のときにブルーノ・ムナーリは「こういうのをデザインの“遊び”だ」って反論したんです。「そんなに秒で動かなくったって……。自動車のハンドルを見ろ」と。「あれ、このくらい動かして、こう曲がったらですね、とっくに事故になっている。要するに“遊び”が必要だよ」って言ったんですよ。デザインには生活の呼吸みたいなものがなければいけない。だから文字盤がないっていうのをおかしいと思うのは、日本は遅れてるっていうので、私はすごく感激しました。

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お客さま:
福田さんはこどものころ、どんな遊びをされていたのでしょうか。

福田さん:
やっぱり漫画ですね。学校から帰ると、塾のないときは机に座って、兄弟で漫画を描いていました。小学校時代にふたりで漫画映画を作ろうって思ったくらいですよ。で、ストーリーやキャラクターを作ってですね、やったことがあります。もうその当時から、長谷川 町子の弟子になりたいなぁなんて思ってですね。中学校へ行ってからはもっと激しくなって、公募に漫画描いて送っていました。高校時代は、漫画家に本当になろうと思ってたので、4コマ漫画をたくさん描いて、『蛍雪時代』っていう受験雑誌に88枚応募しました。タイトルは、「すねお・かじる兄弟」。「すねお」がお兄さんで高校生で、大学受験を勉強している。で、「かじる」がちょっと年下の弟で、お兄さんの勉強の邪魔をするっていう……、いいアイデアでしょ? で、88枚出してね、一席なしの二席をもらったんですよ。それで、『蛍雪新聞』ていう雑誌の新聞に連載したんですよね。88枚でしょ? 毎月、1年間に12冊じゃないですか。出版社は楽ですよね。そこからいいところを取ってですね、新聞にずっと連載をしてくれたんですよ。

フェリシモ:
最後に神戸学校からの質問です。福田さんは「ユーモア怠国」という表現をお使いになりますが、われわれ神戸学校のコンセプトは生活デザイン学校と言います。今回、神戸学校に参加されたみなさまに、日常生活においてユーモアのセンスを向上させるアイデアを何かひとつご紹介いただけないでしょうか。

福田さん:
とてもいい質問ですよね。でもとってもむずかしい質問です。一言で言えるかどうかわからないけど、本当はこうあるべきだっていうのをやめてみたらいいんですね。お味噌汁をスプーンとフォークで飲んでみようとか。ほかから見たら、「あ、おかしいかな」って思われるかもしれないけど、自分が意識してればいいじゃないですか。進歩するということは他人から「あいつは馬鹿になった」と言われることだっていうことを聞いたことがあるんですよ。おもしろいっていう字は「面が白い」って書くでしょ? ほら、あのテレビでバカ殿なんて、よく白塗りにするじゃないですか。「面白い」。みんなと違うことなんですよ。
さきほど、ブルー・ノムナーリの話をしましたけど、ブルーノ・ムナーリが私の家へ来たとき、娘がまだ小さいときに履いてた黄色い長靴を庭に置いてたら、「もういらなきゃもらっていく」って、彼は持って帰ったんです。で、イタリアで何に使ってたかというと一輪挿しに使ってたんですよ。黄色いゴムのこんな小さい長靴、水が漏れませんからね、それを一輪挿しにしていました。それがまたすごくいいんですよ。私もすぐまねしました。
(会場:笑)。
床の間に長靴を置いてごらんなさい。お客さんが来たり、おばあちゃんが見たら、「何?」って言いますよ。でもそういうことが、それで新しい家族がおもしろいなって思ってくれれば、それはやっぱり新しいデザインだって思いますよね。
やっぱりあるべきところにあるっていう常識がひっくり返るからおもしろいんですね。それが結論かな。

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Profile

福田 繁雄(ふくだ しげお)さん<グラフィックデザイナー>

福田 繁雄(ふくだ しげお)さん
<グラフィックデザイナー>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1932年生まれ。東京芸術大学在学中に「日本童画会」展アンデルセン生誕150年記念賞などを受賞。卒業後、味の素デザイン室を経て昭和33年フリーに。41年日本宣伝美術会会員。44年よりカゴメ・アートディレクション担当、のち東京芸術大学助教授を経て客員教授。41年の毎日産業デザイン賞を皮切りにワルシャワ・ポスター・ビエンナーレ金賞(47年)、芸術選奨新人賞(51年)、国際デザイン・コンペ最高賞など内外の賞を数多く受賞。“遊びは仕事の核”がモットー。ユニークな発想でジャンルを超え、現代視覚芸術の第一人者のひとりとして活躍。著書は『福田繁雄のトリックアート・トリップ』(毎日新聞社)『デザイン快想録』(誠文堂新光社)『福田繁雄の立体造形』(河出書房新社)『福田繁雄偉作集』(誠文堂新光社)『福田繁雄』世界のグラフィックデザイン8(トランスアート)など多数。

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