神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「つながりをはぐくむ贈り物」



<第1部>

アンヌさん:
本日はみなさんとご一緒できて、とてもうれしいです。今日の講演で、みなさんも手づくりの楽しさを発見していただきたいと思います。

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アンヌ ヴァレリーさんの生い立ちから
これまでのお仕事

私はフランス北部で生まれました。父は画家で、母はスタイリスト、私も母とともにずっとフェリシモで仕事をしています。おもしろいことに私はほとんど学校には通っていません。両親は旅行することが多く、私はひとり娘でしたので、両親は私を一緒に旅行に連れて行きました。父が勉強を教えてくれました。私は小学校の1年目と中学校の1年目に通いました。よほど性格が悪かったのでしょうか、学校に通ったころのことは、とても悪い思い出です。この時期は、友だちもなくとても退屈していました。勉強は日本の文部省に相当するフランスの教育省が運営する通信教育を受けました。バカロレア資格(フランスにおける大学入学資格を得るための統一国家試験)に合格してからは、ソルボンヌ大学で美術史を学び始めました。学校に行かなかったことで、興味深いことをたくさんすることができました。まず、バロック音楽に大変熱心になりました。ずいぶん早くからプロとなり、多くのコンサートで演奏しました。そして、私は若いときから、アトリエで両親と一緒に仕事を始めたのです。私たちは、アメリカ、フランスのラッピングペーパーのコレクションで日本やフランスの絵本、グリーティングカードや布など、たくさんのデッサンをしました。
私は、父と母を通じてデッサン、特に色とその調和について学びました。父は不運にも大変若くして亡くなり、その後、私と母はふたりで多くの仕事をすることになりました。
1980年代ごろから、私たちはフェリシモで定期的に仕事を始めたのです。私たちがフェリシモに向けて描くのは、いつもフランスが持っているイメージのデザインです。900Kmの距離や言語の障がいを越えて、私はフェリシモとは大きな家族と仕事をしているような印象を持っています。また、並行して外国に向けても仕事を始めました。GMCという製糸工場のじゅうたんや刺しゅうの見本のデッサンです。自分を売り込むために、フランスやアメリカの多くの女性誌に自分の刺しゅうを見せて、いろいろな提案をしました。そんなふうにして、私は少しずつ活動範囲を広げていきました。そして、いろいろな素材を使った作品をつくり始めました。布のための新しい染料、陶器やガラス、石膏、漆喰など、ありとあらゆる素材を、ふつうの伝統的用法と違った方法で使いました。作品をつくることが私は大好きです。

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雑誌の仕事では作品をつくるだけでなく、美しい家のインテリアやガーデニングのルポルタージュなども依頼されるようになりました。ひとつは、家についてのルポルタージュの仕事で、他の人々の創造性に大変魅了されています。もうひとつは、数年前から始めた、趣味の手づくりについての編集の仕事です。雑誌の仕事は、長期に渡る大変な仕事です。まず、最初にアイデアを求めます。テクニックやアイデアを設計図に変えます。例えば、紙粘土やランプ、年間行事によって、それぞれ違ってくる装飾品など、アイデアを完成させるのは、多くの時間を費やすむずかしい作業です。私が本の中で説明するオブジェを実際に製作しなければなりません。作品は全て、パリのアトリエで製作します。アトリエは造園家の夫と共同で使っています。丸められた金網ネットや装飾前の家具、白木の材木の素材が部屋に運ばれてくるたびに、夫は不安げな眼差しで見ています。できあがった作品は、スタジオで撮影します。そして、文章を書くために何週間も閉じこもることになります。読者に、どんなふうに作品をつくるのか説明しようと試みます。この後は、編集者が責任を持ってレイアウトし、残りの編集をします。最近出版した何冊かの本は、自分でも気に入っています。特に夫のクリストフと一緒に書いた蚤の市についての本がお気に入りです。マーケットで入手した骨董を庭で使うものとして改良しました。鉛でできた古いバスタブを美しい噴水に変えたり、鉄のベッドを庭のベンチに改造したものです。ここ数ヵ月間は著者、またはスタイリストとして料理の本を製作しています。私は大変な食いしん坊ですから、人生でもっとも情熱をそそいでいるもののひとつである料理を仕事にできることを、とてもうれしく思います。

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アンヌさん
思い出の贈り物について

さて、贈り物の話題に戻りましょう。私の仕事は、人々が愛情と親しさをそそいでつくり、所有し、贈り物にするようなオブジェをつくることです。フランスのジャーナリスト、パリという都市の住人、ある家庭の母親の立場から、特別の機会にどんな贈り物をすることができるかについてお話いたします。
こどもの頃、お祭りの日やプレゼントをもらう日が、どれほど待ち遠しかったか覚えていますか? その日のために、演出される雰囲気は、まるで才能のある作家によって書かれたミステリー小説が少しずつ種明かしで明らかになっていく、その過程に似ています。
プレゼントをあげたり、もらったりするときの状況、雰囲気もまた、同様にとても重要なものです。なぜならば、ていねいに包装されたラッピングペーパーの中の小さなプレゼントには、たくさんのやさしさと贈られた相手へのいっぱいの愛情が込められているからです。贈り物は、値段ではなく交換する気持ちこそが重要なのです。

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私たちが初めて日本を訪ねたのは、ずいぶん昔のことになります。私と私の母は、取引先の関係者の方からいただいた数々のプレゼントに大変驚きました。たった一度出会っただけの人からもマフラーや和菓子をいただきました。このようなことはフランスではあり得ません。取引先の相手から「ご自宅で使ってくださいね」と言いながら、ティーセットを贈られるなんて想像もできないことです。私たちフランス人にとって、プレゼントは個人的なものというより、シンボリックな意味合いが強いので、仕事の範囲は含まれないものなのです。また、私は同僚におみやげをあげるという気持ちのよい日本の習慣に習って、よく仕事のパートナーにささやかなプレゼントをします。例えば、庭にできた果実でつくったジャムや蚤の市で掘り出した骨董などを持っていったりします。同様に、年末の日本のデパートには、いつも驚かされます。全フロアがお歳暮の発送のために準備されていて、箱やバスケットや化粧箱の中には、さまざまな食品や物がぎっしりと詰め込まれています。そういったものもフランスにはないものですし、あったとしても、とても少ないのです。プレゼントを発送するということ自体がめずらしいのです。
時間の追われる現代社会では、何でも買えるし、売っています。商業的な商品は、私たちの贈り物の習慣にも、大きく影響します。もっとも価値のあるものは、贈り物に捧げるアイデアや時間になりつつあります。手づくりの贈り物をするということ、そのものが貴重でめずらしい行為となってきているのです。長い間、フランスでは手づくりのプレゼント、刺しゅう、編み物、お手製ジャムなどは贈り物にはふさわしくないものと考えられていました。特に豊かな階級では、自分たちの豊かさを示すために何かを買わなくてはなりませんでした。手づくりの物をプレゼントするのは、編み物や刺しゅうのうまさを証明するためではなく、単に本物の贈り物を買うお金がなかったからでした。
ここ数年は、アーティストたちや家族、親密な間柄では、手づくりギフトを贈り物にすることは、よいこととされてきています。あらかじめ決められた期日に、単なるプレゼントを贈るというだけでなく、心のこもった手づくりのプレゼントをします。

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季節の行事に合わせた贈り物
フランスの場合はこんなふう……

フランスでは、何らかの記念日や歳時記にあわせて、プレゼントをします。フランスはカトリック教徒の国ですから、キリスト教の習慣に従います。日本とはまるで正反対。クリスマスは家族的なお祭りですが、お正月は仲間内で祝う祝日で、クリスマスと比較したら、お正月のお祝いは本当に取るに足りません。新年のお祝いとして、私はガーデニングに夢中な友人のために、去年訪問した先々の庭で集めた花と野菜のタネをプレゼントしました。フィルム容器やビニール袋にタネを入れ、カラーペンでなまえを記しました。そしてガーデニングの道具をいくつか添えてカゴの中に美しく飾りつけました。
洗礼や赤ちゃんのお祝いには、編み物をあげるのが好きです。毛糸で編んだベビー服、手づくりのおもちゃなど、生まれる前からその赤ちゃんのことを思い浮かべてつくるのです。
ついこの間、友人が3人目の男の子の赤ちゃんを出産しました。友人夫妻の家は、自然素材で飾られたとても素敵なインテリア。壁は木材、地面は色とりどりの石で飾られています。彼女とは親友、だから特別の贈り物がしたいと思いましたが、編み物をする時間がありませんでした。それで、とっておいた流木を使って、赤ちゃんのために木のモビールをつくりました。真珠飾りがついていて、音が鳴ります。ベビーベッドに吊り下げられているので、その赤ちゃんを訪問するたびにうれしくなります。
結婚式は人生で最良の日。この日は友人たちや家族にとっても、想像力を使い才能を発揮して、独創性のあるユニークなプレゼントを新郎新婦に贈る素晴らしいチャンス。フランスではリスト・ド・マリアージュというシステムがあります。若いカップルがレイドル、お玉や不ぞろいのお皿を持たなくてすむので、実質的ではありますが、全く個性のないシステムです。フランスとは反対に日本では、新郎新婦が招待客に対し、感謝の意を表す贈り物をしなくてはなりません。フランスの新郎新婦はドラジェ(アーモンドの砂糖菓子)以外は何も贈る必要はないとされています。我々が結婚式を挙げたとき、私と夫は、結婚式の料理には仕出し屋を使わないことに決めました。3日間に渡り、ふたりの友人の助けを借りて、パテ、テリーヌ、肉のローストそして大量のサラダを調理し、私はすべての料理のソースを用意しました。料理を準備している間、私は食事を楽しむ友人たちのことを考えていました。実際、それが私へのプレゼントだったと思っています。ドラジェの代わりには、白い花の球根の入った小さな袋をプレゼントしました。春に花が咲いたら、我々のことを思ってもらうためです。

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母の日は、天気のよい日曜日に贈られるたくさんの愛情が込められたプレゼントこそがお母さんにとっては何よりも美しいものでしょう。この日に商業的な贈り物をするのは、私は絶対に反対です。私にとって、母の日とはお母さんのために何かをしてあげる絶好の日なのです。幼いころ、私はとても寒い田舎に住んでいました。母の日は移動祝祭日なので、年によっては母の日がずれたりすると、リラの花が咲いていません。私は母の日の3~4日前に、白いリラをみつけるために森へ出かけたものです。もし花が十分に咲いていなかったら、切花にしたものを、ぬるま湯に浸けたり、光を当て花が開くように工夫します。そして日曜日の朝に花瓶から取り出し、大きな白いサテンのリボンを巻いて、母に贈りました。私は自分を、とても誇らしく思いました。というのも、私の花が、庭に咲いている花よりも、ずっと大きく開いていることを、母はいつも、とても驚いたからです。
こども、おとな、男性、女性など、贈り物を受け取る人によって、贈り物は異なります。一般的には、贈り物をする人は、私たちがよく知っている人です。ですから、好みの的をしぼるのはそれほどむずかしくないはずです。(中略)
贈り物の最大のイベントはクリスマスです。私にとってクリスマスとは、家族や友人とともに過ごす1年で最も重要な、特別な祝日です。この日こそ、私たちが気持ちを反映した、やさしさをいっぱい込めた手づくりのパーソナルなプレゼントをするために、もっとも努力する日なのです。クリスマスは、12月の1ヵ月をかけて準備する大きな祭りです。こどももおとなも、その日が近づくにつれて、だんだん待ちきれなくなってきます。12月の初旬に、私たちはアドベントカレンダーを作ります。毎日、そのカレンダーの小さな新しい扉をひとつ開けて、その中に入っているお菓子を食べたり、きれいな絵を見ることが許されます。こどもの私は、朝がくるのが待ち遠しかったものです。
私は夫とこどもたちと一緒にパリに住んでいますが、学校の休みになると、すぐにブルゴーニュ地方のプラネーに行きます。プラネーでは、私がこども時代に過ごした、大きな家で過ごします。そこで、母はいまも生活をしています。バカンスの日が始まると、すぐに私たちは森に行きます。村の巨大なモミの木を選ぶと、村の木こりが木を伐ってくれます。男性たちが部屋に、そのモミの木を設置し、立派に配置します。女性とこどもたちはツリーを飾りつけます。クリスマスの夜、こどもたちがテーブルを盛りつけているときに、おとなのひとりがクリスマスツリーの周りに全てのプレゼントをこっそり置きます。こっそりというのは、たとえ、もうこどもたちがサンタクロースの存在を信じていないとしても、何らかの神秘を保つ必要があるからです。
私たちの家では、食前酒の前に、もっとも小さなこどもが、全ての招待客にプレゼントを渡します。ラベルに書かれたプレゼントが大きなベッドの上に置いてあります。私はいまも、プレゼントは大きな色とりどりのリボンや飾りひも、真珠の飾りなどに包まれているのです。40歳という年齢になっても、クリスマスの夜はなかなか眠りにつけません。私がほしいと思っているプレゼントが、多分もらえるかもしれないと想像すると、とても興奮してしまうからです。
クリスマスは家族やとても親しい友人と過ごすものなので、プレゼントは、いつもとてもパーソナルです。プレゼントに、きっと目を輝かせているこどもたちは、いちばん甘やかされます。去年彼らは、アンティークカーをもらいました。また、古いコルクの飛び出し銃を貰って、大喜びでした。おとなのプレゼントには、アンティークなものが多いのですが、陶器のポットやティーカップ、版画、お手製のジャムやチョコレートなどの甘いものが贈られます。

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贈り物に欠かせないラッピング
アンヌさんのアイデアは?

贈り物はラッピングを抜きにしては語れません。プレゼントを開ける前に最初に目につくものです。日本ではプレゼントのパッケージにかける気遣いは素晴らしいものです。バランスと美に心をくだいたパッケージと自然の調和はいつも私を魅了します。フランスでは、パッケージとは、包み隠すもの、あるいは、配送するものと見なされています。美しくパッケージすることの素晴らしさを見出したのは、つい最近のことにすぎません。ラッピングペーパーの種類、リボンやひも、その他の小さな飾りなどの選択、それらによって、オリジナルなプレゼントのパッケージを作ることができます。それもまた、買い求めた贈り物に、オリジナリティを与えるよいアイデアなのです。
私の友人はワインに夢中です。私は旅行のたびにいつもいいワインをお土産に持って帰ります。ビンのままでは、あまりにも個性的ではないので、パッケージに懲ります。シリョクペーパー、サテンのリボン、小さな真珠飾り、木の破片や乾いたオレンジの皮などです。私は、いつもプレゼントはできるだけ個性的なものにしたいのです。
色についてですが、ラッピングするために、まず、基調となる色をあらかじめ決定しておきます。例えば、赤と緑はクリスマスの色ですし、白は結婚の色です。単色の組み合わせによって、ラッピングを同色系でまとめることができます。反対に、鮮やかな色調の派手な組み合わせを選ぶこともできます。生成りのような自然色やパステルカラー、明度が高く明るい色から原色まで、巨大なパレットの量、自在に使うことができるのです。ほんのちょっと斬新な色を添えることで、鈍い色が華やかになったり、パッとしなかったパッケージを陽気にしたり、どこにでもありそうなラッピングペーパーに個性を与えることもあります。絵の具売り場の棚ようにならないために、同じラッピングの中で色を使いすぎることは避けましょう。

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相手を思う手づくりの贈り物が
人と人とのつながりを
はぐくんでくれるのです

この講演でプレゼントのアイデアを提案することを頼まれました。もちろん、プレゼントは、個人的なものですから、それぞれの友人や家族に当てはめてみなくてはなりません。
私のやり方はこうです。私はフランスの雑誌の仕事で、よく旅行に出かけます。そのときに、何時間か抜け出して、海岸周辺の流木や小石、角が取れたツルツルのガラス、花や田舎の野菜、レンガの破片、木や石など、自然の鉱物や素材を集めたりします。私はそれらを、友人の家を訪問するときや、特別な機会にモビールや額縁、テーブルをつくるためにそれらを使います。また、贈り物を美しくするためにも使います。大きなリボンでひもを使ったオーナメントや羽根などを使うと、とてもオリジナルになります。また、私は年間を通じて、バスオイルをつくっています。油と花のエッセンスを主成分としたもので、キレイなビンに詰めて、親しい友人に贈るのが好きです。甘いアーモンドオイルと何滴か精油を混ぜただけの、とても簡単にできるものです。私のプレゼントで、特に評判のよいのは食べ物です。私はとても食いしん坊なので、ジャムや果実の砂糖漬け、香料入りオイル、チョコレートトリュフなどをつくる手間をいといません。こどもたちが家にいる午後などは、チョコレートトリュフをつくります。2人の息子は私と一緒に料理をするのが大好きです。

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みなさんもご自分の、オリジナルのスペシャリティーを持つことができます。雑誌に載っているつくり方にしてもらってもよいですし、素晴らしブーケや、ステンシルでモチーフをかたどったナプキンだってつくれます。重要なのは、その贈り物をつくるための愛情と、その贈り物を手づくりするために費やす時間です。
そして、美しいラッピング、日本人は美しい包装のスペシャリストです。大きなリボンをつけて渡すときのドキドキする気持ち、このプレゼントを通して贈るのは、あなたの心なのです。
今回お話した、いくつかの私のエピソードが、みなさまのプレゼントへのよいアイデアとなることを、心から願っています。アイデアのいっぱい詰まった大きなバスケットの中から、それらをつかみとり、見つけとってください。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
文通をしているフランス人の女の子が私にプレゼントとして、自分で拾ったアンモナイトの化石を送って来てくれました。私も彼女に何かスペシャルなプレゼントをあげたいのですが、アドバイスをいただけますか。

アンヌさん:
お友だちがフランス人なら、日本的なものが喜ばれると思います。例えば、日本では生け花が、とても素晴らしいので、野山で拾われた野生のもの、葉っぱとか、木のものとか。そういった拾ったものを贈られたら、いかがでしょうか。

お客さま:
これまで、もらったプレゼントの中で、特に印象深く感じているものがあれば教えてください。

アンヌさん:
贈り物というのは、大きさとか、価値とかじゃなく、誰かからの気持ちをいただくものなの。だから、どんなに小さなものでも、とてもうれしいです。
例えば、先週、高野山に行ったんですけれども、そのときに山で拾った赤いキレイな葉っぱ。それをいただいたときにすごくうれしくって、大切に残しておきました。ただの小さな葉っぱですけれど、その気持ちをもらったことがうれしいから、私にとっては大切な贈り物のひとつです。

お客さま:
いま日本人は、日本の伝統を忘れ、西洋のスタイルを追いかけていますが、いまのパリに住む人たちは、日本の伝統やインテリアを、どのように受け止めていますか?日本のタタミ、和紙の照明、小物、テーブルウェアを好む人は特別な人だけですか? 一般の人々は、いまどのようなスタイルを求めているのでしょうか?

アンヌさん:
多分、日本の方は毎日生活しているので、気づかないことだと思うんですけれど、私は日本に来て気づいたことは、日本は、すごく季節と調和して生活しているということです。季節によって部屋のインテリアを変えることも、もちろん、食事に行ったときに、食べ物に、葉っぱとか木の実でデコレーションをして、美しく飾られていることとか、フランスにはあり得ないことなので、自然との調和を生活の中に取り入れているということに、とても感激します。

お客さま:
旦那さまはガーデニングデザイナーということですが、お互いにインスピレーションを受けることがありますか?

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アンヌさん:
最近ふたりでつくった本があって、一緒につくっていて、とても楽しい仕事だったんですが、私の仕事は物をつくることなんですけれども、夫は造園家なので、それぞれの大きな視点で見ることができて、それが私の仕事と合わさったときに、すごくひとつのクリエーションができるっていうのが、お互いにインスピレーションが重なって、ひとつの仕事を成し遂げることができて素晴らしいと思います。その成果は一緒に本をつくったときに、そういうことを感じました。

お客さま:
田舎の暮らしと都会の暮らし、それぞれのよさがあると思います。プラネーとパリでの生活の違いを、どのように楽しんでいますか?

アンヌさん:
もちろん、都会の生活と田舎の生活は大きな違いがあります。例えば、都会パリの生活は観劇に行ったり映画に行ったり、都会でしか楽しめない、そういうアクテビィティがたくさんあるんですけれど、どちらかというと、そういうのは知的なものだと思います。で、反対に田舎プラネーでの生活は、心の中に沁み通るような内面的な生活を大切にしていると思います。例えば、最近新しい家に移ったんですけれども、家のデコレーションはすべて自分たちでやりました。そういうことは肉体的なことなんですけれども、そういった肉体や身体に関係のある楽しみが田舎にはたくさんあると思います。

お客さま:
手づくりする材料、紙やリボン、飾りなどを収納する部屋があると思いますけども、どんなふうに収納されているのですか?

アンヌさん:
テキストにもあったと思いますが、そういう拾ったものはアトリエに収納しています。アトリエに透明のプラスチックの箱に入れて、そういったものは収納しています。アトリエにもあるんですが、パリの家には地下に収納する場所があって、その地下に大きな箱、小さな箱に収納しています。だいたい箱が10コ~20コあります。

お客さま:
今年のクリスマスでは家族に何を贈られますか? もう決まっていたら、ぜひ教えてください。

アンヌさん:
今年は講演などもあり、大変忙しかったので、まだクリスマスに関する贈り物は、全然考えていません。帰りの飛行機の中で、何をあげるか考えようかなって、思っています。もし、いいアイデアをお持ちの方がいらっしゃったら教えてください(笑)。

お客さま:
物をつくるとき、行き詰まることがあった場合はどんな方法で解決されていますか?

アンヌさん:
そういうときは森に行って、とても長い間散歩をします。たくさんたくさん歩きます。パリにいるときは散歩に行けないので、ウィンドウショッピング、お店をたくさん見てまわります。で、おもしろいことに、自分のやっていることとずいぶん離れていること、違っていることっていうのが、わりといいアイデアを与えてくれることが多いです。特に本を書き上げた後なんかは、アイデアが何も残っていないので、そういうときは、いろいろなお店に行ってみたら、たくさんアイデアがもらえたりします。パリのバスティーユに住んでいるんですが、近くに紙屋さん、ラッピングペーパーを売っているお店があるんですけども、そこにはたくさんの日本の紙、和紙とか、いろいろなものを売っているんですけども、そこに行くといろいろなものがあって、アイデアがたくさん浮かびます。

お客さま:
日本では結婚や出産のお祝いとして、お金を包むことがよくあるのですが、海外ではこのような習慣はありますか?

アンヌさん:
日本のように、お祝いにお金を送る習慣というのはないんですけれども、フランスにはリスト・ド・マリアージュという習慣がありまして、結婚する人が欲しいものをあらかじめ決めておいて、それをお友だちや親戚の人が贈るというシステムなんですけれども、だいたいそれは、デパートにこういったものが欲しいですというのを決めておいたり、あるいはプレゼントを贈る人が、そのお店で選んだものをそのお店においておくというという感じで、後で祝ってもらう人が贈られたものが気に入らなかった場合、例えば、スプーンが贈られた場合に、そのスプーンが気に入らなかった場合には、そのスプーンをキャンセルして、お金に戻すこともできますし、また、そのお祝い物をいただくこともできるというシステムがあります。それって、何か個人的な感じがしないし、すごく事務的な感じがして、私はあんまり好きではありません。私だったら、自分が選んだ何かを差し上げたり、自分が選んだスプーンを個人的に直接プレゼントする方が好きです。

お客さま:
異性へのプレゼントには、いつも頭を悩ませています。お世話になった方、目上の男性などに気を使っていただかなくてもいいような、お礼の贈り物をしたいのですが、何かアドバイスはありますでしょうか?

アンヌさん:
受け取るのがちょっと困るという感情がわからないわ。本当にそんな人っているの(笑)? 何か、まったく違うメンタリティなので、どうしたらいいのかわからないけれど。ポストの前に置くとか、ドアの前に置くとか、そういうことなのかしらね。

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(会場:笑)

例えばフランスだとね、お花っていうのは直接贈りません。で、郵便か何かでお花屋さんが届けるというのが、正しいお花の贈り方なので、そういった方法で何かあるんじゃないでしょうか。

お客さま:
服装とか髪の毛とか、ファッションコーディネートのインスピレーションはどこから来ていますか?

アンヌさん:
色から受けるインスピレーションが多いと思います。いまのパリのファッションというのは、ちょっと暗い色が多いけれども、私は明るい色とかキレイな色が好きなので、そういったものから選ぶことが多いです。

お客さま:
サマセットモームの『お姫様とうぐいす』という本からヒントを得て、18歳の誕生日にクッキーを焼いて、みんなに配りました。アンヌさんも有名な絵本のエピソードからヒントを得て贈り物をされたことはありますか?

アンヌさん:
絵本とか本とかにインスピレーションを受けることはありません。さっきも色からインスピレーションを受けると言いましたが、アーティスティックなものからインスピレーションを受けることが多いです。いま、幼いころのひいおばあさんとの思い出からインスプレーションを受けたエピソードを綴った本を書こうと思っています。

お客さま:
贈り物に関して、アンヌさんがいちばん喜びを感じられるのは、どんなときでしょうか?

アンヌさん:
何かを贈るときっていうのは、その人のことをよく考えて、その人が喜ぶものを贈るっていうのが基本なんですが、私は本人が知らないことを発見させてあげる、そういったプレゼントをしたい、例えば、色に関してなんですけれども、その人が絶対に選ばないような色、でもとてもよく似合う色を教えてあげることで、その人がもっと豊かになって、その人が新しい発見をするような贈り物をしたいなと思っています。

お客さま:
いままでたくさんの物づくりと気持ちの贈り物をされてきたのだと思うのですけれども、人生の中で、覚えている中で、いちばん最初に贈った贈り物というのは、どなたに対する、どんなものだったのでしょうか?

アンヌさん:
いちばん最初に贈ったプレゼントっていうのは、お母さんにあげたものです。田舎に住んでいますので、お花を摘むのが好きなので、覚えているのは、中が黄色くて白いひな菊の花を摘んで、草でリボンにしてちっちゃなブーケにしてお母さんにあげました。5歳ぐらいのころです。

フェリシモ:
いまお話にありました、お母さまがいらっしゃるんですけれども、最初のプレゼントのことを覚えていらっしゃいますか?

お母さま(アニー シャゾットさん):
娘の記憶と違いますが、初めてもらったお花は野生のものではなくて、お家の庭のお花を摘んだものでした。

(会場:笑)

アンヌさん:
そうかもしれません。

(会場:笑)

フェリシモ:
最後に、神戸学校より質問させていただきます。生活を素敵にデザインするために、私たちが日々何か実践できそうなことがあれば教えてください。

アンヌさん:
私が考えていることはゆとりを持つということ。これは日常生活の中で、とても些細なことなんですけれども、それをすることで日常がもっと豊かになるでしょう。例えば、お隣の人に「こんにちは」という言葉をかける、それが積み重なって、どんどん豊かなものになっていくと思います。

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Profile

アンヌ ヴァレリさん<ジャーナリスト/デザイナー>

アンヌ ヴァレリさん
<ジャーナリスト/デザイナー>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
パリのソルボンヌで美術史を学んだ後、1986年にフランスの雑誌「モードと仕事」「100のアイディア」「現代女性」にて刺しゅうの作品制作を始める。
さらに雑誌「私の庭 私の家」「庭の友」等の取材でフランス等諸国へ美しい家々の探訪に出かけ、その中で家の個性について執筆。
1993年より、パーティの飾り付け、おばあさんの手作りデザートの作り方、ベッドランプの作り方等、様々なテーマについて、クリエイティブな余暇に関する本の執筆を始める。

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