神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 熊井 明子さん(作家・ポプリ研究家)
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「毎日を新鮮に過ごす工夫」



<第1部>

「香り」は人間の情緒と深く
結び付いている五感のひとつです。

私自身、香りが好きで、書くものでも活動でも香り関係が多いんです。香りというのは五感のひとつ。嗅ぐという嗅覚は、五感のひとつです。ほかに見る、聞く、味わう、さわるとあります。この五感をまんべんなく楽しむようにすると、生活が豊かになると言われています。あるアメリカの雑誌に「人生において成功している人は五感をとても楽しんでいる」とありました。日本では、成功している人というと、がむしゃらに努力している人がふっと浮かびますが、そうではなく「五感を十分楽しんでいる人こそ社会的にも、家庭的にも成功し、自己実現ができて、満足感ある人生を送ることができる」と。非常に共感を覚えました。

五感のひとつの香り。昔から香りというものは、人類発祥の地で、人間の文化とともに少しずつ発達しつつ歩んできた分野です。例えば薫香、お香の類。よいにおいの草とかよいにおいの松脂のような樹脂を炊く、そういうものです。もともとは神への捧げものとして使われました。現在でも、私どもはお線香とか使っています。なぜそれが神への捧げものかと言うと、昔、人は煙というものが天に昇って神さまと交信する手立てになると考えたわけなんです。そのほか香りのよいものというのは、薬品、あるいは食べ物の香辛料などとして役立ち、人間の生活と深く結びついて歩んできました。

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そういったものが、人間の原始的な時代から現在までずっと続いている理由のひとつは、人間の脳の中の原始的な分野、領域に近いところにその香りをキャッチする、そういうところがあるんだそうです。ですから、人間の喜び、悲しみ、恨み、笑い、何か思い出を懐かしむ気持ち、そういった情緒と香りというものが深く結びついているわけですね。これは、いまはやっているアロマセラピーとも関係づけることができるわけです。要するに人間のプリミティブな部分から発して、ずっと愛されてきた「香り」というものに、現在関心を持っているということは、人間の生き方が無機質なものになり、人間関係も荒くなって、それから即物的なもの、あるいは現金、そういったものにばかり人間の関心が向いていったときに、手からこぼれ落ち、忘れられてきているもの、そういうものに対する人間の根源的な欲求が、無意識のうちに「香り」に向いているのではないでしょうか。

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熊井さんが調べ
こだわり続けたポプリとは……

私が、ずっと調べ続けてきたポプリについてお話します。ポプリは、現在ポピュラーになりましたが、いまから20数年前、私がポプリについて書き始めたころは「ポプラの間違いじゃない?」とか、出した原稿が全部「ポプリン」と直されていたり、まだまだ理解されていませんでした。

ポプリというのは、ハーブの側から見るとハーブ利用のひとつ。ハーブを収穫して料理、染色、医薬品に使ったり、また花束をつくったりします。その中にポプリもあります。ハーブだけではできません。けれど、ハーブ愛好家の中にはポプリを一所懸命する人がたくさんいますね。またポプリの側から見ると、ハーブはポプリの材料のひとつに過ぎません。ですからハーブだけではポプリはできない、ほかにどういうものを使うかというと、スパイスを入れたり木の根を入れたり、果物の皮を入れたりします。いろいろな香るものを入れたほかに、香りは必ずしもなくても、それがポプリというものの性格をつくり上げるものであれば大胆に取り入れます。例えば、貝殻とか小石とか、自分の思い出を入れたりもします。そのように、ポプリというのは非常に個人的なもの。香りだけではなく、見た目も大切にし、五感を満足させるということを意識してつくるとよいポプリができます。
今日はいろいろなタイプのポプリを持ってきていますので、ご覧ください。お花も入っていれば木の根も入っていれば葉っぱも入っていれば、樹脂のようなものも入っています。そういうふうに、さまざまなものを混ぜて、乾かして熟成させたものがポプリです。一般にはドライポプリと呼ばれています。

ほかにモイストポプリというものがあります。これは塩漬けのものと考えてください。塩をたっぷり入れ、塩によって腐敗、カビを防ぎ長持ちさせる、そういうものです。

あとオイルポプリというのもあります。これは油の中に、香りのものをいっぱい入れ保存するというものです。

ほかにポプリの仲間がいろいろあります。例えば、これはオレンジの一面にクローブを刺し、それに香料をまぶして乾かしたもの。オレンジとクローブの香りと香料が溶け合い、何ともいえない大人っぽい香り。これがオレンジポマンダーですね。

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それから、ラベンダーバンドルズ。ラベンダーを根元から切り、花を中にして茎を折り曲げて、それにリボンをくぐらせたものです。バンドルズというのは包みという意味。これは、昔の家事の本に、これにお水を染み込ませて洗濯物にパパパッと振りかけてアイロンをかけるという用途がありました。家事も楽しそうですよね。これ4、5年経っているんですが、ぎゅっと押さえるとすーっといいにおいがします。私の家では、本棚のあちこちに置いています。外国では洋服ダンスに吊って、いい香りを漂わせます。

これは、ラベンダーファン。つまりは扇ですね。軸とラベンダーの包みは10年くらいもっています。長持ちするんだけど、毎年少し入れ替える香りの小物、これもポプリの仲間とみなしています。

いろいろなタイプの布袋の中にラベンダーあるいはポプリを入れたものがサシェ、におい袋です。これはそのにおい袋を基本にした人形。これはリボン1本解くと、パッと普通の袋になって、畳み方で人形になるというもの。

これはリボンをはぎ合わせたもの。こんなふうにごく薄いサシェですが、ここにハンカチを畳み込んで胸のポケットにすっとさす。それから手紙に入れてもいいし、メモ帳の後ろのカバーのところに入れてもいい、あるいはティッシュペーパーのケースの底に、すっと押し込んでおいてみる、使い道が幅広いサシェですね。

それからポプリを入れる容器がいろいろあります。これは、ポマンダー。それから私自身、卵が好きなんで、こういうものをつくりました。卵に布を貼って、中にラベンダーを入れて蓋をしました。飾りにもなります。受験勉強のお子さんにはこの中にペパーミントのポプリを入れて、勉強していて眠くなったらこれを揺すって香りをきくと頭が冴える、そんなふうにも使える卵のポマンダーです。

外国では壷のようなものに入れるか、大振りのお皿に盛ります。また、こういったガラスの器で上に透かし模様の入っている蓋付きポプリポット。これにポプリを入れて置いておく、香りが漏れているのが嫌だったらラップをかぶせて蓋をしておいて、日ごろ色を楽しみ、香りを楽しみたいときだけラップを外す、そういうこともできます。

シンプルなものでもいいから、ご自分のポプリというものをおつくりになってみたらいかがでしょう。私好みの香りのものをつくって、気分を変える、あるいはよい方へ気分を持っていくというふうに使えば、ポプリが生活の中で生きていくんじゃないかなと思います。

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熊井 明子さんとポプリとの出合い

私がポプリと初めて出合ったのは、高校生のころ。『赤毛のアン』のシリーズの第4巻『オリビアおばさんの求婚者』という題の短編の中でした。翻訳者である村岡 花子さんが「雑香」と訳されていました。この雑香というものを村岡さんが「バラの花や葉を乾かして香料と混ぜ、壺に入れて部屋を香らせる」、そのような文章で説明してくださっていました。そのときに私の胸の中にこう広がったもの、これがキューピットが打ち込んだ矢のようなものでした。「これ! これ!」って。「何だろう。これについて知りたい。つくってみたい」と思ったんです。母に話したところ「友人の家にバラをもらいに行こう」って。ビニールの大きな袋を持って母の友人の家をまわって、バラの花びらをいっぱいもらってきました。どうやってつくっていいのかわからないから、とりあえず部屋一面に広げて乾かしてみたんですね。そしたらお芋をふかしたようなにおいになっちゃったんですが、まぁこんなもんかなーって。もうひとつ、何かの小説で「バラ枕」というのが心にあったものですから、枕もつくりました。とってもロマンチックな気持ちで、その枕で眠ったんですが、なんと蛾が出てきました。私、虫が苦手ですから、そこで心が冷えて……。

(会場:笑)

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歳月が過ぎ、結婚し東京に来たときにまたポプリ熱が再燃。電話帳で香料会社を調べ、思いきって電話をかけました。電話に出た方に、雑香の説明をしたところ「それ、おもしろいですね。僕が面倒を見よう」って言ってくださったんです。電話1本でお会いすることなく、それから20年くらい材料を無料で送ってくださいました。
もう、すばらしいですよね! 私、その方のことを「あしながおじさん」と呼んでたんですよ。で、時流れ、展覧会のときにその方が来てくれたとき、2人とも「あっ!」って感じで絶句。なぜかというと向こうはすごく若い娘を想像していたらしいんですよね。20年も経って、私も若いはずないんですが……。私の方も「僕が面倒をみよう」って言ったときの彼は凛々しい青年だったのに、まあごましお頭のおじさんでした(笑)。それからも、本をお贈りしたりお手紙いただいたり、とても親切にしていただいています。

そういうよい出会いがあり、ここまできました。それから、私は必死にアメリカの雑誌に出ていたレシピを集めました。そのころに、原書を読んでみたら「雑香=ポプリ」ということがわかりました。それで、それから私は「ポプリ」と呼び、アメリカの雑誌で集めたレシピを一所懸命つくりました。で、それを本にしたいという気持ちが湧き上がっているころ、ちょうど物書きになる機会を得、エッセイを連載することになったんですね。それで、エッセイの名前に「ポプリ」とつけ、連載を始めました。そうしたら「どうやってつくるんですか」っていう読者からの手紙をたくさんいただきました。それでつくり方の本を出しました。それから資料をたくさん書き込んだ厚い本「愛のポプリ」(講談社)を出しました。と同時に、私はたくさんのオリジナルポプリをつくりました。

私のポプリの特徴を言うと、まず、日本の材料を使った日本の季節感のあるポプリだということ。例えば、正月のポプリとか、キクを使った重陽のポプリとか、フジバカマを使った源氏物語のポプリとか、材料もテーマも日本的なものをたくさんつくりました。まとめて「四季のポプリ」と名づけています。もうひとつは文学に寄せたポプリ。特にシェイクスピア「ロミオとジュリエットのポプリ」とか「オセロのポプリ」とかいろいろつくりました。

そういうものをつくっているうちに、だんだんポプリのルーツついて調べたいという気持ちが湧き上がり、これは本場のイギリスへ行って調べるしかないなと思いました。そして大英博物館に通い、16世紀の、もうばらばらになって紐でくくってあるような本を借りては読みました。持ち出すこともできずコピーも取れないので、朝から夜まで、また次の日もその次の日も、ひたすらノートに写しました。ノートもどんどんたまりました。そうこうしているうちに、イギリスの16世紀から17世紀にかけてのシェイクスピアの時代、そこに私の気持ちがどんどん集中していきました。

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そして、これをしっかりしたものにまとめたいという気持ちが湧き上がり「そうだ、シェイクスピア劇を香りのものだけ拾い上げてテーマと絡めて考察してみよう」と。で、始めたとき、ポプリのためにとったノートが全部役立ちました。シェイクスピア劇の中にはいろいろな手づくりのものが出てきます。レモンのポマンダー。それから香り手袋。においがついた手袋です。昔は、いわゆるいまの香水はないわけです。練り香とか、あるいは手袋につけたにおいを手に移して、その手でにおいをつけたハンカチをふわんふわんとして香る風を送っていました。あるいは小さな箱の中に香るものを入れておいてその箱を開けてはにおいを嗅いだりしていました。

まとめながら「ロミオとジュリエットのポプリ」をつくったり、シェイクスピア劇に出てくるハーブをいっぱい植えているシェイクスピアガーデンで、ハーブを摘んで、香りを嗅いで、触って、ハーブによっては食べちゃって、満足して、それでまたペンを持つ……。そういうふうにハーブやポプリと関わりながら、1冊にしたのが『シェイクスピアの香り』(東京書籍)です。

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役に立つポプリ・
アロマセラピーポプリとは?

そういう中、季節のポプリも文学もいいけれど、もうちょっと役に立つポプリもいいなと思い、アロマセラピーを取り入れたポプリを考えました。日本でもだんだんに翻訳書が出てきて、いますごいブームです。でも、私はあくまでポプリの中にアロマセラピーを取り入れて五感としてとらえたいと思っています。

香りには全部効能があります。この効能がなぜ生まれるのかというと、香りを嗅ぐと脳の中に化学物質を分泌させるんだそうです。その化学物質というのが、例えば眠くなったり、目が覚めたり、仕事がしたくなったり、記憶力が増したり、恋がしたくなったり、いろいろな気持ちを変える効能がある。それを取り入れたのがアロマセラピーポプリです。

ベルガモットだったら「バランスをとる」。バランスをとるというのは、あまりはしゃがずあまり滅入らず、ほどほどに中庸を保つという意味。「そうか、私は気分が揺れているからベルガモットがいいんだな」とか。あるいはラベンダーだったら、抗ストレスで催眠。「あぁ、眠くなるんだな」とか。そんなふうに効能と照らし合わせながら、自分の好きな香りを覚えておくといいと思います。

例えば、これはオリジナルの「緑の風のポプリ」。中に、スギナやペパーミントとか、うちの庭の雑草がいっぱい入っています。オイルはペパーミントの香り。これはアロマセラピーから言うと「リフレッシュ・集中力・思考力」になります。緑色は、心と体のリラクゼーションにいいそうです。あるいは、信号は緑。緑は進めという意味で、安心感がある色。ですから、このポプリは、勉強部屋にぴったり。この香りをきいていると、集中力、思考力が生まれて、気分も新しくなり、それから目も覚める。しかもこの緑色が安心感があり、リラックスするということで、大変いい。

次に「やすらぎのポプリ」。これはラベンダーの香りがメイン。催眠、眠くなる・抗ストレス・それから感情のバランスをとる、そういう香りです。この青色が心を沈め、精神を集中させる。会社でいやなことがあったり、友だちと喧嘩したり、夫婦喧嘩しても、このポプリを見て香りをきいていると気持ちが安らいで「あー、ときは流れていく、まあすべてうまくいくだろう」と気持ちが静められるポプリなんです。

「恋のポプリ」はジャスミンの香りがメイン。気分が高揚し、自信と度胸がつく。ピンクという色が幸福感・高揚感・開放感・恋心、いいことづくめですね。これはシャクヤクの花びら、羽衣ジャスミンを乾かしました。それからバラのつぼみ、かわいらしいので、たっぷり入れています。こういうのは、恋人にあげて「さぁ、あなた私に恋しなさい」って言ってもだめ。

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(会場:笑)

自分が持って、気持ちを高めて、心がきれいになってウキウキすると男性が寄ってくる、そういうポプリです(笑)。

それから「希望のポプリ」。このポプリのメインの香りはベルガモット。イキイキと明るい気持ちになります。黄色は明るい気分になり開放感があって、食欲が出る。食欲がないときにいいですね。オレンジの皮をはさみで切ってチョウチョに見立てました。ミモザ、オレンジの皮を細かくしたもの、マリーゴールドの花びらが入っています。

ちょっと地味なんですけど「大地のポプリ」。ベチバーの香りがメイン。植物の根っこですね、緊張やストレスを和らげる。茶色は堅実で落ち着いた気分にする。これを見てると「何をがつがつとすることがあるだろうか、人間なんて昔から同じなんだよ。ゆったりした気持ちで生きようよ」っていう気持ちになるはず。

私がつくったアロマセラピーポプリは、そういうふうに心をいろいろな向きに変えるというそういう役目をするはずです。あまり「○○の役に立つ、○○の役に立つ」っていうと、変なもので、ちょっといやになっちゃうんですよね。人間っていうのはぜいたくで役に立つものは大好きなんだけど「何の役にも立たないけれどいいわね」というのにも心惹かれるんです。

ですから、そういうものを頭においた上で美しいものをつくり、それから美しい器に入れて身近に置くことによって自分の気持ちがどんどんよくなる。これが私のポプリのいちばんの目的です。

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一生の夢をひとつ持ち続けましょう!

いままで話したことは「生活の中で、香り自分の気持ちをいい方向にしていくとよいですよ」ということなんですが、そういうことだけでは、虚しくなることもあります。「今日も楽しく、つつがなく過ごせたし、庭のハーブもきれいだし、こどもたちも主人もまぁまぁだと、でも私って何かしら」とか「これでいいのかしら」とか「何で生まれてきたんだろう」って思うこともあるんです。

できれば自分の一生の夢をひとつ持っていると、いろいろなことがその夢のために我慢できるし、わりと楽しくできます。例えば、楽しいお出かけの予定がある前日には、掃除とかささっとできちゃうでしょ。「いやだなー」とか思わずに「明日でかけるわぁ」とか言って、ささっとやっちゃいます。少なくとも私はそう。そのように「私にはあの夢があるんだ」と思うと「退屈な家事も仕事も、夢のためにがんばろう」そういう気持ちになりますね。

ですから、何かひとつ夢を持って生きていったらいいんじゃないかと思います。私は『シェイクスピアの妻』という本を書くのが夢でした。本を書くための勉強なんだと思えば、苦しいこともクリアできたし「めんどくさいなー」って思う掃除もできました。また掃除しておくと資料がすぐ見つかるので効率もよくなったので、そのためにせっせと掃除するようになったし、日々の生活も楽しく過ごせました。

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私が昔読んだアメリカの雑誌に「生きがい探し」ということが載っていました。
「生きがいというのは自分がとても好きだけど人生でやり残したものが生きがいになる」と……。

幼稚園のときに学芸会でウサギを演じてすごくうれしかったと思ったら、劇団に参加して何かするのが夢かもしれない。あるいは小学生のころ、俳句を褒められて、それきり忘れていたけど、また始めて、その句集を出すのが一生の夢になりましたって人もいました。それから、ほとんど絵を描いたことなかったんだけど、こどものころ、特賞もらったっけかなぁ。じゃあ、スケッチブックに描いてみようとか。

アンテナ立てていると必ず見つかります。その助けに香りが役立ちます。香りによって、心の働きの無駄をなくし、澄んだ心境にして、それで自分にとっての大きな夢というものを見つける。絶対いいからやってみてください。

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熊井さんの毎日を新鮮に生きる工夫

「感謝をすること」
「心の掃除」
「美しいものを見る」

それから、私自身がやっている「感謝法」というのがあります。これは、とにかく毎日、感謝することを5つ書き出すんです。毎日5つもないですよね。なかったら、しょうがないから思い出して過去のことを書く。そのようにして、とにかく5つ書いていると、3ヵ月で人生変わるって書いてありました。始めてみたら6ヵ月くらいで確かに変わりましたね。

聖書の中にも、感謝を持って祈れば、その祈りは叶えられるって書いてあったんですよ。そういうのは、昔からのひとつの真理なんですって。感謝っていうのは、結局は自分が持っているものを「ありがとうございます」と感謝することによって、類を呼ぶんです。そういうことを、意識的に毎日、無理に書かなくてもいいので、心の中で思い出すだけでもいい、寝る前に思い出すだけでいい、そうすると、どんな人でも、とにかくまぁ5つはなかなかないもんだから、考えているうちに寝ちゃいますから。そうすると眠る瞬間に考えていることは、何か感謝することなんです。そうすると眠っている間じゅう、よい方に物事が動くという、こういう法則があるんだそうですよ。
そういう感謝の祈りをすることは何の邪魔にもなりませんね。そういうことで、感謝の気持ちというのはいまだにずっと私自身生き方の基本にしてます。

それからもうひとつ、毎日することに「心の掃除」があります。嫉妬心、人の不幸を願う気持ちとか、そういうものを持っていながら「神さまありがとうございます」って感謝してもだめなんだそうです。それから自分を責めるってことがありますね。「あのとき、ああすればよかった、こうすればよかった」とか、これは非常によくないんだそうです。こういうこと考えている暇があったら、これからよくするにはどうしたらいいか考えるんだそうです。だからまた聖書を開くわけですよね。私はクリスチャンじゃないですが、聖書からよいところを読んでいます。聖書の中に「悪人のために祈ってあげなさい。しあわせを。そうすれば結局はその人の頭にお灸を据えることになります」って怖いこと書いてあるんですね。これはしあわせを祈るのはできないけど何も考えないのがいいんだ、ということ。聖書を開くと、そんなことがわかるわけです。

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それから、自分が努めてやっていることが「美しいものを見る」ということ。もちろんお花が美しいものの最たるものですけれど、私はこどものころから水晶が好きなんです。もう、水晶を見ると心が躍るんですよね、自分の心にぴたっとくる水晶に触ってその冷たさ、見た目の美しさ、そういうものを感じるとすごく自分にいいものが来ている気がするんですよ。つまりは心の浄化にこの水晶が役立っている気がします。
ガーデンというグリーンの模様が沈んでいる透明の水晶があるんですが、その原石を「緑の風のポプリ」の真ん中にポトンと入れ、それを机の上に置いてときどき眺めたりさわったり、植物と水晶との語り合いに耳をすませたり、香りをきく、そういうふうにして楽しんで、それによって、その力で自分の心を浄化していくんです。

本当は、ものに頼らず、アロマセラピーでさえ頼らず、心だけでできたらいちばんいいんですよ。ところが人間は弱い、弱いからお札やら風水やら水晶やら、それからアロマセラピーやらいろいろするわけです。で、何かがよくなったとしたらそれのためじゃないんです。自分の心がこれで大丈夫だと思ったから、カチッと歯車があって、いい方になるわけです。その境地に達するには、いろいろ勉強が必要なわけなんですね。私もまだその境地に達しません。ですから、きれいなものをいっぱい見て「こんなにきれいなものがこの世にまだあるんだな」と思うんです。世の中にはいやなことや辛いこともいっぱいあるし、自分だけきれいなものを見てしあわせでいいはずはないんだけれど、それはギリシャ・ローマ時代からの人間の歴史であって、その中で、自分はなんとか正気を保ってきれいなもので心をきれいにして、できることをする。秘かであっていいから、できることをする。それによって心のつじつまを合わせる。そんなことを、やっていくほかない時代だと思います。

そういうわけで、まずは自分の心を立て直し、できるだけ心の掃除をし、美しいものを見、信じる……。で、いつでも「やりたいことはできること」ってことをおまじないのように、繰り返すわけです。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
今年イギリスに行こうと思っています。熊井さんが行かれて、よかったと思われる場所、建物などを教えてください。

熊井さん:
私が大好きなのがケント州のシシングハースト・カースル。これはイギリスの庭園めぐり的な本に載っています。一押しです。私は春行って、もうたまらなくなって、夏また行ったくらい。それからストラットフォード・アポン・エイボン。ここも、シェイクスピアゆかりの地で、生まれたお家、奥さんのコテージ、娘さんのお家、晩年に住んだ家のあと。とてもきれいな庭があるの。あと、シェイクスピアホテルというのがありまして、このホテルのムーンライトという部屋に泊まると、目の前がニュープレイスというシェイクスピアが晩年に住んだ家の跡につくった庭があります。ノットガーデンといって、とてもきれいな整形式のお庭です。
もうひとつは、ロンドンのリージェントパーク。この中にクィーンズ・メアリーズ・ガーデンがあり、四季咲きのバラはきれいでしょう。それからオールドローズとイングリッシュローズの花づなが優美につくってあって……。ちょっと見上げるところにベンチが置いてあって、とてもいいです、おすすめ。どこに行ってもいいわ(笑)。行きたい(笑)!

(会場:笑)

お客さま:
熊井さんは、いつごろから『赤毛のアン』のファンですか? どういうエピソードがお好きですか? また登場人物の、どの人のどんなところに惹かれますか?

熊井さん:
アンの話を始めると、止まらなくなっちゃうと思う。私が出会ったのは中学1年。男の子が「これおもしろくないけど読む?」って貸してくれました。男の子にはおもしろくない本ですね。でも、私は夢中になりました。当時の私は、ガリガリに痩せてて、勉強はまあまあできるんですが、体操は2っていう、虚弱なこどもだったんですね。痩せている、勉強は一応できる、気が強くて男の子といつもけんかしてるってところがアンと共通していたので、アンというキャラクターに惹かれちゃって……。
それから、長野県というところは非常にプリンスエドワード島と自然が似ているんです。スミレとかスズランとかお花が共通しているんですね。妹を連れて「スミレの谷へ行きましょう」と、赤毛のアンごっこをずっとしていたんですね。
(中略)
いつでもアンのことを考えていたし、ポプリもつくってたし、エッセイもせっせと書きました。
(中略)
プリンスエドワード島にも行ったんです。いろいろな人に会いました。いい人ばっかりでした。そして、それはそれはいい時間を過ごしました。自分が読んだ本で長年あこがれていて、そこへ行ったときに、期待を裏切られなかったっていうのはいいですね。
私にとって、アンは永遠ですね。第1巻を取り出して、読み始めたらいまでも止まりません。マシューがアンに洋服をあげるところ、いまでも泣きます。なんとも言えない気がするのね。女性だったら誰でもマシューがいるのね、出会うときがこどものときかもしれないし、若いときかもしれないし、中年かもしれないし、もしかしたらおばあちゃんになってからようやく出会うかもしれないけれど、どんな女性にもマシューはいる。そのマシューによって、償われて、辛い人生でもいい子いい子されて、頭なでてもらって生きていけるんだなって、そんな気がするの。そういう人間関係の不思議さも『赤毛のアン』から教わりました。いまでも大好きですよ。

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お客さま:
熊井さんのこれからの夢について、お聞かせいただけますか?

熊井さん:
『シェイクスピアの妻』を書き上げたあと、今度はさらに人がやらなかったシェイクスピアのアプローチをしたいと思いました。そのひとつが、シェイクスピアの作品に出てくる人物、フィクションの人物なんだけどその人物の心を探りたいと……。そういうことをして、もう少しこのシェイクスピアの世界に入り込んでいたいな……と。一方ではシェイクスピアがらみのエッセイをいっぱい書いていて、結構たまっていますので、それを素敵な本にしたいっていうのがちょっと小さめの夢です。
そのためにはストラットフォードへもう1回行かないと、自分の気持ちがきちんとしないんで……。トータルな夢としては、シェイクスピアの故郷・ストラットフォード・アポン・エイボンに住みたい(笑)。

フェリシモ:
「やりたいことはできること。それを描くために夢を持つ。夢を持つためには誰も知らないけれど自分が惹かれるものに対してのアンテナを立てていこう」というお話がありました。いまからアンテナを立てることができる工夫についてお伺いできますか?

熊井さん:
やっぱり、いつも心を開いていること、それから自分の精神状態がいいっていうことだと思います。私もつい最近あったんですが、悩み事があると、ほかのことどうでもよくなりますね。植木鉢の花さえ枯らしても平気みたいになっちゃうことがありますね。ですから、極力自分の気持ちをよくして、ポジティブに保つ。そのためには、今日帰りに一鉢のハーブを買って、そのハーブと付き合いきってみる。においをかいで、つまんでみて、姿を見て、スケッチして、食べてみる。それから本でそのハーブについて徹底的に調べてみてもいいし、エッセンシャルオイルを買ってきて、生とどう違うか比べてみる。そんなふうにしていると香りとの付き合いは必ず気分よくしてくれます。
それから、帰りに差し上げるラベンダーは、つぶつぶの中にジャスミンとイランイランとパチュリの香りがエッセンシャルオイルを揉み込んであります。パチュリってご存知ですか? 恋をしたくなる香りのひとつです。私の講座では「恋人のポプリ」に入れます。今年は潤年でしょ。ディープ・イアー・ブーケっていう処方があって、これは昔の香りの本に「この香りと、この香りと、この香りを入れると、潤年の花束という香りになりますよ」という、そういうものなんですが、チュベローズとかジャスミンとかローズとかそういうものと一緒にパチュリが入ってるんですね。このパチュリを私がみなさんのプレゼントにいれた理由は、潤年のブーケとイコールではないけれども、この雰囲気とにかよったものを差し上げたいなと思ったんです。
この潤年の花束というのは、どうしてつくられたかといいますと、イギリスにこういう古い歌があるそうです。

「潤年には、彼女たちが選ぶ権利があり男たちは断れない」

よーく考えてみると、女性が選ぶ、男性は「ノー」って言えない。いいでしょ。おもしろいでしょ。潤年ってそういう年なんですよ。初耳ですか? ですから、これと思う人がいたら今日お配りするラベンダーをさりげなく香らせて反応を見てください。
それから、女性の気持ちを明るくポジティブにする、そういうブレンドですから、これを持ち歩いてもいいですね。基本的にラベンダーは気持ちが安らぐ香り。自分の気持ちをなだめ、いやし、さらに明日の活力を生む、そういうことに役立ててみてください。

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Profile

熊井 明子(くまい あきこ)さん<作家・ポプリ研究家>

熊井 明子(くまい あきこ)さん
<作家・ポプリ研究家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
長野県松本市生まれ。信州大学教育学部(松本)修了。映画監督熊井 啓氏と結婚。執筆の傍ら長年ポプリの研究を続け、ハーブにも造詣が深い。1999年、山本 安英の会記念基金(委託者・木下 順二氏/運営委員長・尾崎 宏次氏より、「シェイクスピアの魅力を新たな角度から探求した業績を評価して」第7回山本 安英賞を贈られる。著書は『ポプリの詩』(講談社)『猫の文学散歩』(朝日新聞社)『フェイクスピアの香り』(東京書籍)『シェイクスピアの故郷』(白石書店)『赤毛のアンの人生ノート』(大和出版)『シェイクスピアのハーブ』(誠文堂新光社)『香りの旅』『新編・人はなぜ薔薇を愛するのか』(千早書房)『シェイクスピアの妻』(春秋社)ほか多数。

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