神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • リチャード ハッテンさん(デザイナー)
  • リチャード ハッテンさん(デザイナー)

プロフィールを読む

現在表示しているページ
フェリシモ
> 神戸学校
> リチャード ハッテンさん(デザイナー)レポート

「Homo Ludens-遊び心のある人間-」



<第1部>

デザイナーになったのではなく、
デザイナーとして生まれてきたリチャード ハッテンさんと
まずは、質疑応答でコミュニケーション

リチャード ハッテンさん:
本日は、たくさんのみなさまにお越しいただき、とてもうれしく思います。日本に来るたびに、とてもうれしい思いをしているんですが、今回は特に、このような場を持つことができ、とても感謝しています。今日は自分の世界をみなさまと共有する覚悟です。どんな秘密でも語りますので、何でも聞いてください。今日は、質疑応答から始めたいと思います。何か質問はありますか?

お客さま:
いつからデザイナーになろうと思ったのですか?

ハッテンさん:
デザイナーなったのではなくて、私はデザイナーに生まれてきました。生まれたときから選択の余地はなかったように思います。あるときに、専門的なデザイナーと、自分を呼ぶようになりましたが、小さいときからデザイナーとして意識していて、いろいろな人や、人の行動に、非常に興味がありました。

お客さま:
さまざまな文化、さまざまな国で成功されていますが、その秘訣はありますか?

ハッテンさん:
まず、いちばん大切なのはグッドデザイン、いいデザインを提供するということ。それがいちばんの成功のかぎです。それと、世界はどんどん小さくなっておりまして、私は日本からアイスランドまで、本当にさまざまな国で活動していますけれども、違ったようで、実は共通点がたくさんある。ですから、あまり差を意識していないです。私たちみんな、愛と美しい物を必要としているということには変わりありません。そのニーズはどこに行っても同じです。

お客さま:
ハッテンさんのデザインのポリシーは遊び心ですよね。日本では、企業、またビジネスの世界では、その遊び心はなかなか報われない、通らないことが多いと思うのですが、若い人のなかでは、そのプレイフルなところが尊重されているように思います。

ハッテンさん:
私の使っている言葉は「ホモ・ルーデンス」という言葉なんですが、その前は「考える人」でした。「ホモ・ルーデンス」というのは、「プレイフル=遊び心のある人」という意味を表しています。私は、生活をエンジョイして生きることが大切だと思っているので、デザインのアプローチの上で、つくる側も使う側もプレイフルなエレメント(要素)を持って、生活をエンジョイしていくことが、デザインのフィロソフィー(基本的な考え方、哲学)だと思っています。私は、これからが遊び心のある人間の時代だと思っていたのですが、日本に来てみたら、なんと遊び心のある人間にあふれていることを発見しました。

PHOTO

今回の私のように、こうして企業に招かれて、こういう場を持たせていただいている例もありますので、必ずしも日本の企業ではありえないことではないと思います。もちろん、若い人の方が、自分の仕事をアピールするということは確かだとは思いますが、これは年齢にあまり関係なく、心が若いかどうか。その若い方たちも、だんだんに年をとっていくわけですから、自分の作品、商品に対する市場は、大きくなる一方だとは思います。70歳になるオランダの女王さまにも、私の作品をお買い上げいただきました。日本の天皇はいかがでしょうか。どこかでお買い上げいただいているかもわかりませんけれど、まだ、私のところには伝わってきておりません。

お客さま:
遊び心をデザインに、どのように具体化しているのですか?

ハッテンさん:
デザインは9時から5時までの仕事ではなく、24時間の仕事だと思っております。特に戦略とかプランが、はっきりあるわけではありませんが、私は起きている間、人を観察したり、食べたり、生活の中で、常にいろいろな事を観察しながら、またそして、私の持って生まれた態度が、とてもプレイフルだと思っています。ですから、それが自然に、デザインに反映されるのだと思います。

お客さま:
今日は若い方ばかりで、恐縮しています。まず遊び心とは、どんな心が遊び心であって、どんな心が遊び心でないのでしょうか。基本的なところがわかりませんので、その入り口をちょっと教えていただけますか。

ハッテンさん:
遊び心は、こどものような心。これは、年齢に関係なく誰の心の中にも残っています。こどもというのは、生まれたときから遊び心を持っているんだと思います。私もふたり、小さなこどもがいます。彼らを観察していると、いつも楽しんで、いつも笑っています。それが、とても刺激になります。大人は、問題ばかりが目に入ってきて、そこに集中しがちですが、こどもたちは周りを見てチャンスを見る、オポチュニティ(opportunity)をまず見る。そこで、非常にオープンな心を持ってプレイしている……、それが素晴らしいと思います。

お客さま:
ハッテンさんは何をして遊んでいるときが、いちばん楽しいですか?

ハッテンさん:
特に、遊ぶということを、ひとつの行為と考えてなくて、常に遊んでいるつもりです。いまも、心の中では、遊んでいてとても楽しいです。世界中の人たちが、そのように、楽しく遊び心を持って暮らしたら、犯罪も戦争もなくなると思います。

お客さま:
日本では、最近ハンドメイドが流行っています。女の子の間では、きちんとした、カッチリしたデザインよりも、少しゆるいデザインというか……、偶然できたコラージュぽいものが流行っていたりします。デザインを学んできた人たち以外の一般の方々が手づくりをしたり、リメイクしたりすることがブームになって久しいんですけれど……。その辺の、この偶然にできたものに対しては、どういうふうにお思いですか?

ハッテンさん:
それは日本ばかりでなくて、世界中のトレンドだと思います。それも、普通の人たちばかりではなくて、デザイナーの方たちがクラフト的な要素を取り入れた仕事をたくさんされています。作品に心があるということが、とても大切になってきているのではないかと思います。私は工業デザイナーですが、ファッションデザイナーと同じように、やはり心を込めて、心のある作品をつくりたいといつも考えています。インダストリアル・デザインは、材質や制作工程にクラフト的な知識が必要とされるので、そういう意味では、私たちは工芸家、クラフトマンであるというふうに思います。

フェリシモ:
ということは、工業デザインのものにも、1点ずつの、作家さんの心や気持ちをのせて、お客さまにお届けすることができるということでしょうか。

ハッテンさん:
もちろん機械でつくる物ですから、ご質問の意味もわかります。同時に、人間性をそこに加えるために、私はユーモアを大事にしています。やはりデザインする側が、そういうことを意識して、使ってくださるみなさまの心に訴えたいという気持ちがあれば、それがグッドデザインとなります。そういうことに欠けるのがバッドデザインであるというふうに思います。私がつくった物を通して、人に思い出を与えるというか、使ったことから思い出を持ってほしいと思います。私の作品には10万円の物もあれば、4000円の物もあります。そのように、まあ広い方々に同じように、それを味わっていただきたいと思っております。

お客さま:
日本とオランダのデザインの相違は、どんなものですか。それと、デザインは、とても均一化してきています。みんな、同じようになってきているように感じますが、いろいろな国のスタイル、文化のスタイルがなくなっていく状況をどう思われますか。

ハッテンさん:
日本とオランダのデザインの差は、もちろんあると思います。では、どんなところが違うかと言われると、ちょっと一言では言えません。私は、最初日本に来始めたころ、自分のデザインが日本的だと言われていました。自分では「そうではない」とずっと思っていたんですけれど、最近は、「そうかも」と思うようになってきました。オランダの場合は、非常に小さな国なので、ちょっと行くとベルギー、ちょっと行くとフランスに着いてしまったり……。小さいところが日本と似ています。でも、いろいろな国の影響に対して、日本よりもっとオープンですね。ただ日本も最近は、オープンになってきていると思います。

PHOTO

それと、マス・アプローチということですが、確かに、車ひとつとっても、どこに行っても、同じような車ばかり。これは、車メーカーにとっても、かしこいこととは思えません。質の上でも均一化してきていますし、価格的にも、それぞれ競争的な価格になってきています。では、何で勝負するのかというと、やはり、デザインしかないわけですから、それに力を入れずに、同じような物をつくっていくのは、あまりいいこととは思えません。デザインをユニークにしたら、もっと新しい市場が開けていくかも知れません。例えば、フォルクス・ワーゲンのビートルなどは成功していると思います。世界人口60億の人間全員のニーズを満足させるというのは、無理なことですから、もっと小さい市場単位で考えて、その方たちがハッピーになる商品を考えていった方がいいと思います。

お客さま:
ハッテンさんは、生活を常に楽しんでいらっしゃる遊びだと言われていました。生活の中で、困難とか、あとは壁だとか、そういうことも遊びに変えていらっしゃるのでしょうか。もしそうだったら、どういう考え方で、変えていらっしゃいますか。

ハッテンさん:
当然、つらいこともたくさんあります。でも、つらいことの後には、必ず楽しいことがあると思っています。つらいことがなければ、反対に喜びも味わえないわけですから、つらいは必要なことというふうに信じています。仕事の上でも、すべてがいつもスムーズにいくわけではなくて、いろいろな苦労があるからこそ、その後の満足感はとても大きいのです。

お客さま:
兵庫県立美術館で行われている展覧会「デザイン21」で、いすが絡み合った作品を見させていただいて、すごくおもしろいと感じました。あの形に、まとまっていった過程とを教えてください。

ハッテンさん:
あれは、鎖をイメージしてつくったいすです。人と人との関係は、鎖のようなもの。本当にいい関係というのは、壊れない鎖のようにつながっているものだということです。

お客さま:
例えば、僕に赤ちゃんができたとして、美意識の高い子に育てようかと、デザインのセンスのある子に育てようとか、ユーモアのセンスのある子に育てようと思ったときに、こどもに何をさせるのがいちばんいいと思われますか?

ハッテンさん:
私のこどものことで言えば、できる限りたくさんの時間を一緒に過ごして、一緒に遊びます。彼らのレベルで考え、一緒に笑うということに、心がけています。私の1番目の仕事は、父親であると考えておりまして、2番目が何もなくて、3番目がデザインです。

お客さま:
大自然をお手本にデザインを考えるデザイナーや建築家って、結構いると思いますが、例えば、こどもを大自然の中で遊ばせるのと、モダンな工業デザインがいっぱいある都会で遊ばせるのと、どちらが将来的には「センス オブ デザイン」とか「センス オブ ビューティー」を育むと思われますか?

ハッテンさん:
それは、あまり関係ないと思います。大切なのはこどもを一所懸命愛してあげること。それが高層ビルの中でも、田舎の自然の中でも同じだと思います。

ハッテンさん:
どなたか、私の作品の写真をご覧になりたい方はいらっしゃいますか?

(会場:拍手)

ページのトップへ

「日常生活の中で使っていただけ、
喜びをもたらす物をつくるのが自分の役割」
そんなハッテンさんの思いが詰まった作品をスライドで。

(スライド)
これは「テーブル アポン テーブル」というテーブルの上にテーブルがあるという作品。15年程前に住居ということを考えて、物づくりをしていたときに、つくりました。これは1/10のモデルです。テーブルをひとつの居住空間と見まして、その中に、更にテーブルを使ってベッドがあったり、テーブルがあったり、物入れがあったりという作品です。これは、建築と家具との関係、まあ建築と家具と人間との関係をいろいろに示すもので、そのつくる大きさによって、これ自体がスツールになったり、これが住宅空間になったりします。サイエンスというか、家具と建築という、自分のイマジネーションによって、解釈がいろいろにできるということですね。知識があれば何かは達成できるけれど、イマジネーションがあれば何でも達成できるということです。

(スライド)
「テーブル・チェアー」という作品。中にあるチェアー、まわりにあるのがテーブルで、これは肘掛け、背もたれにもなります。これは、ご覧の通り、コンセプチュアル(概念的)な作品。15年くらい前のもので、もうこのような物はつくっておりません。

(スライド)
これは、テーブルをふたつ重ねた、バース・ツールで下の低い方が足のせになります。物の形をどこかからか取って来るのではなく、自分でつくり出すということをやっているわけですが、そのスケールとかサイズによって、用途が変わってくるということです。

(スライド)
テーブルをいくつか重ねて書棚になるという例です。

PHOTO

(スライド)
ランプになったテーブル。すべてテーブルをベースに、いろいろなデザインをしているシリーズです。誰もが、既に知っている物や形を使ってデザインをしているので、説明しなくても、すぐに何かわかっていただけます。

(スライド)
テーブルの形をしたフルーツボウルです。

(スライド)
これは、私のスタジオのトイレ用につくりました。あるとき、ドイツのメーカーの方がスタジオにいらして、「トイレを使わせてほしい」とおっしゃいました。トイレから出ていらしたときに、とても気持ちのよさそうな顔をしておられました。私は、その方が快便をエンジョイしていらしたのかと思ったんですけれども、実はトイレにあった、このトイレットペーパー立てを非常に気に入って、生産したいと言って興奮しておられました。

(スライド)
これは、ロッテルダムのスカイラインという作品。メーカーから、いろいろな用途別のキャビネットをつくってほしいという依頼を受け、その時に、つくった物をバラバラに出すのではなくて、このように積み重ねてみたら、スカイラインができてしまいました。

(スライド)
このふたつの作品は、1994年のイタリアでの家具フェアのためにつくった物です。当時、イタリアでは選挙が行われるときで、ネオファシストの党が勝ちそうな状況でした。この作品は「イタリアの旅」という題だったんですが、この作品を通して自分の意見を伝えたいと思いました。戦後50年経って、いまだに、ファシストと呼ばれる方たちがいるというのに対する私の声明です。戦後カトリックの教会が、多くのファシストたちを南米に亡命するのを手伝ったんだそうです。カトリックのロゴとファシズムのロゴをモチーフとしてつくったのですが、これは、どういう意味かと言いますと、ファシズムのシンボルをモチーフにしたいすに座ったときに、全員が背を向ける形になるんですね。誰も向かい合わないんです。4つのいすが、すべて4方向に向いているというのがポイントです。

(スライド)
自分のこどもが生まれたときに、「プロント」という名前でつくったこどもの家具です。ローテーション・モールドというテクニックを使ったワンピースの作品です。それが、工業デザインの強みと申しますか、いろいろな材料とか、生産工程の知識を持つことにより、いままでできなかったと思うようなことも、どんどんできるようになっていきます。これは、2種のポリウレタンを使っていて、芯は固い物にして、まわりは、こどもがぶつかったりしても、ケガをしないよう、ソフトなポリウレタンを使っています。
(いろいろな角度からいすを見ながら)これは、大量に生産できます。同じモールドを使っているので、同じ形で色を変えることができます。あとはランダムに、このように色がどれも同じではないという結果になっております。モールドを使ってはいるんですけれども、ちょっとクラフト的なつくり方をしているので、ひとつつくるのに1日かかります。ひとつ10万円くらいしてしまうので、もう少し安くつくる方法を考えました。これが、その結果です。値段は約1/20です。材料の使い分けはできないので、同じ固さのウレタンを使っています。さきほどお見せした物と、ほとんど変わらないと思います。これが妥協かと言われれば、そうとしか言えませんが、私としては、できるだけ多くの方々に、私のデザインを味わって、使っていただきたいので、このような物をつくりました。このように努力しているわけですが、その場合にも必ず、心を込めた、心のあるデザインということは、絶対的条件として仕事をしています。あるとき、私のテーブルを買ってくださった方が、「こどもがとても喜んで、そのテーブルの上でいろいろなことをやる。それがとてもいい思い出になった」というふうにおっしゃってくださって、とても感激しました。いつも、そのような物づくりをしたいと思っています。

(スライド)
さきほどのこどものためのいすのダイニングチェアバージョンです。大人のサイズになった同じいすのデザインです。

(スライド)
オランダのセントラル・ミュージアムのダイニングルームのためにデザインしたいすです。

(スライド)
セントラルミュージアムのダイニングルームです。古い修道院をそのまま利用してつくったミュージアムで、ここは、当時も修道女たちが食事をする部屋でした。98年にこのプロジェクトを手がけることになったときも、500年前にはここは修道女たちが、食事をしていたんだということをおもしろいと思って、それを21世紀で再現しようとしました。500年前にどのように修道女たちが食事をしていたんだろうかと考えたときに、非常に長いテーブルに座って食べている姿を想像したんです。それで、50mもの長さのテーブルをふたつつくりました。いすは背の部分が高いいすに座っている姿を想像しました。それで、高さが1mあるいすをつくりました。高くて重いいすをイメージしましたが、これはローテンション・モールドを使っているのでとても軽いです。これは、この特定の情況を想定してつくったいすですが、このあとも、それなりのいろいろな使い方が考えられると思います。
2、3年前にオランダの王子さまが結婚なさったとき、世界各国から皇室の方とかいらした晩餐会でも、ロイヤルブルーでつくったこのいすを使って、お食事がありました。
最近では、家の近くにできたファーストフード店でも、このいすが使われ始めました。もともとは美術館という文化的な背景を持ってつくったものが、ロイヤルウェディングの晩餐会で使われたり、ファーストフードチェーンで使われるということがとてもおもしろく、うれしく思います。

PHOTO

(スライド)
照明は、やはりシャンデリアで……。キャンドルのシャンデリアだと思ったんですが、現代ふうに解釈して、電球を使い、電球をつなぐ電線もあえてデコレーションの一部になるように考えました。

(スライド)
これも、食堂の一部。パッと見ると絵画のように見えると思います。ディテールを見ないと、それがペインティングではなくて、写真であることがわからないように思います。

(スライド)
食器も、友人のデザイナーに頼んで、ここだけのために使ってもらいました。アーノルド・ビザーという、ガラス工芸をやる方とパックルさんの作品です。

(スライド)
ミュージアムの売店。ディスプレイ・テクスチャーは、やはり、テーブルを重ねてつくったものです。ランダムに重ねたように見えると思いますが、そのおかげでいろいろなディスプレイの可能性が広がって行きます。

(スライド)
この売店は、入り口から入ってすぐの見上げたところにあります。目立たせるためと、それから、その売店としてはポストカードを売り物としていますので、それを目立たせるように、ポストカードのディスプレイを使って目立つようにしました。

(スライド)
下の段はこんな色にしています。下から見た場合には、非常に目立ちますけれども、実は収納という機能的な作品です。

(スライド)
カウンターも2種類作りまして、ひとつは一般の方たちに提供する情報などを置いていくもの、もうひとつはデスクとして機能するものです。

(スライド)
オランダの女王さまにも使っていただいている「スリー・マイナス・ワン」という作品。座ったときに、手をいちばん届きやすい位置にということで、引き出しを高めにしています。立ったまま、何か書きたいときは、引き出しの上をデスクとして使うという考えです。一見、机には見えないかもしれませんが、実は、機能から生まれたデザインで、しかも、プレイフルな要素が入っています。機能はデザインにとって、とても大切だと思っていて、使わなければつくる価値もなく、それでアーティストと呼ばれるのはとても嫌なのです。あくまでも日常生活の中でみなさんに使っていただけ、喜びをもたらす物をつくるのが自分の役割だと考えています。

ページのトップへ

<第2部>

フェリシモ:
引き続き、第2部もスクリーンでハッテンさんの作品をご覧ください。

ハッテンさん:
時間さえあれば1日中話していたいですね(笑)。

(スライド)
これは、ヘッグのミュージアムのためにつくった、スピーチをするための演台。
これが、ミュージアムのディレクターです。彼はチャンスを与えれば永遠に話し続けます。演説がだらだらと長くなった場合には、赤いハンドルを持って、このまま演台を取り去ってしまいます。

(スライド)
これもミュージアム用につくったいすです。オランダの生み出した非常に有名な画家がデザインしたミュージアムです。ここでも、ダイニングルームのデザインをしてほしいと頼まれました。さきほどのセンントラルミュージアムの場合もそうですが、そこに昔何があったのかということを常に考えてデザインしたいと思っています。ここには彼の作品がたくさんあったので、それを念頭に、ダイニングルームのいすをデザインしました。彼の作品の構造はそのままで、リズムもそのままで、そのランダムなクオリティもそのままで、そこに自分なりのテクノビートを加えて、できあがったのがこの作品です。

(スライド)
テレビ局のプロモーション用につくった「ダンボ・カップ」です。これは、息子が4歳のときの写真。飲むという動作を形にしたら、こうなりました。

(スライド)
セントラルミュージアムの「ガーデン・ファーニチャー」です。そのときすでに、ガーデンは、有名なフランスの造園家によって、デザインが終わっていました。そこに新たに永久的な物を置くことを考えられなくて……。そよそよなびく紙のような物をイメージしたんですが、あまりにもポエティックで……。
この作品のヒントは息子の部屋から得ました。息子の部屋で見たのはスキッピーボール。柔らかい物でできているんですけれど、それを固い材質でつくってみました。それが、この作品です。いすとしても、テーブルとしても機能します。
使っていないときには、誰かが忘れていったオレンジのように見えます。

PHOTO

(スライド)
どこにでも自由に持ち運べるので、多くの人が集めて一緒に使ったりもできます。それによって、ガーデンが常に変化していきます。もともとのデザインに、この取手がついているんですが、それもそのままにしておきました。持ち運びがとても簡単です。

(スライド)
これは息子が3歳のときの写真。これから、彼がデモストレーションをします。

(スライド)
これは、近づいて来たところです。
たった3歳のこどもでも、こうやって持ち運びができます。
積み重ねることができるというところもお見せします。

(スライド)
まず1つ目。ちょっと体より大きいです(笑)。
でも、成功しました。
3つ目にも挑戦します。
できました!
4つ目も!!

(会場:笑)

(スライド)
デザインするときには、何か問題を解決するためにデザインをするのでなく、新しい可能性を広げるためにデザインしたいと思っています。これは、取手としてデザインしたものが、もともとは、そういうつもりでなかったのに、気がついてみたら、みなさんがこのように、ちょっとカップを置く場所に使ってくださっている……。可能性を発見してくださったわけですね。

(スライド)
これは家の写真です。これは、こどもたちのためにつくったもの。このボックスが彼らの部屋です。私のラストネームは、「ハッテン」と言います。「ハット」というのは、英語で「小屋」という意味なんですね。なので、こどもたちは、部屋のことを自分の小屋だというふうに呼んでいます。

(スライド)
これは2番目の息子の部屋です。彼の部屋も「ハット」……、小屋なんですが、そのなかに、さらにハットがあります。これは、ドアが開くところ。息子が窓から出てきます(笑)。
いま、彼が自分の小屋に入って行ったところですね。これは、彼が自分のキャンディーショップだと呼んでいるそうです。

ページのトップへ

お客さまとのQ&A

お客さま:
ご自身がアーティストと呼ばれることが嫌だっておっしゃっていたのが印象的でした。デザインとアートの違いは、ハッテンさんにとっては、どういうものですか?

ハッテンさん:
ともにクリエーターであるという点では、基本的には違いはないと思います。デザイナーの場合には、必ず、クライアントがあって、クライアントの持っている問題を解決する方法を提供するという任務が当然あります。デザイナーの場合には、多くの人たちを相手に、自分の作品を発表できますが、アーティストの場合には、比較的小さなグループに向けて、仕事をすることが多いのではないかと思います。ですから、自分はデザイナーである事ことが、とてもうれしいと思っています。
ともに、ひとつの作品が、いろいろなイマジネーションを起こさせたり、考えさせたりということでは同じなのでしょう。けれども、私は、やはり、自分の作品が、普通の人々の日常生活の中に入り込んで使われることを、うれしく思います。初めて自分の作品だったいすが、ミュージアムに展示されたとき、実は非常に複雑な思いでした。日常の中で使われる物なのに、突然触れられない存在になったことが、とても不思議な感じでした。いろいろなミュージアムに自分の作品がコレクシュンされるのは、うれしい反面、やはり、作品は使われているのがいちばんなので、そのために、いま「使われている作品」というテーマで、本をつくっているところです。もし、わたしの作品を実際に使っていたり、使用中の状況をどこかでご覧になったら、写真など送っていただければ、その本に必ず含めます。よろしくお願いします。

PHOTO

お客さま:
デザインによっては、世の中が消費にどんどん進んで行くのと、逆にエコロジカルな方向へと戻って行こうとしていると、よく感じるのですが、消費されるデザインと残っていくデザインの違いは、どのようなところにあるとお考えですか?

ハッテンさん:
地球はひとつしかないのですから、資源を大切に使っていかないといけないと思います。そのために、耐久性とか、持続が可能なやり方を非常に大切にしています。それは、マテリアルばかりでなく、デザインも同様で、長期に渡ってアピールする物は、長く大切にしていただけるし、いろいろな思い出をつくってきた商品というのは、それなりに物に心が残って、思い出が残って、末永く大切に使ってくださると思います。

フェリシモ:
最後に神戸学校から質問をさせていただきます。ハッテンさんは、絆や思い出など、目に見えない心に残る物を形に表現されていると思います。仕事が大きくなるにつれ、たくさんの人と協力して仕事を進めていかなければならないと思います。そういった上で、多くの人に自分の思っている気持ちを理解してもらうために、工夫していることは何ですか。また、一緒に働くスタッフが気持ちよく働ける環境をつくるのに、どのような工夫をしていますか?

ハッテンさん:
自分のデザイン自体が、いちばんの自分のコミュニケーションツールというか、アンバサターであるという考え方を持っています。言葉で説明しなくても、わかってもらえると思っています。

フェリシモ:
ありがとうございました。リチャード ハッテンさんの、使ってこそ、物の価値があるというお話や、使われてこそ物がいちばんしあわせであるというお話を伺い、物を美しく飾っているだけではなく、使うことでデザイナーの気持ちが伝わってくるということを学ぶことができました。

ページのトップへ

Profile

リチャード ハッテンさん<デザイナー>

リチャード ハッテンさん
<デザイナー>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1967年オランダ生まれ。1991年アイントホーフェン工業デザインアカデミーを卒業と同時にリチャードハッテンスタジオを設立し、家具、プロダクト、インテリアデザインの分野で幅広く活動。
1993年ミラノサローネで衝撃的デビューを果たしたドローグデザインの代表的存在であり、国際的に最も成功したオランダ人デザイナーのひとりである。作品はユトレヒトセントラルミュージアム、ヴィトラ・ミュージアム、ニューヨークMOMA、サンフランシスコMOMAをはじめとする多くの美術館にコレクションされている他,数々のデザイン誌で紹介されている。
また、2001年には彼の作品集「Richard Hutten - Taking form, making form」が出版されている。

ページのトップへ

その他のゲスト

ページのトップへ