神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「ダンスでコミュニケーション!」



<第1部>

(映像)

皆さまとお会いできたことをすごく楽しく思うので、即興で気を感じていいですか。今日の私は皆さまによってつくられる感じがするので、ちょっと気を吸わせていただいて、自分の中にインプットさせていただきます。初めてやるのでちょっと……
(香瑠鼓さん:フーッと息を吐きながら体を揺らせて両手足をゆっくり動かす)。
アハハ……、何やってんのかなって感じなんですけど…… はい、終わったぁ!
(香瑠鼓さん:笑ってダンス終了。深々とお辞儀。会場より拍手)。
あー! 初めてやった、こういうこと。

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小さいころは、運動神経のない、
自意識過剰の女の子だったんですよ

私は、小さいころ、運動神経が全然なくて、小学校6年の2学期まで通信簿の体育はずっと「2」でした。悲しいかな、走らせても何させても全然できなくて……。幼稚園も登園拒否、幼稚園行くのが嫌だったんです。まず、青い丸えりのうわっぱりが嫌で……。チェックのシャツとか着て、うわっぱりを開けて着たり、はおったりなんかするんですよね、でも、先生はそういうの理解をしてくれなくて……。で、「センスを理解してくれない幼稚園だわ」と嫌になったんです。さらに嫌だったのがお遊戯。こういう振り(両手を横に広げて手首をヒラヒラさせながら頭上へ上げ、繰り返して下ろす)ありますよね。いまではシュールで格好いいと思うんです、ところが私はすごく嫌で、なんかカッコ悪いと思って、ちょっと斜めに肩を入れてこう(カッコよく踊る)やってたんですね。

(会場:笑)

ホントに! ホントに!! いまでも覚えてる。少し引いたりするとカッコいいと思ってやってたんだけど、理解されないの。それを認めてくれる人もいないし仲間もいない。それで登園拒否になりまして、そのまんま引きこもりみたいな状態でした。それから小学校では、おとなしいこどもでした。

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いま、小学校、中学校へ教えに行ってますが、自意識が強い子って、踊るのが嫌なのね。特に男の子は、注意すると「なんで俺に注意するんだ」って状態なんです。例えば、「こうやって!」(右手を目線の高さまで横に伸ばす)って言っても、これぐらい(右手を少し上げる程度)しかしない。ちょっとこう(右手首を少し動かす)したり。そうすると、「こう(右手をさらに高く上げる)やって。上を見ているとカッコいいと思うよ」って言っても、こういう(右手を少し上げるだけ)ふうにしかしない。それは自意識があるから。カッコいいって思えばやるけど、思わなかったらやらないし、「こういう(手を上げず目線は下)ふうにやってる俺に構わないでくれ」っていう感じ。カッコいいとか、カッコ悪いとか、人に与える印象がわかっている子ほどやりたがらないんですよ。踊りをやりたがらない子は頭がいいんですね。私も、自分の経験があるので、やりたがらない子ほど好きです。「わかる。ああ、恥ずかしいもんね(笑)」とか思っちゃうんですね。
そういう幼少時代を過ごしながら、こっそり、山本 リンダさんとかの物まねしてるわけですね。それで、だんだん自分が山本 リンダさんになったかのようになってきて、「これイケる、いまの私カッコいい」って思って、ちょっと見てもらいたくなって……。
で、見てもらいたいと思ったぐらいからだんだん性格が豹変したんです。で、見てもらったらもう最後。学ラン着て応援団長とかやるようになってました。

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人のエネルギーをくみ取って
ダンスに変える
それが大変だけれど、おもしろいんです!

それから、30(歳)過ぎぐらいまで水商売のアルバイトをしていました。世の中は甘くないですね。ダンサーは、誰もがほとんどそういうことをやってるんです。自分の好きなように時間をつくれるのは、水商売とかフリーターみたいなアルバイト。私は毎日朝、午前中と午後とレッスンをし、夜は水商売の仕事していました。毎日毎日毎日毎日練習して、訓練して、「うまくなれば絶対に世の中に出られる、そういう実力のあることを認めてくれるのが芸能界だ」って思って一所懸命がんばりました。20代の前半には、ストリートパフォーマンスをやったりもしていました。まわりの人には「そこまでも表現したいか!」と言われたけど、そのときは「こんなカッコいいことやってるのにわからないの?」って、ちょっと卑屈になっていました。
その後、30歳過ぎてから、石井 明美さんの『チャ・チャ・チャ』の振り付けをしました。それがヒットして、振り付け師になりたくないのになっちゃったんですね(笑)。その次にベイブ、次に来たのがウインク。

(会場:笑)

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そのときちょうどバブルの後半ぐらい、ホワンとしたウインクの2人を見て、「あ、これでいいんだ、なんか息抜いてやればいいんだ」みたいな感じが出てくるんですよ。みんながウインクの2人がいいなって思うっていう、そんな流れが芸能界にあるんだなって思いました。流れに乗るっていうのは、音楽、ビートがありますよね。その一定のリズムに乗っているっていう、ここから外れると、例えばこう(リズムよく片手ずつ上げ下げ)やってるのに、(わざとゆっくり腕を上下)とかやって全然乗ってないですよね。これをやってなかった、私は音楽に乗ってなかったと思ったんですよ。芸能界という流れがあって、それが音楽であって、一定のビートでもあるの。世の中の流れ、いまの時代の流れ、もっともっと大きい地球っていう、私たちに与えられた流れ、それに乗ってないことがわかったんですね。
で、ウインクを見て、普通だけど普通じゃない、何て言うのかな、まったくの平凡じゃないと思い、左右違う振り付けにしたんですね。ピンクレディーのころっていうのは同じ振り付けだったんですけど、左右違うふうにすることによって個性が出てきたんです。「こういうの(親指と人差し指で輪をつくり、つないだ∞を左腰の前で上下入れ替えて動かす)が宇宙って意味だよ」とか、これにさえも(縮めた両腕で脇を2回たたいて、胸の前で腕を横に重ねて上下に動かし、開いたところで顔だけ90度動かして正面を向く)意味をつけ、いろんなことを言うわけですよ。そうするとふたりが緊張しちゃって、無表情でやっちゃうわけ。「なぜなの?」と、みなさんに聞かれたんですけど、それは私がいろいろうるさいことを言うので、緊張のあまり無表情になってしまったんですね。でも、ヒットをして大賞をいただいて……。そのあとにB.B.クイーンズをやってレコード大賞をとって、次の年ミケの「想い出の九十九里浜」で、3回目のレコード大賞をとっちゃった。それが35、6歳。

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その後CMの振り付けをやるようになりました。CMは15秒でパッて記憶に残らせないといけない世界。クライアント、タレント、監督、それからプランナーもいて、いろんな人がいろんなことを私に言うんですよ。「あなたが日本全国中にはやらせる道をつくってください」って。最初のうちは、「手も足も2本しかないし、タレントさんは踊れないし、もうできない」とか思ってたんですけど、なんとなく、自分が素直な肉体と素直な心を持ってキャッチすればいいんだなって思うようになりました。なんでかと言うと、そのころ、だいたい朝9時ぐらいから夜の12時ぐらいまで、1日に4本も5本もつくっていたんです。それも「はやらしてください」とか言われながら(苦笑)。すると頭に、脳に酸素が行かなくて、頭痛くなってくるんですよね。それでも流行らせなきゃいけない責任感が……。そのとき脳に酸素がいくようにまず大きく深呼吸。「答えはあるんだし、ここにいらっしゃるタレントさんもクライアントも、みんないいもんつくろうと頑張ってる。全員の気持ちがひとつになってるはずなんだから、答えは見つけられる」と思って、リラックスするようにしたんです。そしたらなんか体に入ってきたんですね。「出ました! こんなものが!」とかって……。
例えばいまだったら「あなたも私もポッキー♪」とか、「コパンコパン」とか。そういうのも、楽にしてると何となく出たりとか、「画がいま見えた!」と思ったら、その見えたものを振り付けに直すようにしたんです。極限状態を通ったから、こういうふうにできるようになったと思うんですけど、やはり人間が好きだし、その人から出てくるものを受け取るっていうのも大事。その人が何を思っているのか、その人のエネルギーを感じてそこのオーラを取ってダンスとして表現しています。

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会場のみなさんとダンスで
気持ちのキャッチボールを!

さて、皆さまに少しやっていただこうかな。じゃ、ちょっと立っていただいて少しやってみたいと思います。

(会場のみなさん席を立つ。会場のみなさんと一緒にストレッチ)

いまから、自分の体を知る旅に出かけましょう。少し軽く肩幅ぐらいに(足を)開いて、まっすぐ立ちますね、上に引っ張られて立って。ホントはここで目をつぶり、鼻から(息を)吸って、口から吐きます。で、鼻から吸ったときにこのおへその下のところに入れるような感じで……。はい、鼻から吸って口から吐くことによって腹式呼吸になります。腹式呼吸はヨガなどで、細胞を活性化させるということではやってます。
今度は、足の裏から息を吸い上げるようなイメージで、鼻から吸ってください。いま大地を踏みしめているその足の裏、床、感じてますよね。そこから、鼻から吸います。頭の上にまできたら、口から吐きます。(フーッ)もう1回ね。ポイントは、いま、手で押さえてるところ(=お腹)が膨らむような感じで。はい、そしたらゆっくり手を離してください。
今度は足から吸い上げた空気、エネルギーをここ(頭)まで通したら、手から吐きます。手から悪いもの、気が流れてくるようなイメージで、息を手から出すように吐きます。それでは自由にお願いします。足の裏から息を吸い上げて、手から吐きます。自分で鼻から吸って、手から悪い物、気が流れてきます。「ソーランバラード」の曲をゆっくりかけてください。

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ゆっくり、手を上げていきますよ、鼻から吸って、ゆっくり、手を上げます。鼻から吸って……、はい、吐きながらさっきのおへその下のところに、息を吐き入れるような感じで下ろしていきます。もう1回いきますよ。(4回繰り返す)。吐くときはひざをゆるめてお腹に気を感じます。なるべくどんどん自分が広がっていきますよ! 外に広がります。はい、ラストいきまーす。背中も広げるように大きく! そうです!! 頭の上からエネルギーが入ってきますよ! お腹に……(フーッと大きく息を吐く)。はい、いいですよ。
今度は手の平を上に返します。息吸います(両手を前に出す、肩の高さまで上げたら)はい、吐きますよ、(手を下ろしながら)ひざより上で。そうです、手とお腹がつながっているようなイメージ(もう1回繰り返して)。はい、息を吸いながら、今度は止めますよ、ちょっと止めましょ!はい、吐きながら伸びして。(指を組んで手のひらを頭上へ。背伸びの格好)はい、吐いて! ちょっと自分でリラックスして自由に……。(このあと吸って吐いてを繰り返す)そう、手の上に何か乗ってるようなイメージ。手がお腹とつながってますよ。いいですねー。
ゆっくり首を下にしてください。横に傾けます。こっち側(右側の首筋)伸ばす。(ゆっくり半周回して)はい反対側いきまーす。横を特に伸ばしましょ。(1周して繰り返す)反対(逆回し)いきますよー。左に傾けて右側伸ばしてますよー、反対側の筋を伸ばして後ろから横……、もう1回下までいって、はい、ゆっくり、そう力抜きますよー。
今度、息を吸って(背伸びをしながら)吐きます。(繰り返す)オッケー。かかと上がる人は今度かかと上げてみましょう。(繰り返し)そう、伸びする伸びする。はい、いいですよ。手を横から……、こっち(右)から行きましょうか、吸って吐きながら脇伸ばしましょう。こっち側(右脇腹)伸ばします。ホントはね、下の方からつながってるのね、筋肉。ここから伸ばします。(反対側の脇も伸ばし、繰り返す)プロ的にいうと、ここ(右脇腹)から伸ばして横までいくんですけど、みんな手が……、背中伸ばして。そう、まず伸びる!(次に)少しこうちょっと、股関節(足を開いてひざに手を置き肩を前に出す)、反対の肩やりましょうか。(もう1回繰り返す)。背中伸ばします。股関節と両方やってます。
はい、立ちまーす。ゆっくり……(体をねじり指先を見る)。後ろにいくときに息吐いてください。(吸って吐いてを繰り返す)背中まっすぐにしてやりましょうか。(繰り返し)いいですよー。
最後、1回深呼吸しましょう。(横に広げた手を頭上へ)はい、自分のお腹に納めまーす。じゃあ反対いきますよー。今度は人差し指と親指をこう(輪をつくりからませる)。(腕を頭の上まで伸ばして)ちょっと1回止めましょうね、はい吐いて……(輪をはずし、ゆっくりと腕を下ろす)。ラスト、もう1回人差し指と親指を組んで(ゆっくりと頭上へ)、はい吸いますー、はい自分の中心を感じて止めます、はい開けます。はい、いいです。


ここからちょっと振り付けします。いまの「ソーランバラード」は私が46歳のときにドイツのディレクターに誘われ、録音してきました。いま48歳なので、遅い歌手活動になります(笑)。次の曲は「ソーランエックス」。ドイツのディレクターは、ヤーレンソーランという言葉が不思議な日本語だと興味を持たれ、それでCDをつくろうということになりました。この曲でみなさまに踊っていただきたいと思います。

(会場のみなさまと一緒にダンス)

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<第2部>

魂という無意識のレベルで表現する
学習障害児たちのダンスに魅了され続けています

(映像)

私は、学習障害児たちにダンスを教えるということを10年くらいやっています。私のプロデュースした『声』を見に来てくれた女の子が「で、で、で、弟子にしてください」と言ってきてくれたのが最初。どもった声で、目の焦点が全然合ってない子だったんですけど、その子はファミレスに就職できました。うちはホントに就職率が高くて、さっき画面によく出ていたダウン症の男の子もロッテリアに就職することができました。
彼ら、おもしろいんです。私にはない表現をするから、アーティストとしての興味がすごくあるんです。これは、ボランティアでは一切なく、私が楽しくておもしろくてワクワクするからやっています。そこでひとりひとりが、本当の自分を通しての表現は何かということを、遊びながらやっています。
踊りをやることによって、みんなが変わっていくさまがとてもおもしろいんですけど、何よりも変わるのはその子たちがステージに立ったとき。それでいつもちょっぴり悔しいなと思うんです。ステージに出たときに、いままで注目されてなかった子たちが、生まれて初めて人に注目される。みなさん拍手してくれたりとかするでしょ。自分の世界より外にたくさん人がいて、その人たちが手拍子をしてくれる、拍手をしてくれる。「あっ、そうか。自分の周りの外の人たちっていうのは自分とともに味方であって、その人たちに囲まれて生きているんだ」と、社会っていうものを気づいてくれるんです。社会があって自分が生きてたんだっていうふうに思ってくれるのが、本当にうれしいです。

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あとは、さっき体験していただいたように、大きなところからエネルギーが来て、みんなあの踊りがひとつになったときに、いままでひとりぼっちだった子が、いろいろ、人と喧嘩しながらも、一緒に練習して踊って舞台で完成したその瞬間に、みんなで踊ったんだっていう共時性っていうのかな、そこから得られるエネルギーみたいなものがあって、それがみんなを変えていくんですね。音楽のビートの話じゃないけど、一定のビートに乗ることによってエネルギーを得られるわけです。全員がひとつのウェーブになって、規則正しいビートに乗ったときに、自分じゃないところからその子たちにエネルギーが得られるから、みんなで踊った後にさわやかになれるんです。
生まれて初めてあの子たちを公演に出したときに、ホントにバラバラで、私が「こっち向いてくださーい!」って言っても、それぞれ鏡に向かってアッカンべーしてたりとか、「ブツブツブツブツ……」ってずっとひとりで怒ったりとかね。そういう子たちだったんだけど、それが、生まれて初めてステージに立った翌日からいきなり人を見て「おはようございまーす」って言うようになったんですね。うれしかったですねー。
そういうふうに10年間やってくうちに、私がどんなにがんばってもその子たちの方がステージで褒められちゃったりするんですよ。「これは何かな? 私、こんなにまた練習してるのにおかしいなぁ」と思って。でも、気づいたんです。その子たちは、純粋に、その子たちのいちばん深い部分、魂っていう無意識のレベルのものだと思うんだけど、喜びに震えているんですよね、「ああ、自分は踊っている。ああ、生きてるんだ」って。顔はもうこんな状態(怒り顔)になって目をひんむいて踊ってたりするんですよ。でも生きててうれしいっていうのが見ているお客さまに通じて、感動していただいてるんだと思うんですね。
それを見たときに、何にもないからそこまで、魂が素直に感動できるんだと思いました。いちばん根源的なところで、自分をさらけ出して踊っていただけるあの勇気、それから自分にしかない表現。いろんな障害があって思うようにできなくてもやって、それがひとつの表現となっているっていう、その素晴らしさにアーティストとして私は触発され続けているんですね。

(映像)

いま(映像に)出てきたマナブ君は、2年ぐらい前からの生徒。彼はスターになりたいんです。20歳ぐらいで、割とルックスいいんです。マナブ君は、ある専門芸能学校に自分で勝手に応募して、お母さんが「この子、勝手に応募しちゃって、先生、無理ですよね」って言ってこられたんです。私が「とりあえず、受けて、ダメだったらダメでいいじゃないですか」って言ったら、お母さんが「えーっ、先生、そこで止めないとこの子が傷つく」って言って……。
マナブ君は、ひとりも友だちがいなかった子なんです。踊りをやることによって友だちができかけたのに、またここで「お前はダメだ」って否定して「やっぱりダメなんだ」っていう気持ちを味わわせたくなくて、「マナブ君、自分の力で受かったらやってみればいいよ。でも、受かったら自分なりに勉強するんだよ」って言ってあげました。お母さんには、ちょっと申し訳ないなと思ってるんですけど(笑)。
それで、マナブ君、芸能学校に入りました。ところが、そんなに甘くはないので、芸能学校へ行きながらうちでもやっています。それで、そうしながらちゃんと就職しました。ホテルでタオルをたたむ仕事です。ずーっとタオルばかりたたんでるわけですよね、そうすると何を思ったのか、事務所にたくさんファックスが来ました。「仕事がおもしろくなくて、自分家の窓ガラス蹴破ってしまいました」とか、怖いファックスがくるわけです。「彼の心の中で抱えてることってのは大変なんだ」と思って、「じゃ、ステージ、出ようね」って言ってあげたんです。

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そんなとき、即興ダンスの授業で、いきなりガーーッと(手を横にゆっくり開いた直後急に全身を震わせて踊る)踊り始めたんです。最初は転がって、ガンガンガンガンと何かやってるわけですよ。「やばーい、窓ガラス蹴破んない?」とか思いつつ見てたら、ギタリストの真似やってたんですよね、床で転がってやってるわけですよ。
その後、おじいさんに教えてもらったとか言って、鉄砲で身構えたりとかしてるわけですよね。なんか、パーッとか走ってカーッとか行ってクルッと走ってこんなになってる(身振り手振りで動く)わけですよ。「おもしろい。よーし、これはロックだ」と思って、オープニングに使ったのがいまのビデオなんですね。とてもいいものを感じます。その人から出てきた真実の表現というのはすごくカッコイイし、きらめいている。嘘がない。これがいちばんいいことだと思うんですね。
最近自分で振り付けしていて、揃った踊りを踊ることの疑問っていうのが多々あります。やっぱり、「笑え」って言われて笑っているのと、いま楽しくてうれしくて踊ってしまうって違いますよね。ホントは振り付けをしながら、その人の個性を引き出せるっていうのがいちばんいいんです。その人からの素直な表現を引き出せる振り付けよりもまず、人間の方が大事なんですね。

(会場のみなさまと一緒にパフォーマンスや言葉でのキャッチボールをしました)

お客さまとのQ&A

お客さま:
ハンガリーの目の見えないこどもたちとのダンスの感想を教えていただけますか?

香瑠鼓さん:
チャリティーで、ハンガリーの目の見えないこどもたちに、踊りと歌を教えさせていただいたんです。歌ならまだしも、踊り、見えないじゃないですか。そのときにやったのが『かぐや姫』という演目。かぐや姫というのは、天の羽衣を着て、すべての記憶を消し去って月に旅立つ話なんですね。羽衣を着て記憶を消し去るのかと思って、そのときに、60兆ある細胞が、羽衣を着ることで変化するっていうことをやったんですよ。右腕の細胞が右袖を通すと変化をする。で、左の袖を通すとこちらも変化をする。1個ずつ体の部分部分っていうものが変化していくっていうのかな。自分はやっぱり肉体を持って生まれてきてとてもしあわせ、そのひとつひとつが変化していって、その記憶がなくなっていくっていうのが自分にとっていちばん辛いこと。それをやろうと思いました。極限っていうんですかね……、さっきはなくしてまずいものはないって言ったんですけど、あったんです。“記憶”はなくすのは嫌だったんです。人間の心をつくるものっていうのは記憶を元にしてその人と話をしていると思うから、記憶をなくすのは、その心をなくすことと同じ。それを極限までやって、目の見えないこどもたちと向き合おうって思ったんです。
それをやったときに感じたのは、やっぱり自分の体をなくして、月に行くっていうときに、自分のいままでやってきたことをなくして、素直な魂、素直な自分に、何にもないところに戻っていくんだなぁーっていう感覚、まずそこまでいかなきゃいけないと思いました。
人間の細胞の中には生きる喜びと同時に、悲しみもインプットされていると思うんです。生きる喜びは、例え目が見えないこどもたちにも、絶対にインプットして神様は、この世に生をお遣わしになっている。でもそのスイッチが押されてないから、喜びが伝わらないんだなーって思ってるんで、そのスイッチを押したいと思いました。
もうひとつ、悲しみ。それは、ここにいらっしゃる方たちにも、辛いこととか、人に言えない悲しみを全員持っています。平等にあります。私もそうだし、ハンガリーの子たちも目が見えないけどおんなじなんだ。そんな気持ちを込めて、踊りました。

お客さま:
人からイメージをもらい即興で振付けるのがすごいと思いました。どうやってするのですか?

香瑠鼓さん:
直感です(笑)。さっきのCMの振り付けの結論は、結局素直な肉体と心っていうこと。自分をそうやってトレーニングしています。そういう方向性にトレーニングをしていれば直感を得れる体になるかなぁと思っています。忙しい最中、CMの振り付けでヒットさせるものを考えようとしたときに、考えるだけでは、無理なんですよね。全然、追いついていかないんですよ、1+1が2にしかなんなくて、1+1が100になるのっていうのはどういうことなのかなって思ったときに、直感が必要。自分をしあわせに導く直感みたいなものっていうのは人間ってインプットされてると思うんですよ。それは“生き方”なんだと思います。
例えば、道がふたつに分かれていて「どっちに行こうかな」と思ったときに、直感の方向に歩いていくとうまくいく、そんな感じ。何かたくさんのものの中からひとつ選ぶときに、何がいいかなと思ったときに、「これは、体に良くって、あの人が食べてないし、昨日あれ食べたからこれ食べよ」とか、そんなふうに考えて選んだものと、「あ、これ食べたい!」って思ったものとじゃ違うんですよ。フッと思いついたものの方が正解なんですね。それがいまの自分にとっていちばんほしいもの。その直感も私たち人間全員に平等に与えられていると思います。

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お客さま:
香瑠鼓さんは教える側、元気を与える側ですが、ご自身が辛いときにゆだねる何かはありますか?

香瑠鼓さん:
痛いとこ突きますね。そうですね……、今日の朝は早起きをして、ホテルの裏に神戸の海があったので、見てきました。波止場に行って、太陽が昇って波にキラキラ光る照り返りを見て、さっきの呼吸法をやってきました。それだけでも随分違いますね。自然に自分を委ねるっていうのが、広いものに自分が包まれているっていうか、自分と海が一体化する感覚っていうのかな。自分の自我を1回なくして、その中に含まれるっていうのかな、そういうものを呼吸法とか響きで「あーー」って叫んで響かせて、海と響き合うとか、そういうイメージ。
こうやって(背伸びで)手を伸ばしてたら、やっぱ手伸ばすってすごい気持ちいいんですね。肉体を使うっていうのは、いかに自分にとってリラックスできるのかっていうのを確信しています。
あとは朝起きていつも、すぐ窓を開けて、鼻で匂いを嗅いで、目で見て、耳で聞いて、確認するんですよ。「あー、よく見えてる」、「あー、いい匂い、サンマ焼けた」とか「鳥の声と自動車の音と両方聞こえてる」とか……、いろいろな確認をして、深呼吸するんです。するとすごい五感が冴えわたる!「そうだよね、体ってこうあるんだよねー。おっ、いけるねー」みたいな、そんな感じ。そういうことをして、毎日自分の持っている感覚をきちっと味わっていきたいですね。

お客さま:
私はいまダンスセラピーを指導中で、ダンスの前後に絵を描かせてその変化を見ています。香瑠鼓さんがダンスとコラボレーションしたいもの、または今後やってみたいものは何ですか? またダンスセラピーのインスピレーションは何ですか?

香瑠鼓さん:
いま受けたインスピレーションだと「ゲーム」ですね。ゲーム的なもので体を使って、コミュニケーション取れたらおもしろいなと思います。例えば、真向かいになって、これ“キャッチボール”って言うんです。自分の気持ちをワンポーズ表現しますよね、そしたらその表現したのを、自我をなくしてそっくりにまねするんですよ。そのそっくりにまねしたことに対して、相手もやっていくんですね。どんどんまねしながら自分の気持ちをリレーしていくっていうのを、テーマを決めてやっていくのもいいかも知れないですね。

フェリシモ:
香瑠鼓さんのお話からは、体は誰もが持っているもの、体を使って自分を表現することが、誰かと対話するとき、ひとつの大きな壁を打ち破るものというメッセージを感じました。まさにその瞬間が“スイッチ”だと思うのですが、私たちの生活の中でもその瞬間はところどころにあると思います。香瑠鼓さんにとって壁を打ち破るときにいちばん大切にしているものは何かでしょうか? また新たな挑戦など生活の中で行き詰まりがあるとき、乗り越えることが“スイッチ”で、香瑠鼓さんなりに大切にしていることがあれば教えてください。

香瑠鼓さん:
“スイッチ”に関して言いますと、スイッチを切り替えるには、1回全部をやめることですね。やめて、オフ、ゼロにすることです。端的に言うと「休む」いうこと、ゼロの期間が10分でもいいし、3日でもいいと思うんですけど、1回ゼロにする。素直な自分、元に持っている自分の直感を受け取れる肉体に戻るためには「休む」「切る」「なーし」!
私は、捨て去るのが好きなんですね。振付師でここまでこれて、次にステップアップするとき、スイッチ切り替えるときは、捨て去ることでまた歌手という道が開けて、そこからまた違うものを生み出す。“スイッチ”はゼロにすることだと思うんですけど、大事なのはそのときに、捨てちゃいけないものは捨てちゃいけないんですね。それは何かって言うと、いままで培ってきた、自分の中にある、こういうふうに生きてきて大事にしてきたもの。その人なりのものがあると思うんですよ。こういう生き方をしてきて、こういうふうになって……。それは、人の真心を受けたりとか、自分の信念だったりとか、それからやさしさを含めた愛情とか。そういう、基本的に自分が大事にしてきた理念、信条は、つなぎとめておきながらも、ほかのものは1回捨て去るっていうのが“スイッチ”だと思うんですね。
ちょっと相反しているかもしれませんが、そんなふうにゼロにしながら、自分のいちばん大事なものを見つけていくことだと思います。私がすごく感覚で話しているので、とても分かりづらいと思うんですけど、みなさんなりに受け取っていただけることってあると思うんです。ここにいらっしゃるひとりひとりの方が違う取り方をする、それぐらいの方がいいと思うんです。ですので、いま私の言葉に触発されて、ひとりひとり見つけられるのがいちばん素晴らしいっていうか、そういうふうにさせていただけたらと思います。

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Profile

香瑠鼓(かおるこ)さん<振付家/アーティスト>

香瑠鼓(かおるこ)さん
<振付家/アーティスト>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1957年東京都生まれ。早稲田大学卒。『慎吾ママのおはロック』『タケモトピアノ』など歌・CM・映画・舞台等手がけた振り付けは1000本以上。斬新で独創的な振付に定評があり、特にCM振付界随一のヒットメーカーの異名をもつ。国内海外でのダンスの公演活動とともに、障害をもったこどもたちへのダンス指導をライフワークとしている。2004年,ドイツにてCDをリリース、歌手活動も開始。'00年エイボン女性年度賞芸術賞受賞。'03年より朝日広告賞(朝日新聞社主催)審査員。著書に『ふぅ~はっ!』(NHK出版)『ダンスでコミュニケーション!』(岩波ジュニア新書)。現在障害児指導の軌跡がコミック誌『デジール』(秋田書店)にて連載中。最近の仕事には公開中 映画『メゾン・ド・ヒミコ』(犬童一心監督、オダギリジョー・柴咲コウ) 映画『ナイスの森』(加瀬亮)2006年春公開予定 映画『嫌われ松子の一生』(中島哲也監督 中谷美紀主演)などがある。

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その他のゲスト

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