神戸学校

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「夢をクリエイトする~キラリと光るものづくり」



<第1部>



こんにちは、ロボットクリエイターの高橋 智隆と申します。今日は、そもそもなぜロボットを作るに至ったのかということや、あと自分でロボットを作りたいと思っている方もいらっしゃると思いますので、ロボットをこうやったら作れるんだというような話、また、近々ロボットと暮らすような時代になるんじゃないかと、うすうす感づいている方もいると思いますので、ロボットがこれから我々の生活にどう入っていくのか、というようなお話ができればと思っています。

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ロボットクリエイターという職業

<スクリーン>

 研究
 設計
 デザイン
 製作
 発表

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私はロボットクリエイターと名乗っています。実はこれは私が勝手につくった職業です。最初言い出したころには結構抵抗がありました。「ロボットクリエイターの高橋です」と言うことが非常に恥ずかしかったんですね。いまは大丈夫になりました。ひとつにはロボットクリエイターという職業が認知されてきたのかな。というのと、もうひとつは私の羞恥心が麻痺してきた……。どっちもだと思うんですけれども、ありがたいことにこどもから「ロボットクリエイターになるにはどうしたらいいんですか」と言われるようになり、本当にうれしい限りです。それで、ロボットクリエイターは何をする仕事かということを説明します。まず、ロボットの研究をします。何か新しいアイデアをもとに設計、デザインをして、いざ作って発表する、そこまでを一貫してやっていくのをロボットクリエイターという職業だと決めました。具体的には、例えばこんなロボットを作っています。

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クロイノ

<スクリーン>

『TIME』誌 「2004年の発明」
身長35cm、体重1kg、自由度24、SHIN―Walkによる自然な歩行

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非常に小さなロボットです。身長35cm体重1kgで、自由度24、自由度というのは平たく言うと関節の数。自由度の数字が多いほど関節がたくさんあっていろいろな動きができると思ってください。その関節にはモーターが入っているので、自由度=関節の数=モーターだと思っていただいたらいいです。このロボットは自然な歩行を実現するという新しい特許技術になったんですけれども、その実証機として作ったロボットです。

(高橋さん、かばんから「クロイノ」を出す)

まずは動かしてみましょう。座った状態から起き上がりまして、手をはたいたりなんかして、皆さんの方に向かって歩いてきます。それで「こんにちは」と。

(ロボットがお辞儀をし、会場から再びワァーという声)

こんなふうに片足でバランスをとったりすることができます。

(ロボットが片足でバランスをとる)

このロボットを作って発表しましたところ、なかなか反響が大きくて、アメリカの『TIME』という雑誌に取りあげてもらいました。ロボットというものにアメリカでも注目が集まりつつあるようです。

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半生

<スクリーン>

『鉄腕アトム』を読んでロボット科学者を目指す
立命館大学産業社会学部
就職失敗
京都大学工学部物理工学科

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ロボットとの出会いは家の中に転がってた『鉄腕アトム』という漫画です。多分両親が買っていたものだと思うんですけれども、それをごそごそ引っ張り出して読んでいたらおもしろくて……。その中に世界中のロボットが次々登場するんですね。非常にわくわくして、空想のロボットだけれども、子供心に「おもしろいなあ」と思って、自分もロボットの博士になって将来日本の高橋が作ったロボットが世界の名物ロボットのひとつに数えられるようになったらいいな、なんていうことを幼稚園だか小学校低学年くらいのときに思っていました。
とはいえ、ロボットに対する興味はずっと持っていたわけでもなくて……。小学校のときは、プラモデルを作っていたし、その後、ラジコンで遊んでいた時代もあるし、ブラックバスを釣るのにはまっていたときもあります。大学に入るころにはスキーが好きになり、冬は長野県にみんなで一軒屋を借りて住んでスキー三昧でした。

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そんな、それぞれの趣味を楽しみつつも、ずっとものを作るのが好きで、例えばプラモデルを改造してみたりとか、ラジコンも同じように2台のラジコンを切って繋げて二個一にしてみたりとか、いろいろなことをしてました。釣りにはまっていたときには、釣りの「ルアー」っていう疑似餌、魚の格好をした木とかプラスティックでできた偽者の餌ですね。その疑似餌を自分で作って、「これは釣れそうだ!」というものができると、なんだかそれを実際の釣りに使ってなくしちゃったら嫌だなと思って結局使えなかったり、あんまり役に立たない、そんなルアーばかりを作っていました。スキーにはまっている時にも、「スキーの練習器具をつくろう!」とか思って、ガチャガチャ動くようなメカみたいな変なスキー板をつくって遊んでいました。それもあんまりスキーの上達に役に立ったかどうかはわかんないですけれども、まあ、作って満足という感じです。そして、立命館大学の社会産業学部というところに進学しました。

(略)

就職活動まで、将来何をしようかとか何も考えずに暮らしてきたんですね。まぁずっと趣味としてものを作ってきていたので、仕事もやっぱりものづくりをしようと思うようになりました。それで、メーカーに行こうと思いまして、釣具メーカーに就職活動をしました。理由は、釣りが好きだったというのがひとつなんですけど、もうひとつは私の年代っていうのはファミコンとかが小学校の時に出だして、そこでファミコンやパソコンなどのコンピュータの方に進む人たちとそうでない人たちに分かれ、私はそうでない人だったんですね。コンピュータとは縁遠い生活を送っていて、絶対バーチャルにならないもので私の好きなメカで動く、そんなものを続けていける仕事、ということで考えました。釣具メーカーっていうのは全国に4社くらいしかないんですが、まず第3志望くらいのところに内定をいただいて、第2志望はあっさり落ちて、第1志望のところは最終面接までいって、「大丈夫だろう」と言われていたんですがなかなか返事が来なくて、ある日電話してみると、「残念ながら……」と。

(略)

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第1志望に落ちてがっかりなのと、腹が立つのと。「じゃあ、ちゃんとものづくりの勉強をして、堂々とものづくりのエンジニアになろう!」と不合格をもらったその日に決めました。すぐ、家の中にあった古い科学の教科書を引っ張り出してそれを「もう一度受験することはできるんだろうか」と考えながら朝まで読んで、(もう一度大学生を)やってみようと思い、京都大学の中でも、私が「ものづくりの究極だ」と思っている「ロボット」をやろうということで、受験生活がスタートしました。
(略)
1年勉強して無事に京都大学の工学部物理工学科の中に機械のコースがあってその中にロボットの研究室があり、そこに入ることができました。
そこからロボット生活がスタートするわけなんですが。まず、「マグダン」というロボットの前にもう1台作っています。そのロボットの話から先にしたいと思います。
ロボットが安定して歩くのはむずかしいらしいという話を知り、じゃあ地面に貼りついて歩いたら強引に安定するんじゃないかと思ったわけです。ロボットが歩くときに電気が流れているときだけ磁石になるっていう「電磁石」を足の裏につけて鉄板の上を交互に吸着させ、貼りつけて歩く「電磁吸着二足歩行」を考案しました。そのロボットはガンダムの敵役「ザク」のプラモデルで作りました。作ってみたところ、想像以上にうまく歩いてくれるんですね。プラモデルを作っていた小学生のころ、「プラモデルが動いたらいいな」と思っていた思いを実現することができて、ひとりでうひょうひょ喜んで操縦していました。

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私が通っていた校舎の隣に産学連携っていう、ベンチャーだったりとか「大学の研究室と一般の企業と何か共同研究をしましょう」とかいうようなことをしている建物がありましてそこに「特許相談室やってます」みたいな貼り紙があったのですが、そこにロボットを見せたところ「ぜひ特許にしよう」と言われ、特許を出願しました。特許を出願したら今度「企業に売りに行きましょう」ということになって、おもちゃのメーカーをいろいろあたって、というようなことに……。なんだかとんとん拍子に進んでいきました。
そんなころに作った第2号のロボットがこれです。

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マグダン

<スクリーン>

在学中に製作
身長25cm・体重800g・マブチモーター1個・電磁吸着歩行・2001年製作

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全部自分で作ったオリジナルです。中にモーターが1個だけ入っていて、そのモーターの駆動力を機械的にクランクで繋いでいくことによって、前に進んだり後ろに進んだり旋回したりというようなことがラジコンでできるようになっています。

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ガンウォーカー

<スクリーン>

2002年KYOSHOより発売
定価1万6千円
電磁吸着歩行
在学中に商品化され世界中で販売

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このロボットは、最初のザクのロボットを元に商品化が決まったのですが、やたらと時間がかかり、発売にこぎ着けたのが結局約2年後です。やっと、世界中で販売されることなりました。世界中で売ったらどこか(の国)で大ヒットするんじゃないかと期待していたんですね。特許をとると、その後は勝手にお金がちゃりんちゃりん入ってくるもんだと聞かされていたんで、そりゃロボットの特許をとったら大儲けだろうと思っていたんです。まぁ、そんなことはありえないということをすぐに知ることになるんですが……(苦笑)。

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本当はね、どこか中東の国かなんかで、「学校にガンウォーカーを持って来てはいけません」とかっていう校則ができるくらいにヒットするんじゃないかな、と思ってたんですけどね。そんなことにはならなかったですね(苦笑)。

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NEON

<スクリーン>

鉄腕アトム誕生日イベントで発表
卒業制作
2005年商品化
身長40cm・体重1,3kg・自由度19・2003年製作

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次にこれを作りました。私の考えた電磁吸着歩行技術って、外側から見たら何もわかんないですよね。「ガンウォーカー」のときには、説明書の下の方にちょろっと名前が書いてあるんですよね。“SPECIAL THANKS 高橋 智隆”って。それじゃあおもしろくないなって思って、ならば外側もオリジナルでやっていこうということで、特に外側のデザインに凝ったロボットを作りました。それが「NEON」です。先ほど話しましたようにもともと鉄腕アトムが私のロボット作りのきっかけ。2003年の4月7日は漫画の中で鉄腕アトムが生まれることになってた日なんですが、その日にアトムの誕生日を記念するロボット博覧会が横浜で開かれました。私なりにその記念日を祝う作品を出してやろうと思いまして、この「NEON」をつくりました。その時僕は、京都大学の物理工学科の機械システムコースのメカトロニクス研究室という機械系のロボットを作っている研究室の4年生だったのでこの「NEON」を卒業研究にし、1年かけて制作しました。

研究室のメインテーマは「制御」。「制御」っていうのは、むずかしい数式とかをつくってロボットをうまく思い通りにコントロールして動かしましょうという、そういう研究でした。なので、みんなの論文にはひたすら数式が書いてあるんですね。それも普通に数字だけではなくって、けったいな記号がいっぱい入っているような、難解な論文をみんなは書いて発表して卒業して行ったんですが、私の卒業論文には、なんと数式が1個も入ってないんですね(苦笑)。製作の途中過程の写真が入ってまして「こんなふうにできました」「ここにモーターが入っています」という感じの非常にかわいらしい卒業論文。その時のロボットのデモンストレーションがよかったので卒業できたのだと思います。
「ザク」や「マグダン」のロボットは、中にモーターが1個しか入ってなかったんですけれど、「NEON」はモーターが19個になりました。それをうまくコントロールすることで、より複雑な動きができるようにしようという狙いです。「NEON」は、ケーブルとかネジは全部隠し、関節の継ぎ目もきれいにして、普通の人が思い描く漫画の中にあるような、そんなロボットのイメージで発表しました。デザインも非常にうけが良く、このロボットをきっかけにデザインの仕事が来ました。初めて来た仕事が「ロボビーR」です。

(スクリーンに映像)

これは、京都と大阪と奈良の境目にある有名な研究所で作っているものです。初めて研究所に遊びに行ったときに、こいつの原型であるメカむき出しのロボットが、「遊ぼ」とか「じゃんけんしよ」とか言いながら寄ってくるんですね。それがむちゃくちゃ怖かったんです。

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(会場:笑)

「ロボビーかわいい?」とか聞いてくるんですよ。どう考えてもかわいくなくて不気味なんですね。「かわいくない」とか答えた瞬間にカパッと開いてミサイルとかで撃たれちゃいそうな気がしたんで後ずさりするんですが、ちゃんと人を認識して見つけて追いかけてきちゃうんですよね。「次はもう少しかわいらしいものにしたいと思っている。デザインをやってくれないか」という話が来まして、こんなデザインのロボットを作りました。
このように、もともと趣味でつくっていたロボットから、仕事が始まり、ベンチャーのまねごとみたいなことをしてるうちにそのまま起業してしまったという感じです。

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ロボットの作り方

<スクリーン>

ロボットへのアイデア
技術開発・デザイン
設計?
製作作業へ

ロボットの作り方を説明します。まず最初にアイデアがあります。さっき言ったように、こうしたらうまくいくんじゃないかとか、ここが気に入らないから改良したい、とか、そういうようなアイデアがあってそれについて技術開発を行って、それができたらいよいよデザインをして設計をしていざ作ろうとなるわけです。

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設計図がない?

<スクリーン>

設計図の必要な理由
設計図の弊害
頭の中の設計図

(スクリーンにノートの映像)

これはノートの切れ端、僕なりのスケッチですね。こんなものを膨大に書いてそれをもとにロボットを作っていきます。設計図って、例えば『鉄腕アトム』の中でも詳細なでっかい図面があっていっぱい書き込みがあって、あの設計図がかっこいいと思っていると思うんですけど、残念ながらないんですね。

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そもそもなぜ設計図が必要かっていうと、例えば、大勢のプロジェクトのメンバーで「一緒にロボットをつくってこう」っていうと、情報を共有するために誰が見てもわかるな図面が必要なんですね。次に「部品を工場に発注しよう」ということになったら、設計図を渡して「その部品を作ってくれ」と言わなきゃいけないので設計図が必要です。いろいろな人と一緒に作るときは、その中で設計図を描ける人が描いていますが、ひとりでロボットを作るときは、設計図はありません。ひとりで考えているので頭の中に設計図があればいいんです。部品も全部自分で作ってしまうので外注しません。むしろ設計図があると悪いことがあるんですね。3次元のものを図面やコンピュータの中に描いた空想上の3次元的な絵で表現しようとすると、どうしても実際の3次元の立体とは違って見えるし、どうしても四角四面なロボットになっちゃうんですね。なんでしょう、カクカクしたロボットになりがちなんですね。それよりも実際の部品を自分の手でこねくりまわしながら、適当なスケッチを描きつつ考えた方がより柔軟な発想が生まれて、よりおもしろい造形が生まれると思います。そんな意味で設計図がないんです。

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ロボットを構成する技術

<スクリーン>

 機械……フレーム、ギア
 電気……モーター、バッテリー、電子基板、センサ
 情報……モーションコントロールソフトウェア、制御アルゴリズム
 デザイン……外装デザイン、モーションデザイン
 加工……金属加工、樹脂成型

(略)

ここで、ちょっとは基本的なロボットの勉強もしたいと思います。ロボットはこんなものがいろいろ入っています。実は私が得意なのはこの中でいうと機械とデザインと加工くらいですかね。
「クロイノ」や「VisiON」に使っているモーターはラジコンの飛行機とかヘリコプターに使うためのモーターのユニットをそのまま使っています。なので、それは開発しないで模型屋で買ってきたらいいんですね。バッテリーも、模型飛行機用のバッテリーを使っています。非常に軽くて優秀な小型バッテリーがあるのでそれを使っています。これは実は携帯電話に使われているリチウムポリマーとかリチウムイオンという電池。なので「クロイノ」を作ってるときは、携帯電話ショップに行って「バッテリーを10個ください」とか言って非常に怪しがられました。

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(会場:笑)

「ロボットに使う」とか言うと絶対売ってくれないので、「携帯電話に使うんだ」「業務用にいっぱい必要なんだ」みたいなことを言って、怪しまれつつもいっぱい買ってきてロボットに使っていました。

(略)

デザインについては、僕は特にデザインの勉強をしたことはないんですが、もともと工業製品好き、「ものフェチ」なんですね。車でも時計でもパソコンでも、デザインという観点から見るのが好きでいろいろ見てて……。そんな自分の好みがロボットに反映されていると思います。モーションデザインは、自分で動いてみたり、人が動くのを見てたりとかして、人間観察したり、苦労しながら作っています。
基本的に僕が作ってきたものってハイテクじゃないんですね。バルサという軽い木を削ってニスを塗って固めてつくった釣りのルアーとか、ちょっと手先が器用だっていうので、棚を作ってくれとか家の塀をつくってくれとか言われて、そんなことばかりやってましたけど。そんなものを作った経験が、実はいま、ロボットづくりに生かされています。

(中略)

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ひとりで作る

<スクリーン>

ひとりで作ることで、独創的で斬新なものができる。それを携えて共同開発を行う。

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もともと趣味で作り始めたロボットだったので、自分で作りたいし、それを自分でやりたいからという部分が大きいですね。また、ひとりの方が独創的で斬新なものができるだろうと思います。というのは、みんなで考えると、みんなの意見がほどよく反映されて無難なものになってしまうのです。よくも悪くも独創性がなくなってしまって……。ものによってはその方がいいのです。ただ、それだとロボットのような新しい分野・産業に必要である独創的なブレイクスルーと呼ばれるような発明が出てこなくなっちゃうんですね。なので、ひとりで作ることで独創性が出てくるだろうと。そういう自分のアイデアや成果を持った上で共同開発を行った方がいいだろうと思います。

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企業

<スクリーン>

 大学発ベンチャー支援
 ロボット分野の隆盛
 やりたいことを続ける最良の方法かと。

いま僕は、大学の中に会社を持っています。ベンチャーのまねごとをしていたら、京都大学が「じゃあ部屋を貸してやろう」と言ってくれました。国立大学なのでそれは大変なことで、国立の施設を「商売をやるために使ってもいいですよ」という、そういう特区をわざわざ申請して、ロボ・ガレージを第1号として入れていただいたのは非常にありがたいことだと思っています。

(中略)

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FT 世界一美しいロボット

<スクリーン>

Female Type……身長35cm、体重800g、自由度23、製作期間13ヵ月

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このロボットは「FT」と言います。細いことと女性的な動きが特徴。女性らしい動きをつくるために女性らしさのプロフェッショナルということでプロのファッションモデルにアドバイスをいただいて作ったのがこの動きです。ファッションモデルウォークをさせようということで、こうやってポーズをとって、で、くるりと向きを変えて帰っていきます。

(「FT」がモデルウォークをして、ポージング)
(会場:歓声)

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女性ロボット誕生の意味

<スクリーン>

チャレンジングな技術課題である
 細身の中に部品を収めるむずかしさ
 安定性を確保するむずかしさ
 女性らしい骨格を実現
 女性らしい動きの研究



ロボットの用途が2倍に

 威圧感の少ないロボット
 将来、過半数のロボットが女性型になる

いままで女性型2足歩行のロボットはほとんどなかったんですね。なぜかというと細くするのがむずかしいんです。細長くなるとそれだけバランスが悪くなり、転びやすくなるんです。いままでは男性的だったり、こどもみたいな形のものだったりとかずんぐりむっくりなロボットが多かったんですが、でも、よく考えると人間社会は女性の活躍なしには成り立たないのと同じようにロボットも本当に実用化したら女性型ロボットなしではまずかろうと。 女性型ロボットが登場したらロボットの用途が2倍になるだろうと思っています。

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今日のお客さまは、ロボットが好きでご来場いただいていると思うんですが、世の中にはロボットはまだまだ怖いって言う人も実は結構多いんですね。
私もガンダムが好きだからといってガンダムみたいなロボットと24時間ずっと家の中で一緒に暮らすのはつらいです。こういう「FT」のような女性型のロボットっていうのは大きなひとつの選択肢になるかと思います。

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ロボットの実用化

<スクリーン>

◎家庭用ロボット ○エンターテイメントロボット ○土木作業ロボット
×介護ロボット ×災害救助ロボット ×軍事ロボット

最後に、未来の話をしたいと思います。ロボットが実用化されていくというときに、なんといっても大本命は家庭用ロボットだと思っています。というのは自家用車みたいなもので一家に1台という時代が必ずやって来るだろうと。あとはエンターテイメントロボットということで、例えばディズニーランドの中にとか、ロボットのショーをやったりとかそういうものも考えられますし、土木作業するようなロボットというのは非常に有用だと思います。

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介護とか災害救助、軍事ロボットというのは、実はこれって微妙だなぁと思っています。というのはまず、あんまり市場が大きくないんですね。一家に1台とかそういうのに比べますと、我々がロボットと一緒に暮らそうということになったとき、そのロボットが一緒に暮らす人間の安全を保証できるかというと微妙なんですね。我々でもそうなのに、例えば、骨粗しょう症のおじいちゃんの骨を折ってしまわないかという心配があります。また、災害救助ロボットが、助けを求めている怪我人がいてその手前に残念ながら息絶えちゃった人がいたときに、キャタピラで踏んづけちゃっていいのだろうかとか、いろいろな問題があります。まぁ軍事ロボットは言うに及ばずなんですが……。極限状態で、より困難なタスクであり、なおかつ特殊で汎用でないということ。さらには倫理的な問題を含んでしまうということから、こういったロボットにあまり特化しすぎるのはよくないだろうと思っているわけであります。

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家庭用ロボットに向けての進化

<スクリーン>

実用ロボット(掃除ロボ、警備ロボなど)……タスク
エンターテイメントロボット(ホビーロボットなど)……精神的つながり
エンターテイメントロボット→家庭用ロボット

何が言いたいかというと、「エンターテイメントロボットみたいなところから家庭用ロボットに入っていくんじゃないかな」と思っています。それは、掃除ロボットだったり警備ロボットみたいな何か特定の仕事があるよりは、もう少しおもちゃのようなものから、だんだんそこに人間との精神的なつながりがあってそいつが発展していくことによってエンターテイメントロボットになっていくんじゃないかな、と。

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ロボットへの誤った期待

<スクリーン>

めんどうな雑用から開放されたい
コストパフォーマンス
人々のニーズに応える
万能

だから逆に間違っているのはさっきのように特殊な用途だったり、「皿を洗ってくれ」みたいなのは間違いです。自分がめんどくさいなと思っていることをロボットにやらせてしまおうというような、低級な発想でロボットをつくると結構大変なんですよね。スポンジに洗剤をたらして皿を洗うっていうのは、かなり大変な仕事です。ロボットの手を防水にしないといけないですし、それにものすごいお金をかけてやる必要はないと思います。

(会場:笑)

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初期家庭用ロボットの役割

<スクリーン>

家事の手伝い(あてにしてない)
家族の一員(交換留学生のような感じ)
家電を操作するエージェント

よく(ロボットは)「ペットですか?」とか「奴隷なんですか?」「メイドなんですか?」とかいろいろ聞かれるんですが、僕は「交換留学生みたいなもんです」と答えています。ホームステイで交換留学生がやってくると、土足で上がっちゃうし箸は使えないし、いろいろわけのわからんことをして、家中がひっちゃかめっちゃかになってしまいます。だけど我々が持ってない特技を持っています。例えば「ヨーロッパ5カ国語がしゃべれる」だったりとか「視力が6,0」だとか「ジャンプ力が凄い」とか、なんかそういう我々と違う特技を持っている異文化の存在なんですね。ロボットも同じだと思います。

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ロボットの特技をあげてみますと、家電を操作することができます。いま家電製品がどんどん使い方がむずかしくなってきていますけども、それを集中的に操作するようなエージェント的な存在になってくれて、人間がふだん使っている言葉や身振り手振りを理解して、それを機械語に置き換えてリモコンの変わりにピッと送ってくれるという、そんな存在になるだろうと思われます。

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無責任予想

<スクリーン>

2010年 ロボットタレント
2015年 ディズニーランドのかぶり物はすべてロボットに
2020年 ポケットにモバイルロボット
2025年 国家計画鉄腕アトムプロジェクト
2030年 一家に1台家庭用ロボ

2010年には、ロボットタレントが登場。テレビの中には女優さんとお笑いの芸人とかいろいろなキャラクターがそろってバラエティ番組が成り立っているんですけれども、その端っこにロボットが普通にいるようになるんじゃないかと思います。
2015年には、ディズニーランドのかぶりものがロボットに! これはこどもには内緒ですけど、いまミッキーマウスには中におじさんが入っています(笑)。あのミッキーマウスが大きいというのは、こどもにとってかなりショックらしくて、泣いちゃう子も結構いるみたいなんですね。でもロボットの技術を使うと本来のミッキーマウスのサイズになります。
2025年には、国家計画として「鉄腕アトムをつくる」というプロジェクトが始まりまして、そこに私も招聘されているはずです。

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(会場:笑)

2030年には、皆さんの家に各1台家庭ロボットが来るような時代になると思います。
こんな感じで普通に暮らしていく上でロボットが我々の生活の中に入って来るようになります。明日なのか明後日なのかわからないですけれども、家に宅配業者が大きな箱を持ってきて大きなロボットが届く……。そんな日が来る前に、ちょっとロボットのことを気にかけて心の準備をしておいてください。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
私も高橋さんと同じ技術者です。会社にいるとどうしても、図面を描く人がいたり、ものを作る人がいたり、そういう分業になります。そういう中にいると「ものをつくっている」という感覚がなくなるときがあります。高橋さんはどういうものを「ものづくり」とお考えですか?

高橋さん:
そうですね。私はやって楽しそうなところは、全部自分でやりたいと思っています。ただ、企業との共同プロジェクトなど場合によっては、自分が不得手な分野は違う人がすることになります。ただその時も一応その分野のことを浅くでも知っていると、「こんなことをしてるんだな」みたいなことで、自分の担当部分をやっていても、全体像がなんとなく見えると思うので……。分担で一部をやるにしてもなんらかの形で全体を知っているだけで、多分気持ち的にも実際のその開発の成果みたいな部分にも、よいように反映されるんじゃないかなと思ったりします。

お客さま:
以前テレビで「人型のロボットだったりとか、そういうかわいらしいものを作るのは日本の独特のものだ」という話を聞いたことがあるんですね。『鉄腕アトム』だったりとか『ドラえもん』とかの漫画の影響とかもあるのかと思うんですけれども、日本と世界のロボットの違いっていうところが気になってました。こだわりであったりとか、何か考えていらっしゃることがあればお聞かせいただきたいと思います。

高橋さん:
ありがたい質問です。今日の講演会で私が飛ばしちゃったところにそんな話があったはずです。日本のロボットは機械と人間の中間的な存在なんですね。「鉄腕アトム」なんてほとんど人間ですよね。そんなものはありえないって、そういうふうな批判が当時あったりしました。その後になって「鉄人28号」がより機械的、現実的なものとして登場したりとか……。要するに機械っぽさと人間っぽさの混ぜ具合みたいなものを漫画文化の中で試行錯誤してきたんじゃないかなと思うんですね。だから、機械と人間の中間としてのロボットの存在、そういう概念が日本の人に広く浸透してるんだと思います。
欧米は逆です。ハリウッドの映画だと、役者さんが銀色のペンキを塗っただけという、そういう99%人間みたいなロボット、「アンドロイド」みたいなやつか、それとも逆に「R2D2」のように、ドラム缶みたいな機械99%みたいな、その両極端になっちゃうんですね。中間という概念があんまりないんですね。
結論として、日本はポップカルチャーみたいなところから機械と人間の中間としてのロボットの存在があって、そのおかげで人から愛されるロボットがあるんだろうと思っています。

お客さま:
就職活動を失敗なさったとおっしゃってましたが、もし仮に希望のところに就職されていたらいまと違う人生を歩んでいたか、それともやっぱりいまみたいになっていたか、どう思われますか?

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高橋さん:
就職していたらどうなってただろうかということを、たまに考えたりすることがあります。多分、最初は一通りのことをやらなきゃいけない。そもそも文系を卒業して開発に入らせてくれっていうのが無理なのかもしれないですし、せめて企画みたいなクリエイティブな部署に就きたいと言ってたのですが。ただその前に修行みたいな形で営業をさせられていただろうなと思います。わかんないですけど、白いライトバンに乗って北陸地方かなんかの釣具屋さんを営業でまわっているのかな……。そんな生活を想像したりしてるのですが。そうしている中でも自分なりのアイデアがあって、こんなリールを作ったら売れそうだみたいなことを提案して、企画だか開発だかにもぐりこんでたんじゃないかなぁとか、そこから発展してそこからまたロボットになっているかもしれないし、まったく違うものになってるかも知れないですけど、でもきっとものをつくってたんじゃないかな、とポジティブな想像をしています。

フェリシモ:
最後に神戸学校事務局から高橋さんに質問させていただきたいと思います。第1部のお話の中でも、高橋さんは、人間のわずらわしいことを代行してくれる存在としてのロボットではなく、人間がコミュニケーションをとれるようなロボットをお作りになりたいとおっしゃっていました。そう思ういちばんの動機ときっかけがあればお話いただけますか。

高橋さん:
何かの目的のために作ると、どうしてもこじんまりとしたものになってしまうような気がするんですね。それこそさっき言ったみたいな、お皿洗ってくれるロボットみたいなのがいっぱい出てきちゃうんですよ。それを真に受けて本当に研究しようと思う人が実際いちゃったりするんですね。できたからってね、しょうがないですよね。しかも多分できたとしても非常にブサイクなもので、しかもそういう仕事を与えてしまうと仕事のでき具合に対する要求がきびしくなりすぎて、例えばご飯つぶが残っているとか、例えば掃除ロボットだったら隅に埃がつもっている。と、姑みたいな状態になって
(会場:笑)、

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ロボットに対してきびしく当たりすぎてしまって、「ロボットって役に立たないよね」みたいなことで終わっちゃうんですよね。そうじゃなく、まず最初に役に立たないことを前提に、だけどこう精神的な繋がりがあって入っていくというのが正しい順序だろうと考えるようになりました。だけど考えてみるとそんなロボットってないなぁと。みんなが思っているロボットは、漫画にいるようなロボットなのに、実際我々が目にするロボットって、メカで、なんかこうガラクタがうごめいているみたいな感じなものになりがちなんですよね。それじゃ、いけないなぁと思って。こんなロボットがあったら欲しいなぁと思ってもらえるような、人から愛されるロボットを作っていけば、ロボットと暮らす未来がもうすぐ来るんだなぁと、より多くの方に思ってもらえて……。ロボットが一家に1台やってくるような時代の、啓蒙活動になるんじゃないかなと思い、ロボットクリエイターという仕事をしています。

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Profile

高橋 智隆(たかはし ともたか)さん<ロボット・クリエイター、ロボ・ガレージ主宰>

高橋 智隆(たかはし ともたか)さん
<ロボット・クリエイター、ロボ・ガレージ主宰>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1975年大阪府生まれ。滋賀県、カナダと移り住み、立命館高校、立命館大学産業社会学部を経て、京都大学工学部物理工学科メカトロニクス研究室卒業。最初の春休みに作ったロボットが大反響を呼び、関西テクノアイデアコンテスト2001、関西テクノアイデアコンンテスト2002、キャンパスベンチャーグランプリOSAKAなどにおいて、グランプリ受賞。卒業後、2003年4月に、ロボットの技術開発・製作、デザインを手がけるロボ・ガレージ創業(京大ベンチャーインキュベーション入居第1号)その後、米TIME誌の「Coolest Inventions 2004(最もクールな発明2004)」 に「クロイノ」が掲載され、注目される。代表作に「マグダン」「クロイノ」「ネオン」「Robovie-R」「T-52援竜」「鉄人28号」をはじめ、ロボカップ連覇を果たした「VisiON NEXTA」など。設計図なしでの精妙なロボットづくりを得意とされ、 ロボットを次世代の軸と位置づける数多くの企業に力を貸し、精力的に新しいコンセプトの作品を発表している。

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