神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「筆一本の想像力」



<第1部>

今日は「一本の筆の想像力」という素晴らしいお題をいただきまして……。
これ甲骨文字なんです。(中略)
咸陽の篆刻家が彫ったものだと思います。レプリカだけれど、本物と変わらないと思います。まわしますのでみなさん触ってください。それではスライドを見ながら話していきたいと思います。



言葉を書く、ということの魅力

(スライド:神戸学校のロゴ)
やっぱり人間は言葉する動物なんで「神戸学校」と聞いたら「神戸学校」と書きたくなるんですね。

(荘子の「混沌」という話を浅葉さん朗読)
不思議な話ですよね。わたしはこの話を読んで、ふっとこういうパフォーマンスを思いついたんです。まず白い紙があります。これを開くと……
あっ敗れちゃった。

(会場:笑)

これを開くと、まず「口」です。そしてこうすると(紙をたたむと)「目」になります。それから(さらに紙を左右にたたむと)「耳」で、上下をたたむと「鼻」になります。これで(荘子の話の中に出てくる)7つの穴になりますね!
デザイナーっていうのは、こんな風に(いろいろな話を)少し立体的に物事を考えるというクセがありますね。

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西夏文字というむずかしい文字があります。この文字を解読したのは京都大学名誉教授の西田 龍雄先生です。『文字の本質と発展―岩画から文字へ』というテーマで、先生がすごくいいことを言っておられてました。
「文字には、3種類ある。ひとつには観賞的文字学。これは文字の表面を観賞してその作品を味わうということ。ふたつ目に言語学的文字学。文字の骨格を分析して、言葉と文字の相互関係を研究する、文字の腑系を考える。これは言語学者のやることですね。みっつ目は、芸術的文字学、あるいはデザイン的文字学と訳してもいいが、芸術家の想像力を即し、文字の新しい顔を作る」と。
特にみっつ目は、我々にすごく感じるところ。我々タイポグラフィの未来の道を指し示してくれたんじゃないかなあと思います。

(スライド:「イノリヲコメテウタウチチヨリ」などカタカナのポスター)
カタカナというのは日本人がつくったもの。漢字、ひらがなは先生が書を教えてくれるけれど、カタカナは自由に書いていい。カタカナのうまい人は誰かな? と思って、いろいろ探したんですけど、わたしは、やはり親鸞が一番うまいと思います。あの人は民衆に言葉を伝えたいというので、漢字だけじゃ駄目だと……。例えば「ナミアミダブツヲトナヘレバ」という風にカタカナのルビをふったんですね。その字が素晴らしいと思いますね。

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絵のようにかわいい!? トンパ文字

*トンパ文字とは
中国雲南省に住んでいるナシ族の間で1000年もの前から使われている言葉。世界でたった一つの象形文字。

(スライド:いろいろな文字のポスター)
地球上には、今、約56種類の文字が生きている文字として残っています。その中に、トンパ文字っていうのがあります。この文字がなぜおもしろいかというと、印刷されたものじゃなくて、人の手で書いた経典によってずっと伝わっているところなんですよね。いろいろなトンパがいて、その人たちが研究してずっと書いている、今でも「書いて伝えている」というのがいちばんおもしろいところかなと思います。

(スライド)
これがわたしが最初に出会ったトンパ文字です。鳥が大きなうんこをしたのかなと思ったんですけど……。

(会場:笑)

こんな漫画みたいな不思議なものが世の中にあるんだな~と思って、絶対、この目と足で見たいなと思いまして……。
ちょうど西田 龍雄博士が『地球最後の象形文字・トンパ文字』という本を書かれていて……。その本の中に「わたしは、残念ながらこのトンパ文字が生息している麗江に行ったことがない」とあったんです。わたしは、そこにちょっと赤丸をつけてね……やっぱり文字(の研究)をやる時は、言語学者と一緒の方がいいんですよね。デザイナーが勝手にやってしまうと間違いがありますからね。で、恐る恐る電話してみたんです。偉い人ですからね~。

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そのころ、西田先生は京都大学の図書館館長をされておりまして、わたしが「先生ご同行願えますか」って電話したんですよ。そうしたら「行く!」って言うんですよ!「学校はどうされますか?」「休む」って言うんです。先生も見たかったんですよね。トンパ文字が生息している麗江という所がどういう所か。(先生は)想像だけで本を書かれていましたので……。
中国雲南省の麗江という所は、あと50キロでチベットという国境辺りでした。

(スライド)
宇宙人が書き残したような文字ですよね。トンパ文字も上手に書く人と下手な人がいました。

(スライド)
「根が太ければ木は倒れない。谷が深ければ泉は枯れない」と書かれています。

(スライド)
西田先生に書いてもらったテキストです。「浅葉克己展」と読みます。
“浅”いは、水ですね、岩があって水が流れるさまで(横のところに)砂利があるんで浅いっていう風になるんですね。“葉”っぱ(という文字)は、柳の葉っぱじゃないかと。“克”は頭が爆発してるんです。“己”は自分を指さているんです。トンパ文字には、展という字がないので「扉を開くという字はいかがでしょうか?」と西田先生に提案していただきました。

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世界中どこでも
じゃんけんができるっていいですよね

今、世界卓球協会に提案をしてるんですけどね、2001年からボールが(直径)4センチになったり、いろいろルールが変わっているんです。(中略)
でもね、サーブ権を決める時にルールがないんですよ。コインを投げたり、ボールを転がしたりして決めるんですけど……。僕は“じゃんけん”で決めるのがいいのではないかと思うんです。“じゃんけんぽん”っていうのは、一番最初はエジプトが発祥らしいんですよね。それから、エジプト、ギリシャへ渡り、ローマに行って、アメリカでも……。「ロック(岩)」「ペーパー(紙)」「シザー(ハサミ)」ってやってるんですよね。世界中どこでも、“じゃんけんぽん”ができるっていいですよね。日本でも江戸時代にすごく流行ってたそうです。(中略)

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これは“三すくみ“っていう、ぐるぐるまわる思想ですよね。韓国のチヂミの思想を書いた文学博士がいるんですけど、その人がじゃんけん文明論というのを書いていて「じゃんけんが世界の平和を助ける」という本を書いてるんですね。(中略)
だから、卓球からサーブ権の権利はじゃんけんぽんで決める、ということを始めるといいと思うんですよね。
(略)

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楷書の中に中国のデザインの秘密が
隠れてるんじゃないかと思っています

(今まで10年間の作品、展覧会などの映像)
石川 九楊という、わたしの書の先生は「筆触は思考する」とおっしゃいました。
「人間は書いている瞬間がいちばん物事を考えている。だから、なるべく書くということが大事」と言われています。
わたしも、楷書を書き続けて12年になります。もちろんわたしは、デザイナーなんで昔からスケッチはたくさん描いてるんですけど、12年間、楷書を極めたら、またこのスケッチがうまくなっちゃったんですね。楷書の中に中国のデザインの秘密みたいなものが隠れてるんじゃないかと思っています。西安に行くと、1095の貴重な石碑が集められている碑林(ヒリン)というのがあるんです。その碑の中には、日本の年号の元となる文字があるんですよ。例えば“昭和”は、“昭明協和”という四字熟語があるんです。日本じゃ聞いたことがないんですけど……。そして“平成”は、“地平天成”という言葉があります。日本と西安は繋がっているんですね。(中略)

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それから、年に一回、宿に泊まって3日間、書の合宿もしています。旅館の大広間で、朝まで寝ないで書き続けるんです。それは自然に、書が肉体の中に溶け込んでくるというか……、そういう感じがしています。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
これまで、いろいろな仕事をされてきたと思うのですが印象深かったお仕事、面白かったお仕事を教えてください。

浅葉さん:
全部おもしろい仕事ばかりですけどね。トンパ文字の発見もおもしろかったですよね。それとか、ハリウッドスターたちとの仕事も楽しかったです。あと、地球文字探検家になれたというのもすごくおもしろかったですよね。まだまだ未来がありますからね。ひとつひとつに全エネルギーを使ってつくっていっています。

お客さま:
浅葉さんは広告界だけでなく、今までなかったものを発想し、実現されてきたと思うのですが、何か新しいことを始められたり、考えられたりする時に、一番大切にされていることはなんでしょうか?

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浅葉さん:
やっぱり、“言葉を書いてみる”っていうのが一番いいんですよね。
最初に「神戸学校」って文字が出ましたよね。ああいう風に言葉にしてみる、それをビジュアルで描いてみる、そうするといろいろなものがわ~って広がってくるんです。
書をやって12年、毎日書いてますけれど、それもいいんじゃないかと。毎日続けることがすごくいいんじゃないかと。例えば日記をつけてみるとか、わりと簡単にできますよね。

お客さま:
浅葉さんの作品を見せていただいたり、文字のお話、卓球のお話を伺ったりしたなかで「粘り強い」という言葉を使われていたのが印象的だったのですが、何か新しく始めるときとか、チャレンジしていくときには、最後まであきらめず粘り強く、ということでしょうか?

浅葉さん:
そうですね。「一回やったらやめない!」みたいな、ね!

フェリシモ:
今日いらっしゃった会場のみなさまも参考になったと思います。ありがとうございました。

浅葉さん:
ありがとう。甲骨文字(レプリカ)、返してね。どっかいっちゃった?

(会場:笑)

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浅葉 克己(あさば かつみ)さん<アートディレクター>

浅葉 克己(あさば かつみ)さん
<アートディレクター>
*お肩書きは、ご講演当時のものです。

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