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「絵本の中のクリエイティビティ」



<第1部>

絵本の素は、こども時代の経験の中に

僕の描く絵本は、こども時代のことがヒントになっています。こども時代の嬉しかったこと、悲しかったこと、感動したこと、お父さんにぎゅーって抱っこしてもらったこと、お母さんに「いい子だね」って誉めてもらったこと、学校の先生に「達也くんえらいじゃないか」って言われたこと、そんなことが僕の絵本のヒントになっています。
僕には、弟が一人います。その弟を妹に変えて、エピソードを描いたのがこの絵本『まねしんぼう』(岩崎書店)です。

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(宮西さん、声色を変え、ゲストの顔を見ながら、絵本を読みます)
(読み終えて)中途半端な拍手ありがとうございました(笑)。
(宮西さんの笑い声につられ、観客も笑い、一気に会場の雰囲気が和みました)
僕の描く絵本はこども時代のことがヒントになっていると言いました。
ほんとにね、こども時代ね、のびのびと遊んでいました。野原や畑、空き地やなんかでね。僕が育ったのは静岡県です。静岡県駿東郡清水町というところです。ほんとに田舎の小さな町です。窓を開けると富士山が見える。そんな所で育ちました。山があって、川があって、野原があって……。川というとね、柿田川があったんです。日本名水百選にも選ばれている川です。富士山って、雪が積もってるでしょ? その雪が溶けて、地下を通って百年かかってぼこぼこ沸いて出てくるという……。だから柿田川の水温は1年を通して12度から13度くらいしかないんです。そんな中、泳いだりね。もう5分位するとくちびるが真っ青になります。釣りをしたり、カニをつかまえたり、アオハダトンボを見たり……すっごくきれいな川なんですよ。あんまりきれいな川だっていうんでね、映画のロケも来たんですよ。その柿田川というのは、僕の通っていた小学校から歩いて15分の所にあります。僕の家というのは、小学校から(歩いて)45分かかりました。なぜかっていうと、僕の小さかった頃は(当時)1校しかなかったんです。だから毎日小学校1年から6年まで、行きに45分、帰りに45分。ある日達也少年は小学校からトコトコトコと学校からランドセルをしょって歩いて帰っていました。で、ちょうど柿田川があり、その上に柿田橋がかかっていて、柿田橋のところで、急にお腹がぐるぐるぐるっとなりました。「あ、うんこがしたい!」(笑)。どうしようかな、いまから学校に戻ろうかな、でも戻る途中にビリビリって出ちゃったら格好悪いな。僕は、油汗を流しながら、お尻の穴をキュッとしめて(笑)、ロボットのように一点をみつめて歩いて……、歩き出し、歩いていると波が来ますよね。波が来ると立ち止まって……波が静まるのを待つんです
(笑、会場からも笑い声が……)。

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いま笑った方は経験がある方です(笑)。
一度だけ、ひとりさみしくお風呂場で、うんこのついたパンツをごしごしって洗ったこともあるんですが……(笑)。最初から“うんこ”や“パンツ”(ばかり言)って申しわけないのですが、これが“うんこ”(の絵本)です。
(宮西さん、絵本『うんこ』(鈴木出版)の読み聞かせを始めました)
(略)
達也少年は学校の生き帰りの道で、うんこがしたくならなかった時は、野原や畑で鬼ごっこしたりしました。それで、家に帰ると達也少年はランドセルをポーンと置いて外に飛び出していくんです。そして、林や野原で遊ぶんです。そんな僕が遊んだ風景が僕の絵本にはよく出てきます。『ぶたくんと100匹のおおかみ』(鈴木出版)(もその一冊)です。

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絵本はその人の感性で読むことが大切

(『ぶたくんと100匹のおおかみ』(のページをめくりながら……)
「だだだだ~」
「まてまてまて~」。
小さい頃はこうやってね(絵本の中のおおかみたちのように)林の中を飛び跳ねてよく遊んだんですよ~。ひろーい野原で遊んでました。鬼ごっこだ~、オレはリチャードキンブルだ、とか言ってね(笑)年がばれますね!(笑)
「助けて~!」(本を読み進めます)
(ふと話をやめて)
いつも言うんですけどね、このページ、すぐにめくっちゃダメなんです。
だって僕、(おおかみを)100匹描いたんですから。みなさんがたった1秒でめくるこのページ、僕、何日も何日もかけてそれも徹夜までして描いたんですよ!(笑)前のページ見てくださいよ。ね。
朝ご飯食べておおかみ3匹、お片づけしておおかみ4匹……って描いたんですよ!
(中略)

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これを描いた画材は、サクラのクーピーペンシルです。この野原の草なんかも、子どもたちは「あ、この先生すごいな、草1本1本描いてる。緑だけじゃないよ、青や黄色や茶色やピンクで描いている。この先生は本当にえらい先生なのかもしれない」って言ってるかも(笑)
だからみなさんも、最初は、一秒でめくっちゃってもいいです。でも2回3回目には、こどもたちと一緒に「あ、このおおかみさんとこっちのおおかみさん、顔が違う」「走り方が違うね」と、一生懸命見てください。絵本作家の人って必ず何かね、面白いことやってたりしますから。
この絵本を描き終えた頃、とうとう僕は寝込んでしまいました。そのお布団の中で思いました。『ぶたくんと10匹のおおかみ』にすればよかったって(笑)……。だから、こどもたちとおおかみを100匹数えたらめくりましょ!!
いまの話を聞いてからみると、僕って、気の毒でしょ?(笑)
(お話を最後まで読み進めます。そして、裏表紙を見せながら)
「その頃ぶたくんはおうちに帰ってグーグーすやすや眠ってしましたとさ。おしまい!」
(会場:拍手)

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えーっとね、よくね、こどもたちの前で読むと、
「おじちゃん、最後のページの文章なかったよ。でも、おじちゃん文章読んでるね」
って言われるんです。別に絵本ってね、裏表紙が余っているから絵本作家が描いているんじゃないんです。袖ってね、ここに空間があるからまあ、絵でも入れておこうかって描いてるわけじゃないんです。表紙は、ほら、森の中からおおかみがぶたくんを見ている絵でしょ、林のところから、木の所からぶたくんのしっぽがぴょんぴょんって出てるでしょ! 袖にも裏表紙にもちゃんと意味があるんですよ。さっきも絵をじっくり見てくださいって言いましたよね。

この本は僕が描きました。本屋に置かれるまでは僕の本です。そして、そこの本屋さんで買ったら、その絵本はその人のものなんです。その人の感性で読むべきものなんです。僕みたいな読み方じゃなくてもいいです。いろんな読み方があります。
最後、この家に帰って、ぶたさん、あ~よかったなあって思いながら、ぐぅぐぅ寝たんだなって思ったら、そういうふうに読んであげたらいいんです。
絵本は、買ったらその人の感性で読むのが本当に素敵だな、そういうふうに思います。

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肯定的な言葉が人をおおらかにする

小さい頃、僕はすっごくいたずら坊主だったんですよ。だから、僕のことを母がよく叱ったんです。毎日一回叱られてたんです。落ち着きがないね、とかね(笑)。で
ね、よく叱られたのと同じようにに、いや、それ以上に、お母さんは僕のことを誉めてくれたんです! それが、いまではいい意味の自信につながってるんじゃないかな、そんな風に思います。
で、母に叱られたこと、誉められたことを思って作ったのがこの『はらぺこおおかみとぶたのまち』(鈴木出版)です。
(読み聞かせ)
ある調査でお父さんお母さんっていうのは、わが子にたった一日に200近い否定語をかけるそうです。否定的な言葉を掛けられると、人間は否定的な人間になります。「ダメダメ」「馬鹿ね」「しょうがないね」「のろまね」「まったくききわけがないね」……、そうやって否定的な言葉を掛けられると、ほんとにそうなっていくそうです。反対に「おまえはいいこだね」「えらいね」ノノと肯定的な言葉、誉める言葉をかけるとそうなるそうです。それはこどもだけじゃなく、大人もそうです。

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「あなたは素敵ですね」「頑張ってますね」「本当にえらいね」そうやって言われるとそうなってくるんだそうです。
さっきの絵本のはらぺこおおこかみが「おれはブタだ、ブタだ」と言っているうちにブタになっていっちゃうように、「ダメだダメだ」と言ってるとそうなっていきます。反対に、「おまえはすごいね」「おまえはえらい」「君は素敵だね」と言われると、そうなっていくんじゃないでしょうか? 本当に200近い否定語をその半分に、いや10分の1にできたらいいな。そしていま日ここに来たみなさんが否定的な言葉を一日ひとつ少なく肯定的な言葉をひとつ多く、こどもや隣の人にかけていったら、もっともっと変わっていくんじゃないかな、そんなふうに思います。僕の描く本はこんなふうにこども時代のことをヒントを得ています。ほとんどの絵本がそうです。そして一冊一冊描きながら、いつも思っていることは、いつも言ってることは、“やさしさのあるもの思いやるのあるもの”を描きたいということです。“やさしさのあるもの思いやりのあるもの”…、(これを)いつもテーマに思っています。

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本当に大切なものは目に見えないもの

こんなふうに、いま、お話会をしています。でもね、世界のどこかでは、必ず戦争している人たち争いをしている人たちがいます。人類が始まって、戦争が終わったこと争いが終わったことは一度だってないです。そして、今日も何人かこどもが来ていますね。かわいいこどもがお母さんのひざに抱っこされているけど、こんなかわいいこどもたちがね、いま、たったの3秒に1人死んでるんだそうですよ、世界のどこかでね……。それも、理由は、ごはんが食べられない、おっぱいが飲めない、ミルクが飲めない、それだけの理由で死ぬんですよ。
(中略)
日本はどうですか? 何でも食べれるんですよ。日本料理、中華料理、フランス料理、ベトナム料理……何でもパスタでも! こんなに何でも食べられる国ないですよ。ほんとに日本は豊かです。
(中略)
日本はモノが豊かというかモノがありすぎる! この両方の目に見えるものがいっぱいの国でしょ?

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その目に見えるものに多~くの人がとらわれています。お金だとか、モノだとか、算数、国語のテストの点だとか……。
でも、これからは目に見えない時代じゃないでしょうか?と僕はいつもいつも言います。それが、僕がさっきも言った“やさしさと思いやり”です。
だからといって、僕は目に見えるお金やものや算数のテストが大事じゃないとは言っていません。算数のテストも大事ですよ。学校の先生がやれって言ったらやらなきゃいけない、お金もなければ、何にも買えないですもん、何にも楽しいことできないですもん。
でもね、目に見えるお金やものが一番じゃないですよって言ってるんです。その目に見えるお金やモノの土台に、しっかりとした目に見えない思いやりややさしさがないと僕はだめなんじゃないか、しあわせになれないんじゃないかって言ってるんです。反対に言ったら目に見えないやさしさが思いやりが土台にしっかりあるこどもたちや大人は、その上に乗っかり、お金やモノがたったこれっぽっち(手でひとつまみのジェスチャーをして)だって、その人は必ずしあわせになれると思うんですよ。反対にお金もモノがいっぱいある、学歴もすごい、でも土台にやさしさや思いやりが何にもない人には、僕はしあわせになれないと思います。

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絵本を通じた人と人とのコミュニケーション

そんな中僕は、思いやりのあるものやさしさがあるものを描いていきたいって思っています。それでは、『にゃーご』(鈴木出版)を読みたいと思います。
(お話:宮西さんは声色を変えながら、ゲストの顔を見ながら絵本を読んでいきます)
(中略)
僕は絵本を読んだら、みなさんの方を見るんですよ。みなさんがいま、どんなふうに思っているのか、どんなふうに納得したのか、どんなふうに笑ってるのかノノ、それを聞いてから、また読むんです。
絵本の読みきかせというのは、こうやって「僕が読む」「みなさんが笑ったりする」「ぼくが読む」「みなさんがうなずく」……、
そのやりとりですよ。卓球のピンポン玉と同じ。絵本の読み聞かせというのは、この小さな1冊(ご自分の絵本を指して)を通してのみなさんと僕とのコミュニケーションです。初めて会ったみなさんと僕がこの1冊を通して、笑ったり、面白がったり……。
読み聞かせは、読む方も聞く方も精神が安定するんだそうですよ。
(中略)

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絵本はこどもが読む本、赤ちゃんが読むもんだ、幼稚園の子が読むものだという人がいっぱいいます。でもさっき『おまえうまそうだな』(ポプラ社)を読んで、大人の人が笑いました。立ち読みしてボロボロ泣きました。立ち読みしちゃダメですよ(笑:会場も)
ほんとに、(絵本でも)そんなふうに大人の人が笑ったり泣いたり、できるということですよ! 自分に合った本がいっぱいありますよ! 絵本作家もいっぱいいます。だから、今日から絵本はこどものものだ! そうは思わない方がいい。絵本とは大人からこどもまで理解できる本なんです。
どうか、自分に合った絵本が必ずあるから、「これ、読んでみようかな」と手にとってみてください。いまの時代だからこそ、大人の人にも読んで欲しいな~、そんな風に思います。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
こどものときに影響を受けた絵本はありますか?

宮西 達也さん:
田島征三さんの『ちからたろう』です。
田島さんの、手がびゅーんとのびて胴がどーんと伸びてっていう絵には、感動しました。ぼくの『おとうさんはウルトラマン』(学研)の絵も、田島さんの影響があるのかもしれません。

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お客さま:
絵本という文字数が少ない中で、伝えることをできるようになりたいのですが、コツやヒントをください。

宮西 達也さん:
(略)絵とか文章というのは、習うものではないんですよ、教えるものではないんですよ。感性でやるものなんです。文章なんて、絵なんて、下手でいいんですよ(笑)。
その人の素晴らしい感性があれば、本当にいい作品になっていくんです。
だから、感性を豊かにすることです。感動をいっぱいすることです。
感動するには、本物に触れることです。本物の映画を観る、絵画が観る、小説を読む、舞台を観る、絵本を読むノノetc.「あ、きれいな夕日だな」とか……そういう感動をたくさんしてください。そういう感動がいい本を作ることにつながると思います。(略)
いま、感動は少ないじゃないですか。本当に情報はいまとっても豊かです。インターネットで何でも見ることができ、何でも探せる。この鳥って何ていうんだろう?鳴き声はどんなだろって聞くことができます。でも、本当にさわることはできないじゃないですか。やっぱり、さわって、この水は冷たいな、とかこの葉っぱは手が切れちゃうんだなとかノノ、すごく大事だと思います。知識ばっかりというのは……やっぱり心が伴わないのはダメだと思います。

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お客さま:こどもって、とてもストレートですよね。大人になるにつれて不器用になっていくように思います。人に伝えることを仕事にしている宮西さんにアドバイスをお願いします。

宮西 達也さん:
別に僕からのアドバイスはいらないと思うんですけど~(笑)
とにかく僕は、まっすぐにやりたいです。なんか、きっと僕なんか、う~ん、泣いたら格好悪いな、とかそんなことは考えないようにしています。恥ずかしいことはいっぱいありますけど……、こどもの前でも泣いたり笑ったりして、弱みを見せてもいいんじゃないかって思います。人間ってのは、大人になれば泣かないとか、大人になればえらいんだとか、我慢強いとか、そういうのはちょっと違うような気がしますやっぱり大人になっても楽しいことは楽しい、うれしいことはうれしい、辛いことは辛い。だから我慢しないで自分に素直に生きると結構ラクだと思うんです。

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お客さま:
最後に、宮西さんのパワフルな作品が生み出すそのクリエイティブの源泉とはなんでしょうか?

宮西 達也さん:
今回の講演会でも何度も言いました。やっぱり人間の根底にあるものが僕は、いちばん大事だと思います。何をするにもそうです、絵に描くのも、サラリーマン、学校の先生、いろんな仕事、何をやるにもその土台に、目に見えないものを大切にしていくこと、それが、うん……(自分自身に言い聞かせるように)、目に見える形や姿やそんなものにばかりとらわれず、内面からそういうものを作っていくものを大事だと思います。外みからばかりやっているとそれはいつしか、崩れていくと思います。だからやさしさや思いやりを自分の中で何をするにも

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Profile

宮西 達也(みやにし たつや)さん<絵本作家>

宮西 達也(みやにし たつや)さん
<絵本作家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1956年12月23日、静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。
人形美術、グラフィックデザイナーを経て絵本をかきはじめる。作品に『おっぱい』『にゃーご』(第38回 造本装幀コンクール展・読書推進運動協議会賞)『きょうはなんてうんがいいんだろう』(1999年第30回講談社出版文化賞・絵本賞)『おとうさんはウルトラマン』(1998年第8回けんぶち絵本の里大賞)『パパはウルトラセブン』(2000年第10回けんぶち絵本の里大賞)『おまえうまそうだな』(2003年第13回けんぶち絵本の里大賞)など多数。「楽しく一生懸命、本づくり」がモットー。

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