神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「「ふつう」であることの魅力~新しい「ふつう」を求めて~」



フェリシモ:
本日は、藤本 智士さんと一緒にシンプルに私たちの生活がもっと楽しくなるような、そして本当に大切にしてきたい物事に気づくきっかけとなる神戸学校的ライブエディティングをやってみようという予定になっております。(略)本日のライブエディティングは、
編集長として藤本 智士さん、そのほか、
写真長として伊東 俊介(いとう しゅんすけ)さん、
図案長に堀口 努(ほりぐち つとむ)さん、
イラスト担当として権田 直博(ごんだ なおひろ)さんと、
豪華「Re:S」(りす)編集チームをお招きし、本日ここで時間を共有するお客さまの皆さまと、これからの瞬間瞬間を編集していただきます。
(略)



<第1部>

はじめまして「Re:S」(りす)編集部です。
「新しいふつう」を提案する雑誌を作っています。

こんにちは。「Re:S」の編集長の藤本 智士と申します。よろしくお願いします。紹介を先にさせてもらいます。
左端から、写真長カメラマンの伊東 俊介さんです。
そしてアートディレクター、デザイン担当の堀口 努さんです。
そして、彼がイラストを描いてくれている権田 直博さんです。
僕たちは「Re:S」という雑誌を作っています。

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今日はライブエディティングということで……。僕たちは編集したり文章を書くという雑誌をつくる立場なので、あまりこうやって表舞台に立って「どや!」みたいなものは、まずないわけですよ。だけど僕たちが一緒に仕事をする、ミュージシャンのかっこいいライブとか、絵描きも最近はライブペインティングとか、そういうのをいろいろ見てね、「編集もライブでできたらええのになあ」とは思ってはいたんですけど。まさか本当にやることになるとは……(苦笑)。なので、ひょっとしたらグダグダかもしれません。それをご了承いただきながら今日は進めていけたらなと思います。

(略)

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「Re:S」という雑誌をご存じない方もいらっしゃると思いますので、この雑誌がどういうものなのか、普通の雑誌とどう違うのかを説明させていただきます。「Re:S」というのは「リ・スタンダードマガジン」ということ。リ・スタンダードの略で「リス」と言います。この「スタンダード」ということについて考えるのが、僕たちの基本的な主旨。「スタンダード」を僕たちは意訳して「ふつう」って呼んでいます。「新しいふつう」を提案することをコンセプトに作っている雑誌です。
こういうすごいサイクルの早い世の中で、「まだまだ使えるじゃん」というようなものを、きちんと拾いあげていくということをやりたいなと。例えばフィルムカメラで説明すると、フィルム買って現像出してっていうのは、そんな大昔の話じゃないんです。ちょっと前まで皆さんにとって「ふつう」であったことが、いま「ふつう」ではなくなっていて、それを僕たちは、「新しいふつう」としていま一度見直しながら提案するということ、それが「Re:S」の主旨です。そういう中で実際に水筒やフィルムカメラの特集をしたりしています。

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例えば、この(テーブルの上に置いてあった)「水筒」。いま、ペットボトルが出てきて便利になっていて、その一方で使われなくなっている水筒がある。でもその水筒、最近は魔法瓶タイプもあって、冷たいのはずっと冷たいし、熱いものはずっと熱い、単純に便利でいい道具です。なので使ってみましょう、と提案したりとか。それから「カメラ」デジカメ全盛の世の中で、でもやっぱり残していくということをきちんと考えると、デジカメのように顔をすりかえたりとかいろいろデータを変えられるようなものが、100年後にプリントで残っていたとしても、それが本当かどうかわからないっていうことは、すなわち文化が断絶されているようなもの。だからこそきちんとネガという物体で残していきましょうよ、とか。

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僕たちは雑誌を作るという仕事を10年以上やっています。いま既存の雑誌の作り方に対して、結構疑問を感じていることがたくさんありまして……。例えば「特集京都!町家」をしようってなったときに、「京都のどこどこにはこんないい町家があります、ここにはこういう人がいますから、この人に話を聞いたらいいです」っていうのをみんなで設計図を書くわけです。そして、そこに「じゃあ行きましょう!」って取材に飛び出して、実際に話を聞いて、写真を撮って、その素材を集めて作っていく……。それが普通の雑誌の作り方なんですけど、そうすると僕たちは、「ここに誰だれがいるから話聞いてきてください。そこの写真とってきてください」って言われる立場なんです。1ライター、1カメラマンという立場なんですね。そうすると「ここに何々がありますから」って(言われて)行ったら、そりゃ、ありますよね? 「ここに行ったらいい話が聴けますから」って言われて行けば、いい話を聴けますよね? それがだんだん、おもしろくなくなってきたんですよ。そうじゃなくて、もっと漠然と「こういう人がいたらええよな」「こんな場所があったらいいよな」という思いだけで飛び出してしまう、そこで出会えるかどうかっていうところで、雑誌を作っているのが「Re:S」なんです。
僕たちはあえて、無謀なチャレンジの旅を続け、いろいろな人と出会って、それをきちんとクオリティの高い記事にするということを、なんとか毎号続けています。見ていただくと、世間にある雑誌とはちょっと違うこと、感じてもらえると思います。

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ちょっと「Re:S」の雰囲気を感じてもらいたいので、VTRを見てもらいましょう。

(映像)

こういう、「こぎん刺し」という刺し子の伝統的な技術があるんですけど、こぎん刺しのおばあちゃんの所に、ノーアポでいきなり飛び込むんですよ(笑)。最初は、当然、けげんな顔をされるんですけど、なんとか飛び込んで、結果、4時間くらい話を聞いたんですけどね。だけど、僕たちが「Re:S」でやろうとしているのは、こういう「ふつう」の人なんです。
僕たちはリアルに「ふつう」の人ってすごいなあって思っています。今日は、僕たちを含めて、ふつうの皆さんにもがんばってもらって、「Re:S神戸学校版」を(この講演会が)終わるまでにを作り上げてみようと思います。すなわち、おもしろくなるかならないかは、お客さま次第ですから(笑)。では、制作に入っていきましょう。

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いつもは裏方の編集スタッフが
今日は皆さんの前で、編集を!
90分で取材から印刷まで。

(映像)

まだタイトルだけです。いまから作り上げていきます。第1部は90分。その間に、取材して、写真撮って、デザインして、イラスト描いてっていうのをやりますから。皆さん受け身やったらダメですよ! ゼロからというのもなんなんで、見開き1枚くらいのネタは仕込んでおきました。(この講演会が)始まるまで、フェリシモの皆さんがいろいろ用意してくださったりしているところを、話を聞いたり、写真撮ったりしているので、それをひとつ記事にしようと思いまして……。

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それは、さっき司会をしていた森くん。彼は取材されてると思っていないですけど、きっと。ふつうに日常会話しながらちょっとインタビューをしまして、すでに原稿を書きました。そのときに彼が言った言葉がキャッチコピーになっているんですよ。それは、「今日、森くん、きっと緊張するよね?」って僕が聞いたら、「大丈夫です。朝電車の中で『スラムダンク』読んできましたから!」って……。

(会場:笑)

それが、キャッチコピーになってます(笑)。名言やなあと思って。彼もふつうの人ですよ。ふふふっ。話を聞いていると、フェリシモさんに来る前は、製版屋さんにいたんですね。製版屋さんというのは、印刷の版をつくるところ。まさにライブエディティングには欠かせない存在。そんなことも偶然とは思えないわけです。たまたま彼が立候補をして今日の司会をしてくれて、その彼からこんな名言が聞ける、みたいなことは、やっぱり僕らにとってはワクワクするんです。
ここで僕たちは、いまから取材に出ようと思います。すなわちココ(会場の舞台の上)は編集部で、取材先はココ(会場)ですね。皆さんが名札に「私にとってのふつう、スタンダード」を書いてくださっているということなので、お話を聞いたりしつつ、写真を撮ったりできればなあと思います。

(藤本さんが、お客さまの「私にとってのふつう(スタンダード)とは」と書かれた名札をのぞき込みながら会場をまわり始める)

藤本さん:
なるほど。その日の気分でメガネを選ぶ。今日はどんな気分で選んだんですか?

お客さま:
ちょっとリラックスしたくて……。

藤本さん:
いくつくらい持っているんですか?

お客さま:
いま使っているのは5本くらいで、使わないのも含めると7本くらいです。

藤本さん:
持ちすぎですね(笑)。

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藤本さん:
“クロッキー”。絵、得意なんですね。これスキャンしてください。もう、ほら挿絵が決まりましたよ!



藤本さん:
“自宅公園”って何ですか?

お客さま:
自分家の前のベンチに座りながら煙草吸ったり……。

藤本さん:
それを“自宅公園”って呼んでるんですね。それイイじゃないですか!

お客さま:
最近は前の木に花が咲いて、散ってくる花を眺めて……。

藤本さん:
おいじいちゃんみたいですね。

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藤本さん:
“馬と会話”。できるんですか?

お客さま:
してると思っています。

藤本さん:
どんな会話しはるんですか?

お客さま:
今日はご機嫌ですか?

藤本さん:
(笑)どう返ってくるんですか?

お客さま:
まあまあ。

藤本さん:
まあまあ(笑)。それは、どういうシチュエーションなんですか? 家に馬がいるわけじゃないですよね?

お客さま:
競馬場行ったり、乗馬クラブ通っていたり……、そこで。

藤本さん:
いつから会話できるようになったんですか?

お客さま:
つい最近。

(会場:笑)

藤本さん:
「できてる!! 」って思ったのはなんでですか?

お客さま:
目でわかります。

藤本さん:
目で? ちょっと常人には理解しがたい……。前世が馬かもしれへんくらい?  それはない? (笑)。ありがとうございます。

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藤本さん:
うわー。これはないわー。“お好み焼きにウインナーを入れること”。なんでですか? って好きだからですよね? ひょっとして味噌汁にも入れたりとか?

お客さま:
味噌汁はないんですけど、ラーメンに入れたり。

藤本さん:
はあー。みんなが驚きそうなものって何かないですか? いまからウインナー料理のレシピをちょっと書いていただいていいですか? レシピのコーナーをつくるので、これにウインナー入れるのん? っていうようなのを考えてください。レシピのコーナーもできましたよ!



藤本さん:
“いつも豆が家にある”どういうことですか?

お客さま:
家が豆屋なんです。

(会場:笑)

藤本さん:
そらあるわ(笑)なかったら商売できへんもん! 豆屋の家ってどんなふうになってるんですか?

お客さま:
倉庫があって、すごい豆が積まれてて、いつもきな粉のにおいがします。

藤本さん:
はあー。きな粉。なるほどー。節分とかすごいんですか?

お客さま:
節分は燃えます。

藤本さん:
燃えます!? ふふふっ。
(会場:笑)
“節分は燃えます”ちょっとこのコピーいただいてください。これはなかなかおもしろい。へえー。商店というより会社な感じなんですか?

お客さま:
卸売りです。お菓子屋さんに卸したりしています。

藤本さん:
代々長いんですかね?

お客さま:
3代目くらいです。

藤本さん:
豆屋さんってどこにあるんですか? ぜひ、燃えるような節分に参加させていただいて……(笑)。

お客さま:
ぜひ、来てください。

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藤本さん:
えー? “はがして食べること”? どういうことやろ?

お客さま:
はがして食べてしまうものがいくつかあるんです。

藤本さん:
例えば?

お客さま:
ひよこまんじゅうのひよこのからとあんこ。

藤本さん:
わかる!

お客さま:
チョコアイスバーのチョコを全部はがしてから、中身を食べる。

藤本さん:
ははあ、じゃあポッキーもプリッツにしてから食べるとか?

(会場:笑)

お客さま:
きれいにはがれるものじゃないといやなんです。メロンパンとか。

藤本さん:
次から次へ出てきますよ!



藤本さん:
できます? これ。“呑みながら読書”。呑んで読む?

お客さま:
呑ん兵衛なんです。常に呑んでいるので……。

藤本さん:
いまもちょっと(お酒が)入っていらっしゃる?

(会場:笑)

お客さま:
いやいやいや。昼間は飲まないです。日が落ちてからです。

藤本さん:
読書も好きやということなんですね?

お客さま:
読書をする時間がないので、呑んでるときに……。

藤本さん:
そうか、読書はしたい、と。でも呑む方が勝っちゃうんですね? 呑みながら読書をしているから、こういうことがあるんや! とか、ありますかね?

お客さま:
むずかしい本も最後まで読めたりします。

藤本さん:
ほー、酔ってるから。それ全然頭に入ってないんとちゃいます?

(会場:笑)

お客さま:
全然入ってませんね。読んだ、達成感だけですね。

藤本さん:
なるほど。これ読みました。ってのありますか? みんなが驚くような……。

お客さま:
マルクスの本とか。

藤本さん:
はあー。それは結構(頭に)残ってますか?

お客さま:
いいえ。

藤本さん:
やっぱり!
(会場:笑)
残っていなくていいんですよね? 読書の新しい楽しみ方ですよ。「達成感で読む! 」っていう、なんか体育会系な。読み切ることに意義があるっていう感じですか?

お客さま:
そうですね。

藤本さん:
ちなみに「Re:S」は読んでいただいたことはありますか?

お客さま:
これから読もうと思っています。

藤本さん:
ぜひ、素面(しらふ)で読んでいただきたいと思います。

(会場:笑)

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藤本さん:
気になるんですよね? “第一印象重視”。どうやったんかなってドキドキしてるんですけど、大丈夫ですかね?

お客さま:
ふつうに……。

藤本さん:
ふつうですか? よかったです。



そのほか、「グレープフルーツには塩をかける」「朝ヨガ(阪神タイガース)」「電車の窓」「世間一般」「眠い」「お豆腐一口めは何もつけない」「かりあげ」「朝ごはんとノミ」「一人海コーヒー」「犬は友達」「ちょっと考えること」などなど。



トラブってます。「データが保存ができなくなってる」と……。どうしましょう? こういう感じです、「Re:S」は、いつも。なんか横で、「全部落ちた」っていう声が聞こえましたよ(苦笑)。どうしましょう? 何かちゃうことします?

(会場:笑)

いま、作ったものは全部落ちました。皆さんごめんなさい。今日は出力はお渡しできません。だけど、pdfで皆さんに送りましょう。こういうことがあるんですねー。こんな神戸学校初めてじゃないですか? きっと。

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これが、今回リニューアルする次の号です。7月31日に出ます。「一緒にやる」っていうテーマで作ったんで、まさに今日のような……。今日のこと載せましょうか。

(会場:拍手)

     

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
藤本さんは、「Re:S」に至るまでにどのようなお仕事をされてきたのですか?  また、ほかの編集者さんとはどのようなご関係だったのでしょうか?

藤本さん:
僕はもともと小説家になりたかったんです。物書きになりたくて、なのでまずは書くところからスタートしました。リトルモアっていう、いま「Re:S」の出版、版元になってくださっている出版社で、昔、文芸の新人賞みたいなものがあって、そこで小説の佳作をもらったんです。それを機に東京に出ました。そのころリトルモアの映画の試写会があったんですね。完成披露試写会のあとに、打ち上げみたいなものに参加させてもらったんですが、そこに、僕と同じように「小説家になりたい」とか「イラストレーターになりたい」「編集者になりたい」「俳優になりたい」という若い人がわんさかいたんです。大阪帰ってきて、ふと、東京だけじゃなくて大阪にもきっとそういう人がいるやろなあと思って。で、自分にとっては出会える場みたいなものがなかっただけだから、大阪でそういう場をつくろうと思ったんです。

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僕が思いついたのはフリーペーパーで、立ち上げて、思いを同じくしている人たちと知り合いたいっていう、いかにも若い奴の考えるような感じですけども、そういうところからスタートして、バックマガジンというフリーぺーパーをつくりました。それが僕の編集者としてのスタートです。「フリーペーパーやります。ついては、イラストレーター、写真家、ライター、みんな募集!」というちらしを1枚おいたのが僕のきっかけで、そこからいろんな仲間と知り合いました。(略)そういう中、自分で自然と編集というものを身につけて、そして、本当は書き手として表現をしたいと思っていたのが、だんだん編集ということの楽しさに魅かれていきました。(略)自分できちんと完結できてしかも全国流通できるものを……。という思いでできたのが「Re:S」です。

お客さま:
出版文化のゆくえは、どうなっていくのでしょうか?

藤本さん:
(略)
とにかくいま、弱小のというかインディペンデントに、ブックをつくった人がいまの日本の書籍流通に乗せようというのはハードルが高くて、かけ率みたいなこととか、何%をマージンとして取次さんに取られるとかいうようなことのパーセンテージも新参ほど高いんですよ。老舗ほどマージンが少なかったりとか。新しいのをどんどん出版を作って業界をどんどん活性化させていかないといけないのに、真逆な状態になっています。去年新しくできた出版社が20社くらいで、つぶれたのが200社なんですって。

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完全な斜陽産業で、なのに変わらないんですよ。そこは常に僕は、ぶつかっていってて、一回ブックカバーブックというのを作ったんです。それは文庫サイズの本なんですけど、布のブックカバーがついていて、変わった装丁の本なんですけど、もう一方では、本が付いているブックカバーとして雑貨屋で売ってるんです。その雑貨屋と本屋さん、ダブルで流通させるっていうのをやってみたりとか、そういうチャレンジしてみたり、いろいろなことをやってみてます。
(略)

お客さま:
私も藤本さんと同じように日本各地を旅するのが好きです。(略)日本のおもしろい場所、変わったところがあれば教えてください。

藤本さん:
日本って楽しくておもしろいんですよね。最近よく行ってるのは、青森県の下北半島、端っこに脇の沢という町があって……。もともとはタラがとれて、すっごい栄えた町なんだけど、タラが獲れなくなって一気に廃れてしまった町なんです。その町で、真っ白な鳥居をね、見つけました。雪の中、美しくて……。

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(「Re:S」を見せて)
勝手に「リス神社」って呼んでね(笑)。そこを守っているお父さん、お母さんと出会っていま一緒に、いろいろ考えているんです。まずは幟を奉納したんですよ。8号目に出ますのでぜひ読んでください。(日本には)なんか、そういうふうに黙っていたらなくなってしまうものがたくさんあって、そこの神社もお父さん、お母さんがいなくなると、じゃあ、あと誰がこの神社守るの? っていうような所がたくさんあるんですよ。いわゆる観光スポット、名勝もいいんですけど、ちょっとそうじゃない所に行ってみてもらうと、意外といいところがたくさんあると思います。
なんか今日の(「私にとってふつう(スタンダード)とは?」という中で、お客さまから出された意見としての)「少数派」じゃないんですけど、世間一般とは違う目線、みんなが気にしてないようなところでそのよさを見つけてみる、みたいなことのスイッチを入れるのはいいと思います。そのスイッチを入れてる人って、何があっても楽しくて、どんなしょうもないこともなんだって楽しいんですよ。日本の景色とかもそうなので、みんなが楽しんでるようじゃないものでも楽しんでしまうスイッチを入れてもらうと、身近なところも楽しくなると思います。
あと、カメラね。ファインダーを覗くと、近所でも旅行みたいな気分になれますから。そんなことをいろいろやってみてもらえると、いいかなと。

お客さま:
取材で心掛けておられることは何ですか? また取材中のパプニングはどのように乗り越えますか?

藤本さん:
今日は、まさにハプニングですよね。

(会場:笑)

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何でしょうね。乗り切るというより、乗り切った気になるってことじゃないですかね。決して乗り切ってはいないんだけど、乗り切ったフリをするみたいな(笑)。
心掛けていることは……、そうやなあ、何か、こう感度を上げるみたいなことはありますね。すごい些細なことでも気にしてみるとか。第1部のときに、皆さんが書いてくださった「ふつう」なことは、些細なことが書かれてあるんだと思うんですけど、そこを気にしてみるとか……。(略)そういうのって踏み込むと、すごい楽しいものが出てきたりします。そういう感度は自分なりに上げよう、ちょっとしたことでも気にしてみようというのはありますね。
あとは、取材に入ると、結構身をまかせるというか……、こっちの意図よりも、相手の流れに乗っかるみたいなことが、結局はいい話が聞けたりするんじゃないかなあと思ったりしています。

お客さま:
企画の時点と仕上がった時点で、伝えたかった思いが変わってしまっていることはありますか? もしあるとしたら、それは“あり”ですか?

藤本さん:
次の号で言うと、「一緒にやる」というテーマで作ったんですけど、結果は「自分でやる」ということやったりとか(笑)。「なんやねん」って感じなんですけど、だけどそれがリアルなんです。そういうのも僕の中では、もちろん“あり”なんです。
(僕には)自分なんてない、って言ったら究極ですけど、自分がこうすべきやとか思ってることなんて、知れてるっていう意識があるんですよ。だからって伝えたいことがないっていうことではなくて……。なんかね、「何で俺やねん」みたいに思うこと、イタコみたいな気分になるときがあるんですよ。自分の中にあったことっていうより、出会いの中で考えさせられて、僕が伝えざるを得なくなるというか、そういう意識を感じたりすることが多々あります。

フェリシモ:
最後に神戸学校事務局を代表して質問をさせていただきます。藤本さんにとって、日本の宝物とは何でしょうか? 

藤本さん:
この質問があるってこと、予め言うてくれていたんですけど、敢えて考えんとこうと思って……。それが僕っぽいと思って考えてなかったんです。で、いままったく白紙ですね。見事に(苦笑)。

(会場:笑)

まあ、「Re:S」が僕の代表的なものになっているので、そういう意味では、答えは「Re:S」に詰まっているんだと思います。だから「Re:S」のコンセプトである「新しいふつう」を提案すること、「ふつう」ということを考えることが、僕の命題。それは日本中をいろいろ旅する中で、すっごい建物、仏像とかそういうものではなく、本当にふつうなものの中に素敵やなあ、残しておきたいなあということ、ものがたくさんあるので、日本の宝物は? っていうことで言うと、“日本のふつう”やと思います。
だからもう一度、「ふつう」っていうものに対して宝物を見るっていうことを皆さんが、これを機会に体験してもらって感じてもらえたら、今日やったことに意味があるなと思います。

フェリシモ:
ありがとうございます。今日のライブエディティングの出会いだったりとか、偶然というのは、やはり宝物のひとつだったということでよろしいでしょうか?

藤本さん:
ホントに、宝物ですよ! 編集者ってイコールインタビュアーみたいな感じのところがあって、(相手から)いい話を聞くじゃないですか。そういう言葉を僕はいつもは、自分だけがもらうんですよ。編集者だから。自分がもらって、下手すると自分だけの宝物になっちゃうんですよね。この宝物を皆さんにも宝物にしてほしいと思うので、僕は本を作っているんです。
今日皆さんからいただいた言葉もなんとか形にして、最終的には皆さんにも宝物にしてもらおうと思います。

フェリシモ:
制作の方はいかがですか?

藤本さん:
表紙はできているようです(笑)。

フェリシモ:
お客さまにアンケート用紙が配られていると思いますので、欲しい方は、こちらに“配送希望”と書いてもらって後日配送したいと思います。

藤本さん:
ぜひ送りますから! ごめんなさいのお手紙とともに。

(会場:笑)

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神戸学校の舞台裏 2008年7月

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今回の神戸学校は、7月31日発売の「Re:S」入稿日の直前であったり、東京で開催の佐野史郎さんの写真展に参加されていて、大阪にもどられたのが神戸学校の前日という超ハードスケジュールの中、神戸学校におこしくださった藤本さん。(ほんとうにありがとうございました。)今回の神戸学校は、初のライブ・エディティングを試みるということで、朝早くから、念入りに、「Re:S」編集チームと共に打ち合わせと準備をしました。
リハーサルから、このうえなく、楽しそうにイラストを描いておられるイラストレーターの権田さん(写真右)の姿が印象的でした。



Profile

藤本 智士(ふじもと さとし)さん<クリエイティブエディター>

藤本 智士(ふじもと さとし)さん
<クリエイティブエディター>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
クリエイティブエディター。作家。74年兵庫県出身。「Re:S(りす)」編集長。フリーペーパー「パグマガ」編集長。様々なbookの編集を手がける傍ら、様々な展覧会をプロデュースするなど、編集を誌面上のものとしてとらえない独自の展開を続けている。

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