神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「楳図かずおさんの『夢のびっくり!箱』」



<第1部>

フェリシモ:
早速ですが、楳図さんの作品について触れたいと思います。まず、ご経歴を紹介しますね。楳図 かずおさん、なんと1936年生まれの74歳ということで……。

楳図さん:
そうですね。

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フェリシモ:
プロデビューされたのは19歳。14歳のときに描かれた『森の兄弟』という作品ですね。

楳図さん:
そうですね。高校3年生のときに本になりました。中学2年のころから、他府県の人たちと文通をしていたんですね。で、その中のひとりが神戸の西岡さんという方で「『改漫クラブ』って漫画のクラブやっています。入りませんか?」と誘われて、入ったんですね。その方が会長で1つ上の中学3年生、僕は中学2年生。。で、その西岡さんが、僕の描いた『森の兄弟』を売り込んでくださって……。それで高校3年生のときに本になったんです。西岡さんは神戸市灘区の方。もうお亡くなりになっていらっしゃらないんですけど、一度中学2年のときにお家を訪ねて行ったことあります。

フェリシモ:
どんなお家でした?

楳図さん:
えっと、ちっこいお家でした(笑)。だけど、僕もお弁当持っていったんだけど、おもちだけでした。家で焼いてお醤油つけて持っていったんだけど、食べようと思ったらカチンカチンになっていて、すごい苦労して食べた思い出があります。そんな感じでおあいこで、と言った感じで……(笑)。西岡さんは本当に面倒見のいい方で、売り込んでくださってありがたいなと思ってたら、なんと西岡さん、おじさんが画廊をやっておられて、それで後継いで、名古屋と東京の画廊「ユマニテ」をやってらっしゃって。ですので、中学のころから人の作品を売り込むっていうのは伝来の……。

フェリシモ:
お得意だったんですね。

楳図さん:
だったんですね。だから、本当に、神戸、懐かしいです。

フェリシモ:
神戸にゆかりがあった、これも運命と言うことで……。

楳図さん:
うんめいずかずお? どうもすみません。

(会場:笑)

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1950年代の作品をご紹介

(画像:1950年代の作品のスライド)

フェリシモ:
では楳図さんの作品のご紹介をしたいと思います。まずは、1950年代の作品です。

楳図さん:
『ねこ目の少女』、『へび少女』、『猫目』! このころ、へびとか猫とか、動物ものに凝ってたんですよ。なんと言っても、怖さのしょっぱなはやはりへび。僕、こどものころ、なんと言っても怖いのはへびでした。住んでたのが奈良県の山奥で。高野山で生まれてその後、吉野熊野の山奥に住んでたら、何が怖いってやっぱりへびですよ。夜に歩いてたら、でかい20~30mくらいあるようなうわばみが出てくるもんだ、って思ってましたもん。僕の母親はずっと山の人だったんで。うわばみに出会ったときはどうするかって、その対策まで持ってて……。山の中で、そいつに出会ったときは……。山の人だから手斧持ってるんですよ。それで歯向かっていっても、いくら歯向かって頭切りつけても勝てないって。へびは狙うのは頭じゃなくて、尻尾だって。尻尾をちょんと切っちゃうとそしたら大丈夫なんだって。まあそういう、山のたわいない話かなと思って聞いてたんですけど……。

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フェリシモ:
それで、こういうへび女とか、動物を題材に?

楳図さん:
描くようになりました。でもそのへび(を題材とした作品)を描くきっかけっていうのは、奈良県に曽爾村という村があって、そこの村の伝説で「お亀池のへび女」という話があるんですが、それを父親が寝るときにいつも話して聞かせてくれるんです。
村の若者がきれいな奥さんもらって、赤ん坊が生まれてしあわせに暮らしていたんだけど、ふと気がつくと、そのお嫁さんが夜になるとどこかへ出かけていくんですって。それに気がつくんだけど知らないふりして寝たふりしていると、お嫁さんが戻ってきて……。朝起きてみると、廊下の上に水で濡れたお嫁さんの足跡がぺたぺたぺたとついていて……。「これは?」と思ってあとをついていくと、そうするとお亀池に消えちゃって。で、まあ赤ん坊がおっぱい欲しがって泣くので連れて行って……。途中はしょりますけど。そしたらへびになって追っかけてきて……というような話。これを僕はいつも父にリクエストしてました。それがいちばん怖かったものですから。この話がだいたいこの辺の(作品の)へび女の原型です。

(画像:1960年代の作品のスライド)

フェリシモ:
今度は1960年代です。

楳図さん:
『猫目小僧』とか『おろち』とか。それまでへびとか蜘蛛とかいっぱい動物シリーズを描いちゃったものですから。次は人間かなあと思って……。

フェリシモ:
人間の怖さを?

楳図さん:
人間でどういうのがいちばん怖いと思います? 意地悪するお母さんとか、鬼嫁とか、まあ怖いけど……。どういう状態が怖いかっていうと、僕はかわいらしいのがいちばん怖い。それで『赤んぼう少女』を描きました。赤んぼうってかわいいいじゃないですか。それが怖かったら、やっぱり人間の究極の怖いやつかなあと思って。

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フェリシモ:
いま(画像で)、抱っこされているのは赤ちゃんのタマミちゃんなんですけど。タマミちゃんすごく怖いです。命吸い取りそうな赤ちゃんですよね。

楳図さん:
そうなんですよね。でもこのタマミちゃん、お陰さまで、すごい人気がありまして……。今度フィギュアになります。おろちがタマミちゃん抱いてるやつとか。まことちゃんがタマミを抱いてるとか、そういうフィギュアです。

(画像:1970年代のスライド)

フェリシモ:
次は1970年代、出ました『まことちゃん』!

楳図さん:
まことちゃんでーす。

フェリシモ:
あとは『漂流教室』とか『洗礼』とか、少女漫画の代表作ですね。

楳図さん:
ずっと男の子の漫画ばかり描いてましたが、少女雑誌からの依頼があり『洗礼』を描きました。このころから、社会性があるというか、そういう作品が多くなりました。

(画像)

フェリシモ:
では、1980年代から1990年代にかけて。『わたしは真悟』とか『14歳』、すごく精密な絵で楳図さんの最高傑作との呼び声高く、本当に素晴らしいです。

楳図さん:
『わたしは真悟』は相当下調べをしました。下調べと言ってもビジュアル的なこと。東京タワーを出したかったので、東京タワーをスケッチしに行きました。タワーの下に行って双眼鏡で上の方がどうなっているかを下調べ。(漫画に登場すると)キャラクター悟と真悟がずっと上の方まで登るので、双眼鏡で下から上を見上げてスケッチしたんです。双眼鏡でこうやって見てるとね、船酔いしたみたいになってくるんです。気持ち悪くなってやめたんですけど(笑)。

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楳図さんの幼少~少年時代は?

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フェリシモ:
楳図さんの幼少期のお話を伺いたいと思います。きりりとされてますね。

楳図さん:
まだこのころは歩けないからあんなところ(歩行器)に乗ってるんですけど。で、母親がこんな子に紙と鉛筆持たせたらなんか描かせれば描くかなぁとかいって……。

フェリシモ:
では、最初に鉛筆と紙を持たせてくださったのはお母さんだったんですね。

楳図さん:
多分その辺に紙を置いて、鉛筆を持たせて「○ってこう描くんだよ」とか言って。そしたら描いたもんだから「あれ。こんな子でも○描ける」とか思って、で「○に○足して花!」とかいって複雑にしていったらしいです。そしたら、そのうち「あれ描いて、これ描いて」って、むずかしい要求をし始めるようになったらしいんですね。母親が描けないものだから「ヤバイ」ってなって、それから自分で何でも読んだり描いたりできるように、絵本を与えて、読ませて聞かせて……。母親が言うには、それが僕が、絵を描くようになったはじまりだそうです。母はそんなふうに、そして父親はへびの話をしてくれて、母親と父親で漫画家をつくっちゃったと言うような(笑)。

フェリシモ:
楳図さんをつくるルーツがお母さまとお父さまだったと……。次に行きます。

(画像:学生時代の写真)

楳図さん:
ガーン。出ました。僕、この写真持ってもないし見たこともないですね。いちばんこっち(右端)にいるのがソノベくんですね、わかりますね。(その隣)僕ですね。向こうはナコジくんで、その向こうはヤマモトくんで。

(会場:笑)

そいでその真ん中がハナノ先生っていう美術の先生で。いちばん向こうは誰だろう。サカイくんかな? 女性の方は全然わからないです。

フェリシモ:
オクテだったんですかね?

(会場:笑)

楳図さん:
いやぁ、というよりか、ほとんど学校の方に神経が向いていなくて「どうやったらデビューできるんだろう」ばっかり考えて。だから他府県の……、神戸の西岡さんとやりとりばっかりで。でもね、向こうから3番目のヤマモトくんなんかは、2年生と3年生の時演劇で一緒に出たことがあります。

フェリシモ:
演劇にも興味があったんですか?

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楳図さん:
演劇に出たいというわけじゃないんですが、なんかしょうもないものは全部僕の方に来ちゃう、そんな感じだったかなと思うんですね。ですので、いろいろなことをやりましたよ。高校2年のときには、走り幅跳びから水泳からいろいろなことやりました。

フェリシモ:
いろいろな経験が漫画に生かされたりとかありますか?

楳図さん:
生かされてますか?

フェリシモ:
生かされているんじゃないでしょうか。

楳図さん:
……に、しときましょう(笑)。

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楳図さんの漫画について。
アナログな技法でデジタルのような細やかな絵に衝撃!

フェリシモ:
楳図さんといえばものすごく精密な絵で有名です。本当に素晴らしい絵を描かれていらっしゃいますので、少しご紹介します。

(映像:線の集合で書かれた3Dの絵(ロボット))

楳図さん:
これ、全部手で描きました。急いで描かないと間に合わないんで、こういう絵柄も、いっぱい時間がかかったとしても1日半くらいで描き上げないとだめなんです。

フェリシモ:
たった1日半でこれが描けるっていうのが本当に素晴らしいです。

楳図さん:
これややこしいのはね、ずっと塗っていって塗っていって、したら隣のところに戻ってきて全部緑色に塗りつぶしてっていうふうになっちゃうとやばい、っていう……。その繋がり方が離れていないといけなくて。そこはちょっと読んで塗りつぶしていかないといけなくて……。面倒くさいんですよね。

フェリシモ:
立体感がすごいですね。

楳図さん:
マジックペンで塗ったんです。

フェリシモ:
いまコンピューターでこういう加工ができますけれど……。

楳図さん:
これは全部手描きです。まず最初に鉛筆でます目をつくっといて、それでその上に色を塗っていくんですけどね。やっぱります目をつくっておかないとできないですね。で、ところどころ赤でぶれた部分とか入っているんですけど、画面でぶれてるんじゃなくてあの通り赤も入れてあるんです。

フェリシモ:
意図してこの赤を入れて立体感を出してたりしているんですね。でもすごく細かい。

楳図さん:
僕どっちかっていうと、思いっきりアナログ人間なんです。デジタルはダメなんですけど。この(絵を描いた)ときだけは「やっぱりこれからの時代はデジタル!」って思ったものですから。デジタルをやってみました。

フェリシモ:
描かれているのはアナログの手で描かれているんですよね。でも描かれている作品はものすごくデジタルというか近未来だったりとか……。

楳図さん:
そうなんですよね。インターネットとか出てくるんですけど、僕はインターネットやらないし。携帯電話も持ってないし(笑)。

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フェリシモ:
こちらも全部手描きですよね。ものすごい立体感!

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楳図さん:
これはまあ点々で。おっきい点々、ちっこい点々。あの印刷の、プリントした絵柄拡大していくとこういう感じになりますもんね。

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楳図さん:
こういうのは、下書きでまっすぐなところは定規で入れてあるんですけど、多分手でずっと追って描いていると思います。僕アナログな方が好きなんで。コンピューターの機械の表面は嫌なんですけど、裏側のこういううじゃうじゃしたのってすごい好きなんで、こういうのはわりと気楽に描けます。要するにお化けの世界だと思うんです。人口の世界と、自然界の世界……。アナログって自然界の世界だと思う。人工のところはデジタル。だからどっちがいいって言って両方大事。自然は大事だけどやっぱり人工がないと人間は何のために進化しているか?とか、生きている価値は?とかってなってくると、そこを否定されたらじゃあクラゲのままでいいじゃないか……になっちゃうので。やっぱり自然破壊とは言ったって人工の部分、人間が存在する価値みたいなものは大事だから。これ本当に人工と自然の裏表みたいなもの。両方のバランスがすごく大事ですよね。

フェリシモ:
そういう意図が隠されている1枚ですか?

楳図さん:
そんなつもりでは描いていないですけど(笑)。あとで見返すとそういうふうに取れるなと思いつつ、言ってるだけなんです。すいません(笑)。あんまり深くは考えてなくて、パッと思った瞬間に思ったとおりにやってるだけ。深く追求じゃなくて、ストーリーもバランスであり「これちょっと違うよ」と思えば修正するって感じ。そういう感じでやっています。

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『漂流教室』について

(画像)

フェリシモ:
次は『漂流教室』。あらすじを簡単にご紹介します。

主人公の小学校6年生の翔くんは、ある日些細なことをきっかけにお母さんと喧嘩してしまいます。ひどいことを言ってますね。「ババア」とか言ってて、次に「もう二度と帰ってこないからな」とお母さんに言ってしまい、お母さんも「もう二度と帰ってきて欲しくない」って言うんですけど、本当にこれが最後の会話になってしまうんです。それで、この後「ドーン」と大地震が起こります。地震があって、揺れがちょっとずつおさまってきて、おさまった時に、学校に遅刻してきた子が見た学校の風景っていうのがこれ。校庭ごと全部なくなっているんですね。さて、じゃあ彼らはどこへ行ってしまったのか、っていうと翔くんたちが見た校庭の外はこんな風に泥と岩しかない。荒れ果てた近未来に飛ばされてしまったっていう話からはじまります。で、この近未来に連れて行かれた先生たちはどんどんおかしくなってしまって、先生同士で殺し合いをしたり、こどもたちを殺そうとしたりと、どんどんおかしくなってしまうんです。でも、こどもたちはこの世界で力を合わせて生きていくっていう話です。

楳図さん:
そうですね。神戸も阪神・淡路大震災で大変でしたよね。僕も神戸(の地震)はテレビで見たので、思い出すんですけど、ああいう状態って本当に突然やって来るっていうところが怖いですよね。自分たちの力ではもうどんなふうにもできないっていうことになってしまいますもんね。で、まあこれは話の中のストーリー展開の順番で入っているだけなんですけど「もう帰ってこないよ」って言ったら「もう帰ってくるな」っていうそのやり取りが、ストーリの上ですけど予兆になっていると思うんです。

フェリシモ:
この作品をつくられるときに、どういうところから入られましたか? ラストを考えて作品をつくる、とか?

楳図さん:
とりあえずノートにストーリーを全部書いてしまいました。

フェリシモ:
じゃあ『漂流教室』は、描き始める前からすべてのストーリーが決まっていたということですか?

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楳図さん:
はい。全部ストーリー書きました。もうちょっと基本的なことを言うと、テーマは「こども」っていうことで来ているものですから、こどもの決定版を描きたいなと思って……。それでストーリーは全部ノートに書き起こしまして……。で、担当者が「もうそれぐらいでいい」とか言ったくらい。

フェリシモ:
どんどんあふれ出てきたのですか?

楳図さん:
構成をきっちり詰めて、で、描きはじめたので、描きはじめたらすごく楽でした。楽しみながら描くだけ。描くという技術の作業だけ。平日はアシスタントが来るので、抜けられないんですけど、日曜日はアシスタントも休みなので、鎌倉へブラブラ散歩に行っていました。

フェリシモ:
このころ、ものすごくお忙しかったのでは? 大丈夫だったんですか?

楳図さん:
忙しかったんですけど、それなりに大丈夫でした。ここで自慢させていただきますが、僕、締め切りは一度も落としたことがないんです。多いときに月刊3本、週刊3本をやっていて、間に読みきりも入れたり。それで2日に1個ずつ仕上げてました。『おろち』とかもそうですけど。みんな2日にひとつずつ、ポイポイポイポイ仕上げていました。

フェリシモ:
ものすごく繊細であんなに細かい絵を描かれているのに2日に1作品?

楳図さん:
この前『おろち』を映画化していただいて「新宿ガラス」っていう歌をよしこっていう女の子が流しで歌う歌があるんですけど、歌の文句なんだけどあんまり考えている間がなくて、適当に書いたんですけども。それでレコードにしていただきました。僕思うんですけど、やっぱり集中の仕方かなあ。
出し抜けに今、あんな状態になれって言われてもなれないんですけど。最初の『へび少女』とか出たころっていうのは週刊1個で。僕「週刊1個なんて忙しいノルマこなせられるかなあ」って心配してたんですね。で、まあやってるうちに増えていって、週刊3本、月刊3本になっちゃったんですけど。そういうふうにじわじわと増えていくと、なんか時間の取り方が、普通の時間の流れの倍ぐらいの感覚になっていって、それでできてしまうっていう感じなんです。外から見たらすごいせわしない動きしてるかなと思うんですけどね。自分では1時間を2時間ぐらいの感覚でやってるもんだから、多分動きがパッパッパッパッだと思う。

フェリシモ:
アイデアの源っていうのはどこからくるんですか?

楳図さん:
源っていうのは特にないんです。

フェリシモ:
全部想像ですか?

楳図さん:
はい。だけどそれも根拠がないと想像になっていかないので、そこの根拠は僕の場合は、自分が今まで描いたパターンと全然違うパターンを描く、それだけのことなんです。新しいやつ、ってその一言だけなんです。そこで集中するっていうことだけなので、迷いはないんです。そこにいくまで大分迷いがあって、結局は人のを参考にしたら人の何かが入っちゃうし、気にしたりするから、同じ気を使うんだったら最初から自分で考えた方がいい、そういう結論に達しました。そうしたら気持ちもスッキリするじゃないですか。もう新しく自分でつくるって。要するに「新しい」っていうそこがキーポイント。新しければどこにも触れてないはずなので。

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『まことちゃん』について

フェリシモ:
次は『まことちゃん』ついてお伺いします。『まことちゃん』は100%ギャグ漫画。これ、おならなんて全然いい方というか……、ママのお口に寝ションベンをしてしまったりとか……。

楳図さん:
そうなんですね。僕、こどものころ、トイレに行くのが怖いので、途中廊下におまるを置いてもらってそこでおしっこしてたんですね。それで、1回(漫画に描いたような)こんなことがありました。ママの顔をおまると間違えてしまって……。

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フェリシモ:
これは実話だったんですね!?

楳図さん:
でも寝ぼけてるから。

フェリシモ:
『まことちゃん』のモデルは楳図さんなんですか。

楳図さん:
そうじゃないんです。(中略)あのひとつ説明させてもらいますと、まことちゃんて目の上まで髪の毛かかってるんですね。で、走ってる姿見ると前髪がピローンとめくれ上がるんですけど、眉がないんです。これにはちょっと理由があって……。
人物を描くとき、眉ってその人の性格をいちばん表す部分だと思うんです。だからその部分がないってことは、まだまことちゃんって子は人格形成ができてなくて、人間なんだけど半分動物そのものの存在、そういうような意味があるんですね。最初、まことちゃんにいろいろな眉とか試してみたんですけど、やっぱり変なんですよ。眉を描くと「こんなふうな子」って固定されてしまうんですね。眉がないってことは、もう臨機応変。汚いことでも、ちょっと悪いことでもなんでもやっちゃうっていう、そこを眉がないっていうところで表現しているんです。眉があってやっちゃうと「なんでそういう子がこんなことしてるの」になるんだけど「ああ、まことちゃんだからこんなことやるんだね」は、(眉の)あるなしで表現されてる。ほら、怖い人ってちょっと眉を剃ったりするじゃないですか。あれって要するに人格がどこに降りてるかわかりません、の表情。女性の方は眉を描くと思うけど、眉は自分の状態を表現してしまうので、大事な作業ですよね。平安時代の方も、上の方に点々だけど、あれもある意味、性格を隠しているというようなことが言えるんじゃないですか。性格見抜かれないための手段かな、とちょっと思います。

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『洗礼』について

絶世の美女、若草いずみが最も怖いと思っているのが老けていくこと、年老いていくこと。年老いていく彼女は「永遠の美とそして女としてのしあわせをもう一度生きたい」ということで、その永遠の美を手に入れるために考えた手法が「こどもを産んで、自分の娘に自分の脳を移植しよう」ということ。

フェリシモ:
『洗礼』もまず、あらすじをご紹介します。

楳図さん:
えーっ! 一気に結末を言ってしまったんですね(笑)。

フェリシモ:
でもこれから先がものすごくおもしろいので……。

楳図さん:
こっから先は絶対言っちゃだめよ。

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フェリシモ:
この作品、ものすごい心理作戦。この心理作戦を描いてみようと思ったきっかけはありますか。

楳図さん:
さきほど『猫目小僧』出てきましたよね。『猫目小僧』のシリーズの中にみにくい男が脳みそをちゃんとした男に入れ替えちゃう「みにくい悪魔」という話があります。その話は、すごく短いんだけど、そこをもうちょっと拡大して本格的に描いてみようと思ったのが『洗礼』です。

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楳図さんの暮らす
「まことちゃんハウス」について

フェリシモ:
楳図さんの漫画以外の活動もお伺いしたいと思います。まず、楳図さんのお家をみなさまにご紹介します。

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フェリシモ:
これ、まことちゃんが「みなさんようこそ!」って迎えている門です。

楳図さん:
「グワシ」のマークがついています。通りすがりにパッと見たらわからないですね。蜘蛛の巣に「グワシ」の手が引っかかってるっていうそういう設定でデザインしました。ポストは「POST」の「O」のところが「図」になっていて、「P図ST」になっているんです。

フェリシモ:
お家の内部は見事な赤白。とっても美しいです。隣の部屋はグリーン。

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フェリシモ:
これは『森の兄弟』の絵をステンドグラスに……。すごくきれいですよね。

楳図さん:
ステンドグラスって透明感があって、光で映る色ですので、曇りとか陰りとかない。ですので、神聖な場所に使っているなあという感じはありますよね。『森の兄弟』の裏表紙の絵をそのまま拡大してステンドグラスにしました。

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フェリシモ:
家の中は、赤白まみれですね。本当に赤白がお好きというのがよくわかる1枚です。

楳図さん:
しましまグッズ集めまくってます。結構売っていないので、目につくと買うとまあそれなりに溜まっちゃったという感じ。ときどきね、しましまのシャツが売れ残ってたりすることがあって、値段も下がってて(笑)。それこそ僕が買わないと他の人が買わない感じ。「僕のために」っていう感じ、しますよね。今日も、しましま着ていただいている方いらっしゃって……。ありがとうございます。

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フェリシモ:
漫画以外、音楽、ドラマ、テレビでもご活躍されていらっしゃいますね。オロナミンCのCMにも出られてて、ほんとに元気ハツラツっていう言葉がよく似合います。
今年は大晦日にも?

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楳図さん:
そうなんですね。今年でもう4回目なんですけど。TV番組「ガキの使い」に出させていただきました。

フェリシモ:
みなさま、楳図さんの魅力に迫っていただくことはできたでしょうか。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
いつも明るく笑顔でいらっしゃる楳図先生ですが、疲れちゃうこともありますか? ストレス解消法リラックスの方法があったら教えてください。

楳図さん:
なんだろう、僕は漫画描いていてストレスは一度もなかったんですがね。でも、生活の中で思うとおりに行かないとそれはストレス。僕だいたい「くたびれたな」って思ったら、コテンと寝ちゃいます。僕夜更かし嫌いなんです。嫌いというかできない性質。まあ、昼間でも、くたびれたなあとか思うとゴロンと横になりますね。やっぱり横になってゴロってしてるのがいちばんストレス解消。僕歩くのも好きなんですけど、歩いて場所を変えていくというのは、ストレス解消になります。同じ場所でとどまっているのはよくないですね。アイデアを考えるときも、物事まとめようと思って考えるときも、部屋の中でぐっと固めて考えるっていうのもありますけど、だいたいは動きながら。体動くのと脳みそ動くのと一体なので、脳が動いているときは体も動かした方がバランスがいいような、そんな気がします。だから自然に歩きながらものを考えています。
あ、これもの考える話じゃないんだ? ストレス解消なのよね? 発散させようと思ったら海辺がいいです。海辺を歩くと楽しい気分になるし、わーっと出て行って発散できる。けど、ものは考えられないので、ものを考えたいときは山の方に行って、発散したい時ときは海の方へ行くといいなと思います。神戸にはちょうど海と山、両方ありますね。

お客さま:
『洗礼』について伺いたいです。私の超トラウマ漫画なんです。

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楳図さん:
じゃあもう既に読んで下さっているっていうことなのかな。『洗礼』は、1点すごいごまかしがあって……。養老孟司さんが書いていらしたけど、まあ要するに見せ方で騙されちゃってしまうけどもって……。まあ当然なんですよね、見せ方で騙してるけど、ありえない部分がある。で、ありえないと思いつつも騙されてしまうという話なんです。どこがありえないかって言ったら、脳を入れ替えるっていうこと自体がもうありえないですよね。ありえないけど「そうかな?」って思わせてしまって、最後に「ああそうなんだ」で終わらされるんです。そんな感じのかなり騙しのテクニックの入った話なんですよね。

お客さま:
精密な作画がとても素晴らしい楳図先生ですけれども、アシスタントさんはいらっしゃるんですか?

楳図さん:
アシスタントはいまいないです。昔の月刊3本、週刊3本描いていたころは7人いました。当時のアシスタントは中学を卒業したばっかりの人が多かったです。だけど僕の漫画を見ていただくと、そんな中学を出たばかりの人が描いているようには絶対見えない。見えないようにうまくアシスタントを使っています。と言うのは、それぞれ得意分野があるんですよ。この人はすごい斜線がいいとか、点々がいいとか、いいところを見つけて、そこの部分はその人に描いてもらいます。普通は、すごくできるアシスタントが2人いれば充分だと思います。でも、途中7人では足りなくて『おろち』のときだけは虫プロから1人慣れた方に来ていただいて、その人と僕と2人でやってました。
漫画も瞬間的なものだから、アシスタントとのお付き合いも瞬間的なものなんですけどね。でも、そのときはもうそうじゃないと成り立たないというぐらいの必要な一瞬なわけですから。それが漫画本として形に残って……。いま見てもそうやって思い出すっていうところがあります。

お客さま:
先生が普段読まれている本とか漫画、見ている映画を教えていただけますか?

楳図さん:
僕ほとんど読みません。映画もほとんど見ません。でもテレビは、そこでなんかやっていれば見ちゃうという感じ。なんだろう、自分が描いてただけにあんまりそっちの世界には擦り寄りたくないっていうのもあるのかなと思います。

お客さま:
楳図先生がいま実在の人物と脳みそを入れ替えて、他の人物として人生を歩むことができたら、誰の脳みそと交換したいですか。

楳図さん:
物理でノーベル賞をもらった人と入れ替えて、急に漫画を描き始めたらおもしろいだろうなとか思いますけどね(笑)。

お客さま:
実在した人物で、もう、いまいない方では?

楳図さん:
じゃあ、アインシュタイン。

お客さま:
楳図先生にとってプロとはなんでしょうか。

楳図さん:
プロっていうのは大人っていうふうに考えています。プロでないのはこども、大人はみんなプロだと思います。こどもってどこに進んでるかっていうのは「どこに行こうかな」、「どこに行こうかな」、「こっちの方がいいかな」と、これから見分ける状態。だけど、大人は「ここです」っていうところに来てる。中には来てない方もいらっしゃるかもしれないけど、とりあえず大人はみんなプロです。

お客さま:
先生の奥深さをすごく感じています。テレビで拝見する限り、先生は全然変わってなくて、とても元気でパワフル、全然お歳を感じません。先生のパワーの源を教えていただきたいです。

楳図さん:
そうですね、なんだろう。自分が「楽しいな」っていう目的に向かってその瞬間、一所懸命がんばっている一瞬が源ですよね。

フェリシモ:
いままで本当に多くの作品を生み出してこられた楳図さん、将来世代に向けて伝えたいことをお願いします。

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楳図さん:
「元気」という言葉で! いつまでもやっぱり自分が元気じゃないと、他にもできません。ぜひ「元気」でお願いしたいと思います。
今日いらしてくださったお客さまも、こうやってお会いした限りはもう仲間といいますか、お友だちといいますか、知り合いというか、強い絆で結ばれたような気がするので。ぜひ病気とかなさらずに、ぜひ元気で。またお会いするときに、元気なお顔を見せていただけるとうれしいなと思います。ですので、日々生活のいろいろなところに注意をされて、ケガとか病気とかしないようにがんばっていただきたいと思います。また元気にお会いしましょう。

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Profile

楳図 かずお(うめず かずお)さん<漫画家>

楳図 かずお(うめず かずお)さん
<漫画家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1936年、和歌山県高野山に生まれ奈良県で育つ。小学4年生で漫画を描き始め、14歳の時の作品『森の兄弟』と高校2年の時の作品『別世界』でプロデビュー。『口が耳までさける時』『へび少女』『人こぶ少女』など貸本向けの単行本を手がけた後、1967年から『猫目小僧』を発表、1972年からは『漂流教室』を連載、1975年には小学館漫画賞を受賞。また、1976年には『まことちゃん』を発表し、“グワシ”が大流行する。ほか、『おろち』『洗礼』『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』など作品多数。音楽作品にはベストアルバム『グワシ!!まことちゃん・楳図かずおワールド』などがある。今年で漫画家デビュー55周年となる。現在は腱鞘炎のため漫画の執筆を休んでいるが、ロックンロールをこよなく愛し、自らバンドを組み、作詞・作曲・ボーカル・振り付けを手掛けるなど音楽活動、TV出演などで多忙な日々を送っている。

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その他のゲスト

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