神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 田川 朋子さん(服飾作家)
  • 田川 朋子さん(服飾作家)

プロフィールを読む

現在表示しているページ
フェリシモ
> 神戸学校
> 田川 朋子さん(服飾作家)レポート

「服と人との新しい関係について」



<第1部>

フェリシモ:
神戸では9月「神戸ファッションウィーク」が開催されています。神戸を元気に、という思いのもと「神戸コレクション」をはじめファッションにちなんださまざまなイベントが神戸で開催されます。神戸学校もイベントを盛り上げようということで、今月は、現在ファッションの世界でご活躍中の服飾作家の田川 朋子さんをお招きしました。まず、はじめに田川さんのフィルムファッションショーをご覧ください。

ページのトップへ

人の魅力を引き出すツールそれが服。
一点モノにこだわる
田川 朋子さんの
魅力をひもときます。

(映像)

フェリシモ:
本日はどうぞよろしくお願いします。いま流れたフィルムファッションショーについて、質問させていただきます。最初に「ホームレス」というテーマについてお聞かせください。

田川さん:
「ホームレス」というのは、路上生活者という意味ではなく「ホーム=家」というぬくもりを服に落とし込めないか……と思って「ホームレス」というテーマにしました。「レス」という言葉に興味を持っているんです。「ボーダレス」だとか、境界線を超えていくというような意味合いも込めています。

フェリシモ:
どういうところから発想がわいたのですか?

田川さん:
今回、秋冬物をつくるということと、あとでお話が出てくる「リボーンスプロジェクト」というのも関わってくるのですが、重ねていくことで何か見えてくるものがあるのかなと思ったときに、重ねてウロウロしている図が「あ! ホームレスだ」って思って「ホームレス」になりました。舞台の端にボディが3体あるのですが、真ん中がフェリシモさんと共同で企画をしている「リボーンスプロジェクト」のものになります。B品というか、ちょっと傷があるものを燃やしてしまうと伺い、それをリメイクして使えないか……ということでつくったものです。中に着ているワンピースは私の新作、それとうまく組み合わせて使えないかなということでつくりました。

PHOTO

フェリシモ:
映像の中にも、リメイクとして使っている部分があると伺ったのですが……。

(画像)

田川さん:
組んでいる手の部分。タイツを切ってリメイクしました。

フェリシモ:
こちらはフェリシモの商品を使っていただいています。リメイクしたものと田川さんの作品の融合ですが、そこには思いやお考えはありますか?

田川さん:
単純にリメイクをする、というと手作業が多く手づくり感が残ってしまって、実際使うと「ちょっとださいな」ってなると思うんです。重要なのは、リメイクをしたあとに、自分がちゃんと使えるかどうか、かっこいいかどうかだと思うんですね。なので、自分のワードローブの中に入っていてもおかしくないものにしないと意味がないような気がします。今回は特に新作とからめて、おかしくないようにしたいと思ってつくりました。

フェリシモ:
まさに使えなくなったものを新鮮なものに生みかえるという感じですね。ほかの作品も見ながら田川さんのお話を伺っていきたいと思います。まず、田川さんの幼少期の話を伺いたいと思います。どのようなお子さんだったのでしょうか?

田川さん:
小さいころの話をするのは、すごく恥ずかしいんですけど……。人と接して、みんなでわーっと遊ぶというよりは、ひとりで本を読んだり、ひとりで遊ぶことが多かったです。

フェリシモ:
服に興味を持たれたのはいつごろですか?

田川さん:
「服が好きだ」とか「おしゃれをするのが好きな子供で……」というのがあれば、もっとイメージがわくと思うんですが、特に服との関わりが多かったわけではないんです。ただ、小さいころの写真を見ると、母親が編んでくれた服を着ていたり、おばあちゃんが仕立てた着物を着てたりとか、ちゃんと手づくりのものを着ていた時代があったんだなというのはあります。

PHOTO

フェリシモ:
それもあって服の道に?

田川さん:
絵を描くのが好きだったので「絵を描いて生活できるのはデザイナーだ!」と思って学校に入りました。特にこだわりがあるというわけではないまま、学校に行ってましたね。

フェリシモ:
今、服飾作家として活動されているわけですが、ファッションデザイナー、コスチュームデザイナーではなく服飾作家という肩書きで名乗られている、その背景や理由はありますか?

田川さん:
仕事をしていると、スタイリストさんと呼ばれたり、衣装さんと呼ばれたり、いろいろな肩書きで呼ばれます。本来なら田川 朋子という名前だけで十分かなと思うんですが、思いとしては、ファッションというのは流動的で、はやりすたりがあって、流されていってしまうようなイメージがるので、自分たちがきれいになるために飾るものであるという思いを込めて「服飾」とつけ、あと、つくり手であるということを伝えたいなということで「作家」とつけています。

ページのトップへ

原点は着物や帯?
四角い布をつなぎ合わせて
表情豊かな衣装を手がけます。

フェリシモ:
学校を卒業されてから、すぐ服飾作家として、ひとりで活動されているのでしょうか?

田川さん:
いったんは就職したけれど辞めて、バイトしながらいろいろなことを経験して、やっぱり服をつくりたいなあと思ってつくり始めました。最初はきちんとデザインをしてパターンを引いて服をつくるという形をとっていたんですけど、少しずつやり方を変えていって今のスタイルになりました。

フェリシモ:
やり方を変えていくのには、何か理由がありましたか?

田川さん:
私のつくる服は四角いパーツでできてるんですけど、何か単純な図形で、複雑なものができないかなとか、四角いパーツだけでどこまでできるのかということをやっています。

フェリシモ:
四角いもので服をつくるというところなんですが、どうやってつくられているのかをご紹介したいと思います。

(実演)

フェリシモ:
本日、田川さんに使っていただく布についてご説明します。こちらは、バングラデシュで手織りで織られている伝統的な織物です。バングラデシュは世界最貧国と言われていて、生活者の経済的な自立がむずかしいと言われていました。そんな中、グラミンバンクという銀行が無担保で少額融資を行い、さらに生活者の方に伝統的な手織りの生地をつくることができる制度をつくりました。それによって、生産者は現金収入を得ることができ、生活が安定するようになりました。グラミンバンクの創設者であり、1996年ノーベル平和賞を受賞したムハマド ユヌス教授とフェリシモが共同で開発した「無限の希望」というコンセプトのグラミンチェックの生地です。普通の四角の布ですが、だんだんと服のようになっていきます。

田川さん:
まずひとつめは簡単に四角い布を首と腰で巻いただけです。1枚できちんと隠したいところは隠されていて、チェックの柄をきちんと生かしたかったので、このような形をとっています。チェックというのは縦と横の色の重なりが重要で、ここで縦のラインが入っているのと、ここで斜めにきちんと柄が出るという形です。シュシュッと巻いているだけなんですが、ここから向こうが見えないような形をとっています。ではもうひとつ、つくらせていただきます。

フェリシモ:
さきほどとは違う表情が見えてきました。

田川さん:
これは1枚の布を横に使って、そのままくるんと巻いた状態。服というのは肩と首で着るものなので、肩の位置で留まるとどんなものでも、着ているという状態になります。こちら、このような形でバックスタイルにポイントをつけています。今1ヵ所だけピンでとまっているのですが、少しミシンで縫うと、1枚でも着れるワンピースになります。こういうふうに斜めになったり、縦になっていたり、チェックの柄のいろいろな表情です。1枚の布でも表情豊かで楽しいですね。

PHOTO

フェリシモ:
今日の田川さんの服も、四角い布でできているんですか?

田川さん:
はい。これは長方形の布が2枚です。

フェリシモ:
四角の布からつくるところが、田川さんっぽいと思うのですが、四角の布に興味を持ち始めたきっかけを教えていただけますか?

田川さん:
四角いパーツは、もともと生地が四角く織られているので、無駄がないようにというのがまずひとつありました。着物、帯って、四角いのに、表情が豊かで色気があるというか……。隠されているのに、形が見える、体のラインが美しく見えるというのはすごいなあと思って。洋服は体の形に沿わせてカットしていくものなんですが。それをなるべく単純な図形、四角い布で体を包んでも凹凸がある、立体的になるにはどうしたらいいのかっていうのを、作業で追求していくのがすごく楽しいです。

フェリシモ:
生地のチェックを生かした作品も印象的でしたが、その柄、素材に合った服を、ひらめいてつくられるのでしょうか?

田川さん:
例えば赤いドレスはシルクシャンタンなんですが、ハリがあるからこういうふうにしようとか、落ち感、トロンとしているからこういう形にしようとか、布の特性を生かして形を探っていくとう作業が楽しいです。

(赤いドレスの説明)

フェリシモ:
「神戸コレクション」のチケットなどで使われているドレスをご紹介したいと思います。

PHOTO

田川さん:
これは、今年の春夏の「神戸コレクション」のポスター用の衣装としてつくらせていただいたものです。これも四角いパーツふたつでできています。体に沿うように縫い目を何本か入れています。生地自体にハリがあるので、パニエとか中身に詰め物をしなくても、このように浮いて、シルエットが出るような形になっています。1枚の長い布をくるくると巻いて、留めていっている状態です。布の無駄を出さないような形をとっています。ではもうひとつ、つくらせていただきます。

フェリシモ:
普段はどのように生地選びをされていますか?

田川さん:
依頼がある時は、それに沿った形で選びます。自分の作品をつくるときは、実際見て触って、つくってみたいと思う生地を選んでいます。

(画像)

田川さん:
春夏コレクションの新作の発表です。

(画像)

田川さん:
これはストライプではなく、ボーダーだったのかな。ボーダーだと横線だけなんですが、その生地を使って、縦、斜めにして、1枚の四角い生地で表情がつく形をとっています。

フェリシモ:
服をつくる時に大切にしていること、意識していることはありますか?

田川さん:
興味があるのは、女性の体。それだけですごく美しいというのがあって、背中だけ見ていても色っぽいなと感じたりするんです。隠されているけれども魅力的に感じるというのがあるので、そういうものを表現したいと思っています。

フェリシモ:
そういうふうに思われたきっかけは何かありますか?

田川さん:
その人の魅力を出してあげたいな。その人に似合うのは何だろうって思うので……。ほかのデザイナーさんのつくり方とは違うんですが、その人の魅力、色気が出るようにつくります。

フェリシモ:
それが田川さんが一点モノにこだわる理由なのですね。

ページのトップへ

お客さまに届かないB品を蘇らせる
「リボーンスプロジェクト」
田川さんにご協力いただいています。

フェリシモ:
このように一点モノにこだわられている田川さんですが、さきほどお話に出てきたフェリシモの企画する「リボーンスプロジェクト」にも参加いただいています。そちらのお話も聞かせていただきます。
まず「リボーンスプロジェクト」についてご説明します。このプロジェクトは、フェリシモの中で規格不適合品となってしまった、実際にお客さまにお届けできなかった在庫品を違う意味のあるものに生まれ変わらせようということを目的としています。昨年から、大学や専門学校などで、学生さんに在庫のものを使っていただき、新しいものに生まれ変わらせるという、クリエイティビティあふれる人を育成、発掘しています。田川さんは京都精華大学や大阪モード学園で講師をされいます。そちらの話をお聞かせいただけますか。

PHOTO

田川さん:
最初この話をいただいた時に、燃やしてしまうものがそれだけあるんだというのに少し驚きました。学生たちには「できあがったものがかっこいいな」とか「欲しいな」と思えないとだめなんだよというのは言って、あとは自由につくらせています。

フェリシモ:
リメイクに対する田川さんのお考えを聞かせてください。

田川さん:
私自身、リメイクを主としてものをつくっているわけではないのですが、でも、リメイクというのは、すごく愛着があります。小さい時に着ていた服だとか、そういうものを何かできないか……と思います。あと、昔は綿の着物とかも、小さなこども用にどんどんつくり変えて、最後はおしめになって終わっていくという……。それは四角いものなので、ほどけば四角くなるから、どんどん違う形に変化できるんです。服はもう切ってしまっているので、それ以上になれる要素がないんですが、私の服の場合は四角いパーツなので、例えば一度お買い上げいただいた方が、持ち込んでくれたら、それをほどいてまた別の形につくるというのも可能なんじゃないかと……。ほどいてもう一度、また別の形に変わっていく、それは、もの対して愛着を持っていただいているということなのでうれしいことだと思います。何か自分が買おうとした時に、ずっと使いたいと思えるかどうかで買っていただきたいという思いと、そういう形で長くつきあっていけたらいいなと思います。

フェリシモ:
そういったところも、四角いパーツで一点モノにこだわる背景になっているのですね。今日は実際に田川さんの授業を受けられた米田さんと中川さんが来てくださいました。自己紹介と「リボーンス」の作品をご紹介ください。

米田さん:
京都精華大学4年生の米田です。よろしくお願いします。私は絵を描く服というコンセプトで「ドロウ」という作品をつくりました。服というのは、衿があったり、ファスナー、ボタンがついていたりだとかで構成されるものだと思うんですけど、それをどんどん単純化していった時に、例えばそれは1枚の無地のTシャツに絵を描いているように見えるのではないかと思いました。「絵を描く」という行為を服に持って来た時に、自由に楽しくさまざまないろいろな服の表現をできるのではないかと思いました。これは1枚のカーディガンの首まわりと腰まわりのところをどんどん線状に分解していってつくったのですが、それで何パターンかつくりました。これはその中のひとつです。例えば、これだったら、ここは、衿のように見えて、これはネクタイのように見えるかも知れないし、これはジャケットを着ているように見えるかもしれない、そういうふうにこのひもをどんどん自由に想像力でつなげていくことによって、ひとつの特別な服として成立するのではないかと思いました。

フェリシモ:
いろいろな表情を映像でご紹介したいと思います。

(画像)

米田さん:
これらはすべてひもをかけただけなんです。まず左上の写真は「ライン」というタイトル。ネックレスがかかっているようなところを想像しました。その横は「バタフライ」というタイトルです。蝶が印刷されているTシャツのようなイメージです。その横には「フリルブラウス」というのがあるんですけど、さっきの「バタフライ」に1本ひもをプラスすることで、Tシャツからフリルブラウスのようなものになれるのではないかと……。左下はさきほどのとおりで、その横は「チェック」というタイトルで、アーガイルのような模様をつくっています。最後右下は「サスペンダー」。サスペンダーをつけているようなところを想像して制作しました。

PHOTO

フェリシモ:
田川さんはこちらの作品、どのような感想をお持ちだったのでしょうか?

田川さん:
捨ててしまうところが多くなってしまったのは、ちょっともったいないかなあと思ったんですが、実際こういうふうに使っていくと、ただのTシャツの上にのせていくので、すごく表情がたくさん出るっていうのと、そのままふだん使えそうだなというところがよかったなと思います。

フェリシモ:
この「リボーンスプロジェクト」の授業を通して学ばれたこと、感想があればお聞かせください。

米田さん:
つくっていて、これがただのひもだったらきっとできなかっただろうなと思っています。服の形をどんどん切り取っていったから、シャツの形をつくることもできたのではないかと思っています。

フェリシモ:
もともとあった服を、解体する作業はいかがでしたでしょうか?

米田さん:
すごく楽しくて……。でも、何も考えずに解体するのではなく、服の形を残しながら解体していくことが大事なのかなと思いました。

フェリシモ:
将来の夢はありますか?

米田さん:
何かをつくることが好きなので、ずっとつくり続けていきたいなと思います。

フェリシモ:
続きまして中川さんお願いします。

中川さん:
中川です。選んだ最初の服はこのベストです。

(画像)

中川さん:
たくさんいろいろな服があった中、すぐこのベストをリメイクすることに決めました。理由は、フードもついているし、前にはジップがあって、リバーシブルになっていたりとか、下の部分がリブになっていたり特徴的だったので、リメイクのしがいがあるかなと思って選びました。

(画像)

中川さん:
最初にベストを手にした時、色やボリュームが、シュークリームに似てるなという印象を受けました。シュークリームって、どこから食べてもすべておいしいんですけど、リメイクする時も、そういう感覚でできないかなと考えました。

(画像)

中川さん:
フードとジップだけが残った状態です。これは、私が考えたんですけど、つけフードと言って、フードだけを自分の服につけるという作品です。これは、いろいろなバリエーションがあって、ほかにも、ボタンをつけるとトートバックになったり、ジップを上げたらショルダーバッグになったりします。

PHOTO

(画像)

中川さん:
さきほどのは真ん中の部分だけを使ったんですけど、それだけではもったいないと思って、解体したいらない部分を少し切って、それをつなげてスカートにしました。

(画像)

中川さん:
実際の写真です。トートバッグとして、小さい子が使えたらいいなと思いました。

(画像)

中川さん:
これがショルダーバッグです。

(画像)

中川さん:
授業で、プレゼンをする時に着た状態です。つけフードとスカートをジャケットと合わせて着ました。

(画像)

中川さん:
ジャケットのボタンをはずすと、ジップだけ見えるようになっています。

(画像)

中川さん:
どうやってつけフードがトートバッグになるかを説明しました。

フェリシモ:
「リボーンスプロジェクト」の授業を通して学んだことを教えてください。

中川さん:
実際の服をリメイクしてつくり変える機会は、こういう授業がなければなかったので、いろいろな発想が出てきて、リメイクも楽しいなと思いました。

フェリシモ:
将来の夢をお聞かせください。

中川さん:
私は来年から服飾の専門学校に行こうと思っています。何かをつくるというのは、素敵なことなので、将来デザイナーを目指してがんばりたいと思います。

田川さん:
実はふたりは大学で服をつくっているわけではなくて、建築学科の学生さんなんです。この授業を通して、服をつくりたいと思ってもらえたのは、すごくうれしいです。

フェリシモ:
本日は会場にも作品を展示していますので、みなさんご覧ください。

(会場:拍手)

フェリシモ:
このように、学生さんに講義される中、次世代の方に伝えたいことはありますか?

田川さん:
私はいまものをつくっているんですが、常につくって残ってセールになって……というその繰り返しがすごく嫌で……。かといって、一点モノをつくって売るという発想もなかったので、だんだんポスター用とか衣装系の方にいったんです。最近「一点モノが欲しい」というお客さまが増えてきたので、今はこういう形でものをつくっています。遠回りをしたようにも思いますが、きっと自分が目指すところに行き着くと思うので、やりたいことと違っても、がんばってやってほしいなと思います。

フェリシモ:
今後されたいことは何ですか?

PHOTO

田川さん:
ずっとやりたいなと思っていたことのひとつに、映像を撮るということがあります。人が着て動いているところを見たいって思うお客さまも多くて、いままではダンサーの衣装とかもやってたんですけど、舞台になると、舞台を見に行かないと見れないっていうのも多いので、映像として残して、見ていただきたいというのもあります。今後は映画とかスクリーンに残るものをつくっていきたいなと思います。

フェリシモ:
ほかにもいろいろな作品がありますので、ご紹介します。

(画像)

田川さん:
これは男の子です。この時は、この子を男の子としてではなく女の子としてつくってたんです。ダンサーでもあり役者さんでもある方です。

フェリシモ:
ふだんはメンズも?

田川さん:
メンズはなかなかつくらなかったんです。興味がないというか、女性の体の方がきれいだなと思うので……。メンズ用につくったわけではないけれど、男性に着てもらっても美しいものもあるので、メンズもこれからつくろうとしています。男性は肩で服を着ている、女性は腰で着るという感じ。肩だけで表情が出すことを追求できたらいいなと思います。

(略)

フェリシモ:
ひとつの作品をつくるのにどれくらいかかりますか?

田川さん:
依頼はいつも電話1本。「心づもりだけしといて」みたいな……。 「撮影いつですか?」って聞いたら1週間後とかで、本当に依頼が入ってくるのは、4、5日前だったりするんです。そこから生地を買いに行って、形をつくって本番に臨むので、実際は、2着で1日とか1日半とかです。

フェリシモ:
このような形のファッションショーはよくされているのでしょうか?

田川さん:
いままでは、すっと展示販売をしていたんですが「実際に着て動いているところが見たい」というお客さまの声も多く、10月30日に大阪の北浜にある私のアトリエの上のギャラリーで、映像とからめたインスタレーションという形でします。

フェリシモ:
これからの夢を聞かせてください。

田川さん:
映画の衣装をやりたいですね。そのためにやってきたような気がするので、そこに向かってやってきたい。

ページのトップへ

<第2部>

ストールを使ったワークショップ

田川さん:
さきほど四角いパーツだけでものをつくっているというお話をしました。四角いストール、普通はこのように肩にかける、巻くだけで終わってしまうと思いますが、ちょっと表情をつけたいなと思ったときに、端を持って肩にかけます、これをくるっとまわします。ピンで留めてもいいし、大きめに結んでもいいです。ジャケットやコートを着た時にかわいいと思います。はしとはしを結ぶだけなんですけど、むずかしいですかね? 結んだ状態で引っ張ると、ドレープが大きく出て表情が変わってくると思います。ぐるっとまわして1ヵ所結ぶというのを覚えておいてもらうと、バリエーションができると思います。これくらい薄いものだったら、後ろにまわしてもらって、首の後ろで結ぶか縫い留めておくとベストふうになります。お気に入りの布でやってもいいと思います。

PHOTO

あと、簡単なのは片方の肩にかけ、ストールの幅の半分の位置でつまみます。こちらも同じです。で、こことここをピンでとめます。そうすると表情が出ます。これも、もう少し幅のある分厚めな素材だと、レストランに行った時などに冷房寒いなと思ったときなどに、二の腕をカバーしてくれるので、そういうときにいいと思います。分厚い素材だと、また表情が変わります。もりっと盛り上がるのですごく表情が出ると思います。今私が使ったのは半分ずつ大きさの違うチェックの柄。こんな感じでみなさんお手持ちのストールをつぎはぎにして巻くと、また表情が変わると思います。リメイクすると楽しいと思いますので、みなさんお持ちの四角い布をおもしろくかわいく使ってください。

ページのトップへ

お客さまとのQ&A

お客さま:
会社に就職し、その後、独立されたとおっしゃってましたが、不安要素はありませんでしたか?

田川さん:
実は独立しようと思ったわけではなく、何も考えずとりあえず辞めてみようと思って辞めました。だから、不安だと思う前に、もっと目の前が開けている気がしていました。不安はあまり感じなかったです。今の方がもっと不安です(笑)。辞めたのが20代だったので、無謀な感じでしたね。やれることを今のうちにやりたいっていう感じ。不安よりも先にもっといいことがあるんじゃないかという気持ちの方が強かったです。

お客さま:
色は服にどのように作用すると思いますか?

田川さん:
服に作用するかどうかはわからないのですが、着ている人間が、気持ちが高まるということはあると思います。色は服に作用するのではなく、着る人、見る人に作用すると思います。人間に直接関わってくるような気がします。

お客さま:
座右の銘を教えてください。

田川さん:
うーん、座右の銘ではないんですが、自分がかっこいいと思うものを信じるというのが、すごくいいと思います。自分を信じないと先には進めないと思うので、信じると言うことと、あとは笑っていればなんとかなる、そんな感じでしょうか?

お客さま:
お話に、リアルクローズのことも出てきたと思うのですが、田川さんのリアルクローズとは対極のファッションだと思うのですが、いまのリアルクローズに思われることはありますか?

PHOTO

田川さん:
私は舞台の衣装をずっとやっていますが、最近は「着たいから売ってほしい」というお客さまが増えてきました。リアルクローズと言ってしまうと日常着。日常着は、そればかりに気をとられてしまうと売れているもの、手に入れやすいものという簡単なものになってしまうのですが、私の場合は、リアルクローズとはいえ、着れるけれどおしゃれ感があるとか、特別感がある、自分が着るとワクワクするとか、どこかに出かけたくなるという服の方がいいと思うんですね。リアルクローズというのは、本物を着るという意味だと思うので、ファストファッションとはまた違ってくると思うんですね。なので、舞台衣装、ポスター用の衣装をつくる時も、一般のお客さまに売る時もそうですけど、それを見た人、着る人が「ああ、この衣装を着てポスターを撮るんだ」とか「このドレスを着て●●に行くんだ」とか、そういう気持ちは変わらないと思います。今、ウェディングドレスの依頼だとか、私の同級生が「ソフィア」というバンドを組んでいまして、こないだ武道館コンサートがあったんですけど、それの衣装をやったりしたんですけど、その時も特別ですね。復活コンサートだとか、そういう特別な時に着れる服もリアルクローズだと思っています。その辺の境目はない気がします。

お客さま:
そのつくる時間が1日とか1日半とか、短い時間だとお伺いしたんですけど、次々にアイデアが出てこないとダメだと思うんですが、それができるようにふだんから心がけていることはありますか?

田川さん:
私はアスリートではないんですが、こういうのも訓練だと思っているので、つくり続けていないと脳みそが固まるような気がしています。なので、常につくっているというか、手を動かしておくというようなことが必要だと思います。休むことも大事なんですけれど、常に頭の中で作品につながる要素を考えておくとか、何かに興味を持っておくとか、脳みそを常に動かしておかないと、いざ「お願いします」って言われたときに来なくなると思うんですね。なので、ずっと動かしておくと言うのは大事だと思います。

お客さま:
好きな映画を教えてください。

田川さん:
石岡 瑛子さんが好きで、彼女の関わっていた映画「ドラキュラ」の衣装が衝撃的でした。この映画のここの部分がよかった、というのはちょこちょこ断片的にはあります。

お客さま:
布から不思議なドレスができて、感動しました。企業秘密かもしれませんが、布はどこで調達しているのですか? 今着ていらっしゃる布をご説明していただきたいなと思うのですが……。

田川さん:
入手経路は企業秘密でもなんでもなく、新大阪にある生地屋さんや本町、昔から取引のある岐阜の素材を扱っている方からとか。今はあるものを使ってつくっています。料理人のように、ある素材を無駄なく使いたいみたいにものをつくっています。来年の春夏は、オリジナルのプリントものも手がけていきたいなと思っています。 今着ているこの生地は綿100%でカットソー素材の上に箔プリントされたものです。なので、これだけの光沢感があります。一般に売っていたものです。街の生地屋さんとかでも、おもしろいものが転がっていると思います。大切なのはどこで何を買うかというより、みつけることと、あとはそれをどう料理するかということが大事だと思います。なので、どこにでもある素材で、私はつくっています。

フェリシモ:
実は本日はスペシャルゲストをお招きしています。「神戸ファッションウィーク」推進協議会の高田 恵太郎さんです。「神戸コレクション」の発起人であり、現在のエグゼクティブプロデューサーとしてご活躍されている高田さんにお話を伺いたいと思います。

PHOTO

高田さん:
こんにちは。高田と申します。田川さん、赤い衣装、非常に好評でした。2006年の秋から神戸の街を盛り上げたいということで、春と秋、年2回「ファッションウィーク」という企画をやっています。神戸の企業さまにご協力いただき、春と秋の1ヵ月間やっております。企画の一環で「神戸ファッションリメイクコンテスト」をしています。着なくなった洋服をもう一度生き返らせようということで募集し、全国から500件以上のご応募をいただきました。ファッションの勉強をしている学生さんや、昔、洋裁、和裁をされていた方まで、下は11歳から上は80歳くらいの方がデザイン画で応募くださって書類審査させていただきました。田川さんのお話と一緒で、実際に着れる、街にふさわしい、ワクワクするという基準で選んで約500点のうち33点を選んで、作品を実際につくっていただいて大丸神戸店で8月後半から9月に展示させていただきました。
新しいファッションを生み出すこともしなければ、企業さんは利益が出ないのですが、お父さん、お母さんが着ていたものとか、昔買った一着をもう一度生き返らせる、それは世界にひとつしかないんで、そういうファッション文化を神戸からできないかなあということで、やっています。「神戸ファッション」「リメイクファッション」を広げていきたいと思います。

フェリシモ:
最後に神戸学校からの質問です。服を通して、人の魅力を引き出せること、また信念を持ってその道に突き進んでいくところが田川さんの魅力だなと思いました。そんな田川さんの原動力、強さの秘訣を教えてください。

田川さん:
やはり、求められているというのは、大事だと思います。「つくっていただきたい」とか、私がつくるものを理解して「田川さんにお願いしたい」って言ってくださる方々がいるっていうのが、私の原動力。求められていることはしあわせなことだと思います。「ほしい」と言ってくださる方がいる限りつくっていきたいと思っています。

ページのトップへ

Profile

田川 朋子(たがわ ともこ)さん<服飾作家>

田川 朋子(たがわ ともこ)さん
<服飾作家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
兵庫県生まれ。服飾作家。モード学園卒業後、自身のブランド「SEN」を設立。全て四角のパーツで完成する立体造形的な服づくりによる作家活動を開始。ダンサーやミュージシャンの衣装のほか、舞台「座頭市」のパンフレットおよびポスター用衣装や、神戸コレクション2010 SPRING/SUMMERのポスター用衣装等、広告用衣装も手がける。2009年10月~2012年3月まで、大阪梅田HEP FIVEインフォメーションスタッフの制服デザインを担当。現在、大阪・北浜「月眠ギャラリー」の地下にアトリエをオープンし、一般に販売も行っている。「時代の流れに関係なくとうとうと流れているもの、そういう不変的な服であること、人が着てはじめて美しい服となること」をブランドコンセプトに、立体裁断により創り出される服は、身体に寄り添い、まとわりつき、形をつくる。
http://www.tomocotagawa.com

ページのトップへ

その他のゲスト

ページのトップへ