神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「心の目で見る 写真家として表現したいこと」



<第1部>

みなさま、こんにちは。写真を生業として今年で約30年になります。写真家という世界があることを若いころは知りませんでした。今でこそ、携帯電話にもカメラがついているし、一家に1台カメラがあって何か写す機会がない家はないんじゃないでしょうか。私がこどものころにはどこの家にもカメラがあったわけではなく、中学生くらいのころ、自動販売機で使い捨てカメラが売り出されて、やがて携帯電話にカメラがついて、「撮る」という行為が身近になってきました。私がカメラに出会ったのは、高校生くらいだったと思います。カメラというのは、女性の世界のものではないという印象を持っていましたし、こどものころはカメラに直結するような生活はしていませんでした。ですが、今はこうやって写真の仕事をするようになると、「何か幼いころからの繋がりがあったな」という気がしています。
今日は、写真をご覧いただきながら、お話していきたいと思います。

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「旅写真の面白さ」

私の写真のメインは今、旅写真です。花の作品とかもありますし、それ以外にも広告のお仕事もさせていただいています。去年、今年のVOLVOという車のカレンダーも撮影しています。時間が空いた時にぽっと旅に出て、写真を撮っています。毎年行っているのはスイスです。

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「報道から旅写真へ」

いちばん最初の仕事は、新潮社の『フォーカス』という雑誌でした。20代のころ一世を風靡した報道雑誌です。それから始まったんです。

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「BOSTON in the time」

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『フォーカス』は2年間くらいやって、それで報道の世界のきびしさを知りました。30年前はほとんど報道の世界は男性でした。例えばデヴィット ボーイが来日したから「撮影に行ってきて」って言われて、記者会見場に行くと100人男性がいて、その中にひとりだけ女性というような……。そんな中、ひとり女性がいたら、男性陣にかわいがられると思うでしょう? ところが反対なんです。「女どけっ」て言われて三脚を蹴られたり、誰よりも先に行って真ん前を陣取っていたら、後ろから押されちゃったりとか、男性からきつく当たられたんですね。それで、ちょっと報道はつらいなあとか思いながら、「じゃあ、何をしよう」って言った時に、家族の仕事の関係でボストンで2年間暮らすことになって、そこで写真を撮りながら、2歳のこどもを育てていました。その子をおんぶしながら写真を撮っていたんです。外国の方はこどもを抱っこしますよね。おんぶは日本独特のものなんですが、これが両手が使えて写真を撮るにはちょうどいいんです。ある冬の寒い日、マイナス5~10度に下がった日があったんです。ボストンでは、そういう寒い日は、高齢の方やこどもを外に出しちゃだめって言われていたんですが、おんぶって、背中とお腹がくっついて暖かいんですよ。大丈夫だろうと思って、その寒い日もこどもをおぶって写真を撮っていたんです。それが評判になってしまって、あんな日にこどもをおんぶして写真を撮っている、日本人の親が変なことをしていると……。それで、ある日本人の方に注意されたんです。「ああいう寒い日は、外にこどもを出しちゃだめよ」と言われました。そうやりながらポツポツと撮りためた写真をまとめましたのが、「「BOSTON in the time」という、私のいちばん最初の写真集です。

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「旅写真の機材」

例えば、旅にどんな機材を持っていくかと言いますと……。

(写真)
カメラバッグです。デジタルカメラとフィルムカメラが混在しています。もちろんこれは一部です。もっとたくさんあるのですが、その中から選んでいます。例えば、スイスに着いた時点で、「今日は山に登るから」という時はあまり重いのは持たずに、だいたい35ミリのデジタルカメラとフィルムカメラとあとレンズが数本という感じでしょうか。バッグのメッシュのところにいつも紙風船を入れてるんです。こどもさんとかを撮影させてもらった時に、お礼にプレゼントしたりするんです。そうするとすごく喜ばれるんです。軽いし、かさばらないので、ちょっとしたお土産として鞄の中に入れています。

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「SWISS 2004~2009」

なぜスイスなのかと言うと……。それまでは、東欧とか中国とかそういった国を撮ることが多かったんですけど、必ず風景の中に人が入っているのを撮るのが好きなんです。その展覧会を見られたスイス政府観光局の方が「スイスはきれいな風景写真はいっぱいあるけれど、人物の写真があまりない」というので撮りに行ってきました。

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(写真)
この写真をなぜ撮ったのかと言いますと、私は、まず現地に着いた時に、いちばんパッと光として目に入ってきたものを撮るようにしているんです。これは、スイスで、チェックインしたホテルのステンドグラスの窓から階段に光が流れていたところを撮りました。こういうピュアな感覚というか、そういうのを見つけて撮っていくのが大事なことなんじゃないかなと思うんです。

(写真)
ヨーロッパ最大のアレッジ氷河です。自然遺産に初めてついた世界遺産第1号です。なぜかっていうと、地球温暖化で氷河が溶けてきて、真っ白だった氷河がグレイになってきたんです。こういう自然を守らないといけないということで、世界遺産に与えられた第1号です。手前は泉で、向こうの方が入り口です。

(写真)
羊ですね。必ず人間を見ると寄ってきます。でもえさがもらえないとわかると、すぐ去りますので、寄ってきた瞬間に撮っておくことですね。

(写真)
私は石川県の生まれ。石川県には七尾市出身の長谷川 等伯という有名な画家がいらっしゃいますけれど、こういう松林図屏風のような、霧の世界にすごく惹かれるんです。いろいろな国に行っても、霧の瞬間写欲がわくというのか、よく撮ります。

(写真)
自然に生えるクロッカスなんです。後ろに見えるのはアルプスの山です。自然に何十年、何百年も昔から、毎年春になると雪解けとともに高山植物たちがいっせいに花を咲かせるのがスイスですね。

(写真)
彼方地平線が見えます。これは、ユングフラウの山の方に登った時に見た反対の方の景色です。人の歩いたあとがありますね。

(写真)
写真って光と影の芸術だなと思うんです。1点、赤いいすを照らしていたんですね。この時も確か、山歩きを5時間くらいした時だったと思います。ベンチが必ずあって、そのベンチからのビューがいいんですね。いすを見つけられたら、カメラを構えられるのもひとつかなと思います。

(写真)
これは有名なマッターホルンですね。手前のところに水生の草があったのでそれを入れこんで撮りました。

(写真)
ひとりで旅していると、何か自分の形を残したいなと思って、ときどき自分の影を入れながら……。これはスイスのホテルに泊まった時に撮ったものです。

(写真)
こうやって見ると、写真っていろいろなタイミングがあって、人それぞれ見てるポイントは違っていていいと思います。よくレクチャー本で、構図はこう、とか、シャッタースピードはこれぐらいで……とか、書いてありますが、今はカメラが全部やってくれますし、自分が撮りたい絵ということだけを頭に置いて撮れば、大丈夫だと思います。だからプロとアマチュアの境がなくなってきて大変なんですね。機械がよくなればなるほど大変です。アマチュアとプロの違いって何だかわかりますか? プロは6割以上が成功しないとダメなんです、例えば36枚撮りの1本のフィルムの6割が使える写真じゃないといけない。でも、アマチュアの方は、その中に1枚あればいいいんです。

(写真)
今年はユングフラウ鉄道が100周年なんです。世界各国でいろいろなイベントがある中で、日本では、写真展をすることになりました。来月5日から新宿で、展覧会をします。鉄道ファンにとってはスイスはものすごく魅力的な国だと思います。

(写真)
山を歩かないとこういうポイントは撮れません。30センチくらいしかないギリギリの山道を歩いて、ニューポイントを探します。そもそも私は鉄道写真家ではないんですが、たまたまスイスは鉄道が素晴らしいので撮影しました。

(写真)
足下を見るとこういったさりげない植物が生えています。こういうものも見逃さずに撮っていくのも大切ですね。

(写真)
光を撮ってるんです。

(写真)
紅葉している様子が見れると思います。ここはかなり歩いた山でした。森林限界と言って、あれよりも上に行くと木が生えてないんです。そのギリギリのあたりの高地です。

(写真)
スイスに行って思ったのは、スイスの方は本当に家族を大事にしています。日曜はハイキングデイと言って、家族全員、犬も一緒に歩くという、それがいちばんのレジャーになっています。平日はひとりのハイカーが多いんですが、日曜には家族連れに出会うことがあります。この時に、人間としてどう生きていくかとか、「ゴミは拾って返りなさい」とか、いろいろなことを教育するらしいんです。山登りが、教育の場なんです。それと家族でいい汗が流せるということで、家族のいいコミュニケーションがとれるということで、スイスの方たちは大切にしています。

(写真)
お嬢さんがお父さんと2人で登っている写真です。いろいろな話をしながら、険しい山を登っていく達成感とその時に親子で結ばれた愛情が、一生心の中にあるんでしょうね。

(写真)
駅のホームで幼稚園のこどもたちが電車を待ってたんでしょうかね。

(写真)
街を歩いているといろいろなシーンに出会います。一所懸命裁縫をされていました。

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(写真)
これは、犬は私を見ていました。

(写真)
これは世界遺産のブドウ畑です。ちょうど霧が出ていていい感じでした。レマン湖です。

(写真)
車窓から撮ったんですけど、鳥がばっと来て、向こうの方の雲がとてもドラマチックでした。1等車は窓が開けられないので、必ず2等車に乗ります。窓が開けられたり、デッキで撮影できたりします。電車に乗るとだいたい立ちっぱなしで撮影しています。電車はベストビューポイントを走っているので、何回も乗って行ったり来たりすることがあります。

(写真)
この写真集の一部でした。

(写真)
これはパノラマですね。縦にすると掛け軸のように見えます。

(写真)
これも、翌日に撮りに行ったら、黄色い花はありませんでした。牧場なので、天気がいいと刈り込んでしまった、エサになるんです。見たらすぐ撮ることです、次の日見たらなくなっているということもありますので。

(写真)
この外観はシャレーの5つ星ホテルです。外観はそのままですが、中のアメニティが素晴らしく、お料理もおいしかったです。

(写真)
ネコとにらめっこしているんでしょうか?

(写真)
ここは雪溶け水で、エメラルドグリーンなんです。吸い込まれるように、湖に向かって前進してたんですね。ある一瞬にファインダーを見たまま、前進してしまったんですけど、この湖に落ちてしまったんです(苦笑)。3メートル下にどーんと落ちてしまいました。「カメラを守らなきゃ」って言うんでホールドして、両肘を血だらけにしました。もしかして骨折?としばらく立てませんでした。病院に行ったら「お尻の肉が厚いから、それでよかった」と言われました(笑)。落ちたがために撮れた写真が写真集の中にあります。

(写真)
これナルシスという水仙の原種なんです。この花は5月しか見られないんです。いろいろな国に行った中に、夢のような風景というのが少ないんですけどあるんです。そのひとつがこの風景です。これはびっくりしました。遠くから見たら雪山みたいなんです、真っ白で。近くにいくと花なんです。広大なスケールで咲いているナルシス、近くで見ると水仙です。別名「5月の雪」と言われています。スイスでいちばんのおすすめです。
できれば5、6月、もしくは紅葉の10月がおすすめです。ぜひご覧いただきたい。オードリー ヘップバーンのお墓のあるモルジュというところです。

(写真)
世界遺産のぶどう畑です。レマン湖です。これがフランスの国境まで続いています。

(写真)
これ、パノラマ写真です。2枚のフィルムを同時に合わせて撮れるカメラで撮っています。真ん中にある旗をクローズアップした写真が写真集にあります。

(写真)
チューリッヒ湖です。朝早い時間は、霧がかかっていて、そこで釣り糸をたれてる人たちが見れます。

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(写真)
湖で遊んでいた2人のこどもです。この、さりげない感じがすごく好きです。お母さんたちはこどもたちに「こっち向いて!」、「笑って」って言って写真を撮られますが、あれはやめてください。やはり自然な感じ、さりげない雰囲気を撮ってあげるのがいちばんいいと思います。

というような写真が『SWISS 光と風』(講談社)という写真集の中に入っております。

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「時 瞬間を止める芸術」

これができるのは写真しかないと思います。今、大阪芸術大学の写真学科で教鞭をとっているのですが、生徒たちに言っているのがこの「時」というのを必ず与えます。「時」というのはいろいろな解釈があります。時間の「時」ですから、時間という意味もあります。出会いという意味もあれば、瞬間という意味もあります。そこらへんをイマジネーションして作品を撮りなさいと、指導しています。「時」というシリーズから写真をご覧ください。

(写真)
南イタリアのマテーラというところです。モノクロームになっています。

(写真)
アルベロベッロで出会ったご夫婦です。後ろでお父さんが心配そうに見ています。

(写真)
写真を撮る時に何が大事かと言うと、気配を感じることが大事なんです。この時、こどもたちがケンカをしちゃったんです。その瞬間を撮影したら、手前の女の子が気づいて私を「何よ」って感じで睨みつけたんです。予知するのも大事なんじゃないかなと思います。

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(写真)
スコットランド。この2人はタータンチェックのデザイナーさん。日曜日には壊れたお城を修復しているんです。いつかお城ができた時は招待します。と言われています。

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「オリンパス展
『通り過ぎた私』」

今まで行った場所の中で、自分が後にも脳裏に残ってしまう風景を選んでみました。

(写真)
これ、カラーとモノクロがあります。印象が違います。

(写真)
これもカラーよりモノクロの方がいいなって思ってモノクロにしました。どうですか? 印象ってだいぶ違うと思います。

(写真)
これは駅のホームで夕方撮影した写真です。私は北陸鉄道の単線の終点のところの真ん前で生まれ育ちました。線路の枕木のコールタールのにおいをかぐと、なんか実家を思い出します。その前で、タバコ屋さんをしていたんです。駅員さんがうちでお弁当を食べるんです。だから駅というのが昔からすごく気になっています。ですからこういう光景、ぐっとくるんです。

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織作 峰子さんのこども時代は……。

私が、どういうこどもだったかと言いますと、こどものころはスポーツが万能でした。足がすごく早かったんです。
ちょっと大人びたところもあって、小学生のころにいちばん好きだったテレビ番組が「3時のあなた」だったんです。普通は学校が終わって家に帰るとすぐなわとびやゴム跳びをして遊ぶんですけど、3時から4時はその番組を見ないとダメなんです。それが、大人の世界を垣間見ることのできる時間だったんです。小学校のころから、大人の世界を知りたくて、冷静にテレビを見て、4時からこどもになって遊ぶというこどもでした。

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家の前には画家さんが住んでいて、絵を習いに行っていました。私は遊びに行ってる感覚だったんですけど。
畳3枚分くらいの絵がありました。黒くて、ところどころに黄色や赤の点々があるんです。「これなあに」って聞くと「クマ」って……。こどもって頭が柔らかいので、この絵を見ていると平面が立体になって、ぐーっとクマになるんです。そういう訓練をさせてもらったので、空想画とか描くのがとても好きでした。でも、小学校3年までは図画工作「3」でした。4年生の時に校長先生が美術の先生になりました。その先生がみてくれるようになったら「5」になりました。それで、県の審査会とか賞をいただくようになりました。それで、先生って大事だなあって思いました。小学校に水彩画を描きますよね。私、描き込んで描き込んで画用紙に穴があいちゃうんです。それで、後ろからつぎはぎして描いてできあがったものがきれいじゃないんです。で、「きれいじゃないからダメ」って言われる先生もいるんですけど、校長先生は「いい!」って言ってくださって。私の中のアート的な世界が変わったなと思いました。
それとうちの父は主に日本建築専門の仕事をしていました。総ヒノキと総ケヤキの……。ノミとカンナで、仕事をしていました。棟梁だったんですけど、お弟子さんが働きにきていて……。その父親の姿にも後々、影響を受けたと思います。仕事が大好きで、仕事場にいつもいる人でした。唯一5月の3連休だけ、休んでくれるんです。その日だけ、近所の左官屋さん表具屋さんと一緒に車3、4台で旅に行くんです。忘れられないくらい楽しい思い出です。濃縮された愛情の日々が、すごくいい思い出になっています。
小学校の道すがらは、九谷焼の絵付け工房があって、いつもそれを見ながら通っていました。集団登校だったんですが、大嫌いで、みんなと固まることが嫌だったので、いつも30メートルくらい離れて歩いていました。スポーツも個人競技が好きでした。中学時代はバドミントンをしていました。高校になって陸上部に入った時は個人競技です。責任は全部自分にあるという考えが好きなんですね。中学の時の校訓のひとつに、「可能性の極限に挑む」というのがあって、この言葉が大好きでした。
陸上で、苦しくてもう立てない。死にそうってなった時に、もうひとりの自分が「死ぬとしたらあと何分?」って聞くんです。それで「あと1分間」と答えると「ならあと1分がんばれ」って言うような、もうひとりの自分がいるような、嫌いじゃないんです。自分で自分を傷め、どこまでいけるかというようなことをやってきました。

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ミスユニバースに選ばれて。

それから、短大に入って、短大の卒業式の日にミスユニバース日本代表に選ばれてしまったんです。というのは、自分の意志ではなく友だちの推薦で、ミスユニバースなんてまったくイメージじゃないような女の子だったんです。陸上もしていて真っ黒に日焼けしていてアスリート系でしたから。近畿地区予選に行ったらなんと、日本代表になってしまったんです。その翌日に、内閣総理代理大臣表敬訪問という仕事がいきなり来ちゃって、その後、各県の知事、市長に表敬訪問。のほほんとした私から一転して、マネージャーが2人ついて、ロングドレスにたすきをかけて、歩行レッスン、世界大会のための英語のレッスンとか一晩で世界がガラリと変わってしまったんです。

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本来ならそういう世界に進むのが近道なんですけれど、どうも自分には合わないなあと思って、アートの仕事が魅力的でやりたいなあと思いつつ、日本画家、京友禅の先生のところに勉強に行かせてもらっていたんですが、ミスユニバースなって世界に行って、世界じゅうの人たちに出会って、なんだろう何か世界各国を巡ってできる仕事がないかなあと考えていました。

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大竹 省二先生との出会い。

そんなある時、写真家の大竹 省二先生に撮影会の場所で出会ったんです。撮影会で100人くらい人が集まるんですけど、みなさんが私より準ミスの方に行ってしまって、どんどん減っていってしまったんです。
多分愛想がよくなかったからだと思うんですが……。先生が「人気のないモデルだね」って言って来られたんです。「もしかしてモデル嫌いなの?」って聞かれたので「はい。嫌いです」と答えたんです。「じゃあ、何がやりたいんだ」って言われて、「かなうかどうかわかりませんけれど、アーティストになりたいんです」と言いました。「じゃあ写真をやってみたらどうか」って言われたんです。私は「写真って男の人の仕事の世界じゃないですか?」と聞いたら、「そんなことないよ。これからは女性が活躍してく時代だよ」とおっしゃったんです。

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その言葉がとても気になって、「未開なんだまだ」と思って……。そんな時代だし、機械のことを覚えないといけないなあとか思いながら写真集を見ていたら、「写真って構図とか絵と一緒なんだな」と思って、先生と出会って、それから次のミスユニバースの方に王冠を渡すまで、ずっと考えていて「やってみようかな」と思って、門を叩いたんです。そしたら「君にはどんな覚悟があるか?」と言われ、「まずその洋服がだめだ」と言われたんです。「そのスーツは田舎に送っておけ。ジーパンとトレーナーでいいんだ。化粧はするな、カメラが汚れる。彼氏はいるか? いるんだったら別れて来い」って言うんです。「はい」と言いつつ、彼氏とは付き合ってましたが、ある時ばれてすごく怒られました。先生は手相と顔相を勉強されて見られるので嘘をついていてもすぐばれちゃうんです。時々、「手を見せろ」と言われて、ドキドキでした。先生のことが怖くて怖くて……。礼儀作法でもすごくきびしかったので。靴でも少しでもずれて並べると1時間正座とか……。写真は1目盛り違ってもアンダー、オーバー、狂ってしまう。それは細やかなことをふだんから注意していないと大きな失敗をするんだと常々言われました。戸棚の扉を少しだけ開けて帰ってしまった時に、「だらしない」と叱られました。そういうことを細かく注意されたおかげで、世の中に出た時にそんなに恥をかかなくてすんだのかなと思って感謝しています。

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大竹先生に教わったこと。

大竹スタジオに行った時に感じたことがあるんです。私はすごく遊びたい時期に、スタジオにいました。21歳から26歳までいました。スッピンでドロドロになって働いていました。朝8時にスタジオに行って、植木に水やりをして、ごはんを炊いて、朝昼晩、先生、弟子と一緒にごはんを食べて……。それが毎日でした。休みは日曜にありましたが、私はほかの先輩のように写真の学校を出ていませんでしたから、先輩に追いつくために休みの日に作品を撮って失敗して、先生に見ていただいて、勉強をしました。先生のあとをずっとついていって勉強して、先輩たちに少しずつ追いついたかなと思いました。
ある日、取材の帰り先生を車に乗せて、運転をしていたんです。青山の交差点のところにあるアマンドという喫茶店の前に、すごくきれいな女性が立っていたんです。彼を待っているんですよ。私は、髪をひっつめて汚い格好で……。その女性を見て、私はしみじみと「いいなあ」と言ってしまったんです。それが先生に聞こえてしまったんです。「うらやましいか?」と聞かれて、「いいよ、明日からやめて」と言われたんです。
私は返す言葉がなく、黙っていました。「ああやって遊んでいるだろう。ああやって遊んでいる1年か2年間、君は一所懸命やってみろ。そしたら、独立した時には、彼女たちの上を行ってる」と言われたんです。つまり、人が遊んでいる時、休んでいる時、寝ている時がチャンスなんだと、人が寝ているときがチャンスなんだよと言われたんです。その瞬間、私は「ラッキー」と思いました。「私は、こうやって学べてるんだ。つらいけれど修業させてもらっているんだ。独立した後、きっと迷わずに社会に出て行けるんだな」と思いました。

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その通りになりました。フリーになってからは、何社かの雑誌社の仕事をしたり、海外の仕事もレギュラーでもらえたりとか、そういうふうになりましたから。若いころに苦労することの大事さを痛感しました。できるだけ、若いころには悩んで身体を使って、苦しんでがんばれって言ってます。若い時だけなんです。その努力が少しずつ蓄積されるんです。20代でがんばれば30代が楽しい、30代でがんばれば40代も……。40代がんばればまた50代を楽しく生きられるんです。何か自分がやりたいことを見つけて、それを継続するということがとても大事だと思います。可能性というのは、誰でもあります。できれば若いうちに苦労してトライしていただきたいなと思います。それが、あるのとないのとでは、人生の送り方が変わってくると思います。
とにかく、自分が好きなことをすることだと思います。私は年間4回くらい旅をしています。旅をすることによって、いろいろな文化を感じていろいろなことが学べるんです。ぜひみなさんも、旅してみてください。この8月21日からバルト3国に行ってきます。
そしてこれから、もうちょっと写真の世界でがんばっていきたいですし、後継者を育てていきたいと思っています。写真というツールを使って、写真だけではない人生のいろいろなことを教えてあげられたらいいかなって思います。

(写真)
こういう日本の風景も撮影しています。どちらかというと海外が多いです。このたび、フェリシモさんのお仕事もさせていただきましたが、撮り方の本はたくさんあるんですが、撮られ方の本は案外ないんです。小さい本を出したのが、あちこちで評判になりました。私は、男性はどう撮られもいいと思うんですが、女性はきれいに撮られていただきたいなって思います。男性は中身で勝負。女性は中身も大事ですが、外見も大事ということで、後ほどレクチャーさせていただきます。

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<第2部>

さきほど、お見せできなかった写真を見ていただけたらと思います。

(写真)
子羊。チェルマットだったんですけど。模様の感じがかわいいですね。

(写真)
これたんぽぽ畑です。広大なところで、まるでじゅうたんです。

(写真)
これが、湖に落ちたから、撮れた写真です。怪我しちゃったから大変だったんですが……(苦笑)。

(写真)
もう5月過ぎてました。山の下は春なんです。登っている途中に猛吹雪に遭って、一夜明けたら、ものすごくいい天気になっていたんです。パッと見たら、小さい教会が岩の上にぽつんと立ってたんです。雪がなければ、階段がうっすらと見えます。

(写真)
雪解けとともに鉱山植物が顔を出しています。雪がさっと溶けて……。春の訪れを感じる。

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(写真)
スイスはダイナミックなんです。きれいなんですが、ダイナミックでダイン性的な地形がいっぱあります。夕方でしたが教会を照らすように陽がさしていました。

(写真)
パノラマ写真のクローズアップです。ものすごい音です。アルプスの雪解け水がいっせいに流れる6月です。 5、6月はベストシーズンです。

(写真)
旗の手前のところ、滝を眺められるようなベランダになっています。

(写真)
滝がいろいろなところから流れています。

(写真)
写真は正直。「やっちゃった~」、「どうしよう」、「ママ怖い~」というこどもの心理が現れてる瞬間が撮れるとおもしろいんですよ。

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写真の撮られ方の
デモンストレーション

フェリシモ:
ここで、写真の撮られ方のデモンストレーションを行います。

織作さん:
私は光と仕事をしていますので、光がすごく気になります。まず光の場所を見て、常に光が気になります。例えば、デパートの化粧品売り場の方はみんなきれいでしょ。お化粧が上手っていうのもあるんですが、ライトが違うんですよ。化粧品コーナーの光が違います。肌をきれいに見せる光を使っています。よくないのは、日本人は蛍光灯が好きです。外国は使いません。蛍光灯はあらわにみんな出してしまうんです。だから、蛍光灯は要注意です、寒々しく、あらわに出してしまうので怖い光です。蛍光灯でも、白熱灯のように暖かい光を放つものがありますので、そういうのだったら大丈夫です。ぜひお家の中では、暖色系の光を使われた方がよろしいかと思います。
それと、光をどこにおいて自分が立つかという、立ち位置がとても重要なんです。今日も私には、スポットライトが真上から当たっていますが、これは決していい環境ではありません。上からの光がまつげを照らし、まつげの影ができて、鼻の下にひげができます。こういう光の下には立たないようにしてください。光を避けると全体的にやわらかくなるんです。デートの時に目の前に彼がいたらいやですよね。この光源から離れることです。
例えば、レストランに行って、きれいなロウソクが揺らいでいるところがあるじゃないですか。それも離してください。光源、光の芯を自分から離すことです。下からの光はおばけちゃんに、上からの光はひげができます。

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今日から光って怖いってことに気づいてください。なるべく光から遠い場所を選んでください、そうすると肌を光が穏やかに照らしてくれます。若い人はアゴのラインがシャープなんですが、下から撮影すると、満月のようになってしまうんです。低い位置に座ってもらって、上から撮影するとシャープに撮れます。絶対下から撮影しないでください。
撮られる時、みなさんどういう心理状況で写真を撮られていますか? 写真って、怖いことにその瞬間が永遠に続くんです。だから瞬間を決しておろそかにしてはダメです。よく聞かれるのが、「免許証の写真を何とかしてほしいん」と……。一度指導に行ったことがありますが、免許証のカメラは場所によって違うんです。そして免許更新センターは、撮影する時に急かすんです。心構えもないまま撮影されるから大変。それでも一時よりは、ほほえむくらいはいいみたいなので、ちょっと自分の気持ちをプラスに持っていくんです。瞬間的に自分の気持ちをプラスにすることを常々やっているのが女優さんなんです。女優さんは褒めると、本当にきれいになるんです。自分に自分でマジックをかけるのが上手なんです。
一般の方はむずかしいですよね。急に「ステキな顔をしてください」と言われても困ります。その時は、想像するんです、自分の好きな人や大好きな食べ物とかペットとかを想像するんです。プラス思考になるものを頭の中で思い描くんです。その時の表情はいいはずなんです。てっとり早いのが、愛する人を思うのがいちばんいいんでしょうけどね。 それと白色の服が反射があって肌がきれいに見えます。座って撮影する時に、スカートだけでも白にしていただくと、きらっとした感じになります。
「女優レッスン」の中にもありますが、髪の分け目もポイントです。統計的に6、7割方、髪の分け目の顔の方がしまっているというか、肌がきれいなんです。髪の分け目の方は肌が多く出ているんです。分け目じゃない方は隠れているんです。足もそうなんですが、「スカートをはいている人は見られているから足がきれい」って言いますよね。それに近いのかもしれません。出ている面積の広い方が、肌が見られている意識を持っているんです。ですから、なんとなくしまっているんです。反対側は、気を許している、よく言えばやさしいんです。ちょっと鏡を見ていただけたら……。真ん中分けの人はバランスがいいんです。ときどき分け目を変えるのもいいみたいです。
あと男性は女性をほめてあげてください。女性がきれいになることの何よりの薬です。

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お客さまとのQ&A

お客さま:
主人を撮影する時に思うように撮れないのですが、身近な人のよい撮影のコツは?

織作さん:
構えて「撮るわよ」って言うと、撮られる方もどうしていいかわからないんです。できれば、ふとしたタイミングをつかむということでしょうか?「お父さん」って言って振り向いた瞬間とか、レンズをじーっと見てると硬直してしまうんですよ。できるだけナチュラルに撮っていただければいいと思います。
あとは褒め言葉も大事かと思います。

お客さま:
デジタルカメラと銀塩カメラの違い、いかがお考えですか?

織作さん:
恐らく、プリントのレベルで全然違ってくると思います。デジタルカメラでも銀塩カメラテイストで出力するラムダ出力のプリント、ライトジェットで出すと、銀塩とほとんど変わりません。ほとんど昔の銀塩写真と変わらないテイストです。自宅ではできないので、ラボに出していただくといいと思います。あと、カメラは値段と見合ってるんです。お高いカメラはクオリティも高いです。デジタルカメラも安くなりましたもんね。
私が銀塩の何が好きかというと、工程が好きです。フィルムを入れて巻き上げる工程が好き、1枚1枚大事にする感じも好きです。デジタルカメラだと失敗したら消したらいいってなって、写真を希薄にするんです。大げさですけど、1枚に念を入れる、「撮らせていただきます」という気持ちでシャッター押してください。
プロとアマチュアの違いってどこだと思いますか? シャッターを押す瞬間に気持ちを入れるんです。デジタルになったからと言っても変わりません。1枚1枚「撮らせていただく」という気持ちで撮るといいと思います。

お客さま:
織作さんにとっていい写真とは何ですか?

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織作さん:
写真のことを何も知らなくて、この世界に入った時、師匠が「写真というのは物語がないとダメだ」って言われたんです。私の写真を見てくださった方が、何かを想像するとか、何かを感じてもらえる、ふと足を止めてもらえる写真ではないでしょうか。ただきれいだけじゃなくて、何かを感じさせられる写真、人の足を止める、雰囲気のある写真がいい写真ではないでしょうか。そして撮った人の人柄が出ているもの、ぱっと見た瞬間「あの人の写真じゃないの?」と、空間の考え方、統一性があるのもいいと思います。みなさん、身体の中に構図を持っているんです。センスを持っているんです、それを壊さないことです。ある程度自分が好きな配置、構図があるので、それを生かすべきだと思います。生かしつつ、徹底することで見えてくる世界があると思います。自分が撮った瞬間、いいと思っているんですから。そのうち自分の色が出てくると思います。

フェリシモ:
数もこなして?

織作さん:
写真はイコール数ですね。シャッターを押す数に比例していると思います。

お客さま:
趣味でカメラを始めて6年くらいになります。感性、センスが大切だと思うのですが、織作さんは感性やセンスをどうやって磨いていますか?

織作さん:
あえて、写真ではなく絵を見ますね。よく美術館に行ったりします。今はズームレンズの時代なんですね。だから何ミリのレンズで撮っているか、とてもアバウトなんです。昔は、24、50、70、100,135、200ミリなどのレンズがありました。そのレンズの感覚で絵を見るとおもしろいです。「この人は何ミリで描いてる」みたいな、そんな見方が楽しかったりします。
あとは、アート以外にも洋服だったり、いろいろなものに興味を持つことも大事だと思います。
それから、画角を変えて見るのもいいかも、フレーミングを変えて見てください。長く写真をしていてパターンが決まっていると思いますが、それは変えるのは無理です。それを変えたい時には、思い切ってファインダーを見ないで、カメラをぶら下げてシャッターを切ってみたりするんです。新しい発見があって、目から外して見るといいかも、と思います。

フェリシモ:
最後に、会場のみなさまにメッセージをお願いします。

織作さん:
写真をやっていて、何がいいかなって思ったんですけど、例えば、いろいろなものを見る、コップひとつ、花一輪見る時でも、写真をやってなかったらなんとなく見ていると思うんです。でも私は花屋さんの前を通った時、「ものすごく撮りたいな、きれいんだな」って感じるんですよ。秋になりました、葉っぱが色づきました。それを「なんてきれいな紅葉なんだろう」って感じられる心が大事だと思います。ものを感じなくなったら終わりだと思います。ステキだねって思ったり、旅に行って感動したり。普通に思わず、おおげさなくらい感激することやそういう物をみつけることで、目が養えるんです。ですから 感じられる心を持つことが大事だと思います。

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Profile

織作 峰子(おりさく みねこ)さん
<写真家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
石川県出身。学生時代は陸上選手として活躍。大学時代に友人が送った写真がきっかけとなり、81年度ミスユニバース日本代表に選ばれ、ニューヨーク大会に出場。ミスユニバース任期中に写真家大竹省二と出会い、翌82年に大竹スタジオに入門。1985・1986全国二科展入選。
87年独立。89年から2年間、米国ボストンに暮らす。その経験から作品集「BOSTON in the time」が生まれた。作風は、北陸の風土に育まれた感性と、女性としての視点を活かした風景への優しいまなざしを感じさせる。陸上競技で鍛えられたバイタリティとスタミナで世界中を精力的に飛び回り、世界各国の美しい風景や人物の瞬間を撮り続けている。日本全国や世界各地で写真展を多数開催するかたわら、テレビや講演に幅広く活躍中。写真集に『BOSTON in the time』(光村印刷出版)、『光彩上海』(朝日新聞社)、『DIMENSIONS』『SWISS光と風』(ともに講談社)等多数。

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