神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 渡邊 智惠子さん(社会起業家)
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「私が地球にできること ~オーガニックコットンとの出会いが教えてくれたこれからの未来~」



<第1部>

オーガニックコットンとの出会い。

私は北海道のオホーツク海に面した、網走と知床の中間に位置する斜里町で生まれました。両親、兄弟5人家族の農家の末っ子として、1952年に生まれました。流氷に乗ってやって来るアザラシに氷のかけらを投げ、追いかけ っこをしたり、雪原に枯れたススキが風に揺らぐ景色が私の原風景でありました。この原風景は後のオーガニックコットンの風合いや色合いと重なっていくものとなりました。
高校卒業し、税理士になるべく明治大学に入学。当時はまだまだ学生運動が残っていて、授業が正常に戻っていないこともあり、志半ばに「タスコジャパン」という外資系の会社に入社しました。しかしこの会社での15年間は、私の現在の経営者としての基盤に最も大きな影響を与えてくださいました。当時「タスコジャパン」の社長は、「これからの女性は責任ある仕事をするべきだ」と言い、私にいきなり銀行の交渉も含めて、会社のすべての経理を任せてくれました。さらに入社5年目、28歳の私に自社の株まで持たせてくださり、その後19年間では38%も持たせてくださいました。そして社長は1985年、現在の株式会社「アバンティ」の社長に私をさせてくださいました。当時はまだまだ女性経営者の少ない時代、33歳という若さでの社長就任は小林社長の勇断でした。タスコジャパンで培った経営者マインドが、株式会社アバンティの株を社員全員に持たせ、全員が経営者、つまりみんなの会社を目指す基本理念になりました。
私は、5年間、「タスコジャパン」と「アバンティ」の2足のわらじを履いて関わっておりましたが1990年に「アバンティ」を一流の会社にすべく「タスコジャパン」を退社しました。ちょうどその時にイギリス人のエコロジストからオーガニックコットンをアメリカから輸入してくれないかというお話をいただきました。これがまさに日本初上陸となるオーガニックコットンとの出会いでした。

オーガニックコットンの社会的な意味、意義を知り、これをアバンティの生業にしていこうと決めたのです。しかし、当時は私自身織物と編み物の区別も分からず、専門用語もチンプンカンプンでした。英語で交渉するのですが、交渉相手のアメリカ人は、元ヒッピー。ビジネスのことも繊維のこともまったくの素人。なかなか仕事がはかどりませんでした。それでも、寝ても覚めてもオーガニックコットンのことばかり考え働きました。この時の苦労こそが、オーガニックコットンを社会に広めることが私の使命だと思えるようにしてくれました。私たちが毎日使っているタオルやTシャツ、下着などそのほか多くの生活には欠かせない製品のほとんどがコットンでできています。天然素材だから、人にも環境にもやさしいと思われるでしょうが、現実はずいぶんと違います。コットンは栽培においても農薬や化学肥料、除草剤、落葉剤などが大量に使われている農薬集約型農産物であります。約8割が遺伝子組み換えになっており、発展途上国における農民の借金苦により自殺、児童労働など人道的搾取が大きな社会問題になっています。糸や生地など最終製品における加工のプロセスにおいても環境に対するダメージの大きさははかりしれません。

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華やかなファッションの世界でありながら、このような環境と人道的ダメージがあることを知ることになりました。オーガニックコットンの理念はできるだけ、このような破壊的行為をしない自然農法で、遺伝子組み換えの種などを使わないなど、循環型農業を目指しています。我が国の食料自給率40%ですよね。では、綿、絹、麻、羊毛などの繊維の自給率は何%くらいかお分かりになりますか?実は0%です。そして最終製品に至るタオル、Tシャツ、洋服などの生産、これは95%が海外製品にゆだねています。その中のほとんどが中国製。日本製はたった5%です。数十年前までは繊維産業が日本の基幹産業でありましたが、今や日本でのものづくりはむずかしくなってきています。しかしアバンティでは、すべての工程、紡績から糸づくり、生地づくり、最終製品をつくるすべてを日本国内で生産しています。メイド・イン・ジャパンにこだわり、一気通貫、当社がすべてのリスクを持ち、自分達の思いでオリジナル商品をつくり、在庫し、原綿も生地も製品も売るということをしています。効率的ではありませんが、どこで誰がどのようにしてつくっているかをトレースできる顔の見えるものづくりを徹底しています。お客さまに安心をお届けすると自負しています。

オーガニックコットンの専門ブランド・「プリスティン」を立ち上げて、早16年になります。実は服を染色するということは、たくさんの化学薬剤を使います。洗剤、漂白剤、染料、定着剤、柔軟剤、そして大量の水を使っています。それだけでも環境に対するダメージははかりしれません。そのため「プリスティン」では綿を染めない、綿の色そのままを生かす、そうすることによって却って綿の持っているやさしいふくよかな感じを残し、かつまた丈夫な製品に仕上げることに成功しました。しかし、染色をしないで生成りだけでものを作るということは実はかけ算ができないんです。1つのものを作ってカラーで、例えば5色展開をしていくと、5つのかけ算ができますが、生成りだけではかけ算ができません。染めずに生成りのままでどこまで飽きさせない商品づくりができるか、それには生地のバリエーションをたくさん作れば解消できるのではないかと考えつきました。幸いなことに日本にはまだまだ各産地に、技術と感性のある機屋さんや加工所さんがあります。世界中を見てもこれほど個性にあふれた産地は日本にしかないのでは、と思うほどです。当社の製品製作はこれらの産地があればこそ成り立ちます。一方海外では、このようなことができず、単一の生地を染色してバリエーションをつくっています。そうするとオーガニックコットン本来の個性を引き出すことができません。通常のコットンとの差別化もできず苦難を強いられていることも事実です。欠点を個性にし、日本でしかできないこと、日本だからこそできる、これを突き詰めた結果、現在の「アバンティ」とオリジナルブランドの「プリスティン」が存在するのではないかと思っています。

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アバンティの基本理念、経営理念

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「基本理念
敬天愛人
天をうやまい
天が人を愛するように
人を愛する」

まずは、アバンティの基本理念、経営理念を説明させていただきます。当社の基本理念は「敬天愛人」です。この言葉、「天をうやまい、天が人を愛するように人を愛する」。私たちはこのように解釈しています。

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「経営理念
オーガニックコットンを通して
社会貢献をする。」

そして経営理念。とても単純ですが、オーガニックコットンを通して社会貢献をするということであります。

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「行動基準」

行動基準は社会倫理に照らし、人として新しいと思うことを実行する。2番目として、関わるすべての人々が利益を分かち合う、「四方よし」の精神を実践することです。この「四方よし」という言葉、きっとみなさん初めて聞く言葉ではないでしょうか。昔から近江商人がと唱えていた「三方よし」と言う言葉、みなさんご存知だと思います。「売り手よし、買い手よし、まわりよし、」これに、「作り手」を1つ加え「四方よし」としました。当社はオーガニックコットンの専門会社ですが実は、工場を持っていません。紡績工場も持っていないし、機も動かしていません、もう1つ農業の方も、今国内で多少なりとも綿の栽培をしておりますが、それはほんの少々。ほとんどが、テキサス、インド、トルコなどでされています。我が社は農家の人たちがいて初めてオーガニックコットンのビジネスができるんです。ですから、この作り手のみなさんを1つ加えて「四方よし」、関わるすべての人々が利益を分かち合う「四方よし」を我々の行動基準にいたしました。

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通常のコットンと オーガニッックコットンの違い。

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「通常の綿の栽培における現状
先進国
環境に対するダメージが大きい
発展途上国
農民に対する搾取児童労働」

先進国における綿の栽培は、環境に対するダメージが大きく、そして発展途上国においては農民に対する搾取が社会問題になっているという現状です。

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「10月26日のテキサスの農場
オーガニックコットンの農場」

10月26日のオーガニックコットンのフィールドです。落葉剤を撒いた後です。通常、このような状態になっています。

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「摘み取り機」

これを撒いて、このようなストリッパーという機械で収穫をするということを通常行なわれております。

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「GMO(遺伝子組み換え作物)」

いちばん今問題になっているのがGMO。遺伝子組み換えの種を使っているということです。このタネを使うことによって、殺虫剤を撒かなくていい、除草剤を撒かなくていいよねということで、実は遺伝子組み換えの種が今世界で約80%使われていると言われています。

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「GMO大国 アメリカ」

そして、この遺伝子組み換えの種の約80~90%を大企業「モンサント」が約80~90%を供給しているということです。この会社は、もともとが化学会社、ベトナム戦争の時に枯れ葉剤をつくって撒いていた会社でもあります。この会社が今、農業に対してどのように化学を使うことができるかを考え、そして除草剤、化学肥料などをつくり、それに対応した遺伝子組み換えの種を販売しています。除草剤を撒いて、綿が枯れたら困るので、その除草剤に対応した遺伝子組み換えの種を販売しています。それは綿だけではありませんトウモロコシ、お米、大豆の世界でも、遺伝子組み換えの種が多くつくられています。考える以上に遺伝子組み換えの作物が私たちの生活に入って来ていることが事実であります。特にトウモロコシの世界においては、コーンスターチ、みなさんビールを飲む時、ラベルを見てみてください。ビールの中にはコーンスターチが入っているビールもたくさん売れられています。そのほとんどが遺伝子組み換えです。そして、鶏肉、豚肉、牛肉などの家畜の飼料にも実は遺伝子組み換えのトウモロコシが使われています。ですからみなさんは間接的に遺伝子組み換えのものを食べて生きているという現状だと考えていいと思います。

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「インドでの児童労働の現状」

そして、これが人道的搾取。綿の世界において、インドでは約40万人の子どもたちが綿の栽培にかり出されています。綿は白いので、女の子たちもピュアでないといけないということで初潮前の6~14歳までの女の子が従事しています。彼女たちはだいたい2年間で農薬中毒になります。農薬まみれの手でごはんを食べ、農薬中毒になる、それが現実です。
日本人の6~14歳の女の子たちがこういう世界で朝から晩まで100円くらいで働く、そんなことがあったらみなさんはどれほど心を痛めるでしょうか。世界の中では現実に起こっていることです。なぜ児童労働がなくならないのでしょうか?それは児童は言うことも聞くし、賃金も安いからです。だから子どもを使う。そしたら親の仕事がない、だから失業が減らない、これが発展途上国の社会問題であります。

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「オーガニックコットンとは」

では、オーガニックコットンとは何か。通常のコットンからオーガニックにするには、どういうことをしているのか。「化学薬剤を使用しない、遺伝子組み換えをしていない、児童労働に関わっていない、労働者の人種を守る」これを提唱をしているのが、我々オーガニックコットンのビジネスをやっている者の世界であります。

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「アバンティ」のものづくりの、メイド・イン・ジャパンのこだわりです。このようにして、原綿を輸入してからすべてを国内生産にしています。日本全国、岩手から鹿児島まで、ものづくりをしています。今約165社がものづくりに関わっていただいています。日本にはまだまだすばらしい技術が残っていることをみなさん知っておいてください。でも、これも実は空前の灯火。毎年、繊維関係に携わっている企業が廃業しているのも事実です。日本でのものづくりがとても厳しくなっています。

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うちの会社は下着をよくつくっています。このようにパーツ、たくさんの工場によって成り立っています。その四方めの「作り手」がいちばんに来なければ、うちの会社が成り立たないことをお分かりいただけると思います。

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「オリジナルブランドPRISTHINE(プリスティン)」

そしてプリスティンが顔の見えるものづくりでありながらやさしい仕様ということで、できるだけストレスのない縫製、デザイン、生地の開発をさせていただいています。トレードマークは、てんとう虫。てんとう虫は漢字で書くと、天の道の虫と書きます。天に通じる虫です。英語だと、レディバードと言います。レディというのはマリアさまのことです。益虫のてんとう虫が害虫を食べてくれるので、農薬を使わなくていいんです。かわいい虫であります。

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「アバンティ」のソーシャルビジネス。

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「アバンティ」のソーシャルビジネス

東北グランマの仕事づくり ふくしまオーガニックコットンプロジェクト 「わくわくのびのびえこども塾」

2011年3月の出来事は、私たちにとって忘れられない大きな悲劇でした。なぜあんな悲劇が起きたのでしょうか?世界に暮らす人々が、自然をないがしろにしてしまったがゆえに「元に戻ってください」という意味で「3.11」があったのでは……と私は思います。

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「東北グランマの仕事づくり」とは

2011年に私たちは6月26日に石巻の大指に行きました。私が一夜にして仕事がなくなったとしたら、私はどうなるんだろうかと考えた時に、まずおばちゃんたちに仕事をつくっていこうと思いました。我が社は義援金をたくさん集められる会社ではありません。我が社ができることはオーガニックコットンを通しておばちゃんたちに何らかの仕事をしてもらいたい、そんなふうに思って、大指に行きました。そして10年、20年関わっていこうと決めたそのきっかけになった言葉が……、

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「代受苦者」

これです。仏教用語で、この意味は、本来なら私たちが受けるべく苦しみや悲しみを私たちの代わりに受けてくれた人、という意味です。これはまさしく、東北の人たちじゃないのかなと受け止めました。それで私がアバンティを通して、東北の復興に私事として関わっていきたいと思い、常にこの言葉を心の中においています。

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「東北グランマのクリスマスオーナメント」

これが6月26日の石巻大指。その時に何とかみんなの心を1つにまとめたいなということを考え、みんなが楽しい思い出しかないであろうクリスマスを、被災地の人と被災地じゃない人達を結びつけたいなと思い、クリスマスオーナメントをつくることにしました。最初の年は25000個つくりました。6月から半年で上代で2500万円のビジネスになり、50人のグランマたちに800万円の工賃を払うことができたんです。こんなふうに2011年は、JR上野駅でスタートしたクリスマスオーナメント、これは6メートルのツリーなんですけど、これも特注でつくっておりまして、こんな形で毎年飾っていただいています。しかしながら、どうしても風化します。初年度25000個だったものが、翌年はなんと8000個、1/3になりました、3年目は、3000個です。だんだん、みなさんの気持ちの中で東北が遠くなってしまいます。私たちはまだまだ復興していない、心も癒されていない、住むところも変わっていない東北の人たちと我々日本人としてどのように対応していったらいいんだろうかと思いました。アバンティは東北の人たちとこれからもずっと関わっていきたいなと思い、季節商品ではない、この幸せお守りをつくり、そしていろんな企業さんのお守りをOEMでつくったり、オリジナルのTシャツをつくったり、いろんな形で企業さんとタイアップをしています。今拠点は9拠点、約100人のグランマに仕事をしてもらっています。

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「東北グランマ 世界へはばたく」

グランマたちは日々、技術も上達していっています。グランマたちは世界に羽ばたいていっています。その1つがスイス。スイスのベルリナというミシンの会社からミシンをいただき、そのミシンを使って、製品をつくっています。その製品が実はスイスで販売されています。彼らの仕事が今世界にまで持って行けるそういう未来に繋がっているんだということです。

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「福島オーガニックコットンプロジェクト」

これは、2012年からスタートしました、福島のプロジェクトです。主旨は風評被害で野菜や米などが栽培困難となった土地を綿花栽培によって、再生を図り、生産者、支援者、消費者を繋げ復興の力とする。福島において雇用創出も含めオーガニックコットンの「ゆりかごから墓場まで」を目指す。福島において綿花の自給自足を促し、そして自給率を0からプラスにしていこうと……。これが主旨です。今福島はとても大変です。そこで綿の栽培をしました。食べるものではなく、綿ですからいいじゃない?ということで、もちろん土壌の検査はしっかりし、空中の線量、収穫した綿の線量もチェックします。このようにして今綿の栽培が福島で行なわれています。

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「ふくしまコットンを使用した製品」

このようにして今製品をつくっています。

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「ふくしまコットンを使用した製品」

これは「コットンベイブ」と言います。種が付いています。その種を一緒に使いながら人形をつくっています。これを自宅で植えていただくと、一緒に綿の栽培ができます。綿と綿が繋ぐ人の輪というそんな思いでつくった商品です。

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「2013年の活動実績」

2013年は実はこの磐城を中心に、30ヵ所3ヘクタールの農地に綿を植えています。そして首都圏4500人のボランティアの方に栽培、草取り、収穫に携わっていただいています。今年は5ヘクタールになって、きっと6000人の首都圏からのボランティアの方が来てくれるのではないかなと思います。

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「プロジェクトの活動実績」

そしてこのプロジェクトは、海外にまで出店してきました。今、福島は世界が注目しています。いつか我が身にも……という思いもあります。福島がどういう形でこれを乗り越えて行くのか、この原発事故からどのようにして復興していくのか、世界が注目しています。その1つに綿の栽培があったということ、これをぜひ実績として残していきたいと考えています。

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今福島はとても大変です。その大変なところの一部を取材しましたので、ご覧ください。福島県富岡の現状です。この情景がいまだにあります。このようにして、現状をみなさんに見ていただくというのが臨場感があるし、そしてこれが同じ日本だということを忘れないでいただきたいと思います。これも私たち日本人一人ひとりが便利さを追求したことで、このようなゴーストタウンをつくり、そして、いまだに汚染水を太平洋に流しているのが現状です。ドイツの海洋研究所が10年後の太平洋放射能汚染シュミレーションをしたものがユーストリームに載っています。ぜひご覧になっていただきたいと思います。もう3年目、実は太平洋の対岸でありますアメリカの西海岸に汚染水が到達しているというこの現実があります。いまだに汚染水を止められない日本、だから、本当にどのようにして地球の汚染を最優先にしていかなければならないのではないかと思うんですけど……。なかなかそれができず、そして2020年の東京オリンピックに向けて、今の被災地でのいろんな活動が途中で終わってしまっていたり、優先順位が変わってしまっているのが今の日本の現実です。なんとかしたいですよね。

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「わくわく・のびのび・えこども塾」

我が社がやっているソーシャルビジネス「わくわく・のびのび・えこども塾」です。これをどのようにして考えたかというのを、詩にしましたので読ませていただきます。

ネエ、子供たち、
思いっきり、わくわくするような、冒険をしてみようよ!
誰にも遠慮いらないよ。大きな声を出してみな。
さあ、じゃがいもを植えに行こうか。君たちの大好きなポテトフライをつくろうよ。
でも今じゃないよ。あと4ヵ月後かな?
綿も植えてみようよ。みんなが着ているシャツをつくるのさ。
でも、これもすぐ出来ないんだよ。2年後かな。
お米、田植えをしてみようよ。みんなおにぎり大好きだよね。
お米を穫った後でわらが残るんだよね。
それを使ってわらの家をつくろうよ。
ブーフーウーの3匹の子豚の話知ってる?
オオカミにすぐに飛ばされちゃうんだけど、でも簡単につくれるんだ。
ひとりじゃできないけど、友達の力を借りたらすぐに出来ちゃうんだよ。
さあ、みんなついておいで!

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「衣・食・住」

ここでは、子どもたちが、生きるという原点を学べます。衣・食・住。衣は、今私たちがつくっているオーガニックコットン。そのコットンを栽培すること、そしてそれを製品にして売ってみるということをしています。食はエンドウ、ジャガイモ、トウモロコシ、ニンジン、ダイコンを育てました。味噌もキムチもつくりました。農産物から加工食品までつくることをやりました。そして住。わらの家を昨年つくりました。

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「2013年5月児童養護施設の子供たちと」

福島、埼玉、群馬の5つの児童養護施設の子ども達29人が来ました。彼らの共通は「家」。帰りたくても帰れない家です。もし帰ったら命の保証はない、悲しいんですけど、虐待児童が今の養護施設の約8割です。福島の子どもの10人は被災孤児でした。そういう子ども達にとっての家がトラウマになっているのではないのかなと思い、「家をつくろうよ。大人に頼らなくても、できるかもよ」そんなことを体験してもらいたくて、このプロジェクトを考えました。

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「わらの家づくりの様子」

約30人の子ども達が5月ゴールデンウイークに来て、みんなでわらを束ねて家をつくりました。

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「福島の子供たちの保養所作り」

福島の子どもたち、今もう40数人が甲状腺癌の疑いになっているという事実があります。少しでも放射線を体内からデトックスするということを今、小諸にエコビレッジという施設があり、そこに子どもを呼んでデトックスをしながら過ごしています。
今福島では外で思い切り走ることができないんです。この3年間で子どもたちは骨も筋肉も衰えています。走ると転んだり、転び方が悪かったら骨折したりと、今までにはない怪我が多くなっています。それが現実です。できれば、この「わくわく・のびのび・えこども塾」年間何百人かの子どもたちをこの小諸に呼んで、ほんの少しでもいいから外で思い切り遊んでもらいたい。子どもたちに、生きると言う原点を学んでもらいたいと考えています。今屋久島、松山、伊豆の方でも分校という形で手を上げてくださっています。今後、全国展開できればいいなと思っています。今年は木の家をつくることになっていて、来年はレンガの家をつくろうと計画しています。ここを基地にして、子どもたちがいつでも帰ってきて遊べるような場所にしていこうと思っています。

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「ソチオオリンピック、パラリンピック by東北グランマ」

さきほども言いましたように、今東北のことが風化されて来つつあります。それで、実はこの度、ソチオリンピック、パラリンピック選手団のみなさんにグランマがつくったニット帽とスヌードを贈呈しました。何か出来ないかなって思った時に、「オリンピック&パラリンピックの選手のみなさんに、グランマたちの思いと日本じゅうの人たちの選手へのエールを贈りたいよね」と思いついたの。手立ては何にもなかった、思いしかなかったんですけど、会う人会う人に「JOC、IOCにコネない?」って聞きました。そしたら、ちゃんと道は開けるんですね。そこからJOCの副会長さんが関わってくださり、そして「味の素」さんにスポンサーもいただきながら、オリンピックへは、350個贈らせていただきました。そして、なんと浅田真央ちゃんがいろんなインタビューの場面でかぶってくれてました。パラリンピックには「アバンティ」がスポンサーになり、選手のみなさんに直接お渡しすることができ、使っていただきました。彼らからは「東北の復興を心から願っています」という言葉もいただきました。
こんなふうに私たちは東北のみなさんと一緒にこれから10年、20年、30年関わっていこうかなと考えています。

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
馬力を持って人を引っ張っていくことは本当に大切だなと思いました。「東北グランマ」の活動はすごいなって思いました。今後の展望をお聞かせいただけますか?

渡邊さん:
もともと東北というのは、繊維の縫製工場も多いので、日本における手仕事の東北を再現していきたいと思っているですね。今9ヵ所100人くらいのグランマたちにしていただいているけれど、もっともっと彼女たちの技術を高めていって、そして最終的にはアバンティがなくても「東北グランマ」というブランドの中で、彼女たち自身がセールス活動をして仕事をとってくるようになってほしいなと思っています。誰かにおんぶでだっこでだけではなく、自立をすることが生きることになるので、そういうふうに促して行こうかなと思っています。
私はほら吹き渡邊とも呼ばれているので、これはほらになってしまうかも知れないんですが、2020年東京オリンピックの選手村をオーガニックにしていこうというプロジェクトが始まっています。このプロジェクトというのは、各国から来てくれるアスリートのみなさんにオーガニックという、安心して食べられる食べ物、安心して息を吸える空気をつくっていくことなどで、選手村をオーガニックにしていくプロジェクトがあります。
あと、今の仕事で言いますと、フラットになった場所、例えば陸前高田などは山を切り崩して盛り土をしていますが、そこをオーガニックの畑にしていきたいと考えています。そして、そこで育てたオーガニックの野菜で加工食品をつくっていきたいと考えています。
日本というのは清潔で安心安全な国というイメージがあります。その安心安全ということを実際に、東京オリンピクを景気にそれを具体化していこうということで今このプロジェクトを推進していこうと考えています。これからTPPが採択され、そして我々は自由貿易の中で日本はじゃあ、どうやって海外に対して輸出産業を振興していくのかと言ったら、これはオーガニックしかないのではないかなと考えています。この東北でオーガニックの安心、安全の野菜を植え、加工食品をつくり、そしてそれを輸出商材として、これから世界に羽ばたいていけたらいいなと考えています。6年あったらできるのではないかなと思います。

お客さま:
遺伝子組み換えと遺伝子組み換えでないもの、何がどんなふうに変わっていくのでしょうか?

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渡邊さん:
まず遺伝子組み換えの食物を食べてどのようにして人間が変化して行くのかという臨床が、まだまだされていないところであります。実はアメリカでこの遺伝子組み換えがOKされたのは、「遺伝子組み換えは品種改良の1つだから大丈夫だよね」ということで農林水産省に対する働きかけで認められたんです。でも、遺伝子組み換えは、品種改良ではありません。自然界の中では組み換えができないものを、人工的にしているということであります。これが生態系に対してどのような影響があるのかまだまだ分からないのが現状です。そういう中で我々が「良し」とするのは、私はまだ早いのではないのかなと考えています。もう1つ、遺伝子組み換えの種というのは、基本的に翌年芽が出ない種です。そうすると農民は必ず種を外部から買うわけです。借金をして種を買って、初めて農業がスタートできるというのは、これは循環型農業ではないと思います。さきほど「モンサント」という社名を出しましたが、世界の農業がたかだか1社か2社で牛耳られると言うのは本当によいのでしょうか? この「モンサント」がもし「日本には経済制裁を加えようよ」と、いうことで遺伝子組み換えの種を売らないよ、ということになったらみなさんはどうしますか?ということです。もし、日本人の主食のお米が遺伝子組み換えになり、その籾がすべて1社か2社の企業から買わければ稲作ができなくなったらみなさんどうしますか?すごく大きな問題だと思います。これは、健康状態だけではなく、その国の食文化をすべて変えてしまうことでもあるんです。それを私達は黙って見ていていいんでしょうか?「モンサントの不自然な食べ物」、「世界が食べられなくなる日」、この2つの映画は、モンサントがいかに世界に対して遺伝子組み換えの種で、世界侵略しているのか、ということと、そして原発が世界の中で後戻りができないほど世界中に広がっている、この現実を私達は直視しなければいけない、そしてその中から、私たち一人ひとりが行動しなければいけないんだということを提示している映画であります。ぜひご覧になっていただければと思います。私はサスティナブルな循環型の営みがよいと思っています。遺伝子組み換えが少なくなってくれたらいいなと思っています。

お客さま:
オーガニックコットンは無染色ということですが、天然の染料だと自然への影響も少ないと思うのですが、いかがでしょうか?

渡邊さん:
実は「プリスティン」というブランドは、今着ているジャケットもオーガニックコットンとシルク、麻が交織しているものです。こんなふうに染色をして、うちは綿屋、糸屋、生地屋でもあるので、色を染めたいという特化したブランドをしている会社は少ないので、どうしても色がないと……。世の中では「色がファッションだということが普通のことであります。ですから、染めた生地をつくることもしておりますので、生成りでなければだめと言っているわけではありません。これは、すべて反応染料という化学染料を使っています。なぜかと言うと実は、化学染料を使って染めてくれる工場さんは大きな染色工場であります。その工場でやっていくことによって、例えば染料の排水の基準をしっかりしている大きな工場さんがあります。私は、そういうったところで、ちゃんと染色し、排水基準をちゃんと守っていうことは、いいことだと思いますし、世界の基準は染色をすることをOKとしています。私は、グローバルオーガニックテキスタイルスタンダードというオーガニックの世界基準の生地つくりをしています。日本、イギリス、アメリカ、ドイツの4ヵ国で生地づくりをしておりますが、そのメンバーの1人です。10年間かけて生地づくりをしています。それから1993年から日本オーガニックコットン協会というのをつくっておりまして、この加工にどういう薬剤を使っていいのか、ダメなのかという基準づくりをしています。そういう基準においては反応染料をOKとしています。でも草木染めをOKとしなかったんです。それはなぜかと言いますと、実は染料は有機的植物から由来していますが、それを定着させる定着剤というのに、成分分解性がない、土に戻らない薬剤を使わなければ色落ちしてしまうということがあります。草木染めの染料は有機的でいいのですが、定着剤が環境に対してダメージの大きいものなのです。
それから、草木染めの工場は小さいところが多く、実は排水の基準が甘いところもあるんです。ですから、排水基準をクリアしている工場で染める方が結果的には環境にダメージいないと考えながら、草木染めをそんなに推奨はしていません。ただ、みなさんが感じられるように、オーガニックコットンと草木染めは相性はいいのではないのかなという中で、今少しずつ進めています。ただ、値段が高いので、そこも痛し痒しというところです。私はオーガニックコットンをできるだけ多くの人たxちに買っていただく、使っていただいと思っているので、値段はできるだけみなさんの手に届くような価格にしたいと考えていますので、そういう意味でも染料は反応染料を使うことを提唱しています。

お客さま:
いろいろなプロジェクトを思いついても素人では実現がなかなかむずかしいと思います。渡邊さんは、どのように人を巻き込みながら実践していかれたのかそのプロセスを知りたいです。

渡邊さん:
私、大風呂敷なんですね。夢は限りなく大きいし、それは、1人ではできません。1人でできるような目標を持っていないんですね。1つの志ということに変わっていくんですけれど、志とは1人ではなし得ないほど大きな目標、夢と言われていますが、私はその志を持っていきたいなと思い、今までずっと考えてきました。そして私は、見ての通り元気なんです。62歳ですが、健康診断で、全部いいんです、トリプルAなんです! 睡眠時間は4時間くらい、毎日お酒も飲みますが、本当に元気なんです。この元気は自分のためだけに使ってはいけない、というふうに昔から思ってきました。これ奇跡でしょ。信仰心の厚い祖母が「おてんとさんが見てるよ」ということを言われていましたので、変なことをやっちゃいけないんだなと思いながら人にために、自分の奇跡を使っていくことを自然にずっと思ってきました。なので、今、この復興のことオーガニックコットンのことも同じやるなら気持ちいいことをやっていきたいというそんなことでやらせてもらっています、もちろん、ビジネスとしなければ継続できないんです。私の義理の父は銀行員で、拓銀の支店長に30代でなって生え抜きの人でした。私に、「お金で愛情は買えない、でもお金に愛情を託すことはできるんだよ」ということを私が20歳の頃からいつもいつもしてくれました。ですから、私はお金を貯めて、愛のあるお金の使い方をしたいなって思いました。ですからビジネスをしたいのもお金をちゃんと貯めて、その利益を意志を持った使い方ができればいいなと思っています。

お客さま:
理念に基づいた商品づくりや活動、共感いたします。理念のあるものづくりで大変なことはどんなところですか?

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渡邊さん:
私、非常に楽観主義者なので……。欠点を個性にするという言い方がいいのかなって思っています。例えば、生成りのままで製品づくりをするのは、かけ算ができないので売り上げが伸びないというのも事実。でも、これが実は特徴になります。どうせやるなら、1つの型、デザインで色を入れてバリエーションをつくって売り上げを伸ばしていくんですが、それをやらないことによって、オーガニックコットンと言ったら「アバンティ」、「アバンティ」と言ったらプリスティン、オーガニックコットンって言ったら生成りでしょっていうことになるんです。これは、すごいことだと思うんです。私は24年携わっていますが、大きな売り上げにはなっていないにしても、うちのスタッフみんながプライドを持って仕事をしていただくとするならば、こんなにすごいことはないんじゃないのかなって思っているんですよね。

お客さま:
綿の種はいつ頃植えて、肥料は何がいいのでしょうか?

渡邊さん:
地域によって違いますが綿はだいたい4月末から5月に撒きます。肥料は、有機肥料で鶏糞を使ったりしています。いろんなところで有機肥料が流通しているので、そういうものを使われたらいいと思います。

お客さま:
外国で植えている綿は、どのように輸入されるのでしょうか?

渡邊さん:
海外からの綿は、鉄と革のベルトで締めた俵になってやって来ます。この俵は180センチくらいの高さで俵になって約220キロくらい。固いです。空気を抜いてガチガチの状態で入ってきます。それを紡績会社でバラバラにして糸づくりが始まります。

フェリシモ:
今年度のテーマが「ともにはぐくむ、ともにつながる、ともにつたえる」なのですが、最後にこのテーマでみなさまにメッセージをお願いします。

渡邊さん:
「ともに育む、ともに繋がる、ともに伝える」、この言葉には、やはり女性の時代だなということを感じました。800年周期ということで、今世界は女性の時代に突入しているんですね。これからは女性の時代になっていきます。その時に、このテーマ、これは、私はまさしく女性の姿であろうかなと思います。今まで男性社会は戦いながら自分の陣地取りをしてきました。でも、これからは地球は1つになります。
今、日本から汚染水が世界に実は流れています。一刻も早く汚染水をストップしないといけない問題は、地球規模であります。隣国中国も大変な公害です。体に害を及ぼしています。もう1つの国の問題ではなく、みんなでこれを防いでいかなければ成り立たないんです。ともに手を繋いで、ともにこの現実に対応していかなければいけない、そのような時代だと思います。それには女性のもともと持っている、育みこと、伝えること、手を結ぶこと、そういったことが私は必要とされていて、今の時代を見ている言葉ではないかなと感じました。みなさんとともに育んでいきたいと思います。

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Profile

渡邊 智惠子(わたなべ ちえこ)さん<社会起業家>

渡邊 智惠子(わたなべ ちえこ)さん
<社会起業家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
北海道斜里郡出身。1975年明治大学商学部卒業後、株式会社タスコジャパンに入社、1983年に取締役副社長に就任。1985年株式会社アバンティ設立。1990年、イギリス人のエコロジストの依頼で、オーガニックコットンの生地の輸入を手がけた際、テキサスの農場主が手間ひまおしまず無農薬有機栽培農法を貫きながら自然と共存してコットンを育てている姿を知ったことをきっかけに世の中にオーガニックコットンを広める決意をする。その3年後の1993年国内繊維企業9社の協力を得て日本テキサスオーガニックコットン協会を設立、理事長に就任。2000年NPO法人日本オーガニックコットン協会(JOCA)に昇格、副理事長に就任した。2008年長年にわたりオーガニックコットンを世界に広めた功績により、アバンティが「毎日ファッション大賞」を受賞。「売り手良し」「買い手良し」「社会良し」の三方良しから、「作り手良し」を加えた四方良しのビジネスを息長く続けることを重要と考え、全力で走り続けている。2010年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」でこの番組でははじめて社会起業家として紹介される。2011年以降は、東北の女性たちがオーガニックコットンを使った製品の内職で収入を得ることを可能にした「東北グランマの仕事づくり」をはじめ「フクシマオーガニックコットンプロジェクト」子どもを対象とした「わくわく・のびのび・えこども塾プロジェクト」などを立ち上げ、人々が震災を乗り越えて、東北から未来を創造する支援をしている。

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