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神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

  • 中井 精也さん(鉄道写真家)
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「素晴らしき鉄道写真」



<第1部>

中井さん:
こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

フェリシモ:
今日は満員の会場のお客さまをご覧になっていかがですか?

中井さん:
うれしいです。写真の中の1つのジャンルに過ぎない鉄道写真です。もちろん鉄道ファンとか鉄道写真が好きな人には興味を持ってもらえると思いますけれど……。見た感じ、そんなに鉄分が濃くない人もたくさんいらっしゃるので(笑)、そういう方に集っていただくのはうれしいですね。

フェリシモ:
鉄道写真家ってどんなことをする方なのかを中井さんの方からご紹介いただけますか?

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中井さん:
簡単に言うと鉄道を被写体として、専門で撮影しているカメラマン、写真家のことです。それで食えるのか? ね。そう思う方も多いと思います。私も、見てのとおりガリガリでね(笑)。これは儲かっているから太っているわけではないですよ(笑)。

会場:笑

中井さん:
詳しく言うとカメラメーカーの作例を撮影したりとか、鉄道会社のカレンダーを撮ったりとか、よく駅に行くと、鉄道の車両の写真とか、例えば「そうだ、京都に行こう」とか、新幹線の写真とかあるじゃないですか。あれもカメラマンの誰かが撮っているんです。そういう意味では需要は結構あると思います。

フェリシモ:
中井さんが写真家になられるまでのお話をお聞きしていきたいなと思います。そもそも中井さんがカメラを始められたきっかけは何ですか?

中井さん:
税理士だった父親が片手間で写真屋さん、DPEショップをやっていたんです。もちろん、アマチュアのカメラマンだったんですけれど、「アサヒカメラ」や「日本カメラ」のコンテストにばんばん入選するような感じ。今の僕から見るとかなり濃いカメラファンだったなあという感じではありました。税理士なんで、フィルムをその都度買うより仕入れ値で買えるにはどうしたらいいかというのを考えたと思うんですよ(笑)。それで、税理士でありながら家の一角を改造して写真屋さんをやってたんですね。物心ついた頃から、カメラもフィルムもいっぱい、暗室なんかもあって、非常に恵まれた環境だったんですね。父がキャノンF1を買う口実だったと思うのですが、ある日、キャノンFTBというカメラを父が僕にくれたんです。そのカメラをもらったのをきっかけに、うれしくて写真を撮り始めたのが写真のスタートです。小学校5、6年くらいの頃です。標準レンズとズームレンズのセットをもらったのを覚えていますね。でも、知識は、まったくなくて。ただ子どもなので、そういういいものをもらうと、すごい楽しいなという気持ちがあって……。僕、昭和42年生まれで47歳なんですが、当時スーパーカーブームというのがあって、本当に子どもたちはスーパーカーに夢中になった時代でした。僕も最初は鉄道だけじゃなく、原宿に行ってスーパーカーの写真を撮ったりしていました。でも僕、電車通学だったんですね。東京の中央線の阿佐ヶ谷という駅から飯田橋駅まで、電車通学だったんですけど、通学していると新しい電車とか出て来るわけです。そういうのに興味を持って、のめり込んでいったんです。

PHOTO

(スライド)
これは、僕が小6か中1の頃の写真です。鉄ちゃんはみんな知ってると思うんですけど、「チャレンジ20000キロ」というのがありまして、国鉄を1区間乗るじゃないですか。その起点と終点で写真を撮ると証明書が送られて来て、全線を制覇すると、大きなSL形の模型がもらえるんです。国鉄とフジフィルムが手を組んだキャンペーンの会員証です。それで、阿佐ヶ谷から飯田橋までの線で、201系という新型電車が出たんです。

(スライド)
それがこのタイプです。上が半分黒くて、当時すっごいかっこよかったんです。それが来るのをホームの端っこでずっと待ってて、待っているうちにいろんな電車も走ってくるじゃないですか。それを撮っていたらだんだん楽しくなってきて、 収集癖が出てきて、いろんな電車の写真を揃えたいと思うようになってしまったんです。それで、どんどんはまっていったんです。それまで、電車がものすごく好きだったわけではなく、昆虫とか車と同じレベルで好きだったんですけど、最初にこの電車を撮りたいってハマったのがきっかけなんですね。 僕、今でも嘘くさい写真を撮りますが、当時からそのクセがあるのが分かりまして。

(スライド)
見てください、これ。完全にこれ201系じゃないんですよ。古い電車にマジックで黒く塗ってですね、しかも「101」を「201」に書き変えてて……(笑)。

会場:笑

(スライド)
これは小学校の時。自分で鉄道の写真集、トレインブックをつくっていました。写真としては、ホームに止まっている電車を撮るだけですけど……。写真はたいしたレベルじゃないんですけど、何か形にしたい、誰かに見てもらいたいという気持ちはそのころから強かったのかなあと思います。

フェリシモ:
そのころからプロのカメラマンになりたいと思っていたのですか?

中井さん:
小学校ではまだそんなでもなかったんですけど、中学になって鉄道研究部っていうのに入っちゃうわけですよ。今の中高にはないと思いますけど、当時は盛んな部活動で、先輩が10~15人もいる感じで……。僕は小中高一貫の学校で、中高が同じ部活だったんです。中学生で鉄研に入ろうと思って部室に行ったんですね。それで、「じゃあ、お前試験してやる」と高校1年か2年の先輩にえらそうに言われて、先輩が時刻表をぱっと開いて、「お前、これ(『糸魚川』)を読んでみろ」と言われるんです。でも、読めないじゃないですか。「そんなんじゃ入れることはできないな」って言われて、「ちきしょう」と思ったんですが、同時に、日本ってこんなに広くて知らない世界があって、鉄道に乗ったら、そこに僕も行けるかもしれないと思って、とワクワクしたんです。このワクワク感が結構大きくて。当時は先輩にイラッともしましたが、その試験があったからこそ、興味が持てたというのはありました。

フェリシモ:
それで鉄道研究部でいろいろ勉強を?

中井さん:
鉄道ファンにもいろいろありまして……。我々の上の世代は鉄道の工学を勉強したり、あとは写真を撮る撮り鉄、あとは模型をやる人、その2班が力を合わせて壁新聞みたいなのをつくって学園祭で発表するんです、それが主な部活の内容。本格的な部活で、高校2年が部長で、高校1人と中学2人で班を組んで取材をして新聞をつくったり、プロが仕事でやるようなことをやってたんです。楽しかったです。

フェリシモ:
かなり本格的に好きだったんですね。

中井さん:
カメラをもらったっていうのもあって、すごく楽しくなって……。でも、高校生の写真の方が上手だから、なかなか中学生の写真って使ってもらえないんです。中2の時の合宿が長野県を走るローカル線大糸線だったんですけど、青木湖という湖をバックに走る電車の写真を初めて学園祭の壁新聞に使ってもらえたんです。その時の人に見てもらえる快感、その大きさが僕を変えていきました。小学校から中学校に入ったばかりのころは、自分に自信が持てなく、5歳上の兄がいたので、兄に比べると何もできないし、ダメだなあという感情を持っていたんです。でも、カメラで認められたり、旅をすることによって食べられなかったトマトが食べられるようになったり、そうやって、だんだん自分に自信を持てるようになって来たんです。

フェリシモ:
自分にはカメラの才能があるんじゃないかとか、思うようになりましたか?

中井さん:
もう、有頂天でしたよ。中2で写真を使われた時、俺の人生決まったなって思いました(笑)。

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フェリシモ:
何かコンテストに応募されたりもしていましたか?

(スライド)

中井さん:
これは、高校生くらいの時。「鉄道ジャーナル」という雑誌に掲載された写真です。北海道のローカル線で撮影したんです。キツネの影が写っているんです。壁新聞で有頂天の僕が、高1で「俺は天才だから」って、「狐影」というタイトルを付けて初めて応募したんです。送ったらいきなり、特選になっちゃったんです。

(スライド)
大学生になると今度は「レールマガジン」という雑誌の編集長に電話をして、「僕の企画でグラビアをやってほしいんですけど」って言ったら、「君みたいに変な写真撮る人はめずらしいね」って言われて、巻頭グラビア7ページ「ロマン鉄道」というのをやらせてくれたんです。この頃の作風はもう今と似ていて、もう迷わなかったですね。

フェリシモ:
才能の片鱗を見せていたような……。

中井さん:
ある意味自分に自信を持って、挫折することなく、そのまま行っちゃったのが僕はよかったかなと思っています。この後、実は大学に入って、だんだん鉄道だけでは食べて行けないとか、そういうのが分かるようになって、法学部4年出た後に、専門学校に行くんです。その頃父親が亡くなって、家計も苦しくなるんですが……。観光写真科というところに入って、「俺は観光写真で生きていこう」と。

フェリシモ:
専門学校在学中に真島満秀先生に弟子入りをされますよね。どういった経緯から?

中井さん:
広田尚敬先生とか、真島満秀先生とか、僕の先輩のカメラマンの人がいっぱいいて、僕が普通のユージン・スミスとかロバート・キャパとか、ああいう人の写真を全然見ていないんです。写真学校に行くまでは目にもしていなくて、鉄道写真家の先人の写真を見て育ってるんです。その中で、真島満秀先生の写真が僕のハートを撃ち抜きまして、「この人に弟子入りしたい!」と思いました。大学出て、専門学校へ行ったら、学校には4歳年下の子たちがあまりにもまじめに勉強しているから「これはもう辞めてしまおうと」いきなり履歴書を持って真島先生のところへ「弟子入りさせてください」と行くわけです。そしたら、たまたま翌日からJR西日本の会社案内の撮影があるから、「来い」って言われて、履歴書持っていった翌日にデリカ運転して、先生を乗せて、大阪まで行ったんです。

フェリシモ:
即日採用だったんですね。

中井さん:
「とりあえず来てみろ」って。北陸本線にループっていうのがあって、大阪へ行く途中で寄って「ブルートレインの写真を撮ろうぜ」ってなったんです。僕も新人なのに行くわけですよ。それで「撮れ」って言われて、みんなきちっとした編成のアングルで写真を撮るんです。僕1人だけ、青空をバーンと入れたトワイライトエクスプレスの屋根だけ入れた写真を撮ったら、もう本当に蹴られまして……(苦笑)。「こんなんで売れるか」って言われました。今までの僕の写真といったら、雲の中に列車がちらっと写っているような写真、今の「ゆる鉄」のようなそういうテイストの写真を撮っていたので、売れるための鉄道写真を全然知らなかったんです。そこから5年間、弟子入りの状態で、一から編成写真の基本を学びました。

フェリシモ:
その後中井さんは独立されて鉄道写真家になられるわけですが、今、中井さんと言えば「ゆる鉄」という代表作があります。みなさまにその「ゆる鉄」の作品をご覧になっていただきます。

(スライド)

中井さん:
まず、この写真。列車も線路も写ってないんですね。写っているのは踏切の裏側だけ。これは千葉県のいすみ鉄道というローカル線。この線で見せたかったのは踏切のあるのんびりとした田んぼのゆるい空気感なんですね。空気感が被写体なんです。この目に見えないものが被写体なんです。この目に見えないものをいかにして写真から感じてもらうか、それがいちばんむずかしくておもしろいところです。仮にここにいすみ鉄道の列車が写っているとしましょう。そうするとみんな列車を見ちゃうんです。「あれは、レールバスの何系だとか」、「もうちょっと入れればいいのに」とか、余計なことを思うわけです。それで僕の見せたかった、雲の流れとか、菜の花とか、そういう空気感から、気持ちがそれちゃうわけです。だからこそ、あえて鉄道写真家なのに、鉄道を引き算して、こうやって撮っています。

(スライド)
これも車両は写っていないです。いすみ鉄道に乗っていたら、幼稚園の子たちが体験乗車をしていたんです。「何を見ているんだろう」というようなことを感じられるような、列車の中の空気感を撮ろうと思って撮影しました。 鉄道写真というと車両をアップで写すというのがイメージであると思うのですが、僕、男子校だったのですが、中2の時に、あだち充さんの「みゆき」っていうマンガを読んで彼女がほしくなったんです。それで、がんばって彼女をつくったんです。それで彼女に自分の撮った電車の写真を見せると「中井くん、電車好きなんだー」みたいな、ちょっと引いたリアクションなんですよ。そんな中、きれいな風景の中、列車が走っている写真とか駅のかわいい風景とか、そういうのを見せると、「行ってみたい」と言うじゃないですか。「これだな」と思って(笑)。彼女にプレゼントした時に引かれない鉄道写真を撮りたいと思うようになったんですね。つまり、鉄道に興味のない一般の人が見ても楽しめる鉄道写真、僕の大好きな鉄道の雰囲気を伝えるにはどうしたらいいんだろう? というのを考えて、中学の時から、こういう感じで、車両そのものではなく、空気感や旅情を撮ろうと決めて撮っています。

フェリシモ:
それが今の「ゆる鉄」の原点ですか?

中井さん:
そうです。これが「ゆる鉄」に繋がっています。

(スライド)
これ、桜吹雪なんです。踏切で4時間くらい、風が吹くのを待って撮りました。列車がいるのも撮ったし、もっといっぱい桜吹雪があるのも撮ってるんですけど、なんかこの桜がそよそよっと過ぎていく感じがすごいいいなと……。線路しか写ってないですが、鉄道を感じられれば、それでいいなと思っています。

(スライド)
僕の代表作です。この水色の列車、不思議な感じですが、映画「パッチギ」で使われた特別に塗られた車両です。たまたま僕が別のところに移動していたら、これが走っているのが見えたんですね。僕、見た目がおっさんなんですけど、心はオトメなので(笑)、「青空色の列車が走って来たら、青空をバックに撮りたいわ」って思うわけ。僕は、この車両を見た瞬間にもうこの絵が浮かんでるんです。みなさんも写真を撮る時、実践してほしいんですけど、写真は想像力と言ってるんですが、何かを見た時に「こういう写真が撮りたい」と浮かんでくると非常にいいんですね。なぜかというと写真のゴールができているんです。あとはゴールに向かって、場所とか構図とか機能とか撮り方を決めていけばいいわけですね。見たものを「どうしようかな」と撮ると行き当たりばったりの写真になってしまうので、 シャッターを押す前に「こんなふうに写るかな」くらいは想像して、それが想像どおりかどうか、想像どおりじゃなかったら何がいけなかったか、そういうことを繰り返すうちに、だんだん自分の見せたい、ゆるい雰囲気の鉄道写真にコントロールしていけるようになるんじゃないかと思います。

PHOTO

(スライド)
秋田を走る由利高原鉄道という第3セクターのローカル線です。ここに列車がいてね、通り過ぎたら女子高生が1人降りてきたんです。女子高生が降りるとみんな望遠レンズに変えるんですよ(笑)。でも僕はやらなかった! 広角レンズに変えて、あえて広く撮ったわけです。僕はローカル線の何げない日常を撮りたかったんです。現実の風景なんだけど、自分の想像の中の世界、もっと言えば子どもの頃の 記憶の中の世界、どこかのローカル線の風景を撮りたかったんです。引くことで、まるで僕がここで生まれ育ったかのような、もっと言えばあの子のことが好きだったんじゃないかと思うような、それくらいの感覚でイメージをつくりあげていくことをしています。

(スライド)
東北のローカル線です。これなんかも、あえて鉄道の車両を入れていないんです。 うまくいくんだろうか? いけるかなと思ったきっかけが、うちのカミさんなんです。カミさんはおもしろいくらいに僕の写真に興味がないんです。うんともすんとも言わないんです。この写真を見たカミさんが「あなた大丈夫なの?」って言ったんです。この興味のない人も、僕の写真を見て変化したことに気づいたっていうことで、「すごく、行けるかも」って思えたんです。それで「ゆる鉄」という世界にどんどんのめり込んで行きました。

(スライド)
かわいいでしょ。千葉県の小湊鐵道の高滝駅です。子猫ちゃん、撫でながら撮ってたら、撮ってるいるうちにコクリコクリと眠るんです。かわいくてねー。夢のような世界でしたよ。あまりにもかわいかったので、この子たちどうなったかなと思って、こないだ見に行ったんですよ。

(スライド)
もう、完全におっさんになっていました。ははは。

会場:笑

中井さん:
動物とか、ゆるさを感じさせる被写体を入れるのも「ゆる鉄」のポイントです。

(スライド)
これもいいでしょ、果樹園とかで農薬を撒く車なんです。こういうゆるいものを鉄道を絡めながら撮影していくという、ね。楽しみながらという意味では、僕の子どもが今、上の子が中1、下が小4なんですが。子どもを使って鉄道を撮る、そういうのって、だいたいやらせみたいなもんじゃないですか。子どもを使って鉄道写真をおもしろおかしく撮る、そういうのもやっています。

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(スライド)
これなんかもそうです。広角レンズで指をこうやって、子どもが向こうで飛んでいるんです。たまたまこの指の間にスポッとハマるように見える瞬間が成功。すごいのはうちの息子なんです。ちゃんと向こうに列車も写ってるんですよね。

(スライド)
あと、北海道の富良野に行った時。子どもに「北の国から」の純と蛍になってもらったんですよ。意外にジャージが売っていなくて(苦笑)。富良野線の有名なジェットコースターみたいになっているポイントなんです。なんせゆるい雰囲気が伝われば……。作品と言うと「ほら、見てくれ!」「どうだ!」っていうのが多いけれど、僕の写真を見た人は、くすっとしてくれたり、ほんわかした気持ちになってくれたらいいなという意味も込めて「ゆる鉄」というシリーズをつくっています。

フェリシモ:
ゆるさを出すポイントはありますか?

中井さん:
ゆるい被写体を入れ込むというのもありますし、あとは現実的な情報を引き算すること。車両を入れるにしても、アップではなくかなり遠くで撮ることで、どこかのローカル線の風景になるわけです。引きで撮ることで、現実の記録写真からイメージ写真に変わるわけです。それがゆるさを出す秘訣かなと思います。 テクニック的にはそうなんですが、いちばんのポイントは、僕がいいな、ゆるいなと思ったものを撮るということが大切かなと思います。だから、鉄道でなくても、何でもできるんですよ。同じようなスタンスで被写体を変えれば、みなさんもイメージ的な各ジャンルの写真を撮れると思います。

フェリシモ:
ではここで、「ゆる鉄」のスライドショーをご覧ください。

中井さん:
うちの下の子どもを使ったものになります。父から娘への一方的な愛と鉄道写真です。ゆるくコラボしました。

(スライドショー)
「from father to daughter」

中井さん:
日本人の鉄道って近いと思うんです。田舎から出て来る時も鉄道で出てきたり、ほかの国に比べて、人と鉄道の距離が近いと思うんです。だからこういう表現ができるんだと思います。

フェリシモ:
続きまして「1日1鉄」をご紹介したいと思います。ご自身のブログにおいて日課にされている「1日1鉄」、作品をアップされていると思いますが、作品をみなさまにご覧いただきます。

(スライド)
「1日1鉄!」

中井さん:
これは毎日1枚鉄道に関する写真をブログで公開しています。昨日は、三ノ宮の夜の街でお花と電車を撮ったりしました。

(スライド)
いろんなジャンルの写真が出てきます。これは、東北の五能線というローカル線。高倉健が襟を立ってそうな雰囲気の写真です。

(スライド)
こういうドラマチックな……。これは秋田内陸縦貫鉄道の夕景の写真です。

(スライド)
これは九州を走る南阿蘇鉄道。

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鉄道に限らず写真を撮る時に、1つ自分が見せたいものを決めるんです。もちろん鉄道写真なので鉄道を見せたいのは当たり前なんですが、鉄道以外に何を見せたいのか、何が自分にとって主題なのかというのを決めるようにしています。この時はこちら側に山があってすごくいい条件だったんですけど、天気が悪くて山がきれいじゃなかったんです。そんな時は、晴れたらいいであろう構図で撮ってしまって、結果として残念な写真になってしまったりするんですけど、そういう時は狙いを変えちゃった方がいいんです。雨の日には雨の日の構図、晴れた日には晴れた日の構図がある、そういうふうに臨機応変に狙いを変えていくといいと思います。その中で、自分がいちばん見せたいものは何かっていうのを見つけて、それを強調していく。この写真で言えば、田んぼの緑がすごくきれいだったんですね、それで走ってくる列車が緑色だって分かっていたので、田んぼの緑をそのまま撮るだけじゃなく、低速シャッターで流し撮りをしたらどうだろうというふうに決めて、列車に合わせてカメラを振りながら撮影することで、田んぼが流れるように、まるで絵の具で色を塗ったようなイメージ的な写真にすることができました。僕の出したかった夏の色彩というのが、撮り方によって表現することができました。

(スライド)
日本は季節感がはっきりしている国なので、僕の中で季節も大きなポイントになっています。「1日1鉄!」は365日毎日撮るものなので、季節感が大きな被写体になっています。そんな時に僕がイメージしているのは俳句。俳句って17文字の中に季語を入れて限られた文字数で季節感を感じさせるじゃないですか。写真も実はすごく似ていて、限られたスペースの中に被写体を入れることで、季節感、自分の言いたいことを表すという意味では非常に似ているなと思います。この写真だと一目瞭然。色づいた銀杏の葉っぱを季語として写真に入れることで、季節感を出しているんですね。そんな感じで、漫然と撮るのではなくて、自分はこの風景の中のどこを季語にするのか、そういうのをイメージするようにしているんですね。

(スライド)
これもオトメカットです。電車に映った、桜の花を撮っています。線路の左右に桜並木がある非常にいいロケーションなんですが、桜が満開だとか、晴れているとか、大勢のカメラマンが撮りに来ているとか、そういう恵まれた時に、みなさんがかかる病気が「もったいない症候群」なんです。僕もあるんですよ。恵まれた条件であればあるほど、定番を押さえないといけない、押さえなきゃもったいないと思っちゃうんです。そこで、自分が何を撮りたいのかっていうのを、冷静に考えることができる人が人とは違う独自の作品を生み出すことができる人なんだなって思います。どうやって撮ろうかじゃなくて、つい三脚の隙間を探してしまう、本当にそれが写真が撮りたい写真なのかどうか分からないわけなんです。恵まれた環境があればあるほど、すごい作品を撮れるチャンスなんです。あとは、ものすごい有名な撮影ポイント、それの近くには隠れた名ポイントがあるっていうことを意識していただきたい。みんなそこへ行くと定番を押さえようと思って、そこで撮るんですよ。 ちょっとずれたらもっといい場所があるかもしれない、そういうのを意識してもらえたらいいかなと思います。この写真のように列車の側面しか写っていないですが、桜の写り込みが美しいなという思いをそのまま表現してみました。

(スライド)
僕が大好きな作品です。実はこれは、新神戸駅です。僕のいちばんの狙いが何かっていうと、女性のしなやかな指先。その緊張感。女性のしなやかな指先を目立たせるにはどうしたらいいかと考えたんです。で、白バックにシルエットに浮かぶ位置を選んで、600ミリの超望遠レンズで撮影しました。あと、時にはカメラの位置を変えて撮ったりします。

(スライド)
これなんかもそうです。紅葉も終わって、何もない枯れっ枯れの季節なんですけど、寒い朝、太陽が昇ると露がつくじゃないですが、あれ、立ってると分からないですが、そこで思い切って地面に寝転んで見ると、露がキラキラ輝いているんです。服を汚しちゃいけないという常識をまず取っ払って、カメラを地面に近いギリギリの位置にして、望遠レンズで狙えば、ファインダーでこういう状態で見えているんです。時には虫の目線、鳥の目線になって鉄道を眺めてみるのもいいかもしれません。

(スライド)
あとは、人間の目、動画、なんでも見えているような気がしますが、カメラというのは、一瞬を写せる機械なんです。これは、列車の風圧で桜吹雪になってるんですけど、ここ見てください。女の子が手を差し伸べている瞬間が写っているんです。僕撮っている時は気づかなかったんです。あとでパソコンで見て「おお!」って思ったんです。肉眼でも動画でも気づかない瞬間をスチール写真、カメラというのは撮ることができるんです。カメラはえらいという話です。瞬間を切り取るのが、いちばんの喜びだと思います。

(スライド)
これクリスマスに走る、クリスマストレインという機関車です。福島県にあるSLばんえつ物語号です。新潟県に向かうC57という機関車です。夜のSLで、自分が吐いた煙がたなびく中、キャブの光がぱーっと流れる。機関士さんが乗っているんですけれど、まるで子どものころ、あこがれの目線がそのまま絵になったような「銀河鉄道の夜」の絵本のワンシーンのような……。でも、これ現実の風景なんです。カメラって目の前にあるものしか写らない。でもそれをそのまま写すのではなくて、絵本の挿絵のように見えたり、絵のように見えたり、そういうふうに撮るのが、僕は写真の大きな喜びなんじゃないかなと思います。みなさんが持っているカメラは、目の前のものをそのまま写す機械なんですが、写真というのは、目の前のものをそのまま写すことじゃないんじゃないかと思っているんですね。だからこそこうやって、SLの夜の風景を撮るんじゃなくて、機関士さんが来るであろう瞬間を狙って、あらかじめ待っているという感じです。

(スライド)
あとは、人。人は鉄道と切っても切れない関係です。どんなにいい風景でも人が入っていないと、絵にならないというのがあるんですね。これなんかも、子どもがホームで遊んでいる風景、それが入ることで、「鉄道っていうのは、人が動かして人を運ぶものだから、やっぱり人が大切なんだ」って真島先生がよく言ってたんです。僕は、それをよく感じていて、今でも実践しています。こうやって鉄道という風景の中に人が入ることで、ただの鉄のかたまり、機械ではなくなって、血が通っているかのようなそういう温かみ、ゆるさが出るんじゃないかなと思っています。

(スライド)
これは銚子電鉄という千葉県のローカル線の朝の風景です。元気な子どもたちが電車から弾け出てくるようなワンシーンを撮影しています。映画のセットみたいでしょ。こんなところがまだ残っています。

(スライド)
最近は海外にもよく出ています。これはベトナムで撮影したお気に入りの写真です。やさしい笑顔でしょ。初めて会った子なんですよ。にこって笑ってくれたんです。南北統一鉄道という鉄道の鈍行で撮っています。

(スライド)
これは、インドネシアで撮ったものです。東横線と三田線と東西線が今インドネシアで第2の人生を送っています。日本だけでも時間が足りないのに、海外まで手出しちゃったんでね。もう本当にワクワクが止まりません。次どこに行こうかな。

フェリシモ:
これからも「1日1鉄!」を撮り続けられる予定ですか?

中井さん:
もちろん! 僕が生きている限りは!

フェリシモ:
「1日1鉄!」をほぼ10年され続けていて、続けられた秘訣はありますか?

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中井さん:
旅行雑誌とかタレントさんのインタビューとか、鉄道以外の仕事がすごく増えてしまって、鉄道を撮らない日が多くなったんですね。で「これじゃいかん」と思って、鉄道写真家たる者、鉄道の写真を撮らないといかん、と思って、デジカメがちょうど出てすぐにアップしやすい環境になったというのもあったので、始めたというのがきっかけでした。最初は結構適当で、ゆるくプラレールの日だったりすることもあって、その辺は生温かく見守っていただければなと思います。

フェリシモ:
やめたいと思ったことは?大変な時もありましたか?

中井さん:
23時40分くらいに布団に入っていて、「あ、撮ってねー」ってなって、慌てて近くの電車を撮りに行ったりとか。あと、入院した時とか……。最近はプラレールという必殺技を知ったので、あれがあればどこでも撮れるなと。そんなものなんです。たいしたものじゃないんです。ただ、まあ、毎日続けていくということが大事なんで。写真家によっては自分の作品をしまっておいて、いつか出そうっていう人もいるんですけど、僕はしまっておけないの。撮ったら、すぐ見せたくなるの。見せる人がいるから、写真を撮るんです。見せたい人がいて、喜んでくれる人がいて、リアクションしてくれる人がいるからこそ写真を撮り続けているんです。

フェリシモ:
10年間「1日1鉄!」を撮って来られて3600点以上の作品がある中、中井さんのお気に入りの写真はありますか?

(スライド)

中井さん:
これです。秋田新幹線こまち号なんですけど、奥に写っている幻想的な光はスーパーマーケットの光なんです(笑)。鉄道ロマンもありつつ、夢々しくもあって、でもこれも現実の風景なわけですよ。こういう世界をどんどんつくっていきたいなといつも思っています。これは撮れてうれしかった写真です。星空のように写っているのは、実は大雪に向かって、フラッシュをたくことによって、写された瞬間の雪だけが浮かび上がっているんです。

フェリシモ:
ここでまたスライドショーをご覧いただきます。

中井さん:
最近、海外の鉄道にはまっていまして、パリ、おフランスで撮ったおシャンティな、彼女に喜ばれる鉄道写真を見てください。

(スライドショー)
「A la gare」

中井さん:
おシャンティでしょ。子どもが生まれたり、会社を変わったり、自分の立場が変わるたび、鉄道の距離感が変わるたびに、鉄道の見え方が違ってきて……。ある時はゆるく、ある時はおシャンティにみたいな感じで、絶えず鉄道が輝いて見えるからこそ、ずっと楽しみながら写真が撮れるのかなあと思います。切り口によって無限大なんです。

フェリシモ:
三陸鉄道のお話も伺いたいと思います。2011年3月11日に起きた東日本大震災によって、東北地方も含め甚大な被害を受けました。その中で、三陸鉄道は震災から5日後の3月16日に復興支援列車を走らせたということで、それをご覧になって中井さんはどう思われましたか?

中井さん:
辛い時期がありましたけれど、震災から5日後に三陸鉄道が動き出したというのを見て、すごく勇気づけられました。たまたまですが、僕高校2年生で鉄道研究部の部長になったんです。その時に何を研究するかという話になった時に、日本初の第3セクターの三陸鉄道を取材したんです。

(スライド)
「三陸の夜明け」というスライドをつくって上映したりしてたんですね。その時に感じたのは、恥ずかしながら鉄ちゃんだったので、三陸鉄道っていうのは、宮古線、久慈線、盛線という国鉄の赤字線が、第3セクターの三陸鉄道に生まれ変わるということなんです。国鉄の車両で走っていた車両がぼろくて味わい深い車両だったんです。それが三陸鉄道のピカピカの車両に変わるのが、実はすごく嫌で、旅情が失われてしまうっていうスタンスで、写真を撮りに行こうってみんなで話していたんです。

(スライド)
実際に行ってみると、大人がこんな感じで、鉄道が来ることを本当に喜んでいるんです。僕ショックを受けたんです。鉄道って趣味のものではなく、人を運ぶためのものなんだという当たり前のことに気づいたんです。三陸地方っていうのは、海沿いのおだやかなイメージがありますが、実は険しい地形で、陸の孤島と呼ばれていたんですね。100年前から鉄道の計画があったんですけど、延ばし延ばしになって、結局は廃止になってダメだっていうところに、3セクとして甦ったんです。だからこそ、地元の人の喜びはとても大きくて、それを目の当たりにして、ああやっぱり人のために動いているんだ、ということで、今度は逆に僕が鉄道を舞台に人を撮り始めるんです。そういう意味では鉄道の当たり前の部分に気づかせてくれたのが三陸鉄道なんです。

(スライド)
だからこういう写真を撮ったり……。これ、高校生の時に撮った写真なんですけど、市場の向こうにちらっと電車が写っていますが、こういう写真は今まで撮ってなかったんです。人と街と鉄道の関係性に気づけたというので、三陸鉄道との出会いがあったんですね。だから、震災の後に勇気づけてもらったというのがあったのでなんとか応援していきたいなというのがあったんですけど。関東地方は当時全然ガソリンが手に入らなくてどうすることもできなかったんですけど、4月になるとようやくガソリンが手に入るようになって、友人と鉄道の絵本をいっぱいつくったので、それを避難所の方に配るボランティアをしようということで東北に入りました。

(スライド)
撮影に行ったわけではないので、大して撮ってないんですけど、その時に見た風景がすごく印象に残っています。これは田老という駅の完全に停電した瓦礫の中、三陸鉄道の車両だけがこうこうと電気を付けて走ってきたんです。それを見た時、東北はこれで大丈夫かもしれないと思いました。復興の灯火のような、そんな感じを受けて、泣きながら写真を撮りました。鉄道って単なる交通機関ではなく、ガス、電気、水道と同じように、平和な日常の象徴なんだなと強く感じました。だから5日後に走り出した時も、最初は誰も乗ってなかったらしいんです。ただタイホンを鳴らして三陸鉄道が走ることで、どれだけたくさんの人が勇気づけられて、最終的には物資を運ぶのに大活躍したわけです。だからこそ、5日後に走らせたからこそ、こうやって早期にね、早期といっても3年後ですが、復旧に繋がったのかなと思いました。

(スライド)
北リアス線の一部の区間しか走っていないところなんですが、この奥に陸中野田という駅があって、そこから線路が繋がっているんですが、あまりにもぐにゃぐにゃで、か細く見えるんですが、それでも前に向かって列車が走っている姿を見るとすごく勇気をもらったのを覚えています。後ろに輝くのは、すべてを与えてくれたけれどすべてを奪ってしまったあの海です。津波が来る前はここは海が見えない場所だったんです。津波で木が流されて、初めて海が見える撮影ポイントになったんですね。非常に美しいんですけど、とても厳しい一面もあるなと感じる写真です。

(スライド)
これはその先の区間です。線路も流されてしまって、瓦礫の山が積んであるんですが、2012年の1月になると、枕木が並んで……。この風景を見た時も泣いちゃいました。なんて希望に満ちた風景だろうと思いました。

(スライド)
今、この写真が宮古駅と盛駅に飾ってあります。下に写っているのは三陸鉄道の車両と本社。それを囲むように虹が出ていたのを偶然撮影したんですね。この風景を見た時、神様に「撮れ」と言われているような気がして……。行く予定もないのに、たまたま僕がカメラを持ってそこに立ってた、運命を感じました。

(スライド)
今年、もうすぐ開業と言う時の写真です。陸前赤崎という駅から、夜の列車の車窓から撮った写真です。まだ街がないんですよ。だけど駅はできてる。いつか街ができて、人が帰ってきてくれるために、駅だけはでき上がっているという、複雑な思いで撮影したのを覚えています。堤防ができないと家を建てるこができないので、特に南リアス線はこれから大変そうだなという気がします。

(スライド)
今年の4月5、6日の北リアス線、南リアス線全面復旧の時の様子です。列車が帰ってくるとともに、笑顔も街に帰ってきたような感じで、とっても好きな写真です。しまのこしは、大きな津波が来て、駅も流されてしまった場所なんですね。そして、列車が帰って来た時、「おめでとう」「ありがとう」とかそういう言葉をかけるかと思ったら、「おかえりなさい」でした。

(スライド)
「おかえりなさい」という言葉を聞いて号泣してしまいました。列車が街の一員なんですよね。感動しました。

(スライド)
これは僕が高校生の時の、三陸鉄道のいちばん最初の開業式。1986年4月1日に撮った写真なんです。

(スライド)
今年の全面復旧の時に撮った写真がこれです。僕は二度開業式を撮影できたという、運命めいたものも感じますし、鉄道の本当の意味を教えてくれた三陸鉄道をこれからも応援していきたいと思っています。

フェリシモ:
それでは三陸鉄道のスライドショーをご覧ください。

(スライドショー)

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
トレードマークの帽子はどこで買われていますか? 選ぶポイントはありますか? 帽子を取ったところも見てみたいです。

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中井さん:
最大のポイントは入るか入らないか。なかなかないんです。外国に行ったら、帽子いっぱいあると思うでしょ。外国人って体は大きいんですが、頭は小さいんです。「おおー」じゃないよ。サイズは62㎝か63㎝がベストなんです。 つばが丸い帽子が好きです。20個くらいコレクションあります。帽子を脱ぐとこんな感じです。いろんな伝説があって、もう(髪が)ないんじゃないか、とか、帽子に髪がついているんじゃないかとか、いろんな意見がありましたが、ちゃんとあります。テレビでは神社仏閣でお参りするシーンでは、帽子を取っていますが、ホテルでの会食はかぶったまま失礼しています。

お客さま:
今まで食べた中で、何がいちばんおいしかったですか? そして今日はこれから何を食べたいですか?

中井さん:
パリのエクレア、駅のホームで売ってるんですよ。その旨さたるや。あとはパリブレスト。リングシューみたいなものなのですが、向こうのはヌガークリームが入っていて、本当にベストな味わいです。今日はステーキを食べようと思っています。

お客さま:
写真を撮っていて失敗したなって思う時はどんな時ですか? また、失敗からどのように学んでいますか?

中井さん:
ピントが合わなかったり、といった技術的な失敗は結構あります。最近悔しかったのは、ひたちなか海浜鉄道に乗っていて、ぼーっと車窓見てたら、お家の庭で、小さい女の子がおじいちゃんにおかっぱ刈りにされていたんです。横でおばあちゃんがにっこりと見ているというシーンがあったんですよ。僕、見ちゃったの。それを車窓越しに撮ったら、最高のゆる鉄じゃないですか。それを逃しちゃったのが、本当に悔しかったー。それが最近の最大の失敗でした。あまりにゆるすぎて見ちゃったの。技術的な失敗は誰でもたくさんありますが、そういう撮れば撮れたのに見逃したのは悔しいですね。常に撮る気でいなきゃだめだなって思いました。やっぱり、僕も電車が好きなので乗っているだけでも楽しいんですが、撮らないといけないなと思います。

お客さま:
私も鉄道や自動車など、いろんなものを撮るのですが、どうしてもうまく行かないのが流し撮り。被写体を追いかけるタイミング、ポイントを教えてください。

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中井さん:
流し撮りというのは、走って来る列車に合わせてカメラを振りながらシャッターを切る。みなさん自分の顔の前にグーをつくってもらって、これを見ながらまわすと、グーは止まって見えて、背景が流れて見えるじゃないですか。これが流し撮りなんです。顔がカメラで、グーが電車なんです。電車の動きとカメラがシンクロすれば列車は写し止まって、背景が流れるということになるんですね。 もう1つのポイントは、流し撮りってパーンしながらシャッターを切るわけですが、あまり慣れていない人だと撮る時に止まっちゃうんです。それはダメなんです。流しながら撮る。これは、練習あるのみなんです。本当に集中してうまくいっている時って、自分のカメラが鉄道を引っ張っているみたいな気になる時もあります。どうしてもファインダーの真ん中で列車を見ちゃいがちなので、画面の真ん中に電車が来ちゃう日の丸構図になりがちなので、ファインダーで見た位置で列車が止まるので、左から右に行く列車だったら、右のはじっこで列車の正面を見るといい位置に止まります。あと、ありがちなのが、正面が一番いいところだとするじゃないですか、それなのにまず列車が来る方向でいい体勢になっちゃうんですね。それで撮り続けているうちに、一番いいところでものすごい不自然な体勢になっている人が多いんですよ。だから、一番いい位置に立って迎えに行く、これ結構ポイントです。ぜひチャレンジしていただけたらなあと思います。

お客さま:
北海道のおすすめの電車は何ですか? 

中井さん:
札幌だとおすすめは富良野線、美馬牛駅と上富良野駅の間に踏切があって、あのジェットコースターのような線路があります。札幌からだと、札沼線という今は学園都市線という名称なんですけど、北海道医療大学というところまでは電車なんですが、そこから終点の新十津川という駅までは、1両しかないすごいローカル線なんですね。札幌からすごく近いのにローカルな感じでおすすめです。あとは、日高本線もおすすめ。

お客さま:
私は野鳥を撮っています。流し撮りで1/30だと、まあうまく撮れるんですわ。最近鉄道にハマって、新幹線の流し撮りをしています。それがうまく撮れないんです。新幹線を撮る時のシャッター速度を教えてくだい。

中井さん:
速い列車であれば、1/250で流れるんですね。遅い列車だと1/8秒とか。列車の速度にも影響を受けます。もう1つポイントは、野鳥は小さいから結構止まりやすいんですが、鉄道は大きいので、列車は斜めに走って来てるのに、 カメラのフリは真横なんですね。だから、本当に言うと正確に止まるわけがないんです。必ず1ヵ所しか止まらないんですね。だからベストなのは、望遠レンズを使って、真横で撮るのがいいと思います。カメラのフリと列車の進行方向がシンクロする率が高いので、非常に確率がよくなります。うまく行かないなと思ったら真横。側面を狙うのがコツかなと思います。

フェリシモ:
最後に中井さんの鉄道の写真の魅力や素晴らしさを改めてみなさまに 実感していただくために、魅力を凝縮したスライドショー「1日1鉄!」をご覧ください。

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(スライドショー)
「1日1鉄!」

世界って
美しい!
1日1鉄!

写真って
素晴らしい!
写そう!
気持ちを。

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Profile

中井 精也(なかい せいや)さん<鉄道写真家>

中井 精也(なかい せいや)さん
<鉄道写真家>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート ナカイ代表。著書・写真集に「1日1鉄!」「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長。甘党。
http://railman.cocolog-nifty.com/blog/
■TVレギュラー 「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合
 「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム
 中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS
 カメラと旅する鉄道風景/CS各局

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