神戸学校

神戸学校はフェリシモが主催する「神戸発 生活デザイン学校」です。

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「茂木さんと絵を描こう! ~脳がめざめるアート体験~」



<第1部>

個性を受け入れて、絵を描こう 

茂木さん:
脳科学的に言うと、しあわせというのは、「自分を受け入れること」なのです。どんな自分でも。みなさん、今のままが最高のしあわせなのです。信じられないと思うけど(笑)。欠点も長所も含めた個性を受け入れることが実はしあわせの条件だと、科学の研究でわかってきているのです。つまり、「しあわせの青い鳥」はみなさんのところにいるのです。 では、なぜ『青い鳥』のチルチルとミチルは旅をしていろんな人に出合ったのかというと、他人に出会わないと自分の個性はわからない場合があるからです。自分の個性を映す鏡は、実は他人なのです。

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さて、しあわせになるために自分の個性に向き合うというところから、今日の本題である絵の話になります。絵は上手下手が気になる人が多いと思うのです。だけど、下手な絵は下手なりに、みなさんなのです。 武田双雲という書道家の友人がいて、彼が良い話をしていました。「あ」と書いたら、人の数だけ違う「あ」がある。(ステージ上のホワイトボードに「あ」と書く)。僕の弟子の植田君、出てきてくれる? 俺の「あ」の隣に「あ」と書いてみて。

(植田さんが出てきて、茂木さんが書いた「あ」の隣に、大きく「あ」と書く)

茂木さん:
(植田さんの「あ」の大きさに驚いて)えーっ! 植田君、空気読めよ。いきなりそんな……。

(会場:笑)

誰か、会場から出てきて「あ」と書いてもらって。

(植田さんがステージから降りて客席に向かう)

茂木さん:
(子どものお客さまに)恥ずかしい? だいじょうぶだよ。お母さんと一緒に行こうか。「あ」と書いてみて。うまく書く必要はないから。

(小学生のお客さまがステージにあがり、ホワイトボードに「あ」と書く)

茂木さん:
いい「あ」だなあ! 

(会場:拍手)

茂木さん:
お母さまも書いていただけます? 

(お母さまがホワイトボードに「あ」と書く)

茂木さん:
意外と力強いタッチだな。

(別の小学生のお客さまがステージに上がり、ホワイトボードに「あ」を書く。ステージのホワイトボードに5つの「あ」が書かれる)

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茂木さん:
いい「あ」じゃない!? 一画目の線の書き方、二画目の線の長さ、それぞれ違いますよね? 武田双雲はこの違いが大事だと言う。小学校の書道の時間では、お手本のとおり懸命に書こうとしたでしょう? でも、武田双雲に言わせると、そうじゃないんだ。千人いたら千通りの「あ」があるわけです。それでいいんだって。絵を描くときも、上手に描かなければいけないというのは、個性をきちんと受け入れないことと似ています。 だから、絵って正解はひとつではないのです。脳はおもしろくて、いろんな見方で世界を見ている。みなさんが絵を描くとき、世界を見るとき、癖があるわけです。 では、僕が木を描きますね。僕は木を描くときいつもこう描くんですよ。ツイッターのアイコンもこういう木ですけど。植田君も、木を描いてみて。

(植田さんが茂木さんの描いた木の横に大きな木を描く)

茂木さん:
またでかく描くなよ。植田君、会場の方に描いてもらって。子どもさんの手が挙がったぞ。よし、だんだん、ここは正解があるわけじゃないと気づき始めた。楽しいよね。

(小学5年生と2年生のお客さま2人がステージに上がって、木の絵を描く)

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植田さん:
かっこいいですね。

茂木さん:
すごい、ユニーク。君たち、この木はどういう感じで描いたの? 

子どもたち:
特にないです。何も考えてないです。

茂木さん:
芸大生の植田君、2年生のお子さんが描いたこの絵をどう思う? 

植田さん:
非常にシュールな、葉っぱのようでいて、木ですね。すごい! 

茂木さん:
小さい子のほうが常識にとらわれずに描くかもしれないんですよ。 あっ、いいこと考えた、フェリシモの矢崎社長、木を描いてください。

(矢崎社長がステージに上がりホワイトボードに木の絵を描く)

茂木さん:
おっ、葉っぱがない? 社長、これはどういう木でしょうか? 

矢崎:
いつもこういう木なんです。点のところが葉っぱです。時間があればもっといっぱい点を描きますが。

茂木さん:
(2年生に向かって)今おじさんが描いた木、どう思う? 

2年生:
葉っぱが少ない。

茂木さん:
じゃあ、このボードに描いた5つの木のうち、どれが好き? 

(2年生が植田さんの描いた絵を指さす)

茂木さん:
どうして好きなの? 

2年生:
大きいから。

茂木さん:
君はどれが好き? 

5年生:
一番左の絵(茂木さんの絵)。個性があるから。

茂木さん:
俺のか? 空気読んでるなあ。

(会場:笑)

ありがとう。
(社長に)どう思われます? 5人描いただけで木がこんなに違うんですが。

矢崎:
先ほどおっしゃったように、正解というか、上手に描こうと思ってしまいますが、子どもさんの絵はすごいですね。

茂木さん:
人間としての自分の個性を受け入れるのがしあわせなのと同じように、絵も、どんな絵でもいいんですよ。 今度は鳥を描いてみよう。(茂木さんがボードに鳥の絵を描き始める)。植田君、描いてみなさい。(植田さんが鳥の絵を描き始める)。大きく描きすぎるなよ。 では、また描きたい子、みんな出てきて。恥ずかしがるなよ。

(男女2名ずつ、4人の小学生のお客さまが走って登壇し、順番に鳥の絵を描く)

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茂木さん:

植田さん:
この鳥は? 

Aちゃん(10歳):
鳥を上から見たところ。

茂木さん:
なるほど、すごい! では次。

植田さん:
これは、どういう鳥? 

Bちゃん(9歳):
横から見た鳥。

茂木さん:
可愛いね、目がふたつあって。みんな全然違うね。いい鳥だね。これはどんな鳥? 

Cちゃん(7歳):
卵から生まれてきたので、卵の形をしています。

茂木さん:
すごい発想! 小さい子のほうが発想が囚われてない感じがするね。なにそれ? 可愛すぎる。これはどういう鳥? 

Dちゃん(7歳):
とまってる鳥。

茂木さん:
みなさん、拍手! 

(会場:拍手)

植田君、子どもたちの絵と比べて、自分の絵をどう思いますか? 

植田さん:
ずいぶん頭を使ってますね……。

茂木さん:
ショックじゃないですか? 私もそうですけど。子どものこの自由な発想が、だんだん常識にとらわれていくのです。

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絵で伝えることの大切さと楽しさ 

茂木さん:
十分伝わりましたよね。個性ってすばらしい、正解はないということ。
最後にひとつやってみたいことがあります。人間のイマジネーション、伝えることの大切さです。この連休に楽しいことがあった子、出てきほしいんだよな。おいで。

(Dちゃんが再登場)

茂木さん:
どんな楽しいことがあったのか言ってくれる? 植田君がその時の様子を絵に描くから。絵は見ないでね、見ると笑うから。

Dちゃん:
敦賀に旅行して港に行ったら、マキビシが落ちてた。

茂木さん:
マキビシ!? マキビシ? 

(会場:笑)

マキビシって何?

Dちゃん:
忍者が逃げる時に使う道具。

(茂木さんと会場:笑・拍手)

茂木さん:
忍者が海岸でマキビシを撒きながら逃げてたということかな? 

Dちゃん:
木から落ちてた。マキビシは木の実。マキビシを撒いて遊んだ。
マキビシを撒きながら逃げたわけではないけど。

茂木さん:
そのマキビシはどうしたの? 

Dちゃん:
袋に入れて持って帰った。

茂木さん:
どれぐらい落ちてたの? 

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Dちゃん:
撒けるぐらい落ちてた。

茂木さん:
そう? そこの海岸は木とか生えてた? 

Dちゃん:
うん。

茂木さん:
マキビシの木ってどれぐらいの大きさなの? 手を伸ばしたら届くぐらい? 

Dちゃん:
う~ん、大人だったら。

茂木さん:
お父さんとお母さんと行ったの? マキビシで一緒に遊んだ? 

Dちゃん:
うん。

茂木さん:
素晴らしいね。本当に楽しかったんだね、それ。
マキビシを見たとき、それがマキビシだとすぐわかったの? 

Dちゃん:
お母さんが教えてくれた。

茂木さん:
君のお母さん、忍者なの? 

(会場:笑)

Dちゃん:
違う! 夢が忍者だから、そうなの。

茂木さん:
君、忍者になりたいの? 

Dちゃん:
(うなづく)

(茂木さんと会場:笑)

茂木さん:
忍者になって何するの? 

Dちゃん:
忍者になりたいだけ。

茂木さん:
じゃ、絵を見てみようね。植田のお兄ちゃんが描いてくれたこの絵、どう? このとおりだった? それとも全然違う? 

Dちゃん:
違う。

(会場:笑・拍手)

茂木さん:
植田君、違うらしいよ。(Dちゃんに)どこが違う? 

Dちゃん:
木があっちじゃなくて、こっち。

茂木さん:
木はこっちかあ、大事なことだね。で、この絵は好き? 嫌い? 

Dちゃん:
まあまあ、いい。

茂木さん:
ありがとう。植田君、この絵、今まで描いたなかで一番いいかもなあ。
(ボードの絵を指して)この人は忍者?(Dちゃんに)忍者に見える? 

Dちゃん:
見える。

茂木さん:
こういうふうになりたいの? 

Dちゃん:
うん。

茂木さん:
お父さん、いらしてください。娘さんは忍者になりたいそうですけど、今後その夢をどうサポートしていきますか? 

お父さま:
忍者の里に連れて行ったり、ですね。

茂木さん:
英才教育ですね。父親としては、どういう忍者になってほしいですか? 

お父さま:
かっこいい忍者に……。

茂木さん:
(Dちゃんに)お父さんが忍者の里に連れて行ってくれるって。かっこいい忍者になってほしいんだって。どう思う? 

Dちゃん:
うれしい。

茂木さん:
お父さん、その素晴らしい夢の絵は、おそらく植田君ではなくて彼女に描いてもらうほうがよかったかもしれないけど、現場の様子と比べてどうですか? 

お父さま:
だいぶ違うんですけど……。

Dちゃん:
マキビシが違う。

茂木さん:
(Dちゃんに)マキビシってそもそもどういうものなの? 

(Dちゃんがホワイトボードにマキビシの絵を描く)

ステージ上の一同:
全然違いますね。

茂木さん:
何がおもしろいかというと、彼女は実際に経験したことを言葉で伝えたでしょう? 言葉で伝えると、植田君は自分の頭の中にあるイメージで描くから、実際とは全然違うようになっちゃうけど、Dちゃんが実際に描いた絵のほうがイメージがよく伝わる。言葉って限界があるということよ。絵を描くってすごく素敵なことじゃないですか?
Dちゃん、マキビシは絵に描いた?

Dちゃん:
描きたくなった。

(Dちゃん、ボードに絵を描きはじめる)

茂木さん:
実際に経験してるから、木がこうだったと感じてるんだね。
これが噂のマキビシだな。色は黒かったのね。それは海か。桟橋みたいなのがあったんだ。植田君の絵と全然違いますね。

植田さん:
違いますね! ディテールが細かいですね。

茂木さん:
敦賀の海岸へ行ってマキビシがあり言葉では全然わからなかった、現場のリアルな感じが伝わってきますね。木の上にもマキビシがあったんだ!
お父さん、なに首ひねってるんですか? 覚えてないんですか? Dちゃんにはかなり印象深く、記憶に残ったようですが、連れて行って良かったと思いますか? 

お父さま:
まあ、そうですね。

茂木さん:
おっ、その絵はお父さんか。(絵の中の)お父さん、楽しそうに笑ってるね。それは何?(お父さまのTシャツを指さして)旅行の時も同じTシャツだったんですか。お父さん、ヘビーローテーションですね? 

お父さま:
そうだった。

茂木さん:
娘にばらされてますね。いつも着てるという、お気に入りですね。その時はズボンは黒かったのか。子どもの記憶力ってすごいね。いい絵だなあ! 

植田さん:
ほんと、いい絵ですね。

茂木さん:
これは? お母さんかな? お母さんも笑ってるね。植田君、どうですか、芸大生として。

植田さん:
線がとても可愛いですね。

茂木さん:
忍者になるより美大生になるほうがいいかもしれませんね。

植田さん:
はい、この線をずっと生かして。

茂木さん:
お母さんは横縞のスカート? 水玉模様もあって芸が細かいですね。Dちゃんはいないの? 描く? ついに絵の中にDちゃん登場です。
それもマキビシ? お父さん、マキビシはどれぐらいあったのですか? 

お父さま:
10個か、もう少しあったかな。

(Dちゃんが動作で「30個」と示す)

茂木さん:
よほど印象に残ったのだね。
子どものときの脳には、一度行ったところは絶対残っていますから、すごいことです、マキビシとの出会いは。子どもの脳は、たった一回の出来事からいろいろなものを吸収できるのです。このマキビシがDちゃんの人生を変えたかもしれない。
今Dちゃんはすごく集中してしあわせそうでしょう? 絵を描くのは、人が一番しあわせになる行動の一つだということがわかっています。フロー状態といって、流れるように、時間が経つのを忘れるのです。
みなさんも、絵を描きたくなってきたでしょう?
Dちゃん、ありがとう。お父さんもご協力いただいてありがとうございました。

(会場:拍手)

茂木さん:
もう一度繰り返しますが、絵に正解があるわけではない。絵には個性があらわれて、その個性を受け入れることがしあわせになるということです。絵を描いて没入している状態、つまりフロー状態でいるときが、脳が一番しあわせを感じている状態でもある。このことを覚えておいて、休憩後の後半に絵を描いていただけたらなあと思います。

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実際に絵をかいてみよう 

高橋さん:
こんにちは。臨床美術士の高橋文子と申します。私は銅版画の作家としても活動しています。
臨床美術は、お子さまからご高齢の方まで、苦手な方もお好きな方も、長い間絵を描いていない方も、楽しんで表現していただくことを目的として作られました。臨床美術は保育園、小学校、会社、介護施設などでも実施されていますが、大切にしていることがふたつあります。
ひとつ目は、「いてくれてありがとう」という気持ちを持って、相手の方と接していくことです。相手の方が何ができるかを第一とするのではなくて、そこにいてくださるだけでうれしいです、感謝します、という気持ちを持って向き合います。存在論的人間観という考え方でもありまして、それをベースにしています。
もうひとつは、絵を描いたり物を作ったりするときに、五感で感じ、五感を使って絵を描く、物を作るということです。見るだけではなく、食べたりもします。休憩時間にリンゴは召し上がりましたか?(ロビーに試食用が用意されていた)。香りを感じたり、さわったり、全身を使って描くことで、正解のない、自分だけの表現を作り上げていくのが、ふたつ目に大切です。
今日は、臨床美術の「リンゴを描く」プログラムを一緒に体験していただきます。ただ見て描くのではなくて、さわったり、いろいろな方向から感じて、実感したことを描く。リンゴだけではなくて、描いている場面も感じて描いていただきます。
ご準備をお願いしていいですか。お手元に配られた画材のオイルパステルと、描くボードを出して、それだけを膝の上に置いていただくとやりやすいと思います。
茂木さんたちにもリンゴをお配りします。お好きなリンゴを一個どうぞ。

植田さん:
じゃあ、私はこの不定形なのを。

高橋さん:
私はこの、少しひん曲がったのを。 すぐ描き始めるのではなく、まずは、リンゴがどんな香りか、嗅いでください。ヘタの周りか、下のほうか、どこが一番香りますか? 

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植田さん:
お尻の部分です。

高橋さん:
そうですね、ちょうどこの下の部分が結構香りますね。ここは花の跡の部分で、一番香る感じがします。ちなみに、この下の部分が一番甘いそうです。さわやか な香りがします。
今度は掌でさわってみてください。さわり心地はどうですか? (会場のお客さまからの声を聴いて)どこをさわっても手にぴたっとフィットする感じ? そうですね。吸いつくような感じがしますね。ぺたぺたしているかと思うと、ぼこぼこしているところもありますね。いかがですか、茂木さん? 

茂木さん:
つるつるでもないし、ざらざらでもないし、絶妙な感覚ですね。

高橋さん:
会場のみなさんはいかがですか? 

お客さま:
部分的にざらざらだったり、つるつるだったり。

高橋さん:
ヘタのくぼみのところはさわり心地が違う感じがしますね。なでまわしていると、磨かれたようにつるつるしてきます。ぼこぼこしているところもあります。
今度は両手の掌で包み込むように持って、いろいろな方向から全体をなでまわすようにさわってみてください。そのときに、目を閉じて、指の先が目になったような気持ちでゆっくりと全体をさわってください。指でさわると、ヘタの上のくぼみがどれぐらい深いか、どんな形をしているか。先ほどの下の部分、花の跡の部分も指でさわるといいかと思います。ぼこぼこして形が違いますね。

フェリシモ:
こんなに真剣にリンゴをさわったことはないですね。

高橋さん:
本当ですね、いつも切ってすぐ食べてしまいます。 では、目を開けてさわってみてください。目を閉じてさわったときと比べてどんな感じがしますか? リンゴっぽくなかった? 思っているリンゴと違った? 角があるところや平らなところがありましたね。会場のみなさん、いかがですか? 

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お客さま:
思ったよりぼこぼこしていました。

高橋さん:
そうですね、凹凸がある感じですね。角があるところも、平らなところも、直線的なところもありますね。最後に改めて、ヘタを持ちながら形を見てみましょうか。目で見るとどんな形をしていますか? 

フェリシモ:
茎のところを持つのですね。

高橋さん:
持てますか、みなさん? 短いと持てませんが、先っぽも太く、膨らんでいる感じですね。こうやって軸を中心にゆっくり回すと、何となく形も真ん丸ではないですね。

茂木さん:
頂点が5個あるような気がします。

高橋さん:
ぼこぼこが5個ある感じですね。リンゴの花弁も5枚なのですね。私のはぼこぼこは6個あるように見えます。右側に少しひん曲がった感じです。みなさん、いかがですか? 少し凹凸があるでしょうか。(お客さまのリンゴを指さして)真っ赤なリンゴですね。かなり赤みが強い。リンゴはぱっと見ると真ん丸に見えますが、まじまじと見ると、個性のある形をしています。
さて、リンゴの香りを感じて、さわって、見て、先ほど召し上がった感覚を使って描いていきます。感覚を大事にしてくださいね。
今日はオイルパステルが3色入っています。必ずしも、今までご自身がリンゴを描くときに使った色ではないと思います。

茂木さん:
僕は茶色と黄色と緑です。

植田さん:
私はオレンジと赤と緑で、比較的リンゴでは扱いやすい……。

茂木さん:
(赤いリンゴを前にして)僕はリンゴとぴったりの茶色と黄色と緑です。

(会場:笑)

高橋さん:
使ったことのない色もあると思いますが、新しい色との出会いは挑戦になります。私は赤と青と黄色のバージョンで描いてみます。
では、オイルパステルを使います。クレヨンに似ていますが、オイルが入っていてやわらかいです。なので、手に付きます。その付いたものも一緒に表現していただきたいと思います。
3色のうちから、この色から始めようというお好きな色を1色選んでください。私はこの色からです。(青色を選ぶ。描画ボードは黄色)。まず最初に、線で大きく形を作っていきます。このとき、一筆書きします。先ほどリンゴをいろいろな方向になでましたが、その手の動きを画面に伝えるように、線でなでまわして描いてみます。

フェリシモ:
質問です。一筆書きというのは画面から離れないということですか? 

高橋さん:
そうです。途中で止めてもよいですが、またそこから始めてください。ヘタのくぼみの位置を大体ここらへんかなと決めて、私はここからいきます。

(ホワイトボードに止めた描画ボードにリンゴの絵を描き始める)

フェリシモ:
おもしろい形ですね。

高橋さん:
手をあっちにも動かし、こっちにも手前にも動かしながら、もりっとした塊の感じを手に伝えてみました。みなさんはみなさんの感じ方でだいじょうぶです。やってみてください。

(会場のお客さまもリンゴの絵を描き始める)

フェリシモ:
縦でも横でもいいですね? 

高橋さん:
はい、寝かせても。ボードは、縦でも横でも結構です。

フェリシモ:
いろいろ考えずに、まずやってしまうというのがいいですね。

高橋さん:
はい、まず手を動かしてみると、なんとなく形ができてきます。

(一同、描き続ける)

高橋さん:
先ほど一筆書きと言いましたが、形ができてくると、付け足してもよいのです。こういうふうに、このあたりをきゅっと強くしたり、ふくらみを入れたり。先ほどさわった大事な固いヘタも、描いた形を改めて見て、もう一回さわってみて、入れたいところにぐっと強く軸を入れます。

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フェリシモ:
軸の存在感がありますね。

高橋さん:
軸を入れるとぎゅっと強い。みなさん、軸を入れてみてください。できるだけ大きく手を動かして、線もぐっと加えてみてください。(自分のボードに向かって)このあたりをちょっと強くして。

(一同、描き続ける)

高橋さん:
(茂木さんの絵を見て)軸に勢いがありますね。軸が飛び出ている感じです。ヘタの周りにへこみ、くぼみを感じますね。

フェリシモ:
会場の方の絵を見ていただいていいですか。おもしろい形のリンゴも出てきましたね。

高橋さん:
おもしろいですね。線がすごくのびのびしていますね。内側から外側に膨らんでいくようなイメージも良いと思います。自分の感覚でだいじょうぶです。

フェリシモ:
もう1枚見せていただきます。もりもりしたリンゴが出てきました。

高橋さん:
盛り上がりと、それからきゅっと詰まった感じがしますね。軸がしっかりしています。ありがとうございます。
形が出てきたところで、色を入れていきます。リンゴを置いてください。ここからはリンゴを見ないでもだいじょうぶです。
画面を見ながら描きます。画面に集中できる状態にしてください。改めて描いた形を見ると、このように線の間に隙間がありますので、気になる形、この形から始めたいなというところを一つ探してください。私はこのへんから始めます。ここに使いたいなと思う色を選んで色を塗っていくのですが、線からはみ出してもいいですし、他の部分と繋げてもいいです。やってみます。(茶色で描き始める)。今(オイルパステルを)寝かせてざらっといってます。ここは少し強く塗ってみます。

フェリシモ:
はみ出しても良いわけですね。

高橋さん:
1色塗って、他にも塗りたいところがあったら塗ってみます。ここにも塗ります。線でぬるっと。こちらはやさしく、ぐるぐるするように。力の加減を変えたり、強く塗ったり、線で入れたり。何か所かに色を置いていきます。他の色も、ぜひ使ってみたいと思います。ここは黄色で。

フェリシモ:
黄色と青が混ざったら、(緑色に)色が変わりましたね。

高橋さん:
そうですね、このあたりが変わりましたね。指でこすってもだいじょうぶです。ここは黄色だけで。少しずつ画面を見ながら、入れたい色を、3色の中から入れてみてください。形を繋げてもいいです。強くしたり、やさしくしたり、指でこすったり、思いきってやっていただくといいですよ。

茂木さん:
(席から立ち上がって客席へ向かう。ステージ上を歩きながら)さあどうかな。
うまい! というか、みんないいですね。一人ひとりリンゴが全然違いますね。

高橋さん:
みなさん、やりながらこちらをご覧いただけますか。色を混ぜるのもおもしろいので、私はここを2色混ぜてみたのですが、混ぜると色が深くなっていきます。何となくほしいな、と思うところに点を入れてみたり。

フェリシモ:
(会場から)点々の音が聞こえてきましたね。 いい音が聞こえてきます。みなさん、点々は楽しそうですね。

高橋さん:
点を入れるとまたリズムが変わっていきます。

(一同、描き続ける)

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高橋さん:
で、先ほど持った軸の部分、ヘタの部分ですね、そこを強調していただくといいです。色を重ねると深みのある色になっていきます。画面を見ながら指でこすったり、強くのせたり優しくのせたり。

茂木さん:
本当に、リンゴはみんな、一人ひとり全然違いますね。

フェリシモ:
会場もだんだんおもしろくなってきたので、見ていただけますか。

茂木さん:
マキビシ君、うまい! さすが、絵画界の忍者だな。

フェリシモ:
この方の作品も、うまい。3色とは思えない感じになってきましたね。

高橋さん:
重ねた色に深みがありますね。

フェリシモ:
この方もおもしろいですね。重さを感じます。

高橋さん:
ずしっとした感じがしますね。色の深みがあるので。色が響き合っている感じがします。

茂木さん:
この子、すごく独創的。キュビズムみたいなのもありますよ。すごくないですかこれ、会場にピカソやモネがいましたよ。

高橋さん:
すごいですね。ヘタの上の盛り上がりがもりっと感じられますね。塗らないところがあってもいいのですね。塗らないで下地の色を生かす。
さあみなさん、置いているボードを立てて、少し画面を離して、最後にここに入れたいなと思うところに一筆サインを入れて完成にしたいと思います。
サインは画面の中に、ローマ字でも漢字でもひらがなでも、合う場所に入れてみてください。

茂木さん:
どうだい、上田君。

植田さん:
(自分の絵は)何か、非常に常識的な……。

高橋さん:
サインは全体のバランスを見て入れるといいと思います。リンゴに寄り添うようにしてもいいし、ちょっと離してみてもいいと思います。

茂木さん:
できた。

高橋さん:
(茂木さんの絵を見て)ヘタが力強いですね。弾けてる感じがします。「リンゴ星人」というサインですね。
(お客さまの絵を見て)やわらかいタッチがいいですね。
この作品はオイルを使っているので、手につく状態です。絵の材料の中に粉が入っていましたね。袋に入っている粉を全部入れて、全体に真っ白になるぐらい振りかけてください。ティッシュでやさしく刷り込むように磨いていきます。最後は掌でも磨いてください。掌で全体に広げて、またティッシュで磨いてみてください。掌で磨くと艶が出てきます。オイルパステルのべとつきがなくなりますので、しっかり磨いてください。この粉はベビーパウダーで、艶を出してオイルパステルを定着させて、さらっとした感じにします。
最後に、掌で白味が取れるまでしっかり磨いてください。手の油で白味が取れてくると思います。
さあ、作品が完成しました。いつも最後に観賞会を行いますが、今日は500人以上の方がいらっしゃって、おひとりおひとりだとむずかしいので、代表して茂木さんと植田さんに作品を見せていただきます。
茂木さんのリンゴは、ヘタ、軸から何か力が出てきそうな感じがします。

茂木さん:
植田君のはスイカがうまく描けたようだね。

植田さん:
リンゴですよ、先生。緑味が強いのですけど。

高橋さん:
植田さんのは、下地の緑が生きてますね。上の赤も、タッチがすごく生きてます。

植田さん:
先生、ありがとうございます。

高橋さん:
オイルパステルのタッチがいいですね。ぐっと力強い感じが。さわった感じの丸みと引っ込みと。

茂木さん:
本当に、いい作品がたくさんありますよ。

高橋さん:
みなさん、お隣同士でふたり一組になって、ボードを立てて、お互いの作品を見てここが素敵だなと思うところを言ってみてください。

(茂木さん、植田さん、高橋さん、フェリシモスタッフが会場を見て回る)

高橋さん:
いいですね、左側に寄り添っている感じがいいですね。掌で最後、磨くといいですよ。線がすごく生きてますね。モザイクのような色面がかっこいいですね。力強いです。 いかがでしょうか。お互いにコメントし合っていただけたでしょうか。手やボードについたオイルパステルは、ウェットティッシュで取れます。

茂木さん:
植田君、見に来て。

茂木さんと植田さん:
うまい! しかもちょっとおしゃれで。

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茂木さん:
すごいオリジナリティ。かっこいい。この色の分離がいい。なんで思いついたの? このサイン、何で「プロミス」なの? 

高橋さん:
プロミス君の作品、すごいですね。オイルパステルのタッチがいいですね。
(ステージに戻って)最後に写真撮影を行います。みなさん、作品を胸のあたりに立ててください。

(会場のお客さま全員がステージのカメラに向かって作品を掲げ、写真撮影)

茂木さん:
みんな個性というか、見方が違っていて、ひとつとして同じリンゴがないのは、すごくないですか。すべての絵が一番いい絵だったということだよ。本当にみなさん、素晴らしい。

植田さん:
リンゴが自分を見つめる鏡にもなるのだなと改めて思いました。自分に意外と固定観念があるのもよくわかりました。

茂木さん:
プロミス・リンゴの男の子はすごかったね。

植田さん:
はい、あの子のは現代美術かなと思うほどで、勉強させていただきました。

高橋さん:
最後にみなさんがボードを立ててこちらに向けてくださったとき、会場に花が咲いたような感じになって、胸がいっぱいになりました。みなさん、今日はありがとうございました。

フェリシモ:
それでは、ワークショップの最後に少しお時間をいただいて、フェリシモがなぜこの「お絵かきワークショップ」を始めたか、思いをお話しさせていただきたいと思います。

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フェリシモ 木野内美里:
みなさん、来ていただいて本当にありがとうございました。素晴らしいアーティストがここに500人いることを実感しました。
今、絵は一部の「描く側」とたくさんの「見る側」に分かれていたりするのですが、今日は下は3歳から上はおそらく88歳までの方が同じプログラムで一緒に楽しまれ、この会場がアートの未来の姿のような気がして、わくわくしました。臨床美術は素敵だと思います。実は私は2週間前、ミラノで同じプログラムを行いました。イタリアの人も、今日のみなさまと同じ生き生きした表情で描いてくださいました。それを感じて、表現はボーダーがないというか、素晴らしいと感じました。
私はフェリシモの「チョコレートバイヤー“みり”」ですが、臨床美術士でもあります。今日は受付で臨床美術士の養成講座の受け付けもしています。私が臨床美術士になった理由ですが、母が生前病気になり、闘病中に少し暗かったのです。それで、私は「お母さん、絵でも描いたら気分転換になるのに」と思いましたが、「はい、絵を自由に描いてください」と言われても、自由に描ける大人はなかなかいませんね。母を見送ってから数年後にこの臨床美術士に出会いました。これさえ知っていたらと思い、すぐ臨床美術士になりました。
当時は週末に自分の身の周りだけで楽しんでいたのですが、東日本大震災後、岩手県の学童保育の子どもたちのところへ絵を描きに行くことになりました。その時の子どもたちと指導員の笑顔がまさに今日の皆さんの笑顔と一緒で、指導員の方から「今度はいつ来てくれるんですか」と詰め寄られ、臨床美術っていいな、と思ったのです。岩手県ひとつが四国と同じ大きさで、臨床美術士が毎週通ってもなかなか県全体には到達しないのも実感して、神戸に帰って来ました。
私も神戸で震災を体験していますので、何かしなければと思いました。神戸学校の精神と同じで、私はビルの修復もできず、お医者さまでもないので人を治してあげられませんが、フェリシモの商品企画で人のお役に立てることをしようと、ここにおられる高橋先生をはじめたくさんの臨床美術士の先生方に、お家でもできるおもしろいプログラムを考えていただきました。まず色鉛筆編ができて、次にオイルパステル編ができて、今は第3弾で家事の合間にもできるプログラムを、7月初めに向けて開発中です。
たくさんの方々のご協力を得て、フェリシモのお絵かきプログラムを作らせていただいております。今日はすごく楽しかったという方がいっぱいいらっしゃると思うので、アートのしあわせを神戸から世界へ広げていきたいです。
どうもありがとうございました。

(会場:拍手)

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<第2部>

お客さまとのQ&A

お客さま:
僕は個人的にたくさん絵を描いているので、茂木さんに見せたいです。

茂木さん:
(お客さまのところまで行って、スケッチブックの絵を見る)わっ、すごい。やってるじゃん。で、ご質問は?

お客さま:
絵を描いているときに、茂木さんがおっしゃったフロー状態を感じたことがあったのです。でっかい絵ですから、全部シャープペンシルでがーっと描いて、黒い色を塗るとたいへん気持ちが良いのです。でも、フロー状態が限界を超えると、人間はどうなるのですか?

(会場:笑)

爆発したりしないですよね?

茂木さん:
(お客さまの絵を高橋さんに見せて)先生、プロの目から見てどうでしょうか?

高橋さん:
緻密な感じがします。力強いです。

茂木さん:
こっちにおいで。(お客さまがステージに上がる)。美大へ行かないの?

お客さま:
行きたいです。いろんな絵を描きたいです。できれば銅版画がしたいのです。

茂木さん:
独学で絵を描く人は、例がないわけではない。二十世紀最大の画家の一人と言われているフランシス・ベーコンもアートスクールに行ってないのだけど。高橋先生、どうですか? こういう人は美大へ行くほうがいいですかね?

高橋さん:
美大へ行きたいのですか? 銅版画に向いてる表情だと思います。緻密なエッチングの感じ。やればいいじゃないですか。

茂木さん:
アートスクールに行く必要はないかもしれないね。YouTubeにあげたらいいじゃない? 最初の質問だけど、フロー状態になるということは、リミッターをはずすということ。君はもうリミッターがはずれてるよ。

お客さま:
はずれてますね。

(会場:笑)

茂木さん:
しかし、バランスを保つことが大事。ゴッホという人は、自分の耳を切っちゃったりして変な人だと思うかもしれないけれど、彼の書いた手紙を読むと、ものすごくいろいろなことを考えている。だから、「あーっ!」というだけだといい絵は描けなくて、リミッターをはずす一方でいろいろなことを考えないといけない。

PHOTO

お客さま:
そうなんですよ。僕、机の上でこれを描いているときなんて、ポケットモンスターのロケット団のコジロウってどんな顔してたっけみたいなことと思ってます。

(会場:笑)

高橋さん:
「継続は力なり」と言いますから、まずは続けて……。

お客さま:
3年間がんばってます。

茂木さん:
好きなアーティストは?

お客さま:
岡本太郎です。

高橋さん:
岡本太郎って、緻密な表現もしたけれども、立体を作ったりいろいろなことをしてますね。だから、いろいろなことをしてみるのがいいと……。

茂木さん:
まあ、やれ! がんばってやれ!

お客さま:
やります。灰色のブロッコリーを作って、茂木健一郎というタイトルで……。

茂木さん:
いいじゃん。がんばって。ありがとう。

お客さま:
子どもや大人が描いた絵の色使いやタッチから、こういう感情で描いたのではないか、こういう思いが心にあるのではないかと、結果を見て絵を読み取る方法もあると思います。臨床美術で描いた絵も、後から時間をおいて、(描き手が)どういった感情だったかを見たり推定したりなさるのでしょうか。

高橋さん:
臨床美術では、それはやらないんです。アートセラピーには、作品から心理分析する分野と、作る行為を大事にしてリハビリに役立てていく分野の、役割分担があります。臨床美術は、その大きな枠で言うと、作っていく行為を大事にしていくほうです。描いている最中も、出来上がってからも、その人の心理を分析することは行いません。

お客さま:
結果ではなく、描いている時間、プロセスがいかにしあわせかが大事ということですか?

高橋さん:
結果的にしあわせな気持ちになっていくとは思いますが、描いている行為の中で色を選んだり、五感で感じたり、自分で少し悩みながらも次のプロセスを組み立てたりという工程を大事にするということです。でも一番大事なのは、感じることかなと思います。

お客さま:
リンゴは赤でないとだめという観念を取り払わないと前に進めないのがわかりました。これを進めていったら、次の世界は、どういう形になっていくのでしょうか?
色で古い制限枠を取り払って、新しい扉を開いたら、次は何かものを作りたい衝動になると思うのです。それが造形、たとえば石膏とか彫刻とかの立体だと、どういう枠を超えたらそうなれるのか。モアイ像や、縄文時代の火焔土器を見て美しいと思うかということも絡むかと思いますが、そのあたりを先生に聞かせていただけたらと思います。

高橋さん:
人によって次に開けてくる段階は違うと思うのです。人は一足飛びに感覚が開いたり変わっていくのではなくて、表現を通してじわじわと次の扉に入っていくように思います。次に描いたときは他のものを感じられて自由になったり、自分の中で狭めていた枠を少し取り払うようになるとか、取り払おうという勇気が出てくるとか、一歩一歩そのようなことができる、やろうかなという気持ちになる。臨床美術士として現場に行って、表現が変わってきている方たちを見てそのように感じます。その人なりに一歩一歩進んでいくと感じます。

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茂木さんの最後のひとこと 

茂木さん:
芸術の一番のポイントは、いつまでも5歳児のように描けることだとピカソが言っています。今日は、マキビシの女の子もそうだったし、プロミスのリンゴの男の子もそうでしたし、ここに鳥の絵を描いたときにも、子どもの発想の自由さが素晴らしいなと思いました。でも、それがだんだん大人の常識になっていって、社会の常識になっていく。ある程度常識は必要ですが、その一方、われわれ大人の中にも子どもっているんですよ。
アンチ・エイジングというか、若々しく脳を保つためには、いかに自分の中の子どもを目覚めさせるかが大事だと思いました。絵を描くって自分の中の5歳児、子どもを甦らせるすごく良い方法です。お肌のアンチ・エイジングばかりでなく、絵を描いたら心が若々しくなって、すごく楽しい人生になるのではないですか。
それを改めて確認できたのが、脳科学者として一番うれしかったことです。みなさん、本当にありがとうございました。

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Profile

茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)さん<脳科学者>

茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)さん
<脳科学者>
*プロフィールは、ご講演当時のものです。
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専門は脳科学、認知科学。 「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。2005年、『脳と仮想』で、第四回小林秀雄賞、2009年には『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。主な著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『幸福になる「脳の使い方」』 (PHP新書)、『挑戦する脳 』(集英社新書)、『「モナ・リザ」に並んだ少年』(小学館101ビジュアル新書)、『茂木健一郎の科学の興奮』(日経サイエンス編集部)など多数。2015年5月20日に『東京藝大物語』(講談社)が刊行される。

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